ハリソン君の素晴らしいブログZ

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『あさひが丘の大統領』#05

2020-08-24 22:00:15 | 探偵・青春・アクションドラマ










 
☆第5話『オレはおまえの親父じゃない!』

(1979.11.14.OA/脚本=畑 嶺明/監督=佐藤重直)

テニス部員で寮生の長尾あき子(藤谷美和子)が、週末に実家に帰って以来、様子がおかしくなります。ふだんは一番の元気印なのになぜか表情が暗く、ひとりで物思いに耽ったり、喧嘩仲間の水野(井上純一)にいきなりラブレターを渡そうとしたり……

挙げ句に、土手で悪気なくぶつかって来た男子生徒を、怒って川に突き落とす暴挙に至り、高岩校長(宍戸 錠)や野口教務主任(秋野太作)から担任としての責任を追求され、小関先生(樹木希林)には「この男が生徒に愛情なんか持つワケない」とまで言われたハンソク先生(宮内 淳)は、売り言葉に買い言葉で「長尾の面倒はボクが見ます!」と宣言、青春ドラマの主人公になった気分で彼女を熱血指導します。

だけど普段の行いが災いし、まったく相手にされないハンソク先生は、仕方なくモテ男の小寺先生(谷 隼人)にアドバイスを求めます。

で、刑事ドラマの取り調べみたいに「アメとムチ」を使い分ける心理作戦を伝授されたハンソク先生が、ここで懐かしのボンボン刑事 in 太陽にほえろ!コスチュームを再現してくれるんですよね!(ハンソク先生の普段着も似たようなもんだけどw)

それでまずは長尾をチヤホヤし、「冗談はモミアゲだけにしてよ」と軽くあしらわれたところで「お前はいつもフザケすぎる!」とアンタにだけは言われたくない説教をかまし、手応えを感じたハンソク刑事……いや先生は、さらに「お前のお父さんが知ったら泣くぞ!」「お父さんを悲しませるようなことはするな!」と、男手1つで育てられた長尾の泣き所を突いて、本格的に怒らせてしまうのでしたw

でも、どうやら効果はあったようで、今度は長尾の方がハンソク先生になついて来る。なのに、こともあろうに彼は「もうやめた。面倒くさくなった」と言って今度は無視を始めちゃう。どうやら他の生徒たちから「エコヒイキだ」とブーイングを浴びてやる気を無くしたみたいです。

もうホント、ただのバカですよねw 最初のうちは笑って観てられるけど、言動があまりに幼稚すぎてだんだん腹が立って来ちゃう。宮内淳さんはボンボン刑事役の4年間で積み上げて来たものを、このハンソク先生役で全部ぶち壊してしまったかも知れません。

それで長尾の奇行はさらにエスカレートし、授業中にマンガを読みながら大声で笑うわ、それで優等生から注意されたら教室を飛び出しちゃうわで、明らかにハンソク先生の眼を引こうとしてるんだけど、アホのハンソクは「あ、そう。好きにしろ」と完全スルー。生徒の方は子供だから仕方ないにしても、先生まで同じレベルじゃどうしょうもありません。

で、こういう時に軌道修正してくれるのが「タックル」こと涼子先生(片平なぎさ)なワケです。長尾が実家に帰ってからおかしくなったことを知った涼子先生は、担任であるハンソクの代わりに長尾の父親(柳生 博)に話を聞きに行くのでした。

で、小さいながらも商事会社の社長を務める多忙な父親が、週末に急な出張が入って娘と会えなかった事実がここで判明します。そう、長尾はずっと楽しみにしてた父親とのデートをドタキャンされ、ホームシックになってたワケです。

私は高校を卒業してから20年以上ひとり暮らしだったけどホームシックになった経験がなく、片親でもなかったので長尾の気持ちは理解出来ないんだけど、そういう小さな出来事がキッカケで情緒不安定になっちゃう、思春期とはそういうもんだろうとは思います。

藤谷美和子さんがまた、そういう芝居がとても上手というか、ハマるんですよね。彼女自身にも「ぷっつん女優」と揶揄されるほど不安定な側面があったようで、制作陣はそこをストーリーに活かしたのかも知れません。

「あの子には淋しさを埋めてあげる人間が必要なんです。私が何とかしてみます!」と熱くなる涼子先生と、「一時期だけそんなことしても解決にはならないんじゃない?」と冷めた態度のハンソク先生。

どっちの言い分も間違ってはないんだろうけど、涼子先生の方が圧倒的に好感度が高いですw というよりハンソク先生の好感度が低すぎる。この差は本当にお二人の俳優人生を左右しちゃったかも知れません。岡田晋吉さんはご自分で育てたスターを自ら潰してしまったのかも?

それはともかく、心から生徒のことを想う涼子先生の熱意も、今の長尾には通じませんでした。ついには盛り場をほっつき歩いてチンピラに絡まれ、警察に保護される事態となり、すぐさま涼子先生が駆けつけるんだけど、ハンソクは相変わらず知らん顔。ここまで来たらもう、敬称略ですw

「来てくれなかったのね、大西先生……」

だけど長尾が泣きながら口にしたのは、涼子先生ではなくハンソクの本名でした。どうやら彼女は、水野やハンソクに「父親」を求めてたようです。

「ふざけんな! なんでオレがお父さんなんだよ。アタマおかしいんじゃないのか?」

校長たちに背中を押され、しぶしぶ長尾を迎えに来たハンソクは、この期に及んでも更に彼女を突き放します。

「なにがお父さんに会えないで淋しいだ! お父さんはお父さんなりに、懸命に働いてるんじゃないか! だったらそれで充分じゃないか!」

泣きながら尚も反抗する長尾に、ハンソクは追い討ちのビンタを浴びせてこう怒鳴ります。

「お前のお陰でこっちは迷惑してんだ! なんだその言いぐさはっ!?」

この瞬間、宮内淳さんは全てのファンを失ったかも知れませんw いやホント、これじゃ完全にヒールです。

「オレ、カッとなってひっぱたいちまったけど……分かんないんだよ」

さすがに反省したのか、時間が経ち、海岸で涼子先生と二人きりになった時、ハンソクは本音をこぼします。

「オレ、学校じゃバカばっかしやってたし、生徒からあんな風にまともに迫られると、どうしていいか分かんなくなっちまうんだ」

いやいや、あんた教師なんだから「分かんない」じゃ済まされないでしょう?

