☆第6話『ワルは眠らせろ』
(1978.5.9.OA/脚本=佐治 乾/監督=長谷部安春)
警視総監賞を3度受賞という輝かしい経歴を持ち、現在は会社を経営する元警部=会田(青木義朗)の事務所が何者かに狙撃されるという事件が発生。
現場から逃げた車を発見した神奈川県警・遊撃捜査班の水原(藤 竜也)と矢吹(沖 雅也)は、狙撃犯と思わしき男=石本(片岡五郎)が逃げ込んだ掘っ立て小屋に踏み込み、その身柄を確保するも、遅れて駆けつけた港東署の刑事たちに『ガントレット』よろしく集中砲火を浴びた挙げ句、別件の逮捕令状を振りかざす彼らに石本を横取りされちゃいます。
港東署はかつて会田が勤めた古巣であり、チームを率いる津上刑事(関山耕司)はその右腕だった男。石本が護送中に逃亡を図り、津上に射殺されたと知った遊撃班の新田班長(加山雄三)は、それが会田の指示による計画殺人であると睨み、極秘捜査を開始。
その推理は的中し、遊撃班は会田を追い詰めるんだけど、現役の刑事たちも関わった一大不祥事の発覚を恐れる県警本部は、会田に「自決」を促すことを新田に指示するのでした。
「ワルは眠らせろ、ということですか」
新田は黙ってコルト・ローマンのシリンダーに弾丸を1発だけ込め、会田に渡すと彼に背を向けます。果たして、会田は元敏腕刑事の誇りを持って潔く「自決」するのか、それとも……?
結局、その場に居合わせた港東署の脇役刑事(武藤章夫)が勘違いして会田を射殺しちゃうんだけど、いずれにせよ同じ日本テレビ&東宝の制作による(そして'78年当時すっかり健全路線に落ち着いた)『太陽にほえろ!』じゃまず有り得ないハードなストーリーで、ウチは王道番組がやらないことをやろう!っていう創り手たちの気概が伝わって来ます。
今回、ボートチェイスはあったものの『大追跡』らしい眼を見張るようなアクションはあまり見られず、そのかわりハードボイルドな渋い世界観で魅せてくれました。ワル=会田元警部を演じる青木義朗さん(後に『大捜査線』で杉良太郎さんの同僚刑事を演じます)もやけにカッコよかった!
また、会田に弱味を握られユスられてた女性(八城夏子)に、沖雅也さん扮する矢吹刑事が「もっと自分を大事にしろ」と説教した挙げ句に惚れちゃうサイドストーリーもあるんだけど、実は彼女は遊び人で純情な矢吹を弄んでただけ、っていうオチがつきました。
シリーズが進むにつれ矢吹は『俺たちは天使だ!』のキャプテンみたいな軽妙キャラになって行くんだけど、序盤では「融通の利かない堅物刑事」として描かれており、まるで童貞みたいに振る舞ってますw
後に独自のノリで皆を巻き込んでいく滝本=柴田恭兵さんもまだ大人しいし、結城=長谷直美さんももっぱら無線係で現場に出ないしで、この時期はまだ『大追跡』らしい弾けっぷりが見られません。
けど、これはこれで渋くて全然悪くない。やっぱり画になる役者が揃ってますから、何をやろうとキマるんです。現在の若手俳優たちだと決してそうはいきません。
矢吹を弄ぶ罪な女を演じた八城夏子さんは、当時23歳。デビューは東映だけど日活ロマンポルノで注目され、特に本作の長谷部安春監督と組む機会が多かった女優さん。
刑事ドラマは他に『大都会PART II』『同 PART III』『西部警察』等にゲスト出演されるも、'80年に結婚と同時に引退されてます。