☆第56話(最終回)『平和の鐘よ、勇者の頭上に鳴り渡れ!!』
(1975.9.28.OA/脚本=藤川桂介/演出=山吉康夫/作画監督=森 利夫)
パイロットの剣 鉄也が気を失い、動かなくなったグレートマジンガーを押し潰すべく、戦闘要塞デモニカが突進して行きます。
科学要塞研究所の所長=兜 剣造博士は、グレートマジンガーの飛行強化ユニットである「グレートブースター」を遠隔操作する事で鉄也を救おうとします。
「弓博士! もしこの作戦が失敗したら、次の作戦に掛からなければなりません。皆と一緒に、地下の第二管制室まで行って下さいませんか?」
「いや、それは構いませんが、その作戦とは一体何ですか?」
「今それを話してる時間がありません。とにかく早く地下へ!」
弓教授と兜シローは、詳細を言わない兜博士に不安を覚えます。
「ねぇ、お父さん! あのブースター作戦は、失敗なんかしやしないよね!?」
「させないとも。ただ、万一のことを考えての第二作戦だ」
「お父さん、頑張ってね!」
兜博士を1人残して、所員たちは全員地下へと移動します。
博士は遠隔操作でブースターとマジンガーのドッキングを成功させますが、デモニカのミサイル攻撃により、あえなく撃ち落とされちゃいます。
それは想定内だったのでしょう、博士はすぐさまプランBを実行すべく、研究所の管制塔を浮上させます。この科学要塞研究所は土台部分を切り離して飛行する事が出来るんです。
「兜博士!?」
「お父さん!!」
「私は鉄也くんを救いに行く。みんなは研究所を潜水させて逃げるんだ!」
「お父さん! 行っちゃイヤだっ!!」
「私たちも一緒に行こう!」
「いや、いかん! あなたはシローやさやかさん、そして所員の諸君を頼みます!」
つまり、特攻です。鉄也を救う為に兜博士は、自らの生命と研究所を犠牲にしようとしてるのでした。
「甲児、シロー……またお前たちを、孤児にしてしまうな……今度はもう、生き返ることも出来まい。2人でしっかり生き抜いて行くんだ」
そして管制塔はデモニカに体当たりして大爆発! が、残念ながらデモニカを破壊するには至らず、機首を損傷させるに止まりました。それでも、鉄也の生命を救うという目的は果たせたのです。
「何だって、さやかさん!? もう一度言ってくれっ!!」
光子力研究所で戦闘獣グレート・マンモスと交戦中の兜 甲児は、弓さやかによる急報を聞いて愕然となります。ただし、兜博士の生死はまだ不明とのこと。
「くそーっ、鉄也なんかの為に、お父さんが!」
怒りに燃えた甲児=マジンガーZは底力を発揮し、ドリルミサイル、冷凍光線、アイアンカッターの連続技で戦闘獣を撃破すると、すぐさま科学要塞研究所へと駆けつけます。
兜博士は瓦礫の下敷きになりながらも、まだ意識がありました。マジンガーから飛び降りた甲児は、瀕死の父を抱き起こします。
「お父さんっ!!」
「甲児……シローを頼むぞ……」
「どうしてこんな無茶な事をしたんです!?」
「鉄也くんは、お前とのわだかまりを捨てて飛び出して行った……まるで兄弟のピンチを救おうとするようにな」
「…………」
「彼は私にとって、本当の子供と同じなんだ。父親が、子供のピンチを見捨ててはおけんだろう?」
「お父さん……」
「甲児……誰にも温かな気持ちを持つんだ。忘れてはいかんぞ……」
「はっ、お父さん!?」
兜剣造、絶命……甲児は二度、父を亡くした事になります。
地下・第二管制室のモニターで、弓教授らも兜博士の最期を見届けました。シローは泣きじゃくり、さやかは失意の甲児をフォローすべく出撃しようとしますが、再び父=弓教授に止められます。
「いかん! お前の手に負える相手ではないと言った筈だ! それより鉄也くんと兜博士を収容するんだ。甲児くんには要塞を防いでもらおう」
「お父様、そんな! 甲児くんは今……」
「泣く事はいつでも出来る! いま甲児くんがしなければいけない事は、二度とあのような悲劇が起こらぬようにと、災いの元を絶つ事だ。それが兜博士の死を無駄にしない事になるんだ!」
そんな弓教授の指令を受けて、甲児は立ち上がります。
「見ていろ、要塞め!」
再びマジンガーZに乗り込んだ甲児は、すっかり影が薄くなっちゃった主人公=剣鉄也&グレートマジンガーをフォローします。
「鉄也くん、しっかりするんだ! もうすぐ助けが来るからな!」
