ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『私鉄沿線97分署』#01

2018-12-29 12:00:09 | 刑事ドラマ'80年代









 
☆第1話『プレハブだからSOS!!』

(1984.10.28.OA/脚本=峯尾基三/監督=野田幸男)

新庁舎設立の為、プレハブの仮庁舎に勤務する第97分署の刑事たち。初回は、前週『西部警察PART III』最終回で死んだばっかりの渡 哲也さんがw、新任の検視官として登場する場面からスタートします。

その出勤途中で愛車がオーバーヒートを起こすんだけど、オタオタするばかりで何も出来ない渡さん=榊検視官。で、そこに通り掛かった97分署の若手刑事=片山(時任三郎)に助けてもらうという、完全無欠のスーパー団長=大門くぅ~ん!とは全く違う地味な普通人である事が、冒頭から強調されてます。

地味なのはキャラクターだけでなく、扱う事件も地味そのもの。ファーストエピソードの発端は、スーパーで小学生の男子が起こした万引き事件。

現実でも所轄署が単独で捜査するのはこういった軽犯罪ばかりだそうで、このドラマがリアリティにもこだわってる事がよく分かります。毎回マシンガンやロケットランチャーを撃ちまくるテロ集団と戦ってた、前週までの所轄署とはえらい違いですw

で、万引きした少年の家庭を調べたら、母親は1年前に育児放棄して家出しており、唯一の肉親である父親も3日前から帰宅してない。独りぼっちで食糧も底を尽き、空腹に耐えかねて少年は林檎を盗んだワケです。

やがて、管轄外の場所で発見された遺体が、その少年の父親である事が判明します。同情した片山は、とりあえず少年をプレハブ庁舎に連れて来て保護するんだけど、そこに別の事件で連行されて来たチンピラが、警官の拳銃を奪って大暴れ!

チンピラは取り押さえたものの、巻き込まれた少年が負傷しちゃう。ほんの軽い怪我なのに出血が止まらず、医師免許を持つ榊検視官が診断してみたら、少年は止血出来ない病気である上に、特殊な血液型である為にすぐ輸血出来ない事が判明!

少年の生命を救うには、同じ血液型の母親を連れて来るしかない。かくして、行方不明の母親を必死で捜索する97分署の刑事たち。

果たして、刑事たちは母親を見つけ出すことが出来るのか? 見つかったとしても、息子を見捨てた母親が輸血に応じるのか? 少年の運命や如何に!?

……まぁ、なにしろ、松山千春さんの歌声で始まるドラマです。人情ドラマなんです。ヒューマニズムでハートフルなんです。結末は言うまでもありませんw

当時も今も、私はお涙頂戴がチョー苦手なんだけど、たかが林檎1個の万引き事件が、あれよあれよと生死を賭けたサスペンスに発展していく作劇は、なかなか見事だし面白いと思います。かなり強引な展開ではあるけどもw

そうしたユニークなコンセプトと、人気上昇中だった時任三郎、鹿賀丈史、小西博之、坂口良子、早見 優ら豪華レギュラー俳優陣。地味な内容ながらも人気番組になった理由が、この第1話を観るとよく解ります。
 
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『私鉄沿線97分署』1984~1986

2018-12-29 00:00:13 | 刑事ドラマ HISTORY






 
1984年の10月から’86年の9月まで全90話が放映された、日曜夜8時テレビ朝日系列、つまり『西部警察 PART III』の後番組です。

だけど製作は石原プロモーションではなく国際放映で、ドンパチ・アクションは一切無しの人情系刑事ドラマという、およそ『西部警察』とは180度も趣が違う番組になってました。

東京都多摩地域西部にあるとされる「多摩川市」のニュータウン「田園プラザ」という架空の町が舞台で、庁舎新設のためプレハブの仮庁舎に勤務する「第97分署」の刑事達の活躍が、地味ぃ~に、そして必要以上にハートフルに描かれました。

「温情に走り過ぎる捜査方針が問題視されてる警察署」という、まるで暴力集団の『西部警察』をおちょくったような設定でw、今となってはヌル過ぎて観てられないんだけど、当時は新鮮に感じたのか、けっこう楽しんで観てた記憶があります。

新任刑事の成長を軸にしたシリーズ構成が非常に『太陽にほえろ!』的だった事も、私にとっては親しみ易い要素でした。

初代が時任三郎、2代目が新沼謙治、3代目が古尾谷雅人というキャスティングで、2代目の新沼さんが異色にも程がありますw 意表を突いてるし面白いキャスティングだとは思うけど、新沼さんの刑事役を進んで観たいとは、少なくとも私は思えませんでした。だからその頃からほとんど観てないです。

