バキュン!バキューン!ズガガガガガ!キキーッ!ドッカーン!ブロロロロロ!ドンガラガッシャーン! 団長!オキ!ポッポ!ドッカーン!! 日産!オートバックス!ドッカーン!! 大門くぅ~ん!ドッカーン!!
↑ と、いうような作品ですw 言わずと知れた石原プロモーション製作による『西部警察』の続編で、1982年5月から’83年の3月まで全40話が放映されました。
同じ年にスタートした刑事ドラマは他にTBS系列の『Gメン'82』ぐらいしか見当たらず、それも視聴率が振るわず短命に終わってますから、アクション系刑事ドラマの狂ったようなブームは、残念ながら確実に収束しつつありました。
そんな中で唯一『西部警察』だけは、ますます元気にパワーアップ。この第2シリーズの目玉は何と言っても、新加入の中堅刑事=沖田五郎(通称オキ)を演じる、三浦友和さんのキャストインでした。
あの当時の友和さんはまだ「甘いマスクの二枚目俳優」として、又それ以上に「百恵ちゃんの旦那さん」として世間には認知されてました。
だから『西部警察』への参加には意外性があり話題を呼んだし、私も驚くと同時に「これはきっと面白くなるぞ」っていう予感がして大いに期待も抱きました。
そうして始まった『西部警察 PART II 』は、みごと期待に応えてくれたと思います。友和さん演じる沖田刑事は、本庁勤めの超エリートだったにも関わらす、なぜか自ら降格を申し出て西部署「大門軍団」入りを志願したという、謎めいた男として登場しました。
で、回を追う毎に少しずつその正体が判って行く。かつて籠城事件で人質救出に失敗した沖田は、背中に銃弾を受けて瀕死の重傷を負った上、体内に残った弾丸が摘出不可能と判明。その鉛毒により、余命が半年から1年であると医師から宣告されてたのでした。
だから残り僅かな生命を、世界一デンジャラスな街=西部署管内を守る大門軍団で燃やし尽くす決意をしたという、B級活劇を自認する『西部警察』にしては異色とも言えるドラマチックな設定が、沖田には与えられてたんですね。
だから友和さんは、長くても1年間限定の出演である事が最初から判ってたワケで、そのスペシャル感は半年限定で『太陽にほえろ!』に登場したスコッチ刑事(沖 雅也)を彷彿させてくれました。
その『太陽』スコッチ編(’76年)は、過去の不幸な事件によって心を閉ざしてしまった繊細な男が、七曲署という西部署以上にデンジャラスな(何しろ殉職者がやたら多いw)場所で立ち直っていく復活のドラマでしたが、沖田編は逆に滅びの美学なんですね。
だから『PART II 』はとりわけ見応えがありました。(沖田の最期が描かれたのは『PART III 』の序盤でしたが)
大門団長(渡 哲也)に負けじと頭髪をワイルドな角刈りにし、44マグナムのPPCカスタムというバカでかい拳銃を片手に、殴る蹴るの暴力を振るいまくる友和さんは、見事イメージチェンジにも成功されたように思います。格好良かったですよホントに。
大門軍団のメンバーは他に、大動脈癌の大手術から生還されたばかりの石原裕次郎=木暮課長を筆頭に、ハト(館ひろし)、イッペイ(峰 竜太)、ジョー(御木 裕)、おやっさん(井上昭文)、そして「大門くぅ~ん!」の二宮係長(庄司永健)。
知らない内にゲン(苅谷俊介)と初代おやっさん(藤岡重慶)がいなくなり、団長の妹=明子の容姿がすっかり変貌(古手川祐子から登 亜樹子にバトンタッチ)、仕事も漫画家から保母さんに転職し、収入が減ったせいか兄妹の住居もバブリーなマンションから安アパートに変わってました。
刑事達がオフ時に溜まるスナックも、ナイスミドル佐原健二さんの渋いお店から、木暮課長と曰わくありげな色っぽいママ(吉行和子)の店に変わりました。それらの変更に関する説明は一切なく、ある種のパラレルワールドと解釈するしか無いんですよね。
『大都会』シリーズでも『PART II 』は松田優作さんの起用を目玉にしつつ、急に渡さんが暴力刑事に豹変したり裕次郎さんも新聞記者から医者に転職しましたから、同じ方法論を意図的に再現したのかも知れません。
係長役が途中で庄司さんから高城淳一さんにバトンタッチされたのも、『大都会』シリーズの課長交代制度を継承したものと思われます。二宮係長は刑事からお弁当屋さんに転職されました。(庄司さんは殉職を希望したけど却下されたそうですw)
更に大きな変更となったのが、テーマ音楽です。宇都宮安重さん作曲による軽快なマーチから、羽田健太郎さん作曲によるシリアスな曲調に変更されたオープニングテーマは、番組のイメージをも大きく変えたかも知れません。
『西部』ファンには旧テーマを支持する人が多いみたいだけど、私は新テーマの方が刑事物らしくて好きでした。スーパーマシンも台数が増え、いよいよ戦隊ヒーローみたいになって来た大門軍団には、壮大でヒロイックな新テーマの方がよく似合ってると思います。
犯人……と言うより戦争の相手も、そのへんのヤクザから武装テロ軍団みたいな連中にスケールアップして、爆破する乗り物や建造物もどんどん大きくなって行きました。
広島では路面電車を、福岡では漁船を爆破するなど「全国縦断ロケシリーズ」と称し、日本中のありとあらゆる建造物を破壊して回った挙げ句、名古屋で化学工場の巨大煙突を倒壊させるに至っては、社長である裕次郎さんが「そんなもん壊して一体なにが面白いんだ!?」と激怒されたんだそうですw
だけど、この全国縦断ロケが『西部警察』という番組を更にメジャー化させたのは間違いないし、実際観たら面白いですからね!
