さて、いよいよ今回、我らがヒーロー・剣 鉄也が豹変しますw
前回から何日後の話なのか判りませんが、半壊した光子力研究所が綺麗に復元されてますから、結構な月日が経ってるのかも知れません。
その間に何があったのか視聴者は知る由もなく、いきなり別人みたいになった鉄也を見て誰もが驚愕したんじゃないでしょうか?
簡単に言えば鉄也はノイローゼ状態に陥り、自分の殻に閉じこもっちゃう。アムロ(ガンダム)やシンジ(エヴァンゲリオン)の内省的キャラクターは、別に新しくも何とも無かったワケです。
☆第55話『明日なき総力戦!! 鉄也・甲児を地獄へ送れ!!』
(1975.9.21.OA/脚本=藤川桂介/演出=明比正行/作画監督=森下圭介)
冒頭、科学要塞研究所の周辺で飛行訓練するグレートマジンガー&マジンガーZの勇姿が描かれ、我々ファンがワクワクしたのも束の間、いきなりグレートがおかしな動きを見せます。飛行中のZに横から下から急接近し、接触事故になりかねない危険運転。
「危ない! 鉄也くん、何をするんだ!?」
「この位の事をしなくちゃ、訓練の内に入らないぜ」
面食らったZのパイロット=兜 甲児に対して、冷たく言い放つ鉄也。声のトーンもいきなり悪役チックになってますw その後もZの飛行をしつこく妨害するグレートに、甲児はただ困惑するばかり。
「やめろ、鉄也くん!」
すると今度は、急にバランスを失ったグレートが海中へと墜落して行きます。
「はっ、鉄也くん!? どうしたんだ!? 鉄也くん!!」
心配して海上を飛び回るZですが、不意打ちで浮上して来たグレートにバランスを崩され、自分が墜落する羽目になっちゃいます。
「甲児くん、油断をするな! そんな甘っちょろい事では、作戦のリーダーにはなれやしない!」
油断するなと言われても、ヒーロー番組の主人公が墜落事故を装ってまで嫌がらせして来るなんて、誰にも予想出来やしませんw
作戦会議においても、鉄也は甲児の意見に真っ向から反対します。
敵の本拠地を突き止め、ダブルマジンガーで総攻撃を仕掛け、一気に戦いを終わらせよう!っていうのが甲児の意見。かつてドクターヘルとの戦争もそうやって終結させたのです。
「だからさっきから言ってる通り、俺は反対だ! 無用の刺激をするべきじゃない!」
「無用の刺激? 鉄也くん! そんなこと言ってると、被害を大きくして行くだけなんだ。一刻も早く奴らの本拠地を叩き潰して、みんな安心して生活出来るようにしなければ!」
「しかし甲児くん、そう簡単に本拠地が突き止められると思っているのか? 突き止める前に、万一敵に感づかれでもしたら、かえって奴らを凶暴化させ、今まで以上に被害を出す事になるかも知れないんだ!」
「意外だなぁ、鉄也くん。キミらしくないぜ。こういう事には決断が必要だよ。いつまでもグズグズと戦いを続けているべきじゃないと思うんだがな」
確かに、剣鉄也はこんなに保守的な性格じゃなかった筈。もしかすると、戦いを終わらせたら自分の居場所が無くなっちゃうから?なんて、邪推したくなって来ます。
鉄也は、結論を兜 剣造博士に委ねます。
「所長! 所長の意見を聞かせて下さい。これじゃあいつまでも平行線です」
「お父さん」
「!!」
甲児としては何の他意も無く、自分の父親を「お父さん」って呼んだだけですが、鉄也が過敏に反応します。甲児に対する過剰なライバル心が鉄也に芽生えたのは、やはり兜博士が原因みたいです。
その兜博士は、光子力研究所から出向中の弓教授と相談する、との結論でお茶を濁します。実の息子だから甲児の意見を却下出来ないんだ、と鉄也は邪推したかも知れません。
鉄也と甲児の結束が完全に崩れた最悪のタイミングで、また新たなミケーネ戦闘獣が接近して来ます。
「鉄也くん! 甲児! 冷静に行動するんだ。いいな!」
グレートマジンガーとマジンガーZの出撃が(それぞれのテーマ曲も)交互に描かれるという、本来ならば最高に燃えるシチュエーションなのに、鉄也のモノローグは甲児に対する罵詈雑言ですw
「くそっ、兜甲児なんかに負けられるか! 俺は誰にも救われない孤児なんだ。兜博士の手の中で、ぬくぬくと生活出来るアイツとはワケが違うんだ!」
念を押しておきますが、剣鉄也はこの番組の主人公であり、全国のチビッコ達の模範となるべきヒーローなんですw
「鉄也くん、戦闘獣を爆破するな。負傷させて相手の本拠地に向かわせよう」
「そんな呑気な事をしていられるか! 1年前の作戦とは違うんだ! 今はスピードだよ。挑戦して来るヤツは、叩き潰すんだ!」
