2016年のクリスマス、よりによって『逃げるは恥だが役に立つ』最終回の裏番組としてフジテレビがぶつけた、多部未華子&高橋一生のコンビによるスペシャルドラマ。
その直後に一生くんが大ブレイクされたお陰か、毎年クリスマスシーズンにBSフジ等どこかのチャンネルで放映される定番ドラマとなりつつあります。
しかしこれは、私が多部ちゃんのファンでなかったら、死んでも観ない類いのドラマでしたw たぶん名作『デート/恋とはどんなものかしら』も『逃げ恥』もタベリストになる前だったら食わず嫌いに終わってますから、つくづく多部ちゃんに感謝です。
このドラマも冒頭から、現実味の無いイケメンとの「運命的」っぽい出逢いに胸をときめかすヒロインの姿が描かれ、以前の私なら5分でヘドが出てましたw 早くも『逃げ恥』人気にあやかった「ムズキュン」ドラマが出てきたよって、即座に吐き捨てた事でしょう。
ところが……まぁわざわざ『逃げ恥』の裏にぶつけたんだから、そういう狙いも多少はあったんでしょうけど、その後の展開を観て私は、本作のコンセプトは別のところにあると推察しました。
かつて私が売れない脚本家だった頃、ケータイ小説マニアの女子高生が自分でケータイ小説を書き始めたら、本当にケータイ小説みたいに波乱万丈な恋愛を経験して人生メチャクチャになっちゃう、っていう映画のシナリオを書いたことがあります。
恋愛ドラマ嫌いの私がなんでそんなストーリーを考えたかと言うと、要するにパロディ=皮肉りたかったワケです。ケータイ小説みたいな出来事が現実に起こったらどんだけ悲惨か、つまり多くの女子たちが好む恋愛ストーリーってやつが如何に現実離れしてるか、それを具体的に見せて笑いを取りたかった。
これは面白くなるぞ!って最初は思ったんだけど、実際に完成した映画を観たら、単にベタで現実離れした三流恋愛映画にしか見えなかったというw、たいへん苦い失敗経験がありました。
このドラマもたぶん、似たようなコンセプトなんですね。恋愛シミュレーションゲームのプランナーであるヒロインが、王子様キャラや俺様キャラの男達とゲームさながらの恋に落ちちゃう。
自分が考えたゲームそっくりやん!って笑ってもらうのが本来の狙いなんだけど、実際に映像化されると単にベタで現実離れした三流恋愛ドラマにしか見えないというw パロディって、かくも簡単そうに見えて実はすこぶる繊細で、ホントに難しい。
ただし、私が脚本を書いた映画とこのドラマとじゃ大きな違いがあって、それは何かと言うと、つまり多部ちゃんと一生くんが出てるか出てないかの違い。映画に出てくれたキャスト達には申し訳ないけど、この差は本当にデカイ。
やっぱり多部ちゃんが演じるとリアリティーが生まれるし、一生くんが演じるとチャーミングに感じるんですよね。もしキャスティングが違ってたら、とても最後まで観られる代物にならなかったかも知れません。
自分は身を引き、好きな人の恋を成就させてあげるという『シラノ・ド・ベルジュラック』のストーリーをベースにしつつ、ラブレターの代筆じゃなく、デート中の一生くんにスマホを通して「セリフ」を与えてあげる多部ちゃんの描写なんか、恋愛シミュレーションゲームのパロディとして上手く出来てるんですよね。
だけど大方の視聴者は、そこまで察する前に「あり得ねー」の一言で済ませちゃうかも知れない。だからパロディって難しい。
そういうリスクの高い、チャレンジングな企画を救うために生まれて来たのが、多部未華子という女優さん。あらためて、つくづくそう思います。しかも『逃げ恥』の裏だしw
いかにも現代ならではの恋愛ドラマ、そしてパロディとして観れば、これはなかなか面白い作品じゃないかと私は思います。
セクシー画像は、一生くんが片想いするお相手に扮した、大政 絢さん。いつの間にかオトナになられました。