日本におけるレズビアン映画の金字塔だと私は思ってる『ちょっとかわいいアイアンメイデン』と同じ2014年に公開された、同じ吉田浩太さんの監督&脚本によるR-15指定作品。女性漫画家「ふみふみこ」さんの短編コミック『女の穴』『女の豚』『女の鬼』が原作になってます。
つまり3つの短編を組み合わせたワケだけど、『ちょっとかわいい〜』も4コマ漫画が原作だったし、吉田監督はそういう構成力に長けた人なんだろうと思います。
この映画は2幕構成になってて、それぞれ独立したストーリーが、実は同じ高校で同時に起きた出来事であることがラストで判る仕掛けになってます。
1幕目は、なんだかブラックホールみたいに吸い込まれそうな眼をした女生徒=幸子(市橋直歩)に、若いボンクラ教師の福田(小林ユウキチ)が「私と一緒に子供をつくって下さい」と迫られる話。
それだけ聞けば少年漫画にありがちなハーレム物かと思うけど、これはなにせ女性作家さんが描かれたストーリーです。そんな都合のいい話じゃありません。
どう見ても、幸子は福田に対して異性の魅力を感じてない。ボンクラ教師でもそこんとこを見抜く眼は持ってる。
「私、17になっても処女というのがイヤで、そろそろ……」
「いやお前、それ嘘じゃん」
「……私、先生がたまらなく好きで」
「いや、それも嘘じゃん。あのさ、いい加減にしないと……」
「私、異星人なんですよ」
「…………」
「今は地球人の体を借りていて、地球人との子供をつくって来るように命令されてるんです」
「……そう来たか」
「合点がいって良かったです」
文字だけじゃ伝わらないかもだけど、この会話に私は凄くセンスを感じました。非凡だし、ぶっ飛んでるようでいて独特なリアリティーがある。
果たして、幸子はただの不思議ちゃんなのか、それとも本当に宇宙人なのか?
とりあえず福田は、幸子のブラックホールみたいな眼に吸い寄せられ、穴に挿れちゃうワケです。
「そんなにいいものでもないですね」
「…………」
「すみません、これって禁句ですか?」
「いや、別に」
ことを終えた直後の会話もリアルというか、生々しいですよね。しかも、こいつ本当に宇宙人かも?って思わせる含蓄もある。
で、もし妊娠しなかった場合は「またお願いします」と来たもんだ。
「いいもんじゃないんじゃなかった?」
「悪くもなかったです」
「…………」
宇宙人かどうかはともかく、幸子はどうやら本当に妊娠だけが目的らしく、キスだとか前戯だとか雰囲気だとかに全く興味を示さない。というか、そういうのが本当に解らないらしい。
で、幸子の穴はメチャクチャ気持ちいいのに……いや、だからこそ、セックスに感情が伴ってないことに福田はストレスを溜めていく。
一般的な男女とは立場が逆なワケだけど、もしかすると女性にもセックスに感情を求めない人がいるかも知れない。ふみふみこさん(原作者)が実はそうで、宇宙人っていうのは自虐の意味を込めたメタファーなのかも?
そんな幸子に、なぜか福田は惹かれていく。いつでもチョメチョメさせてくれる元カノ(青木佳音)にはちっとも欲情しないのに!
それは幸子の方が可愛いからなのか、若いからなのか、穴が気持ちいいからなのか? それとも、得られないからこそ求めてしまうのか?
そこんとこは謎のまま、めでたく子供を宿した幸子は、宇宙へと旅立つのでしたw
2幕目は、チビでハゲでおまけに真正のゲイという、三重苦を背負った中年教師(酒井敏也)に恋してしまった女生徒=小鳩(石川優実)の苦悩が描かれます。
振り向いてくれる筈のない相手を無理やり振り向かせるため、その弱みを握ってブタ扱いしちゃうサドとマゾのお話だけど、LGBTが理解されるようになってきた今となっては、むしろ小鳩の方がよっぽどマイノリティーで息苦しかったりする。
実際、先生がヤケになってゲイであることを授業でカミングアウトしたら、生徒たちが「そんなのとっくにバレてるよw」って、逆に場が和んで先生が救われ、小鳩がますます孤立しちゃう皮肉なシーンもありました。
クラスで孤立したような経験が無い人や、多数派に属することがステイタスだと思ってる人には、まったく響かない作品かも知れません。実際、アマ○ンのレビュアーたちはこの映画をどう楽しめばいいのか全然分からないみたいです。
だけど私は共感しまくりました。幸か不幸かw
いや、意外と、この映画の幸子や小鳩みたいな人は、決して少数派じゃないのかも知れません。みんな必死に隠してるか、自分はそうじゃないと無理して思い込んでるだけで。その方がよっぽど息苦しいのでは?
鑑賞後になぜか爽やかな後味が残るのは、幸子や小鳩こそがよっぽど自分らしく生きてるからかも知れません。
セクシーショットはこの映画のヒロインたち。市橋直歩さん、青木佳音さん、小林優実さんです。本物の女子高生と違うから、消すなや事務局はん。
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