ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『もっとあぶない刑事』最終回

2023-10-22 21:35:14 | 刑事ドラマ'80年代

松田優作&中村雅俊の主演による東宝作品『俺たちの勲章』の続編、というより“リブート”的な内容だった中村雅俊&根津甚八『誇りの報酬』のあとを受け、1986年10月に日本テレビ系列の日曜夜9時枠でスタートしたのが、舘ひろし&柴田恭兵を主演に迎えてセントラル・アーツ社が制作したTVシリーズ『あぶない刑事(デカ)』。

すでに’80年代ならではの遊び感覚を備えた『誇りの報酬』に“オシャレさ”を付加し、それが舘ひろし&柴田恭兵のみならず浅野温子、仲村トオルという当時“トレンディー”だった俳優陣の個性とも見事にマッチして、2016年公開の完結編『さらばあぶない刑事』まで7本もの劇場版が製作される大ヒットシリーズとなりました。(またまた復活するとの噂もあり)

で、今回レビューするのは放映枠を金曜夜8時台に移して1988年10月からスタートしたTVシリーズ第2弾『もっとあぶない刑事』の第25話=最終回。

日テレの金曜夜8時と言えば『太陽にほえろ!』や『ジャングル』、そして後の『刑事貴族』シリーズへと繋がる伝統の刑事ドラマ枠。そういう意味でも最後はちゃんと締めて欲しかったのですが……

この最終回は酷い。第1シリーズには大いにハマった私だけど、劇場版2本を挟んで制作されたこの第2シリーズは内容が空虚すぎて初回から乗り切れず、途中で脱落したもんで最終回を観たのは今回が初めて。

呆れました。これはマジで酷い! 人気にアグラをかいて視聴者を完全にナメてる、と言わざるを得ない内容です。元凶はおそらく、石原裕次郎さん亡き後に石原プロモーションをさんざん迷走させた、あの“専務ーK”だろうと思いますが……

そのK専務の操り人形だった舘ひろし氏や、忖度して逆らえなかった日テレとセントラル・アーツにも責任はあるでしょう。

あんまり酷いからレビューは簡単に済ませます。なので今回は早めにアップ出来ると思いますw




☆第25話(最終回)『一気』(1989.3.31.OA/脚本=大川俊道/監督=長谷部安春)

『ベイシティ刑事』の最終回にも登場した本牧のレストランバー「ゴールデンカップ」に二人組の強盗が押し入り、港署・捜査課の“あぶない”コンビ=ユージ(柴田恭兵)&トオル(仲村トオル)が駆けつけます。

で、途中から唐突に現れたタカ(舘ひろし)が強盗の片割れを仕留めるんだけど、ユージ&トオルはもう片方に逃げられた上、覆面パトカーを奪われるという大失態までやらかしちゃう。



「モ……モラルが無いよな、近頃の犯罪者は💦」

このテのドジは“あぶない”コンビにとって日常茶飯事なワケだけど、ちょっと待ってくれ。何かが違う。

「お二人さん、また派手にやらかしたんだって?」



それを知った少年課の狂女=カオル(浅野温子)が冷やかしたり騒いだりするのも見慣れた光景……の筈なのに、めちゃくちゃ違和感がある!

そりゃそうです。派手にやらかしたのはユージ&トオルであって、タカはほとんど絡んでない。なのに、なんでタカが冷やかされるのか?



「どうする?」

「いやあ、パトカー盗られちゃってっからなあ」

いやいやユージさん、あんたはそうでもタカさん関係ないですやん!

そう、本来こういう騒動はタカ&ユージが起こすもんであって、トオルの役目はそれに巻き込まれて迷惑がることだったはず。

そもそも港署の“あぶない”コンビはタカ&ユージの専売特許でしょう?

なのに、奪われた覆面パトカーが接触事故を起こし、それで初めて顛末を知った近藤課長(中条静夫)が言うワケです。

「ロクでもないコンビだな、あの二人は!💢」

いやいやいやいや、違うでしょう? ロクでもなきゃいけないのはタカ&ユージであって、トオルは馬鹿だけど決して“あぶない刑事”じゃない。そうでないとバランスが大きく崩れちゃう。もう手遅れだけど。

これは恐らく……いや間違いなく、本来はタカ&ユージがパトカーを奪われる設定だったのを、無理やりユージ&トオルに置き換えた結果でしょう。



以降のシーンも、タカが登場するのは刑事部屋とか病院とか、ほとんどセット内で撮影できる場面だけ。

番組ファンの間じゃ常識的な話でしょうが、当時すでに石原プロモーションがテレビ朝日の新番組『ゴリラ/警視庁捜査第8班』の撮影を始めており、舘ひろしはそっちを優先して『もっとあぶない刑事』の終盤は登場シーンが激減しちゃう!

そのへんの事情は以前から知ってたけど、まさか最終回までこんな事になってるとは! 今更ながら呆れるしかありません。

さすがは、後に自社制作の『代表取締役刑事』を優先して東宝の『刑事貴族』を途中で降りた舘ひろしです。

いや、おそらく本人はそんな不義理はしたくなかっただろうに、上から“ゴリ押し”でそうさせたのが石原プロの専務ーK(当時の最高権力者)だろうと私は思うワケです。

お陰で、最終回なのに残りのシーンもこのありさま。



トオル君には何の罪もない。けど、『あぶない刑事』におけるキミのポジションはそこじゃない。

そりゃあ、何十本もやってりゃ途中でそんなエピソードもあっていいとは思う。けど、初回と最終回だけはダメでしょう? それも2つしか無いTVシリーズの大ラスですよ? いくら次の劇場版が控えてるからって。テレビを馬鹿にしとんかい!?って話です。



ストーリーは、ゴールデンカップを襲った強盗二人組が図らずも相当ヤバいものを盗んでしまい、覆面パトカーを奪って逃げたヤツが殺し屋に狙われ、ユージが命懸けでそいつを護る。

どんな事情があろうと犯罪者にだけは肩入れ出来ない私ですから、このテの話にもとうてい感情移入できません。



で、ユージが満身創痍になって戦ったにも関わらず、結局そいつは殺されちゃう。

一方、冒頭でタカが仕留めた犯人も、軽傷だった筈なのに病院で息を引き取っちゃう。そこにも刺客の手が回ったらしく、黒幕はどうやら県警本部内にいるらしい。またかよ!?💨



「結局、強盗が二人と殺し屋が一人死んだ。ただそれだけの事だ」

「誰かがどっかで笑ってんだろうな」

「だが、そいつは重大なミスを冒した」



「俺たちを生かしておいた事だろ?」



「必ず後悔させてやろうぜ。いつか、必ずな」

いやいや、あんた。ハズキルーペのあんた。今回ずっと病院のベンチに座ってただけやん!