話の内容がどんどん『007』みたいになって、ミサイルの打ち上げを阻止したり、最近CATVで観た回(『PART III』だったかも?)では遂に核爆弾まで登場してました。
で、その核爆弾が仕掛けられた場所ってのが、コンサート会場のすぐそばにある給水タンクの中で、駆けつけた大門軍団が時限起爆装置を解除しようとするんだけど、なかなかうまく行かない。
コンサート会場では今まさに人気ミュージシャンのライブ中で、満場の観客達が異変に気づいて、ザワザワし始めちゃうワケです。このままではパニックが起こってしまうかも知れない!
焦った団長は、顔面蒼白になりながら鳩村刑事にこう怒鳴りました。
「ハト! 何とかしろっ!!」
「ええっ!? ……わ、分かりました! 何とかします!」
あまりのムチャ振りに一瞬固まっちゃった鳩村ですが、世界一厳しい縦社会の大門軍団において、団長の命令だけは死んでも遂行しなくてはいけないのです。
さて、鳩村刑事は何千人もの群衆を相手に、その騒ぎを如何にして治めたのか? なんと彼は、ライブのステージに乱入するや歌手からマイクを奪い取り、館ひろし&クールスの持ち歌をいきなり唄い始めるのでしたw
見ず知らずの警察官がいきなりライブを乗っ取ったりしたら、みんな怒って余計にパニックになるんじゃないの?と思いきや、なんと驚くべき事に観客は大喜び!
群集が鳩村刑事の歌にノリノリで酔いしれてる間に、団長は起爆装置の解除を無事、成功させるのでした。いやぁ良かった良かった。どうなる事かと思いましたw
恐らく観客は、鳩村刑事がたまたま館ひろしソックリだったもんで、本人がサプライズゲストで登場したんだと思い込んだのでしょう。バックミュージシャン達も、たまたま館ひろしの仲間だったに違いありません。
いくら昭和の時代とは言え、あの団長のムチャ振りと鳩村の機転の利かせ方には、視聴者も感心するより先に大爆笑だった事でしょうw
これも恐らく、タイアップ戦略の一環なんですよね。とにかく出演スター達にロケ先の地元民へのサービスを徹底させる事で、撮影への全面協力を得る。
どんな番組でも地方ロケでは、名所や地元企業の看板を映すなどのタイアップは欠かせないんだけど、特に『西部警察』の場合はロケにお金が掛かるし爆破の許可なんかも取らなくちゃいけないから、ハンパない営業活動が必要だったワケです。
だから劇中に必ず各地の日産やオートバックス(スポンサーですね)の支店が出て来て、そこの社長さんとかが渡さんや裕次郎さん相手に棒読み台詞を披露するのがw、地方ロケのお約束にもなってました。
そういった交渉術は石原プロの番頭さん=小林専務の独壇場だったそうで、だからこそあれだけド派手な破壊活動が可能になったワケです。
そういった撮影がもはや東京都内では不可能(許可が下りない)になりつつあった事も、全国縦断ロケを敢行する大きな要因だったみたいです。現在では恐らく、国内のどこへ行ってもあんな撮影は不可能だろうと思います。
だから当時よりも今こそ、この『西部警察』という作品には一見の価値があります。ぜひ皆さんにも見直して頂きたいです。『大激闘』と違って一応人間ドラマもあるし、レギュラーキャストの顔も怖くないですからw