ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『あさひが丘の大統領』#02

2020-08-23 22:55:25 | 探偵・青春・アクションドラマ










 
さて、『太陽にほえろ!』が陰鬱の泥沼にはまりつつあった頃、卒業生のボンボン刑事=宮内淳さんは何をしていたかと言えば、『太陽~』の生みの親=岡田晋吉さんの企画による学園ドラマ『あさひが丘の大統領』の破天荒教師「ハンソク」こと大西元として、実に楽しそうに主演を張っておられました。

ユニオン映画制作&中村雅俊主演『ゆうひが丘の総理大臣』の後番組で、1979年の10月から日本テレビ系列の水曜夜8時枠で全36話が放映されることになります。


☆第2話『あんなバカな先生はクビだ!』

(1979.10.24.OA/脚本=畑 嶺明/監督=土屋統吾郎)

以前、鎌田敏夫さんの脚本による第1話をレビューしましたが、あれは内容が盛り沢山すぎて消化不良だった感があり、この第2話の方が『あさひが丘~』というドラマの本質を掴みやすいかも知れません。

破天荒すぎてメチャクチャとしか言いようがないハンソク先生の、その破天荒さにも意味があることを示したストーリーで、ちゃんと最後まで観れば彼の魅力に気づける仕掛けになってるんですよね。

だけど、そこまで我慢出来ずに途中でチャンネルを変えちゃった視聴者が、たぶん結構おられたんじゃないでしょうか? そこがドラマ創りの難しさです。初回レビューにもさんざん書きましたけど、とにかく主人公の好感度がケタ外れに低いんですよねw

まず、出勤したハンソク先生が最初に何をしたかと言えば、高岩校長(宍戸 錠)や竹内教頭(高城淳一)に「オレ、給料いくら貰えるんスか? えっ、たったそれだけ!?」としつこくギャラ交渉。さっそく清廉潔白な「タックル」こと涼子先生(片平なぎさ)を怒らせちゃいます。

次に美人スクールドクターのしのぶ先生(金沢 碧)に保健室で「服を脱いで」と言われて劣情を催し、パンツ1丁で叩き出されて女子生徒たちに悲鳴を上げさせるわ、悪戯でドリフのコントよろしく白粉まみれにされて走り回るわと、あまりに子供じみたドタバタ劇が次々と展開され、ここらで早くも辟易しちゃった視聴者が多数おられたかと思います。

さらにハンソク先生は、学園寮に引っ越すことを最初は嫌がってたクセに、みんなから「絶対来るな!」と拒絶されるや「反対されると逆らいたくなるタチなんだ」と言って野口先生(秋野太作)の部屋に無理やり押しかけちゃう。そういった幼稚な発想&粗野な振る舞いには宮内淳ファンである私ですらイラッとしましたw

まだまだ止まりません。今度はラグビー部員の水野(井上純一)らを教師自ら煽動して女子寮を覗きに行くという暴走ぶり。覗きたい気持ちはよく解るんだけどw、さすがにこれは犯罪行為なのでやり過ぎです。

もちろん涼子先生に見つかってこっぴどく叱られるんだけど、そこでハンソク先生が言うんですよね。

「あんなフニャフニャした奴らはあれ位のことした方がいいんだよ。連中には無いのかね? こう、自分でドバーッとやりたいコトっていうのが」

学生時代に規則という規則を片っ端から破って「ハンソク」と呼ばれるようになった彼からすると、理不尽なほど細かい寮の規則に黙って従い、ただ無気力に日々を過ごす生徒たちの方がよっぽど異常ってワケです。

その点に関しては涼子先生も「私だってこのままでいいとは思ってません」と同意するんだけど、正攻法でじっくり改革していきたい彼女からすれば、ハンソク先生の粗暴なやり方は迷惑以外の何物でもない。

「真剣に教育に取り組もうとする教師が来ることを期待してたのに、失望しました!」

さて、この覗き騒動の裏で、1つのささやかな事件が起こってました。見張り役を押しつけられたラグビー部の山下(長谷川 諭)が、着替え中だった女子生徒=森下(上田美恵)のヌードを偶然見てしまったのです。第1話に続いて、今回も8時台の青春ドラマで女子高生のおっぱいが登場!