で、最後は取ってつけたようにタカ&ユージのアクションをちょっとだけ見せて、続きは映画館でね!って言わんばかりにジ・エンド。

おフザケが過ぎたこの第2シリーズの中じゃ比較的ハードな展開(いわば挫折の美学ごっこ)に僅かなスペシャル感があるものの、主役コンビの片方しか活躍しない最終回なんて聞いたことがない。相変わらず木の実ナナも出てこんし!

もう一度言う。テレビをナメとんかい!? わたしゃ生粋のテレビっ子なもんで、ちょっと許しがたいもんがありますよホントに。


 

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『ベイシティ刑事』最終回

2023-10-21 21:57:12 | 刑事ドラマ'80年代

時は’80年代後半。『Gメン’75』『西部警察』『特捜最前線』、そして『太陽にほえろ!』といった“刑事ドラマの代名詞”たちが長い歴史にピリオドを打ち、それらと入れ代わるように現れて大ヒットしたのが日本テレビの『あぶない刑事(デカ)』。

そしてフジテレビが月9枠“トレンディドラマ”の第1弾『君の瞳をタイホする!』をスタートさせ、グラサン姿の井上陽水さんが日産セフィーロのCMでニヤニヤしながら「皆さんお元気ですか?」と語りかけて来たのが1988年で、世はまさに「食う寝る遊ぶ」の時代。

その前年の4月にテレビ朝日&東映コンビが現在の『相棒』へと連なる“水曜21時枠の刑事ドラマ”第1弾『大都会25時』をスタートさせるも不発に終わり、第2弾として10月に送り出したのが『ベイシティ刑事(コップ)』全24話でした。

誰がどう見ても『あぶない刑事』の亜流ではあるんだけど、横浜・港町署に設置された捜査課の左遷部署“別動班”って設定は、むしろ藤竜也さんが’78年にレギュラー出演された日テレ火曜21時枠の刑事ドラマ『大追跡』を彷彿させ、これは世良公則さんとの“バディ物”というより石川秀美さん、いかりや長介さんも加えた“チーム物”と捉えるべきかも知れません。

アドリブ満載の軽〜いノリも『大追跡』ですでに完成されてたし、そのチームに柴田恭兵さんもおられたことを思えば、『あぶない刑事』も『ベイシティ刑事』も『大追跡』から派生したブラザーであり、たまたま放映時期が少しズレただけ。(つまり二番煎じとは違う)

『あぶデカ』のブランドスーツとは対照的にラフなファッションや、オールディーズ・ナンバーを使ったBGM等にも“時代に迎合しない”反骨心が感じられ、あえてヒューマン路線に回帰する後番組『はぐれ刑事純情派』にも同じことが言えそうです。

けど、残念ながら『ベイシティ刑事』はヒットしませんでした。とっても分かりやすい『あぶデカ』のオシャレさと違って、ちょっとひねくれた『ベイシティ〜』のソレは視聴者たち……ことに若い女性層には伝わりにくかった。

オッサンの懐古趣味とか銃器へのこだわりとか、いかりや長介とか石川秀美とか、そんなのがチャンネル権を握る女性たちに受けるワケがないw

だからコケるべくしてコケた番組ではあるんだけど、今となっては時代にも女性にも媚びなかった、創り手たちの頑固な姿勢がとっても眩しいです。




☆第24話 (最終回)『男たちのラストショー』(1988.3.23.OA/脚本=日暮裕一/監督=村川 透)

この時代のアクション物にドラマ性を求めても仕方ありません。テーマだのメッセージだの、マジメに伝えようとすればするほど「ダサい」とか「寒い」とか言われ、だから倉本聰さんや山田太一さんといった大御所の脚本家たちがテレビから次々に手を引いちゃった。

今回はさすがに最終回ってことで、お荷物部署“別動班”に解散命令が下るというイベントはあるにせよ、そこに悲壮感はカケラもない。



「ダメだこりゃ」

もはや老齢で家のローンも残ってる山崎班長(いかりや長介)だけは異動命令に従うしか無いけど、まだまだ若い小池(藤 竜也)、星野(世良公則)、河合(石川秀美)はすぐに転職先を思案。そりゃあの時代ですから仕事はいくらでもあります。

「俺だってな、潔く辞表を叩きつけてえよ。女房やガキがいなけりゃな」



「でもな、短い間だったけど一応、親方気分を味わわせてもらったんだ。お前らには感謝してるよ」

「…………」

本当は小池たちだって、悔しいし哀しいに決まってます。そんな想いを’70年代なら夕日や海に向かって叫ぶところだけど、’80年代は地下射撃場で弾丸を湯水のごとく撃ちまくって発散するという贅沢さ。



そう言えばあの時代、私自身はバブルの恩恵を受けた実感があまり無いんだけど、唯一、通ってた映像専門学校の課題制作で16ミリフィルムを湯水のように使っても叱られなかったのが、現在だとあり得ない贅沢さだったと思います。



足元に転がる空薬莢をわざわざ撮るなんてマニアックな演出が、日本のTVドラマで見られたのも多分『ベイシティ刑事』が初めて。だけど喜ぶのはガンマニアだけで、肝心の顧客(女性視聴者たち)には何も響きませんw

さて、別動班の解散を決めたのは捜査課長の桜井(神山 繁)なんだけど、その張本人が恥も外聞もなく、小池たちに協力を要請して来ます。



ヤクザだけをターゲットにする凄腕の“始末屋”を逮捕に向かった捜査課の部下たちが全員、逆にそいつに捕まったから救出して欲しいと言う。

基本は事なかれ主義の山崎班長もさすがに黙ってられません。

「そいつは身勝手過ぎやしませんかね?」

「そうか、それじゃキミもこいつらと一緒に退職するのか?」



「……仕方ありません。私は、小池たちに命令することは出来ません!」



家のローンが残ってる班長をクビにさせるワケにも行かず、小池と星野が立ち上がります。

「どこへ行くんだ?」

「ちょっと、こいつと別れを惜しみに」

そう言って小池は“ジョン”ことS&W・M29センチネルアームズカスタムを、そして星野は“マギー”ことコルトM1911ゴールドカップナショナルマッチ・コンバットカスタムを取り出すのでした。

