ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#313

2019-11-29 00:00:06 | 刑事ドラマ'70年代








 
☆第313話『真夏の悪夢』(1978.7.28.OA/脚本=桃井 章&小川 英/監督=木下 亮)

長さん(下川辰平)が七曲署勤務になる前に勤めてた、北署時代の後輩=松沢(広瀬昌助)が結婚することになり、仲人を長さんに依頼して来ます。

7年前、北署の保安課で麻薬事件を捜査してた長さんと松沢は、ヘロインの運び屋を追ってビルの建築現場に足を踏み入れ、鉄骨の落下事故に遭うんだけど、そのとき長さんをかばった松沢の片足に鉄骨が直撃し、それで足が不自由になった彼は広報課への異動を余儀なくされたのでした。

そんな負い目もあるもんで、仲人の依頼に格別な喜びを味わう長さんですが、勿論この番組は主人公を甘やかしはしませんw 次のシーンでさっそく松沢が車に跳ねられ、長さんは彼の葬式に参列する羽目になるのでした。

そこで、彼の婚約者だった節子(早瀬久美)が爆弾発言をします。

「事故じゃないわ。あの人は、殺されたんです」

確かに、事故と断定するには不自然な点がいくつかあり、長さんはボス(石原裕次郎)の許可を得て再捜査するんだけど、他殺を裏付けるような証拠は見つからず、節子に残念な報告をするだけの結果に終わっちゃう。

「なにか、私に出来ることがあれば……」

松沢のことを息子のように思ってる長さんが、良かれと思って言った言葉も、今の節子には全く響きません。

「あの人もそうだったと思ってらっしゃるんですか?」

「え?」

「あの人も、あなたに対して父親のような気持ちを持っていたと思ってらっしゃるんですか?」

「いえ、そう思ってるのは……」

「確かにあの人、いつもあなたのこと尊敬してるって言ってました。でもそれは、嘘です」

「嘘?」

「あの人は、刑事の仕事が好きでした。自分の天職だと信じていたんです。それを……刑事でいられなくしたのは、あなたじゃありませんか!」

「…………」

だけど長さんを恨んだら自分が惨めになる。だから彼は自分に嘘をついて尊敬して来たんだと節子は言います。

「私いつも、あの人の代わりにあなたを恨んで来ました。今だってあなたを恨んでます! 私が代わりに恨んでるからこそ、あの人いつも冷静でいられたんです。死んだ今だってきっとそうですわ!」

息子のように思ってた可愛い後輩が、実は自分を恨んでた……これはまさに真夏の悪夢。あまりのショックで身長が縮んでしまった長さんを、愛妻の康江(西 朱実)が元気づけます。

「あなたに好意を持っている人か、そうでない人ぐらい、私にも判ります。思い過ごしですよ」

「そうだな……しかし……しかしアイツは、本当に刑事が好きな男だった。うわべは笑っていても、心の底では捜査への執念にいつも燃えていたんだ。それだけは、確かだ……」

そんな折り、松沢を跳ねた車を運転していた男=上条(山本 聡)が、ビルの屋上から転落して死亡します。

一見、事故で背負った責任に耐えかねての自殺に見えるんだけど、遺体を調べると常習的な注射痕や、何者かと争った形跡も残っており、藤堂チームは他殺の線で捜査を進めます。

結果、死んだ上条はヘロイン中毒者だったことが判明。そんな男がかつてヘロイン事件を追ってた松沢を車で跳ねたのは、果たして偶然なのか?

そんなワケがありません。上条に松沢を殺させ、その口を封じるために上条を殺した黒幕、すなわちヘロイン組織が暗躍してるに違いない。

どうやら松沢は、広報課に飛ばされた後も密かに麻薬ルートの捜査を続け、ヘロインの運び屋として水沼桂子という女に目をつけていた。松沢は桂子を尾行中に暗殺されたんだと睨んだ長さんは、彼女が経営する喫茶店に探りを入れに行きます。

そしたら注文を聞きに来たウェイトレスが、松沢の婚約者だった節子なもんだから驚いた! そんな長さんのゴリラみたいな顔を見て節子も驚いた!