「く、くそぉ……俺も一緒に行くぞ!」
「そんな身体ではムリだ。ここは鉄也くんの分まで頑張るぜ!」
駆けつけた炎ジュン&ビューナスAに鉄也を託し、マジンガーZは要塞デモニカへと突っ込んで行きます。
「あっ、マジンガーZめ!」
「ええい、ヤツを片付けろっ!!」
ヤヌス侯爵と地獄大元帥が喚きますが、デモニカ機内で大暴れするマジンガーZを誰も止めることは出来ません。
父の仇、そして1年前の屈辱を今、倍にして返す兜甲児&マジンガーZの晴れ姿! シリーズの主役はやっぱ甲児&Zなんですよね。
その時、本来の主役である鉄也は夢を見ていました。独りで闇の中をさまよう悪夢です。
「ここは何処だ? 戦いは終わったのか!?」
すると地面からにゅう~っと青白い手が伸び、鉄也の足首を掴みます。
「ああっ、誰だ!?」
現れたのはフードを被った悪霊で、鉄也を闇の底へと引きずり込もうとするんだけど、子供番組にこのビジュアルはいくら何でも恐すぎますw
「お前に取り憑いている死神だ。お前も兜剣造と同じく、俺の手元に来たというワケだ」
「兜博士が? 馬鹿を言うなっ! 俺は死ぬもんか! 死んでたまるかっ!!」
「鉄也! 鉄也、しっかりして!」
ジュンの声で目覚めた鉄也は、そこで初めて兜博士の死を知る事になります。
「それじゃあ、あの夢は正夢だったのか!」
一方、マジンガーZは悪霊型戦闘獣を束ねるハーディアス将軍の襲撃を受け、ピンチを迎えます。鉄也の悪夢も、ハーディアスが発する怨みの念波が影響したのかも知れません。
得体の知れない敵幹部に劣勢を余儀無くされるZを見て、甲児のパートナー=さやかが遂に痺れを切らします。
「みんなが命懸けで戦ってるのに、此処でノホホンと見物なんて出来ないわ!」
父の制止を振り切って出て行くさやかに、シローが叫びます。
「待って、さやかさん! 僕も光子力研究所のお父さんの所へ連れてって! お願い!」
「……分かったわシローちゃん。一緒にいらっしゃい!」
シローを後部席に乗せて、さやかが愛車=スカーレット・モビル(ダイアナンAの操縦席)をかっ飛ばします。
「甲児くん死なないで、甲児くん!」
今回あまりに出番が少ない弓さやかが、やっと彼女らしい姿を見せてくれました。甲児と直接絡むシーンが無いのは返す返すも残念です。
しかし、甲児はさやかの救援を待たずして、何とか悪霊将軍をやっつけます。『グレートマジンガー』の最終回にして、ほとんどの敵をマジンガーZが倒しちゃうワケです。
「要塞め、今度こそやっつけてやる! ブレストファイヤー!!」
必殺の熱線をデモニカに浴びせるZですが、科学要塞研究所の特攻にも耐えた巨大要塞ですから、戦闘獣と同じようには行きません。Zの機体がオーバーヒートを起こし、要塞とどっちが先に焼け焦げるかの我慢比べ。
「お父さんを殺した、貴様たちを地獄の底に叩き落とすまで、死んでたまるかっ!」
一方、グレートマジンガーはマトモに歩くことも出来ず、敵歩兵たちの銃撃を受けてフラつき、膝を着くという体たらく。
「くそぉ、何てザマだ! こんなヤツらに手こずるグレートマジンガーではなかったのにっ!」
「ジャンジャジャーン!」
そこに駆けつけたのがボスボロットです。
「あとは俺に任せておけよっと!」
いつも足手まといになって鉄也にバカにされるボロットだけど、今回ばかりは頼れる救世主として、歩兵たちを一掃してくれました。
「ボス! 何とかあの要塞をやっつけたいんだ! 俺の為に、大事な命を懸けてくれた所長への、せめてもの贈り物にするんだ! さぁ、早くあの丘に連れてってくれっ!」
「よぉし、任しとけ!」
取り柄の馬鹿力を発揮し、ボロットはグレートを担ぎ上げて丘の上を全力疾走、槍投げよろしく加速をつけてグレートを大空へと放り出します。
その勢いに乗せてスクランブルダッシュを成功させたグレートが、デモニカへの総攻撃にようやく参戦します。
「鉄也さん!?」
「大丈夫、鉄也!?」
既に兜博士の遺体を光子力研究所に収容したビューナスA、そしてダイアナンAも攻撃に加わってました。
「俺に掴まるんだ、鉄也くん!」
「ありがとう、甲児くん」
「さっ、もう一息だ!」
「よし! ブレストバーン!!」
マジンガーZの肩を借り、グレートマジンガーも必殺ビームを繰り出します。