「そう、それにはちょうど手頃なヤマよ」

ピストルの名前が何であろうと女性たちは知ったことじゃないけど、ここがこの最終回で一番熱いシーン。胸を打つような展開はもう二度とありませんw それがバブルという時代。

凄腕の“始末屋”=水谷を演じるメインゲストも、喜ぶのは私みたいな『太陽にほえろ!』ファンだけで、その中でも女性にはあまり人気が無かったであろう、この人。



『ベイシティ刑事』には2度目のご登場となる、元“ブルース刑事”の又野誠治さん。私は好きだったけど、この人が意識しまくってた松田優作さんほどのスケール感やカリスマ性を皆が感じないのも、まあ理解できます。

時代が違えば“ボギー”世良さんと再び組んでの刑事役もあり得たと思うのに、悪役専門アクターに収まっちゃったのは個人的に残念です。

それはともかく元ブルースは、自分が囚人として乗せられる予定だった護送車を港町署の表に乗りつけ、人質にした捜査課のボンクラ刑事たちを並べて、プラスチック爆弾を掲げます。



「このスイッチ押せばどうなるか分かるよな?」

「ハッタリかまして後で恥かくなよ」

「星野、あの男にハッタリはねえぞ」



又野さんが第7話で演じた悪党とは別キャラみたいだけど、今回も藤さん演じる小池刑事と因縁がある設定。

そんな元ブルースの要求は、裏切った雇い主にギャラの2億円を取り立てろというもの。タイムリミットは翌日の午前8時。

雇い主の正体を知ってるのは、連絡役を担ってた謎の美女(日向明子)だけ。捜査課に密告して元ブルースを「売った」のもこの女。



県警本部は元ブルースの要求を無視して強行逮捕する構えだけど、小池&星野は謎の美女を探し出して命懸けで拉致し、雇い主の正体が暴力団の幹部であることを聞き出します。

県警本部による強行逮捕を阻止する意図もあり、小池は進捗状況を元ブルースに伝えるべく護送車に乗り込みます。



「小池さんよ、俺は楽しみだぜ。あんたみたいなヤツと張り合えるのがよ」



「水谷、俺と相棒はワンセットだ。俺が二人いると思ってくれ」

そしてワンセットの小池&星野が決行したのは、第9話で刑務所へ送った金庫破りの名人(三上 寛)を脱獄させ、一緒にヤクザ幹部の屋敷に忍び込んで隠し金を全て盗み出すという、本気で刑事を辞める前提のミッション。



「よし、最後のお勤めだ。締まって行こうぜ!」



一方、桜井課長らに逃走用の高速艇を用意させた元ブルースは、このまま逃げるべきだと手下に言われても聞き入れません。

「ダメだ。約束だからな、小池との」

「信じるんですか? 相手はデカですよ!」

「テメエらには解んねえよ!」

ヤクザしか殺らない元ブルースに小池は一目置いており、そんな小池に元ブルースもシンパシーを抱いてる。

殺し屋と刑事の友情になんか、私はまったくリアリティーを感じないし共感もしないけど、このあたりは香港映画の影響かも知れません。

ともかく、タイムリミットぎりぎりに到着した小池&星野は、高速艇に乗り込んで約束どおり2億円を元ブルースに手渡し、港で見守る同僚たちに宣言します。

「人質を無事、解放しました! 小池警部補、只今をもって退職します!」

「星野巡査長、右に同じ! お世話になりました!」



「ところで相談なんだが……」



「俺も約束は守る。おたくらの行きたい所へ連れてってやる」

小池&星野が行きたい場所とは、警察官でなくてもカネさえあれば拳銃がいくらでも撃てる、ハワイという名の楽園。

そこで永住する夢に一步近づいたその時、何者かがライフルで元ブルースたちを、そして星野にも弾丸をぶち込んだ!



えっ、なんで? 撃ったのはどうやら警察側のスナイパーらしいけど、いったい誰の命令で? なんで星野まで撃っちゃうの?

……って、釈然としないまま展開が進んじゃうんだけど、そう言えば元ブルースの雇い主を探す過程の中で、ヤクザ幹部のバックにさらなる黒幕=県警本部の人間が絡んでることを臭わせてました。

それって、今回はレビューを書くために注意深く観てたから思い出せたものの、最初に観たときは完全に忘れてたから「なんじゃこりゃ?」って感じでした。

説明過多になるのも良くないけど、説明不足はもっと良くない。ましてや最終回のラストシーンなんだし!



「星野、いよいよ憧れのハワイだ! 向こうに着いたら、すぐにお前の射撃場の土地探しだ、な?」

「そいつはいいな……楽しみだ」

ところが! 元ブルースの手下が撃たれたときに手放した時限爆弾は、午前8時に起爆装置がセットされており……



『傷だらけの天使』や『俺たちの勲章』における“挫折の美学”がアメリカン・ニューシネマのダイレクトな影響だったとすれば、この『ベイシティ刑事』最終回のそれはオマージュというか、もはやパロディですよね。

別に笑わせようって意図は無いにせよ、ストレートに(哀しげに)それをやるのは照れくさい。だからあえて軽〜くやっちゃう。なにせ「食う寝る遊ぶ」の時代だから。

返す返すも、そして良くも悪くも、あの頃、僕らのニッポンがホントおかしな事になってましたよね。いや、2023年現在はもっとおかしいかも知れないけれど……


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『太陽にほえろ!』#494

2023-09-04 17:00:02 | 刑事ドラマ'80年代

1982年初頭、スコッチ(沖 雅也)という貴重にも程がある戦力を失った七曲署捜査一係の穴を埋めるべく、同じ「クールな一匹狼」キャラとして……どころか、スコッチをも凌ぐハードな戦士という鳴り物入りで登場したのが、幾多の所轄署を渡り歩くジプシー刑事こと、原 昌之(三田村邦彦)でした。

’76年にスコッチが初登場したときの、あの強烈なインパクトの再来をずっと待ちわびてた私は、新刑事ジプシーにメチャクチャ期待したし、今回レビューする登場篇はその期待に充分応えてくれたと思ってます。

そう、この登場篇「だけ」はw




☆第494話『ジプシー刑事登場!』(1982.2.5.OA/脚本=小川 英&古内一成/監督=竹林 進)

まず、拳銃を構える姿がサマになるか否かは(私にとって)真っ先にチェックしたい重要ポイント。その時点で後のマイコン刑事(石原良純)なんか即アウトですw

私は時代劇をほとんど観ないもんで、当時すでに『必殺仕事人』シリーズで人気を博してた三田村邦彦さんの演技はおろか、お顔も写真でしか知りませんでした。

そんな私に対し「これでどうだ?」と言わんばかりに、冒頭からいきなり七曲署地下の射撃レーンで、新しい拳銃を試射して見せる原刑事。



射撃スタイルは普通なれど、殺気をむき出しにした眼光はとても素晴らしい。合格です!

