予想外の面白さで2014年冬シーズンの大穴となった、TBS系列の月曜夜8時「月曜ミステリーシアター」枠で全11話が放映された警察ドラマ。今野敏さんの人気小説シリーズを映像化した作品で、制作はTBS&ドリマックス。
2019年春には続編となる2時間スペシャル『今野敏サスペンス/隠蔽捜査~去就~』も放映されてます。
警察庁長官官房総務課長という、エリート街道まっしぐらのキャリア官僚=竜崎伸也 警視長(杉本哲太)が、現職警察官による連続殺人という大不祥事発覚の折りも折り、大学受験を控えた息子がヘロイン煙草を吸ってる現場を見てしまい、警察組織そのものを崩壊させかねないスキャンダルと、自分の出世の道も絶たれてしまうであろう身内の犯罪を「隠蔽」すべきか否か、大いに悩み苦しむというストーリー。
キャッチコピーは「事件は現場だけで起きてるんじゃない! 会議室や家庭でも大変なんだ!」w
従来の警察ドラマだと、キャリア官僚が揉み消した不祥事を主人公=現場のヒラ刑事が暴いていくパターンが定番なんだけど、本作の場合はキャリア官僚が主人公。その点がまず新鮮で、しかも彼は不祥事を隠蔽しない!
一度嘘をついてしまえば、それを誤魔化す為にまた嘘をつくことになる。それが連鎖していく事こそが組織崩壊への道だと考える竜崎は、周りにいる全ての人間の反対を押しきり、自分が全責任を負う覚悟を決め、警察の不祥事も息子の犯罪も「隠蔽しない」道を選択するのでした。
それが第1話&第2話で描かれた、原作1巻目にあたるストーリー。第3話(原作2巻目)以降は、降格処分を受け入れて所轄=大森東警察署の署長となった竜崎が、署員たちの戸惑いや反発をものともせず「自分が正しいと思うこと」を貫き通し、やがて理解と信頼を得ていく姿が描かれます。
とにかく不器用で「正しいこと」しか出来ない竜崎伸也のキャラクターがすこぶる魅力的で、あらすじには「隠蔽すべきか否か大いに悩む」って書きましたけど、正確に言えば最初から彼の答えは1つしか無かった。ただ、隠蔽しないことによって警察幹部たちのクビが飛んだり、息子の将来や娘の縁談にまで悪影響を及ぼす恐れがあるゆえ、そりゃ人間として葛藤しないワケにはいきません。
けれど、それでも彼は信念を貫き、結果、いち早く公表したことで警察組織へのバッシングは予想よりも軽く、息子も自首をさせたことで保護観察処分という最も軽い罪で済み、奥さんからは「初めて父親らしい事をした」と褒められる(?)のでした。
現実はそこまで甘くないかも知れないけど、組織の不祥事を組織が揉み消しちゃいけない、家族の犯した罪を家族が見過ごしちゃいけない、そんな当たり前のことを実践した人間が(責任として降格処分は受けたにせよ)不幸にならなくて済んだ。本来なら全て当たり前のことなんですよね。
そんな当たり前のことが、現代社会においてはファンタジーになっちゃってる。竜崎はヒーローになりたいワケでも何でもない、ただ正しいと思ったことをやってるだけなのに、周りからはいつも「変人」呼ばわりされ、その度に「俺はマトモだ!」って言い返すのがまたお茶目なんだけどw、確かに彼こそが誰よりもマトモであり、彼を変人扱いする世の中の方がおかしい筈なんです。
そんな今まで見たことの無いキャリア官僚のヒーローを、連ドラ初主演の杉本哲太さんが実にチャーミングに演じてくれました。
『隠蔽捜査』はテレビ朝日でも2時間スペシャルで2作('07年と'08年に)ドラマ化されており、その時に竜崎を演じたのは陣内孝則さんでした。
エリート役は陣内さんの方が似合うんだけど、実直すぎて融通が効かない感じは杉本さんの方が圧倒的にハマってて、竜崎のキャラはそこが肝だと思うから、私はこのTBS版を支持します。(原作のイメージには陣内さんの方が近いのかも知れないけど)
ほか、竜崎と幼なじみで良きバディとなる警視庁刑事部長=伊丹に古田新太、その二人と同期ながら巧みな渡世術で警察庁長官官房長にまで上り詰める上條に生瀬勝久、竜崎が左遷された後も陰で支え続ける総務課長補佐=谷岡に青山倫子、大森東署のやさぐれ刑事=戸高に安田 顕、竜崎の妻に鈴木砂羽、娘に三倉茉奈、息子に佐野玲於、といったレギュラーキャスト陣。
ちなみにテレビ朝日版では古田さんの役を柳葉敏郎さん(竜崎役の陣内さんとは『キミの瞳をタイホする!』でも刑事役で共演)、安田さんの役を杉本哲太さん(!)、鈴木さんの役を原田美枝子さんが演じておられました。
ホントに面白かったです!
責任は全部俺がとる!最高です!
手柄も合理的に一番近くて早い人w
当たり前なのに、縦社会では縦を重んじるばかりに本当に動きが牛歩なんだろうなと思いました!
こういうキャラにまた会いたいですw
陣内さんと柳葉さんじゃ多分ここまで面白くはなってなくて、キャスティングの勝利でもあると思います。