「私がしてるんじゃありません。あの人が……あの人がどうしてもやりたかった事を、私が代わりにしているだけなんです」

どうやら節子は、愛する松沢の遺志を継いでヘロイン組織の尻尾をつかもうとしてる。プロの捜査官だった男でさえ果たせなかったことが、素人の女ひとりに出来るワケがない!

長さんはろくに睡眠もとらず節子をガードしますが、誰かに呼び出された彼女は姿を消してしまうのでした。

これで節子まで死なせたら真夏の悪夢どころじゃ済まない! いよいよ追い詰められた長さんは水沼桂子の部屋に押し入り、実は七曲署随一かも知れない暴力刑事としての本領を発揮します。

「節子さんには指一本触れさせん! 俺が松沢にしてやれるのはもうそれしか無いんだ! たとえその為に刑事をクビになっても、俺は彼女を助けるっ!!」

そこは健全路線の『太陽にほえろ!』ゆえ『俺たちの勲章』や『大都会 PART II』の優作さんみたいに性別問わずの暴行は働かないけど、ゴリラ顔の迫力にビビりまくった桂子は、ついに黒幕の正体をゲロするのでした。

間一髪、黒幕が送り込んだ殺し屋から節子を救った長さんは、いよいよ鬼の形相で百五十発ほどのパンチを殺し屋に浴びせ、そばにいた暴力大将=ゴリさん(竜 雷太)を本気でビビらせますw

「大北課長なのか!? あの人を殺せと命令したのも大北課長なのか!! 松沢くんを殺せと指示したのも大北課長かあーっ!!」

黒幕の正体は、北署で長さん&松沢の上司だった保安課長=大北刑事(久富惟晴)。節子は、ヘロイン組織の決定的証拠をつかんだら大北課長に密告するつもりでした。もし長さんがいなかったら、その証拠も彼女の命もあっさり闇に葬られた事でしょう。

「ごめんなさい……あの人が、心の底では野崎さんを憎んでたなんて、嘘です。私が、そう思いたかっただけなんです。だって、誰かを憎まなきゃ……誰かを憎まなきゃ、私……ツラくて……」

「……もうそのことは、忘れて下さい。こんなことを背負って生きていくのは、私ひとりでいい」

長さんを恨むことぐらいしか逃げ道がなかった節子の気持ちも、よく解ります。それも刑事の仕事の1つなのかも知れず、つくづく因果な商売です。

松沢の墓に事件解決を報告しに来た長さんは、まさしく息子と接するように墓石に語りかけます。

「ただな、節子さんはまだ若いんだ。お前は寂しいかも知れないが、俺はそのうち、節子さんにいい旦那さんを世話したいと思ってる。その時は怒るなよ?」

「怒りやせんよ、彼は」

こっそり立ち聞きしてたのはもちろんボスですw

「松沢くんもきっと喜んでくれるさ。親父さん代わりの長さんが選ぶ相手だ」

数ある「長さん苦難編」の1本……ていうか長さん主役回の9割以上は苦難編なんだけどw、こうして長さんの怒りが頂点に達する回はそんなに多くなく、それだけに見応えがあります。

そりゃ誰だって怒れば怖いけど、普段は誰よりも温厚な長さん、実は元ラガーマンで意外とマッチョな長さん、そしてゴリさんよりよっぽどゴリラ顔な長さんが本気で怒ったら、ほんと引くぐらい怖いですw 今回はまさに、長さんを本気で怒らせる為に組まれたストーリーと言えましょう。

悲劇のヒロイン=節子を演じられた早瀬久美(出演当時のクレジットは早瀬久美子)さんは当時26歳。デビュー作は松竹映画の『紀ノ川』('66) で、フジテレビのドラマ『お嫁さん』('68) で主演もされてますが、何と言っても日テレの青春ドラマ『俺は男だ!』('72) におけるヒロイン「吉川くん」役が忘れられない女優さんです。

刑事ドラマは他に『キイハンター』『Gメン'75』『特捜最前線』『鉄道公安官』『噂の刑事トミーとマツ』『爆走!ドーベルマン刑事』『非情のライセンス』等にゲスト出演。

'80年代に入って結婚&引退されたものの、2000年代に復帰され、寡作ながら現在も活躍されてます。
 
コメント (2)
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