ちなみにこの原刑事、七曲署に着くなり射撃レーンへ直行しており、出勤時間は過ぎてるのに着任の挨拶すらしてません。合格です!w



で、事件発生。拳銃を持ったチンピラが喫茶店で暴れ、女性店員を人質にして立て籠もったらしい。

それを知った原は、店の表で作戦を練ってる先輩刑事たちを差し置き、勝手に覆面車を走らせて……



なんと、ブレーキとアクセルを踏み間違えたのか、そのまま猛スピードで喫茶店へと突っ込んだ!



イッツ・クレイジー!! もちろん合格です!



すぐさま車を降りた原は、チンピラの利き腕を1発で撃ち抜きます。

ついさっき試射してた拳銃(COLTローマン)と、いま撃った拳銃(COLTパイソン)の機種が違ってるのはご愛嬌。ローマンがイマイチだったもんでパイソンに持ち換えた、と解釈しておきましょう。

しかし、これから同僚となる刑事が5人も現場に来てるのに、それを完全無視した上でのスタンドプレー。

ここでようやく辞令書を見せて身分を明かすも、4〜5年前ならゴリさん(竜 雷太)の鉄拳を食らった事でしょう。



「なぜ、こんなムチャをした? 失敗したら人質も無事じゃ済まなかったぞ」

「自信がありました」

「自信? どんなに自信があってもミスはある。100%の確信が無ければ、オレは引金を引かん」

「オレは、60%でも撃ちます。」

「!?」



ボス(石原裕次郎)に対しても臆することなく、始末書を書いとけと言われて「はい」とだけ返事し、さっさと退勤しちゃう原刑事。合格です!

「転任の挨拶なし! 自己紹介なし! 愛嬌なし! 可愛げがまったく無いじゃないかっ!!💢」



いやもっと、比べものにならんほど尖ってたヤツ(かつてのスコッチ)を知るベテラン勢と違って、免疫がないドック(神田正輝)はすっかりお冠でロッキー(木之元 亮)に八つ当たり。

シャワー室でも悪口を言いまくってたら、帰ったはずの原がすぐ横でシャワーを浴びてたから驚いた!

そして更に、彼の左胸(ちょうど心臓の下)に大きな手術痕を見つけてもっと驚いた!



「お前、この縫い方は……弾丸を摘出したのか?」

「そうです」

「そうですってお前……よく死ななかったな。普通なら即死だぞ?」



「この位のことじゃ、死にませんよ」

その手術痕にこそ、原刑事をこれほどニヒルたらしめた理由があるワケだけど、それにしても乳首がこんなにハッキリ写ってて、この記事は消さなくていいんスかgooブログ事務局の皆さん? 男なら問題なしってこと? それこそ性差別ってもんじゃないですか?

三田村さんの乳首はともかく、再び七曲署管内で立て籠もり事件が発生し、原刑事を加えた新・藤堂チームが出動!

今度は宝石店に押し入った強盗犯で、やはり拳銃を所持しており、どうやら支店長と鑑定士、2人の女性店員と2人の客を人質に取ってるらしい。けど、入口も窓も完全にバリケードされ、中の様子はまったく判らない。



いかなる時もロンリーで行動する原刑事、合格です。

面倒だから詳細は省くけど、この事件にいくつか不自然な点があることに気づいた原は、再び勝手に現場を離れて独自の捜査を進めるのでした。

で、しばらく膠着状態が続くんだけど、女性店員の寺田(上原ゆかり)がセクシーな太腿をチラ見せしながら店を脱出し、ようやく事態が動き出します。



寺田の証言により店内の様子が分かってくるんだけど、原はどうやら彼女を信じてない。



そしてもう1人、人質にされてた客の森岡(加藤大樹)が、犯人の要求を伝えるため解放されます。



原は即座に森岡の身辺も洗いだし、とある情報を掴んだ上で、またもや勝手に1人で宝石店へと突入!



ところが店内にいたのは拘束された人質たちだけ。

そう、原は独自の捜査により、脱出した女性店員の寺田と、客の森岡がチョメチョメな関係であることを突き止めた。つまり、その2人こそが犯人だった!

原がムチャな突入を決行したお陰で、寺田の身柄はギリギリ押さえたものの、主犯と思われる森岡はまんまと逃走。



初めて原と覆面車で2人きりになったドックが、もっともな疑問を彼にぶつけます。

「なんでもっと早く言わなかったんだ?」

「確信が無かったんです」

「60%の確率でも突っ込むんじゃなかったのか?」

「60%でもオレはやります。けど100%になるまで、他人には言いません」

「…………」

この「確率」にこだわったセリフのやり取り(予告編でも使ってた)がカッコいいかどうか私には判んないけどw、なんとなく合格です!



で、結婚詐欺まがいの手口で自分も騙されてたことを知った寺田が口を割り、森岡の居場所もすんなり判明。

後に三田村邦彦+渡辺徹+神田正輝の頭文字で「ミワカントリオ」なんて女性誌で呼ばれる男前3人が、ここで初めてスリーショットを披露!



逃げたところでどうにもならんのに、とにかく「走るドラマ」の慣例に倣って森岡も逃走!



ここでも原は単独で別ルートを廻り、みごと森岡を挟み打ちにします。が、しぶとい森岡はちっとも諦めない!



「動くな! こいつを撃ち殺すぞ!」



「撃つなら、撃て」

原は表情ひとつ変えず、まるで「早く殺してくれ」と言わんばかりに森岡の銃口に向かい、まっすぐ歩いていく!