このシーン、ノベライズにもDVDの解説書にも、着替えを見られるのは別の生徒=白石(北村優子)と記されており、どうやら脚本では白石だったのが撮影段階で森下に変更されたみたいです。

グラビアの仕事を一切されてなかった北村さん(の事務所)からNGが出たのかも知れません。おっぱい自体は横からアップで撮られており、たぶん吹き替えなんだけど、タレントとしてのイメージを守りたかったんでしょう。(だけど代役を引き受けた上田美恵さんの方が後に連ドラ『生徒諸君!』の主役に抜擢され、北村さんよりメジャーになられるのは皮肉なことです)

それはともかく、山下は以前から森下が好きだったもんで、大変なショックを受けて落ち込んじゃう。好きな女の子の裸を見て落ち込む気持ちが私にはサッパリ解らないんだけどw、まあ純情な性格ゆえ罪悪感に苛まれたって事なんでしょう。

そんな山下を涼子先生や水野たちが大いに心配するんだけど、ハンソク先生は「男のくせにメソメソしやがって、だらしないぞ!」とあくまでブレない姿勢。山下が授業に出て来なくなっても知らん顔する先生に、水野たちは怒りを募らせます。

で、今度は水野と山下を含むラグビー部全員が行方不明になっちゃう。涼子先生に無理やり引っ張られ、仕方なく探しに行ったハンソク先生は、夜の公園でしょんぼり佇む彼らを発見するのでした。

山下がこうなったのはアンタのせいだ!と息巻く水野らを見て、ハンソク先生はなぜか嬉しそうに笑います。

「お前たちは何はともあれ規則を破ったんだ。これからもその調子で、ガーッとぶちかましてみろ!」

「うるせえ!」

「おっ? 今度は本気で怒ったようだな。かかって来るか? さあ、思いっきりぶちかまして来い!」

そうしてハンソク先生に挑発された水野たちは、ついに怒りを爆発させ、飛びかかって行きます。ずっとションボリしてた山下も、いつしか全力で叫び、全力で先生に立ち向かってました。

「おうっ、来たかお前も!」

そう、ハンソク先生は、そうして無気力な生徒たちを何とか奮起させたかった。やり方はメチャクチャだけどw、涼子先生がなかなか出来なかったことをハンソク先生は着任してすぐにやってのけたワケです。

もちろん、生徒たち相手に乱闘したワケだから上から問題視され、校長や教頭は弁明を求めるんだけど、ハンソク先生は「オレが一方的に喧嘩を吹っ掛けたんです」と男気を示したもんだから、涼子先生の彼を見る眼も少し変わります。

寮で野口先生と同居し、常に監視されることを条件にクビを免れたハンソク先生に、涼子先生は言います。

「たとえ反則でも、今まで他人の意思でしか動かなかったあの子たちが、初めて自分の意思で動いたんです。なんだか、それが嬉しくて…… あの子たちには、あなたみたいな人が必要なのかも知れません」

こうして、全く対照的な二人の若い教師=ハンソク&タックルによる改革がスタートするのでした。

創り手はたぶん、涼子先生の理想的教育を否定する気はさらさら無く、だけど画一的なやり方じゃこれからの時代に対応できない、もっと柔軟に多角的にやらなきゃダメなんじゃないか?と考えて、対照的な教師二人を主役にすることを決めたんだろうと思います。

極めて真っ当な涼子先生が隣にいるからこそ、ハンソク先生は思う存分メチャクチャが出来るワケです。そこが『あさひが丘の大統領』の面白さ。

だけど、そりゃどうしても破天荒な方が目立っちゃいますから、視聴者は番組そのものが「不真面目でナンセンスなドタバタ喜劇」だと誤解しちゃったのかも知れません。『あさひが丘~』は前作ほどの評価を得られず、これをもって日テレ青春シリーズに終止符が打たれる結果となりました。そもそも二番煎じ丸出しのタイトルで損しましたよね。

もちろん、同時期に他局で『3年B組金八先生』という斬新な学園ドラマがスタートしたのも痛かった。『あさひが丘~』もそれなりに青春ドラマの新しい形を示したのに、すっかり話題をさらわれちゃいました。『金八』だけはホント一生許しません。

そんなこんなで、正当な評価が得られなかった(と私は思う)『あさひが丘の大統領』ですが、ちゃんと観ればちゃんと面白いです。少なくとも初期は。(回を重ねるにつれ批判に負けたハンソク先生が普通の教師に変貌し、見所が無くなっていきます)

でも、面白い作品が必ずしも人気を得られるとは限らない。そこがほんとドラマ創りの難しさです。

セクシーショットは当時20歳の片平なぎささん。ハツラツとした新米教師「タックル」役は実に初々しくて可愛くて、大映ドラマ『スチュワーデス物語』における怖い怖い手袋女や2時間サスペンスの女王となられる未来像は想像もつきませんでしたw
 

コメント
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