ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『大空港』#19

2020-04-06 00:00:06 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第19話『夕陽の銃撃戦!/幼い恋人が叫ぶ・その人を撃たないで!』

(1978.12.11.OA/脚本=佐藤繁子/監督=長谷和夫)

空港特捜部は海外から凱旋する殺し屋をマークしてたんだけど、そいつが空港駐車場で射殺されちゃいます。

撃ったのは、その殺し屋に幹部を消された暴力団の鉄砲玉。すぐさま特捜部が追跡・格闘の末に逮捕するんだけど、凶器の拳銃が見つからない。薮下警部(田中邦衛)が犯人を暴力で説得し、拳銃を捨てた場所は聞き出せたんだけど、どうやら何者かが持ち去ったらしい。

その現場近くで直子という12歳の少女(荻野目慶子)の持ち物が発見され、加賀チーフ(鶴田浩二)の表情が曇ります。

直子は飛行機を観るのが大好きで、たびたび空港に忍び込んでは警備係に叱られてるんだけど、チーフはそんな彼女の純粋な気持ちを尊重し、仲良くしてたのでした。

家を訪ねてみると、直子は父親を病気で亡くし、母親は他の男と蒸発し、今は祖父母の世話になってて友達もいない淋しい境遇。飛行機が好きなのは、死んだ父親がパイロットだったから。

本人に会ってみると挙動不審で、明らかになにか隠してるんだけど、チーフは彼女が自主的に告白してくれることに期待し、それ以上は突っ込まないのでした。

しかし残念ながら、拳銃は犯罪に使われてしまいます。直子はひょんな事から知り合った「ジョー」と呼ばれるチンピラ=岩城を「お兄ちゃん」と呼んで慕っており、拾った拳銃をそいつに渡してしまった。それで岩城は、かつて妹を食い物にし自殺に追いやった悪徳金融業者の事務所に押し入り、現金を奪った上に1人を射殺し、逃走したのでした。

「アフリカへ逃げるんだ」と言う岩城に、直子は「私も連れてって!」と泣いてすがります。こんな大してイケメンでもないアホなチンピラ、しかも30歳は越えてそうなオッサンのどこがええねん?って思うんだけど、たぶん岩城は直子の死んだ父親に似てるんでしょう。

「直子くん。人間というものはね、自分のやったことには責任を持たなきゃいけないんだよ。悪いことをしたまんま逃げても、決して幸せにはならんのだよ。警察から逃げられても、自分の心からは逃げられない」

チーフは、あくまでも直子が自分の意志で真実を語るよう、粘り強く説得します。

「おじちゃんは、ジョーを捕まえなくちゃならない。ジョーを、本当に幸せにしてやりたいと思うから、捕まえなきゃならないんだ」

それは恐らくチーフの本心で、妹を食い物にされたジョーこと岩城にも同情の余地がある。彼もまた、直子に妹の面影を重ねてるに違いありません。

「おじちゃんは待つよ。キミが本当のことを話してくれると、信じてるからな」

部下の鯉沼(中村雅俊)から「甘い!」と揶揄されながらも、チーフはまだ幼い直子の将来を考え、あくまで待つ姿勢を崩しません。

けれど残念ながら、直子は岩城についていく道を選択し、チーフたちは空港で二人を追い詰める羽目になってしまう。往生際悪く拳銃を振り回すチンピラ野郎に、チーフが一喝します。

「岩城! この子の目の前で、その引金が引けるか!?」

根は悪いヤツじゃない岩城にそんなことが出来る筈もなく、事件はあっけなく幕を引きました。

「お兄ちゃん! イヤだよ、お兄ちゃん! いっちゃイヤ!! いっちゃイヤ!!」

直子がいくら泣いたところで、人殺しの罪は消えません。これからの人生で直子がいろんな人と出会い、免疫をつけるまで、岩城みたいなヤツは隔離しておかなきゃいけません。

「嫌いだ! おじちゃんなんて嫌いだっ!!」

直子の矛先はチーフに向けられ、チーフは黙って受け止めます。それが大人ってもんでしょう。

とにかくゲスト=荻野目慶子さんの演技が素晴らしすぎます。すでに子役としていくらか場数を踏んでるにしても、当時13歳か14歳でこの安定感は凄い!

いや、それより何より、岩城を見つめる直子の眼がもう「オンナ」なんですよね! 脚本上、直子が逃避行の道を選んでしまうのは「まだ子供だから」ってことだと思うんだけど、映像を見てると直子が女性として岩城を愛してるように感じちゃう。慶子さんはたぶん、そう解釈して演じてる。

ご本人がそのつもりでも、子供が演じたら観てる我々はやっぱり「子供だから」って解釈すると思うんだけど、良くも悪くもそうは見えない。疑似父娘あるいは疑似兄妹の感情を描いたはずの話が、立派なメロドラマに仕上がってる。

荻野目慶子さんが当時からすでに演技が上手く、マセておられた事によって生じた誤算。将来、二人の映画監督を狂わせることになる「魔性」が、小学生か中学生の内にもう芽生えてるという、これはある意味「衝撃映像」かも知れません。
 

コメント
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