「くっ、来るなあーっ!!」



素早くしゃがみながらの抜き撃ちをスローモーションで捉えたこのショットも、カッコいいのかどうかイマイチ微妙なんだけどw、優等生ばかり揃った(つまり面白味が薄い)今の七曲署捜査一係には、こういうクレイジーな刑事がいないとダメなんです。大合格!



「お前! そりゃ射撃についちゃかなりの腕だってことは認める! しかしお前、やることがムチャだっ!」



「手錠、お願いします」



このクールさ、クレイジーさ、そしてロンリーウルフぶりを、私は最後まで貫いて欲しかった!

こんな調子ゆえに幾多の所轄署で厄介払いされ、転勤を繰り返して来たから「ジプシー(ヨーロッパの放浪民族)」とドックに命名される原刑事は、過去の記事でさんざん書いて来たとおり、あっという間に藤堂チームに馴染むばかりか、あの殿下(小野寺 昭)も顔負けの「ダンディーで優しい」刑事に変貌しちゃいます。不合格!

1年後の降板時までじっくりと、その過程が描かれたなら誰も文句は言わないけど、登場篇でこれほどクレイジーさを強調しといて、ほんの2〜3週で優等生に成り下がっちゃうもんだから、リアルタイムで観てた当時(まだ高校生)の私は「なに、それ?」「なんで?」の繰り返しでした。

けど、すっかりトシを食い、社会のしがらみや芸能界のからくりを知っちゃった今の私には、なんとなく理解できる。注目度の高い番組だからこそ色々言われるけど、連ドラでこの程度の「キャラ変」は珍しくもなく、ビジネスである以上は仕方ない事なんだと。



今回のラストシーンで、なぜ原刑事があんなクレイジーな人になっちゃったか、その理由を山さん(露口 茂)がセクシーに解説してくれます。

数年前に左胸を撃たれて生死をさまよう重傷を負った原は、だけど心臓はおろか全ての内臓が左右あべこべという特異体質だったお陰で、九死に一生を得た。

しかし左の肺は機能を失い、「片肺」という大きなハンデを背負った彼は、残りの人生を「おまけ」だと考えてる。だからニヒルでクレイジーなんだと、まあ当時も「解ったような解らんような」空気だったけどw、とにかく凝りに凝った設定なんですね。

恐らくそこに、制作現場よりも上のポジションにいる人たち(つまり放映局のお偉方やスポンサー、あるいは三田村さんの所属事務所あたり)からクレームがついたんでしょう。「荒唐無稽すぎる!」「イメージが鬱すぎる!」「そんなの女性ファンは求めてないよ!」って。

沖雅也さんの降板決定→三田村さんの起用はかなりハイスピードで、悪く言えばバタバタの状況下で進んだらしいから、もしかすると登場篇の仕上がり(試写)を観るまで、その偉い人たちは上記の設定を知らなかったかも知れない。

それで「なんだこれは!?」って話になり、すぐさまジプシー刑事は「キャラ変」を余儀なくされ、「片肺」設定も無かったことにされちゃった。かろうじて「右胸心」設定が1回だけ生かされた以外、ジプシーはふつうに元気いっぱいで走り回ってますからw

過去にも殿下や山さん、前任者のスコッチだって緩やかに「キャラ変」して来たけど、ジプシーほど急激に(それも登場してすぐ=視聴者からの反応を待たずに)変わっちゃった例はなく、裏でそういうドタバタがあったとしか思えません。

結果的に「ミワカントリオ」が視聴率アップに貢献しますから、番組としては大成功だったワケだし、そもそもネアカな三田村さんに初期スコッチのハードさを求めること自体、ちょっと無理があったんでしょう。最初から殿下キャラにしときゃ良かった!

だからこれは、最初で最後の「スコッチを凌ぐハードな刑事ジプシー」が観られる、とても貴重なエピソードと言えます。合格!



ゲストの上原ゆかりさんは、4歳時から子役として活躍されて来た若きベテラン女優。明治製菓「マーブルチョコレート」のイメージキャラクターとしてCMにも出てられたから、昭和世代なら誰もがそのお顔を見てるはず。

刑事ドラマは『太陽にほえろ!』に合計3回のほか、『特捜最前線』と『刑事物語’85』にそれぞれ1回ずつゲスト出演されてます。


 

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『太陽にほえろ!』#491

2023-09-02 16:01:23 | 刑事ドラマ'80年代

さて、七曲署「激動の1982年」の幕開けです。

その先陣を切る「スコッチ病死」は(いろんな意味でつらいから)無かったことにして、シレッと「ジプシー刑事登場」までジャンプしようかとも思ったけど、合間にこのエピソードが挟まってた! これを外すワケにはいきません。

西條刑事=ドック(神田正輝)のパートナーになりそうでならない女性キャラは何人かいたけど、中でも今回登場する外科医=白石良子(岡まゆみ)は群を抜く好感度で、おそらく女性ファンから見ても「お似合いのカップル」と認めざるを得なかったはず。

とはいえ、レビューする理由はそれだけじゃありません。七曲署に来て1年が過ぎ、初めて「この仕事ってどうなの?」「オレに向いてるの?」っていう、大きな壁にぶつかって悩むドックの心情が、介護職員になって3ヶ月経った今の私自身とめちゃくちゃリンクしてる!

このエピソードを観るのは多分4度目ぐらいだけど、今回ほど感情移入できたのは初めて。もちろん、自分が神田さんに似てるなんて勘違いするほどバカじゃない私だけど、ハリソン・フォードとは瓜二つです。




☆第491話『ドックのうわごと』(1982.1.15.OA/脚本=奥村俊男&小川 英/監督=児玉 進)

今回は冒頭からいきなりカーチェイス&GUNアクション! ドックが銀行強盗犯を川原に追い詰め、鉄橋の下で撃ち合います。



結局、ロッキー(木之元 亮)とラガー(渡辺 徹)も駆けつけて犯人はあっさり逮捕されるんだけど、自分が重大な見落としを冒した事実に気づいて、ドックは愕然とします。



すぐ後方で2人のガキンチョが無邪気に遊んでいた!

