☆第387話『雨の中の女』
(1979.12.28.OA/脚本=小川 英&石川孝人/監督=竹林 進)
ある雨の夜、土地開発会社の企画部長=西田(大木史朗)が、ショットガンで射殺されるという凶悪事件が発生! 現場に向かう途中、ロッキー(木之元 亮)はバス停に立つロングコートの女を目撃するんだけど、なにせ空気が読めない人なんで見過ごしちゃいます。
ところが、犯人はその女=久子(小林千登勢)でした。団地住まいの平凡な主婦だった彼女は3ヶ月前に首都高速で交通事故を起こし、愛する夫と子供を死なせてしまった。
その事故の原因は、フロントガラスに向かって飛んできたゴルフボール。それはゴルフ場で順番待ちをしていた西田たちが、退屈しのぎで場外に向けて打った球なのでした。
そのとき西田と一緒にいた同僚たちも次々に射殺され、残るはリーダー格の秋吉常務(幸田宗丸)のみ!
ロッキーは久子に同情しながらも、不毛な復讐を阻止するために叫びます。
「やめろぉーっ! やめるんだぁーっ!! やめろぉーっ! やめるんだぁーっ!! やめろぉーっ! やめるんだぁーっ!!」
毛むくじゃらな上に言葉のボキャブラリーがあまりに貧困で、しかも滑舌まで悪いロッキーの説得に呆れた久子は、その毛むくじゃらの脚に散弾をお見舞いし、真っ赤な車で秋吉常務を乗せた車を追跡します。
「やめろぉーっ! やめるんだぁーっ!! やめろぉーっ! やめるんだぁーっ!! やめろぉーっ! やめるんだぁーっ!!」
なおも懲りずに同じ台詞を繰り返しながら、ロッキーは夢中でCOLTローマン4インチのトリガーを引き、久子の車を横転させます。
動かなくなった久子の前で膝をつき、野性の雄叫びを上げるロッキー刑事に向かって、彼以上に空気が読めない秋吉常務がほざきます。
「物騒な女がいたもんですな」
すかさずロッキー炎の友情パンチが炸裂するんだけど、見かけほどパワーが無いもんだから秋吉はヘナヘナと尻餅をついただけ。そばにいた相方のスニーカー(山下真司)は気まずくなって、見て見ぬフリをするのでした。
「ボス、俺は……殺させてやりたかった……本当は彼女に、秋吉常務を殺させてやりたかった! ……俺は刑事なんです……刑事なんですよ」
七曲署の屋上で、涙ながらに分かりきったことを言うロッキーに、ボス(石原裕次郎)も分かりきった台詞を返します。
「ロッキー、この世にはどうにもならん事があるんだ」
「ボス……」
ロッキーが主役だとつい茶化したようなレビューになっちゃうんだけどm(__)m、色々あった'79年のラストを飾るこのエピソードは、久々にシンプルかつ骨太な初期『太陽にほえろ!』を彷彿させるエピソードで、ハードなカーチェイスも展開されて見応えがありました。
ストーリー自体はマカロニ編『俺の拳銃を返せ!』(#047) のリメイクみたいな感じだけど、そこにロッキーの「初射殺」というイベントが加わったことで印象深いエピソードになりました。
また、良妻賢母のイメージが強かったベテラン女優・小林千登勢さんが初めて殺人犯を演じられるという話題性、しかも台詞が一言しか無いという意外性もあり、こんな迫力あるエピソードがもっと頻繁に観られたら、あれほど『金八先生』に追い込まれることは無かったかも知れません。
少なくともロッキー刑事編としてはベスト3に入る出来映えじゃないかと私は思います。ロッキー主役で良かったエピソードが3本しか無いんだけど。(うそw)