ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『わたしに運命の恋なんてありえないって思ってた』

2018-12-24 12:24:05 | 多部未華子









 
2016年のクリスマス、よりによって『逃げるは恥だが役に立つ』最終回の裏番組としてフジテレビがぶつけた、多部未華子&高橋一生のコンビによるスペシャルドラマ。

その直後に一生くんが大ブレイクされたお陰か、毎年クリスマスシーズンにBSフジ等どこかのチャンネルで放映される定番ドラマとなりつつあります。

しかしこれは、私が多部ちゃんのファンでなかったら、死んでも観ない類いのドラマでしたw たぶん名作『デート/恋とはどんなものかしら』も『逃げ恥』もタベリストになる前だったら食わず嫌いに終わってますから、つくづく多部ちゃんに感謝です。

このドラマも冒頭から、現実味の無いイケメンとの「運命的」っぽい出逢いに胸をときめかすヒロインの姿が描かれ、以前の私なら5分でヘドが出てましたw 早くも『逃げ恥』人気にあやかった「ムズキュン」ドラマが出てきたよって、即座に吐き捨てた事でしょう。

ところが……まぁわざわざ『逃げ恥』の裏にぶつけたんだから、そういう狙いも多少はあったんでしょうけど、その後の展開を観て私は、本作のコンセプトは別のところにあると推察しました。

かつて私が売れない脚本家だった頃、ケータイ小説マニアの女子高生が自分でケータイ小説を書き始めたら、本当にケータイ小説みたいに波乱万丈な恋愛を経験して人生メチャクチャになっちゃう、っていう映画のシナリオを書いたことがあります。

恋愛ドラマ嫌いの私がなんでそんなストーリーを考えたかと言うと、要するにパロディ=皮肉りたかったワケです。ケータイ小説みたいな出来事が現実に起こったらどんだけ悲惨か、つまり多くの女子たちが好む恋愛ストーリーってやつが如何に現実離れしてるか、それを具体的に見せて笑いを取りたかった。

これは面白くなるぞ!って最初は思ったんだけど、実際に完成した映画を観たら、単にベタで現実離れした三流恋愛映画にしか見えなかったというw、たいへん苦い失敗経験がありました。

このドラマもたぶん、似たようなコンセプトなんですね。恋愛シミュレーションゲームのプランナーであるヒロインが、王子様キャラや俺様キャラの男達とゲームさながらの恋に落ちちゃう。

自分が考えたゲームそっくりやん!って笑ってもらうのが本来の狙いなんだけど、実際に映像化されると単にベタで現実離れした三流恋愛ドラマにしか見えないというw パロディって、かくも簡単そうに見えて実はすこぶる繊細で、ホントに難しい。

ただし、私が脚本を書いた映画とこのドラマとじゃ大きな違いがあって、それは何かと言うと、つまり多部ちゃんと一生くんが出てるか出てないかの違い。映画に出てくれたキャスト達には申し訳ないけど、この差は本当にデカイ。

やっぱり多部ちゃんが演じるとリアリティーが生まれるし、一生くんが演じるとチャーミングに感じるんですよね。もしキャスティングが違ってたら、とても最後まで観られる代物にならなかったかも知れません。

自分は身を引き、好きな人の恋を成就させてあげるという『シラノ・ド・ベルジュラック』のストーリーをベースにしつつ、ラブレターの代筆じゃなく、デート中の一生くんにスマホを通して「セリフ」を与えてあげる多部ちゃんの描写なんか、恋愛シミュレーションゲームのパロディとして上手く出来てるんですよね。

だけど大方の視聴者は、そこまで察する前に「あり得ねー」の一言で済ませちゃうかも知れない。だからパロディって難しい。

そういうリスクの高い、チャレンジングな企画を救うために生まれて来たのが、多部未華子という女優さん。あらためて、つくづくそう思います。しかも『逃げ恥』の裏だしw

いかにも現代ならではの恋愛ドラマ、そしてパロディとして観れば、これはなかなか面白い作品じゃないかと私は思います。

セクシー画像は、一生くんが片想いするお相手に扮した、大政 絢さん。いつの間にかオトナになられました。
 
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『ツバキ文具店/鎌倉代書屋物語』#02~#03

2018-12-24 00:00:38 | 多部未華子






 
初回レビューにはタベリストとしての喜びばかり書きましたけど、それを抜きにしてもこれは、掛け値なく素晴らしいドラマです。当初から「良いドラマ」になるだろうとは思ってたけど、こんなに「面白いドラマ」になるとは想定外で、これは嬉しい誤算。

第1話は、我が子同然のペットを亡くした夫婦へのお悔やみ、第2話は別れたばかりの夫婦から離婚のお知らせ、第3話は借金を頼んで来た古い友人への断り状と、どれも簡単に済ませることも出来るけど、受取人の気持ちを考えると書き方が難しい、実に繊細な代筆依頼。

受取人と差出人の関係、それぞれの性格、現在と過去などを取材して手紙の構想を練る、ヒロイン=鳩子(多部未華子)の仕事はまるで脚本家みたいだし、刑事や探偵のようでもあります。

それで一体どんな文章が仕上がるのか、我々視聴者はあれやこれやと想像を膨らませるワケで、ありきたりの謎解きドラマよりよっぽどスリリングで面白いんですよね。

で、手紙の仕上がりを視聴者の想像に委ねたりせず、しっかり答えを示してくれる姿勢も素晴らしい。ここで逃げちゃうドラマも多いですから。

特に第3話。差出人=男爵(奥田瑛二)の口調そのまんまで「金はビタ一文やらん! だがメシなら食わせてやるから、いつでも来い」ってw、多部ちゃんがそんな手紙を書く意外性も笑えたし、なるほどそう来たか!って唸らされました。断るべきことはしっかり断りつつ、気持ちの面では支えてやりたい、長年の友人関係ならではの文面ですよね。

で、鳩子がそれとソックリな手紙を、代筆依頼をして来た元カレに送りつけちゃうオマケも楽しくて、そんな二重構造の巧みな脚本に、重ねて唸らされるワケです。

手紙の内容によって封筒や便箋、ペンやインク、墨のすり方まで幾多の選択肢があるっていうのも面白いし、シーリングスタンプという道具の存在など、知らなかった事ばかりで勉強になります。

そんな仕事を独りでこなしちゃう若い女性って、多部ちゃんが演じないと説得力に欠けたかも知れません。ただ手紙をしたためるだけの場面がクライマックスとして成立するのも、元より所作の美しい多部ちゃんが演じればこそ。多部ちゃんの場合、表情の1つ1つが言わばアクションなんですよね。

上地雄輔くん、高橋克典さん、片瀬那奈さん、江波杏子さん、そして奥田瑛二さんら共演陣が普段より光って見えるのも、脚本・演出の良さプラスアルファ、多部ちゃんマジックの賜物であろうと思います。

特に子役を輝かせる名人の多部ちゃん。本作も新津ちせちゃんが光りまくってます。彼女が鳩子に送る、キーワードしか書いてない超シンプルな手紙がまた超絶に可愛くて、萌えますw

鳩子の母親が祖母(倍賞美津子)との確執で家出したらしい事や、元カレが案の定ダメ男(乳首)だった事も判明して、ますます『つばさ』の世界に近づいて来ましたしw

やがて明かされるであろう、厳しいばかりだった先代(祖母)の真意や、認知症のお母さんの為に高橋克典さんが代筆依頼するであろう、亡くなったお父さんからの手紙など、間違いなく涙腺が決壊しちゃうことを予言しておきますw

BGMも主題歌も良いし、これはもう、完全にハマりました。
 
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