鉄橋を走る電車の轟音で声が聴こえなかったとはいえ、もし犯人の弾丸が彼らに当たっていたら……

今更ながら、自分がとんでもなく重い責任を負ってること、そういう仕事を選んでしまったことを、あらためて痛感するドック刑事なのでした。



さて、先の銃撃戦で負傷した犯人の容態を伺うため、警察病院を訪れたドックは、医大時代に親しかった同期生=白石良子と再会することになります。



明るい性格の良子さんは、いかにもドックと気が合いそう。

演じる岡まゆみさんも華があるし演技力もバッチリで、結婚までは行かずとも「ドックの恋人」としてセミレギュラー入りされるだろうって、多くの視聴者が当時思ったことでしょう。



それはともかく、ドックはせっかく入った医大を中退して警察官になったという変わり種。順当に卒業して外科医となった良子さんとは対照的な存在と言えます。

「どう、刑事になって満足?」

「うん、まあね。キミは?」

「…………」



意外にも、良子さんは表情を曇らせます。

「女が外科で生きていくっていうのは大変よ。ここに来てまだ半年だけど、正直言って疲れた……ふと、どこかに逃げ出したくなる時があるの」

「逃げ出す?」

「どうしてこんな事やってるんだろうって思うの。もっとラクで楽しい仕事だってあるじゃないかって」

「…………」



「西條さん、そんな風に思うことってある?」

「……うん、あるよ……ある。オレだって、そう思う時あるよ」

オレもある! 介護職に就いてから、毎日のようにそう思ってます。むしろドックより近い業界で働く良子さんに共感しちゃう。なんでよりによって、こんなハードな仕事をわざわざ選んだ!?(ブログが更新できない!💨)

「私、結婚でもしてみようかしら。もらってくれる? 西條さん」

「いいよ! けど、まずは1発試してからだ♪」

↑なんて返事を良子さんが望んだかどうか知る由もないけど、超がつく紳士集団「七曲署捜査一係」にうっかり着任しちゃったドックはそんなこと絶対に言えません。

「よせよ、危なく本気にするところだった」

「うふふ……」

超つまんないw 西條くんはやはり就職先を間違えたようです。



さて、七曲署管内で派出所の警官が襲撃され、拳銃を奪われる事件が発生し、凶器の鉄パイプに残った指紋から、犯人は栗山という覚醒剤中毒者だと判明します。

「栗山が?」

ドックとゴリさん(竜 雷太)が反応します。

1年前、ライフルを持った強盗犯をゴリさんが追跡し、銃撃戦の末に逮捕したんだけど、犯人の放った弾丸が運悪く通行人に命中し、その人は亡くなってしまった。

冒頭シーンにおけるドックとよく似たシチュエーションで、一歩間違えばこうなるという最悪のケース。

で、犠牲者は杉村という麻薬中毒者専門の保護司で、身寄りの無い栗山にとって心の拠り所だった人。

「栗山が拳銃を奪った目的は1つしか無い。オレを殺すことだ」

つまり、逆恨みと言うよりは八つ当たりに近い、ゴリさんへの復讐。



栗山を捜索すべくゴリさんが出て行ったあと、そのいきさつを初めて聞いた新米のラガーが喚きます。

「そんなのメチャクチャですよ! 恨むなら発砲した犯人を恨めってんだ! ドックもそう思うでしょう!?」



「当たり前なこと聞くな! こっちだって命懸けで働いてるんだ。犯人の撃った弾にまで責任持てるか!」

やたらめったら熱くなるラガーを普段は軽くあしらうドックなのに、今回は様子がおかしい。あの太地喜和子さんをメロメロにさせた山さん(露口 茂)の鋭い眼がセクシービームを放ちます。



「少なくともゴリさんが、この件でずっと苦しんで来たことだけは間違いない」

「山さん……セクシーです」

実際、露口茂さんは「こういう仕草に女性は色気を感じるんだよ」って、バリバリに「セクシー」を意識されてたそうですw

メインスタッフからも「あれほどのナルシストは見たことない」との証言が出てますw だからみんな山さんが大好きなんですよ!(いやホントに)



閑話休題。とにかくゴリさんが殺られる前に栗山を見つけるべく、覆面車に乗り込もうとしたドックを、その栗山の凶弾が襲います。



まさに危機一髪! 弾丸はドックの額をかすめ、命に別状は無いものの脳震盪を起こしたドックは、そのまま気を失うのでした。

「栗山は一係の人間を手当たり次第に狙うつもりだ!」



「ボス、ヤツは殺らなきゃ自分が殺られると思ってるんです! 危険です!」

いつぞやこのブログでご紹介した、鴻上尚史さんがエッセイに書かれてる「戦争が無くならない理由」がまさにそれ。殺らなきゃ殺られるという被害妄想。関東大震災の直後に起きた集団リンチ殺人もまさにソレでしょう。

再び閑話休題。川原での銃撃戦でガキンチョに弾丸が命中しちゃう悪夢を見たドックが目覚めると、そこは警察病院のベッドの上。そして傍らには白衣姿の良子さん。



「ずっといてくれたの?」

「うん。うなされてたみたい」



「……オレ、うわごとか何か言った?」



「……ううん、何も」

良子さんの返事に一瞬の間があったのは、きっと嘘をついてるから。悪夢を見ながらも良子さんの香りに反応したドックは、どうせ「揉ませろ」とか「しゃぶらせろ」とか言ったに違いありません。

しかしAVじゃあるまいし病室でチョメチョメは無理だから、仕方なくドックは刑事部屋へ戻り、復帰はしたけど出番が激減中のボス(石原裕次郎)に、ゴリさんを捜査から外すよう提言します。



「お前がゴリの立場だったらどうする? 手を引くか?」

「あれはゴリさんのミスじゃありません!」

「お前だったらどうするかと聞いてるんだ。手を引くか?」

「……引きます!」

「オレはそうは思わんぞ」



「手を引きますよオレは。絶対に引きます!」

「もういい。捜査を続けろ」

納得できないままドックは、亡くなった杉村保護司の墓へと向かいます。案の定、そこにはゴリさんが墓参りではなく、栗山を誘い出すために佇んでました。

「ボスに、自分なら手を引くと言いました。ボスは引かんだろうと言いました。そう言われると、そんなような気もします」

「…………」

すっかり二枚目モードに入ったゴリさんは、何も答えてくれません。



「でもオレ、解んないんです。これだけはどうしても解りません。ゴリさん、一体なにが良くて、なにが楽しくて刑事やってるんですか?」

「?」

ここで初めて、ゴリさんがドックに顔を向けました。

「ゴリさん!」

「そんな話は後だ」

それだけ言って再び捜査へと歩き出す、無口なゴリさんが二枚目にも程があります。

ゴリさんに限らずだけど、肝心なことは必ず事件が終わってから言うんですよね、二枚目のパイセンは。先に教えてくれた方が、後輩もムダな動きをしないで済むのにっていつも思うけど、まぁコレが昭和イズムってヤツです。男は黙ってサッポロビールなんです。