「私だって分かんないわ」

涼子先生、あんたもかいっ!?

「生徒のために何かしてあげたい。学園生活を少しでも充実したものにしてあげたい。そう思ってがむしゃらにやって来たけど……でも結局、ひとりで空回りしてた」

ここで、いつの間にか二人の背後にいた長尾が渾身のツッコミを入れます。

「冗談じゃないわよっ!」

その通り!バンと言ってやれ!と思いきや、その後に続く彼女のセリフは、私の予想とはまったく違った内容でした。

「お父さんが何だって言うのよ! 会えないからって淋しいワケないじゃない! あき子を子供扱いしないでよ! そんなんじゃないわよ……そんなんじゃないわよ!」

そう叫んで長尾は、ハンソクの胸に飛び込んで泣きじゃくります。

「そんなんじゃないわよ! そんなんじゃないわよ!」

「……バカヤロウ」

そう言ってハンソクが笑うと、長尾も満面の笑顔。ここで主題歌『新しい空』のスローバージョンがかかり、すっかり元気を取り戻した長尾の日常が描かれ、ドラマは爽やかに幕を下ろすのでしたw


……これ、リアルタイムで観た時にはサッパリ解らなかったし、大人になってDVDで再鑑賞した時も解らなかったんだけど、今回のレビューにあたってじっくり観直した結果、ようやく創り手の言わんとすることが解った……ような気がします。

つまり非常に単純な話で、長尾はハンソク先生の「お父さんはお父さんなりに、懸命に働いてるんだ!」っていう言葉で眼が覚めたんだと思います。自分のことばっかり考えて、お父さんの立場や気持ちを考えようともしなかったことに気づき、反省した。けど照れ臭いから「淋しいワケないじゃない!」なんて心にもないことを言ったんでしょう。

ハンソク先生は分からないなりにも、一番長尾に伝えるべきことを無意識ながら伝えたワケです。それは完全にマグレ当たりなんだけど、本気で彼女とぶつかり合ったからこそ生まれたマグレ。

正解なんて誰にも分からない。教師だからって生徒の気持ちを100%理解してコントロールするなんて出来っこない。けど、答えは意外と単純かも知れないから、とにかく逃げずにぶつかり合おうよっていう、そんなメッセージが込められてるんじゃないでしょうか?

しかしこれは解りにくいし、結果オーライにせよハンソク先生のイメージがやっぱり悪すぎる!w

無気力な生徒たちを奮起させるために、わざと挑発を続けた第2話のハンソク先生はちょっとだけ格好良かったけど、今回はサジを投げてヤケクソで叫んだ言葉がたまたま相手に響いただけ。そこに思いやりはカケラも見えません。

今回観ながら、ハンソク先生のキャラが裏番組『噂の刑事トミーとマツ』の松山刑事(松崎しげる)とそっくりなことに気づきましたw 当時のトレンドだったんでしょうか?

青春ドラマの主人公、学園ドラマの教師としては新しかったのかも知れないけど、このハンソク先生さえ演じなければ宮内淳さんの俳優人生はもうちょっと違ってたかも?と考えると、ファンだった者としては複雑な気持ちになっちゃいます。余計なお世話なのは重々承知ですが。

けれど『あさひが丘の大統領』はやっぱり面白い。結果はどうあれ内容がチャレンジングだし、キャストが生徒役に至るまで芸達者揃いだからドタバタ場面もちゃんと笑えます。

特に藤谷美和子さん(当時16歳)の輝き方はハンパじゃないし、演技も抜群に上手い。プッツン的な要素さえなければもっと活躍して大女優になられたかも知れません。

そんな藤谷さん、刑事ドラマとはあまり縁が無かったかと思いきや、舘ひろし版『太陽にほえろ!』の3作目(押尾学が新人刑事を演じた『七曲署捜査一係'99』)にゲスト出演されてたんですね!(これ、私は観てません)

それと中村雅俊&勝野洋コンビによる角川映画『刑事珍道中』のヒロイン役も忘れられません。鎌田敏夫脚本&斎藤光正監督で、長谷川諭くんも出てたりして妙に日テレ青春ドラマ色の濃い作品でした。これと『海燕ジョーの奇跡』はファン必見です。
 


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2 コメント

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Unknown (ゼリー)
2020-08-26 09:00:58
太陽にほえろ!でも、ナーコの後任として、藤谷美和子さんがキャスティングされていたら弾けていたでしょうね(笑)
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Unknown (harrison2018)
2020-08-26 09:09:37
確かに弾むでしょうけど、重いストーリーとのバランスが取れずメチャクチャになりそうですw マスコットガールとしては華がありすぎて絶対あり得ないけど、1回かぎりでいろんな女優さんがお茶汲みを務めるみたいなお遊びはあっても良かったかも?

ちなみにコメントは今、私がチェックしてから載せる設定になってますので、投稿してからタイムラグが生じることをご了承下さいm(__)m
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