心を1つにした鉄也&甲児、そしてジュン&さやかの想いを乗せた熱線が、ついに難攻不落の要塞デモニカを、地獄大元帥&ヤヌス侯爵もろとも木っ端みじんに吹き飛ばすのでした。
戦いは終わりました。実は黒幕である「闇の帝王」は健在ですからミケーネ帝国が滅びたワケじゃないんだけど、こうして戦力のほとんどを失った以上、しばらくは現れない事でしょう。
それよりも気になるのは、心身共に深手を負った剣鉄也です。ジュンに付き添われ、鉄也は病室のベッドにいました。
「兜博士……どうか俺の至らなさを許して下さい。所長は俺に、甲児くんやシローに劣らない愛情を示してくれた。所長は俺に、命を懸けて大きな愛を教えてくれたんだ……」
「鉄也……早く治って、所長の愛に応えなければいけないわ」
「……まったく俺はどうかしていた。孤児の境遇を恨みながら、シローや甲児くんを孤児にしてしまったんだ! 俺の浅はかな孤児(みなしご)根性が……!」
鉄也が涙を零します。恐らく、ジュン以外の人間には決して見せない涙でしょう。
「……鉄也、もう一度やり直しましょう。甲児くん達と手を繋ぎ合って、兜博士の大きな愛に応えるのよ」
「……ジュン、正直に言ってくれ。俺は、再起出来るのか?」
「鉄也、あなたはどんな苦しみにも耐え抜いて来た人じゃないの。絶対に再起するのよ。絶対に!」
「ジュン……」
「鉄也……」
手を握り合う2人は、恋人どうしというより兄妹に見えます。甲児&さやかのカップルとは、やっぱ背負ってるものが違うんですよね。
一方その頃、甲児、さやか、シロー、弓教授らは教会で、亡き兜博士の魂に祈りを捧げてました。その頭上で鐘が鳴り響きます。
「お父さん……もう全てが終わりましたよ。静かに眠って下さい」
「もう泣かないよ、僕。お父さんと暮らした日々は短かったけど、とっても楽しかった。お父さんを困らせてばかりで、ごめんなさい」
「シロー……」
ナレーションによりグレートマジンガー、マジンガーZ、ビューナスA、ダイアナンA、そしてボスボロットは、平和のシンボルとしてロボット科学博物館に展示される事、そして兜甲児は宇宙科学(UFO研究)を学ぶべく再びアメリカに旅立つ事が告げられます。(後番組『UFOロボ・グレンダイザー』への伏線になります)
剣鉄也に関しては「きっといつか再起するであろう」との事でw、救いが無いまま終わっちゃうのはやっぱ、’70年代の「挫折の美学」なんでしょう。
だけどご安心あれ、翌年公開の劇場映画『グレンダイザー・ゲッターロボG・グレートマジンガー/決戦!大海獣』において、剣鉄也はケロッと元気にグレートマジンガーを操縦してましたw
その際、兜甲児はマジンガーZに乗らずグレンダイザーのサポートに徹しており、再び我々ファンにフラストレーションを与える事になります。色んな意味でシリーズの主役は、やっぱ甲児なんですよね。
でも、だからと言って鉄也が主役を降ろされたワケじゃなくて、今回の挫折、言わば「ぶざまな姿」が描かれたのは、完全無欠な戦闘員として登場した剣鉄也を、最後にちゃんと生身の人間に戻してあげようっていう、創り手の愛だったんじゃないかと私は思います。
代わりに甲児&マジンガーZが大活躍したのも、1年前の雪辱を果たさせる意図も勿論ありつつ、より鉄也を人間らしく描く為の、言わば引き立て役だったんじゃないでしょうか?
その証拠に、甲児の大活躍よりも鉄也の涙の方が、より強く我々の胸を打つ『グレートマジンガー』最終章でした。
「さようなら、グレートマジンガー! さようなら、マジンガーZ! 君達は、いつまでもいつまでも、我々の心の中で生き続けて行く事であろう!」
(完)
子供の頃全話見たはずなのに、こんな強烈なエピソード忘れてますもの、私も(泣)
いくら何でもシリアス過ぎたのと、剣鉄也の悩みがヒーローとしては矮小すぎて共感しづらかったこと、そして子供には理解しづらかったこと等から、心に引っ掛からずスルーしちゃったんでしょうね。
スコッチ刑事も子供には嫌われてましたから、ああいう暗さを楽しむには人生経験が必要なんでしょう。再評価されて欲しいですね。
甲児とZが再登場し、ダブルマジンガーが活躍する最終4話はとても面白く、感動的なフィナーレでした
誰にでも温かな気持ちを忘れてはいかんぞ
は、我々へのメッセージでもあったんでしょうね