けど、’80年代の申し子として生まれたようなドックに、三船敏郎のマネはとても出来ません。

「疲れてるみたいね」



重い足取りでアパートに帰ってきたドックを、なんと、買い物袋を抱えた良子さんが待ってくれてました。

「……うん、少し」

そこで「そんなことないよ! 今すぐ部屋に上がって1発試そうぜ!」とは決して言わないドックも、実はやっぱり三船敏郎なんですよね。(それ誰?とかぬかすトボけた御人は今すぐ私のエアフォースから飛び降りて下さい)

「病院で、うわごと言ってなかったか?って聞いたわね」

「うん」



「言ったのよ、本当は。助けてくれって」

「!」

警察病院に務めてる良子さんだからこそ、刑事がいかにハードで危険な仕事であるか、なにも言わずとも解ってくれる。

「辞めたくなるのが普通よ」

「オレ……気に入ってたんだよね、この仕事。なぜか解んないけど、好きだった」

「…………」

「思ってみたことも無かった……オレ、怖いんだよ。向いてないのかも知れない」

「…………」

私自身も毎日そう思ってます。性格的にも体格的にも、介護職に向いてるかと言えば明らかに向いてない。

けど、100%向いてる人なんているのか? 実はみんな「自分は向いてないかも?」って思いながらやってるのかも知れない。どんな職種であれ。



三度目の閑話休題。栗山の足取りが掴めず、捜査に行き詰まった七曲署捜査一係になんと、療養中のスコッチ(沖 雅也)から電話が掛かって来ました。

1年前は元気バリバリで、例の事件も一緒に捜査してたスコッチは、栗山が潜伏しそうな場所を知っていた。それをゴリさんに尋ねられ、つい教えてしまったと言います。

「山さん。私がゴリさんなら、やはり自分で栗山の拳銃の前に立ちたい。結果がどうなろうと」



「……分かった。スコッチ、お前もカラダ大事にしろ。大事にな」

この次の回にもゲスト出演したスコッチは、そのまた次の回で吐血し、病死しちゃうのでした。



さて、すぐさま覆面車をかっ飛ばして現場に向かうドックたちですが……



時すでに遅く、栗山と相撃ちになったゴリさんは腹に銃弾を浴びてしまいました。



が、病死を控えたスコッチを差し置いて死ぬワケにもいかず、命に別状はなし。

そして栗山も軽傷で済み、麻薬患者の療養所に戻されると聞いて、ゴリさんは救急車で搬送されながら「よかった……」とつぶやきます。



「よかった? ひとつ間違えばゴリさんは死んでいたんですよ? 自分のミスでもないのに、なぜそこまで?」

「ドック。ミスであろうとなかろうと、杉村さんはあの事件で死んだんだ。オレの担当した事件で、罪のない1人の人間が死んだんだ。それはやっぱり、オレの責任なんだよ」

「…………」

「オレは、誰にも死んで欲しくないんだよ。誰にもな。そういう気持ちが無かったら、オレは1日でもデカやってらんないよ」

「…………」



「ドック、お前だって本当はそう思ってる筈だ。そうじゃなきゃ、お前なんで、医大を途中で辞めてまで、デカになったりしたんだ?」



「……ゴリさん」

そうですよね。肝心なのは、自分がその仕事を選んだときの気持ちであり、向いてるかどうかは関係ない。

私の場合、元より介護職は向いてないと自覚してたから、先方(今の職場)から誘われてもお断りしたのに、それでもなお食い下がってくれたことに感動して、つまり「誰かに必要とされてること」が無性に嬉しくて、つい「じゃあ、やってみます」って言っちゃった。

その職場があまりに人手不足で「猫の手も借りたい」状態なのは予測してたし、実際入ったら想像を超える不足ぶりなんだけどw、足りなければ足りないほど強く「必要とされる」ワケで、それがしんどくても辞めないモチベーションになってます。

だから今後、なんでオレはこんなハードな仕事してんだ?ってまた思ったら、その原点に立ち還ればいい。今回のドックみたいに。

「オレ、やっぱり刑事続けることにしたわ。自分で選んだ仕事だもんな」



「オレだって今に、ゴリさんみたいに……いや、世界一の刑事になってやるよ」

「西條さんにそれが出来るなら、私もなれるかな? 立派な外科の女医に」

「ま、ムリだろうな」

「まあ!」



これで良子さんも初心に戻ったことでしょう。

ほんと理想的なカップルだと思うのに、良子さんは第536話『死因』に再登場するだけでドックと1発試したかどうか不明のまま、フェードアウトしちゃいました。

沢口靖子パターン(演じる人が売れ過ぎたから)なのか、あるいは浅野ゆう子パターン(女性視聴者からのバッシングを避けるため)なのか知る由もないけど、少なくともこの第491話は2人をくっつける前提で創られたとしか思えません。



’76年のTBSポーラテレビ小説『絹の家』で主演デビューされ、『赤いシリーズ』など大映ドラマの常連として活躍しつつ、キッズ向け教養番組『まんがはじめて物語』で2代目お姉さん役を長年務められた岡まゆみさん。

刑事ドラマも大映の『夜明けの刑事』第99話ゲストや『秘密のデカちゃん』レギュラー出演のほか、『Gメン'75』最終回と『Gメン'82』初回ゲスト、『ララバイ刑事'92』レギュラー、『はぐれ刑事純情派』シリーズにゲスト出演5回、さらに『ハンチョウ』『相棒』『警視庁・捜査一課長』『刑事7人』『記憶捜査』等々、現在に至るまで数多く出演されてます。が、残念ながらセクシーショットはありません。


 

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『さすらい刑事旅情編 II 』#06

2023-05-15 16:10:06 | 刑事ドラマ'80年代

これでもか!と言わんばかりに偶然が重なりまくる「ご都合主義」の極致みたいなドラマだけど、ゲストがいつも華やかだし、宇津井健さんは折り目正しいしで、このブログにとってはネタの宝庫かも知れません。

それと今回は、主役のリーゼント刑事と美人刑事にいわゆる「恋愛フラグ」とやらが立つターニングポイント的なお話だったりもします。そこは心底どーでもいいんだけどw



☆第6話『特急ひたち・送られてきた婚約指輪』(1989.11.15.OA/脚本=篠崎 好/監督=天野利彦)

鉄道警察隊の美人刑事=西園寺(高木美保)宛てに差出人不明の郵便が届き、封を開けたら驚いた!