シリーズ通してのレギュラーキャストは、温厚な検視官に渡 哲也、ぶっきらぼうな江戸っ子課長に長門裕之、飄々とした警部補の「奈良さん」に鹿賀丈史、肉体派の巡査長「ブル」に小西博之、ほか高橋長英、四方堂 亘、武藤章生といった面々。

また女性刑事枠は坂口良子、斎藤慶子、山口果林と変遷し、渡さんの助手役を早見 優、原口弥生、北原佐和子と代々アイドル女優さんが務めておられました。

各エピソードの内容はほとんど憶えてないんだけど、オープニングのタイトルバックにおける人物紹介の映像が、観ててちょっと背中がむず痒くなる代物だった事だけ、妙にハッキリ憶えてますw

そもそも主題歌が松山千春とかザ・ワイルドワンズとか五木ひろしとか、別に悪くはないんだけど、刑事ドラマの(エンディングならともかく)オープニングにコテコテの歌謡曲ってのは、どうも軟弱に思えて私はイヤでした。

で、人物紹介の映像は従来のフォーマットに沿ったものではあるんだけど、やたらハートフルというか庶民的というか、「僕たち、とっても人間味に溢れてま~す」ってアピールしてる感じが、ちょっと気持ち悪いんですよねw

前週までさんざん暴力と射殺と爆破を謳歌して来た渡哲也さんが、いきなりニコニコしながら平和の象徴である鳩を可愛がってたりw 斎藤慶子さんは男の股間を蹴り上げて「てへペロ!」みたいな顔をするし、長門裕之さんが無線機で指示を送ろうとしたらマイクがあさっての方角に向いちゃったり(ドリフのコントか!)、皆それぞれドジな一面、お茶目な一面をやたらアピールしてる。

それは番組の方向性を分かり易く表現した素晴らしいタイトルバックとも言えるんだけど、どうにも私は苦手でした。人間味なんて、自らアピールするもんと違うやろ!みたいに思っちゃうんですよね。

まぁしかし、格好良く拳銃を構えて、顔もキリッと決めてストップモーション、みたいなのを真面目にやるのは(観てる側が)気恥ずかしいっていう、時代の空気があったのかも知れません。

時代と言えば、この辺りから刑事ドラマは、より荒唐無稽なアクション路線とリアリティを重んじた人情路線とに、大きく二分化されて行く事になります。

つまりテレビ番組が若者向けと年輩層向けとにハッキリ区別される傾向が出て来たワケで、テレビが家族みんなで観るメディアじゃなくなって来た時代を反映してるんだろうと思います。

『私鉄沿線97分署』はどういうワケか、明らかにターゲットを年輩層に絞ってましたね。だからこその新沼謙治であり、ザ・ワイルドワンズって事なんでしょう。

後に藤田まこと主演『さすらい刑事純情派』がヒットしたり、『踊る大捜査線』以降の刑事ドラマがリアリティ重視に偏って行く事を思えば、この『私鉄沿線97分署』はかなり先見の明があったと言えるかも知れません。

扱う事件が万引きとかイタズラ電話等の軽犯罪ばかりなのは所轄署の仕事をリアルに捉えてるし、許可無しでは拳銃を持ち出せないとか、独身者はみんな警察寮で生活してるとか、そういったリアリズムも当時は新鮮に感じました。

中途半端に『西部警察』の路線を継承せず、180度の方向転換を計ったのは大正解だったと、今となっては思います。実際、2年も続く人気番組になったワケですからね。

だけど、その新鮮さによる効能も2年が限度で、後に製作された同路線の刑事物『ニュータウン仮分署』(’88年、岩城滉一、清水宏次朗、柳沢慎吾、山城新伍らが出演)は低視聴率により1クールで打ち切られ、日曜夜8時のテレ朝ドラマ枠は消滅する結果となりました。

その頃には『太陽にほえろ!』も『特捜最前線』も長い歴史にピリオドを打っており、その一方で刑事ドラマの概念を破壊し尽くした『君の瞳をタイホする!』みたいな「トレンディードラマ」が台頭する等、時はまさにTVドラマ界の大きな変革期だったように思います。

フィルム撮影による刑事ドラマは『あぶない刑事』(’86~)の大ヒットが最後の花火で、この『私鉄沿線97分署』は言わば、終わりの始まり。つまり本当の意味での「刑事ドラマ」が、いよいよ絶滅へと向かって行く助走みたいなイメージが、私の中にはあります。
 
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