入ってたのは手紙ではなく、福島県の湯本温泉行き特急「スーパーひたち号」の乗車券と、エンゲージリングと思わしき指輪だった!



しかし今の西園寺にそんな相手(つまり毎晩チョメチョメするパートナー)はおらず、かと言ってイタズラにしては手が込んでるって事で、よく調べてみたら指輪からルミノール反応(血痕)が検出された!

事件の匂いがプンプンしてきたもんで無視するワケにいかず、同封された切符を使って西園寺がスーパーひたち3号に乗り込み、護衛役としてリーゼント(三浦洋一)とシブがき隊(布川敏和)も同乗するのでした。



その道中、西園寺は相席となった年配夫婦(高原駿雄、小畠絹子)とすっかり仲良しに。



一方、シブがき隊は旅行中の女子大生たち=圭子(黛まどか)、みどり(森山祐子)、妙子(湯浅けい子)を見つけるやジャニーズ特権を振りかざし、速攻でナンパします。不愉快という感想しかありません。



しかしこの番組、毎回のように女子大生が出て来ますね!(で、だいたい湯浅けい子さんが混じってるw)

もちろん何の意味もなく出てきたワケじゃなく、そこから事件が生まれるシステムになってる。途中の日立駅で弁当を買いに出た圭子が、なぜか発車時間になっても戻って来ない!

仕方なく残りの2人とシブがき隊が途中下車し、先行するリーゼントたちとは湯本で落ち合うことに。



で、先に湯本に着いた西園寺は、相席した年配夫婦からの「よければ温泉も一緒に」っていう誘いを丁重にお断りしたお陰で、リーゼントと二人きりになっちゃう。

「あんなふうに夫婦一緒に歳を取れるなんて、ステキよね」

「う、うん……💦」

唐突に異性を意識し始めるリーゼントの反応が、いかにも取って付けた「作劇上の都合」を感じさせますw どうせ「やっぱ視聴率を稼ぐにはロマンスが必要だよね」って、制作会議で急きょ決まったんでしょう。



で、次の便で湯本に着いた女子大生=みどり&妙子は、駅前トイレの裏から飛び出して来た圭子と再会することに。そこにはなんと、彼女らが通ってる大学のイケメン助教授=早見の他殺死体が転がっていた!



当然、地元の刑事たちは圭子をハナから疑ってかかります。作劇上の都合です。

けど、サスペンスドラマの法則(いかにも怪しく見える容疑者は100%シロ)を熟知するリーゼントは、まず殺された早見助教授の身辺を徹底的に捜査し、東京で折り目正しく待ち構える高杉警部(宇津井 健)に報告します。



圭子は確かに、早見助教授とちょくちょくチョメチョメするチュクチュクな関係で、痴情のもつれがあったんだけど、それは彼女に限ったことではなく、早見は教え子に片っ端から手を出すシブがき隊も真っ青なスケコマシで、それを苦にして自殺した生徒までいる!

おまけに、実はみどりと妙子も早見にコマされ、同じように捨てられた被害者だった! いくら何でも「んなヤツはおらんやろう」けど、この番組の世界にはおるんやから仕方がない! 大霊界はあるんだから仕方がない!

つまり、シブがき隊の引っ掛けた女子大生3人が、共謀して早見を殺した可能性も浮上したワケで、リーゼントと西園寺があたらめて尋問するんだけど……



どうしても彼女らに人が殺せるとは思えない。どころか、女子大生と接してるうちに西園寺も、大学時代にイケメン助教授に憧れた自身の過去を想いだし、急に乙女な感じになっちゃいます。作劇上の都合です。



で、その憧れの助教授が人妻と不倫し、心中したという凄まじい過去も唐突に思い出しちゃう。そんな強烈な出来事をふだん忘れてるのが何より凄いけど、これも作劇上の都合だから仕方ない。

そこでリーゼントが気づくワケです。そう言えば早見助教授に捨てられた生徒の中に、自殺した子がいる!

調べてみると、その子の兄が湯本温泉で働いてた!w そう、あの日、懲りずに駅前で圭子と痴話喧嘩してるスケコマ助教授を「偶然」見かけた彼が、死んだ妹の無念を晴らすために殺したのでした。



こういう時、犯人が必ず「画になる名所」に逃げ込むのもサスペンスドラマの鉄則で、作劇上の都合。



というワケで一件落着。女子大生たちの容疑が晴れて、高杉警部も笑ってます。何がそんなに可笑しいっ!?

だけど、そうなると、西園寺刑事に送られて来た、あの婚約指輪はいったい何だったのか?

実は、その送り主は、スーパーひたち号で彼女と仲良くなった、あの年配夫婦だった! それまでに会った記憶は無いのに、なぜ?



実は、夫婦は数ヶ月前に西園寺と同じ「さやか」という名前の一人娘を事故で亡くしており、結婚間近だったその娘は婚約指輪を握りしめて息絶えた。だから血液反応が出たワケです。

で、たまたま東京駅でシブがき隊に「さやかさん」と呼ばれる西園寺を見かけ、そのときの会話で彼女の休日を知り、ダメ元で切符と指輪を送ってみた。つかの間でも親子気分を味わいたくて……

こうして書くとホントめちゃくちゃな話だけどw、それを雰囲気だけでイイ話っぽく見せちゃうのが人情系ドラマの方程式。視聴者がどんどん馬鹿になってく所以ですw



メインゲスト(圭子役)の黛まどかさんは、現代俳句の世界じゃ名の知れた女流俳人で、ウィキペディア情報だと女優のお仕事は大河ドラマ『武田信玄』と本作のみ。たいへん貴重なんだけど残念ながらセクシーショットは残されてません。

だから今回は二番手ゲストの森山祐子さんをクローズアップ。本格的なドラマ出演は今回が初で、2年後にSFアクション物のVシネマ『ゼイラム』シリーズで主役を張り、注目されることになります。

2004年に発表された写真集がどうやら芸能界における最後のお仕事だったらしく、その素晴らしいセクシーショットを無断で掲載させて頂きます。


 

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