そう言って鉄也は、なぜかグレートマジンガーを海中へと潜らせます。
「おい、鉄也くん! 決定した作戦だ! 勝手に変更しちゃダメだ!!」
作戦決定は後延ばしにされた筈ですが、兜博士が甲児の提案を採用するシーンがカットされたのかも知れません。だとしたら、ますます鉄也の対抗心を煽った事でしょう。
グレートが海から出て来ないもんで、Zは単独で戦闘獣ゴールド・フェニックスと戦う羽目になります。思えば毎回、どんなスペックを備えてるか全く不明な敵を迎え撃つワケですから、マジンガーのパイロットってのは実に恐ろしい職業です。
ゴールド・フェニックスは素早い動き&大量の速射ミサイルで、マジンガーZに一撃を食らわせます。
「うわあぁぁ! てっ、鉄也くぅーん!!」
海に墜落するZをモニターで見ながら、鉄也はほくそ笑みますw
「馬鹿だなぁ。ヤツらが攻めて来てるのも忘れて、何が作戦だ。用も無いのに海に潜ったとでも思ってるのか!」
急浮上したグレートは、ゴールド・フェニックスに背後から攻撃を仕掛けます。
「ドリルプレッシャーパンチ!!」
不意を突かれ、弱点である人面部分に風穴を開けられたゴールド・フェニックスは、もはや戦闘能力を失った状態。泳がせて本拠地まで案内させるにはうってつけ、なのですが……
「生き残る為には、こうしなくちゃならないって事を分からせてやる! ブレストバーン!!」
グレートは間髪入れずに必殺技を浴びせます。
「鉄也くん! そいつをやっつけてしまったら、敵の本拠地が突き止められないぞ!」
「うるさい、黙って見てろ! 俺のやり方に口を出すなっ!」
「鉄也くん、逃がせ! 逃がすんだっ!」
慌てて浮上したマジンガーZの目前で、爆発したゴールド・フェニックスは海の藻屑となっちゃいました。
「鉄也くん、どうしてキミは!?」
「ふんっ、あばよ!」
捨て台詞を吐いて、グレートはサッサと引き上げて行きます。全国のチビッコ憧れのヒーローが「ふんっ、あばよ!」ですよw
「見損なったわ! あなたってそんなにちっぽけな人間だったの!?」
さすがにパートナーの炎ジュンも、帰還した鉄也に食ってかかります。
「ちぇっ、俺にお説教するつもりかい。兜甲児と俺とは、根っから違うんだよ。何と言っても、所長と俺とは血の繋がらない、赤の他人だからな!」
ジュンは思わず鉄也にビンタを繰り出します。
「鉄也! あなた、いつからそんなヒガミ根性を持つようになったの!?」
「……俺だって血の通った人間だぜ。感情だってあるんだ。所長に庇われて、ぬくぬくと暮らしてる兜甲児のお坊っちゃんぶりが、気に入らねえんだよ!」
甲児は別にぬくぬく暮らしてるワケじゃないですから、こりゃ言いがかりもええとこです。
「アイツのやり方がまかり通ったら、俺たちはどうして今まで命を懸けてやって来たのか、分からないじゃないか!」
「…………」
「これで弓さやかが帰って来てみろ。2つの家族の間で、俺たちはハミダシ者になるだけなんだ!」
「…………」
アメリカにいる甲児のパートナー=弓さやかは、光子力研究所の所長である弓教授の一人娘です。そんなサラブレッドな2人に対して、鉄也とジュンは兜博士に拾われた孤児。気持ちが解るだけに、ジュンは何も言えなくなっちゃいます。
「俺たちが生き残る為には、兜甲児に勝つしか無いだろう!?」
「鉄也……」
被害妄想と言ってしまえばそれまでだけど、肉親の愛に恵まれなかったがゆえ、それに執着せずにいられない心理は理解出来ます。過酷な訓練&実戦に耐える心の拠り所が、鉄也にとっては兜博士の存在だった。
そんな2人のやり取りを、物陰で兜博士が聞いてました。今、一番ツラいのはこの人かも知れません。
さて、それにしてもミケーネ軍団の諜報スキルには目を見張るものがあります。整列する部下たちを前に、地獄大元帥はこんな指令を下しました。
「いよいよ我々にもチャンスが来た。強敵・剣鉄也と兜甲児の間がうまくいっていない! 今こそヤツらの隙につけ込んで総力戦を挑み、一気に世界制覇を成し遂げてしまうのだ!!」
せ、せこい……w けれども、実に理に適った立派な作戦です。まずは諜報部隊のキャットルー軍団が、光子力研究所に戻った甲児を襲撃します。それを知った弟=兜シローが鉄也に助けを求めるのですが……
「大変だよ! お兄ちゃんが、甲児お兄ちゃんがキャットルー達に襲われているんだ!」
「ええっ?」
「助けて、早く助けて! ねえ早く!!」
敵の襲来となれば、さすがに鉄也も動かざるを得ない……と思いきや、兜博士の無線連絡を受けて再び心を閉ざしちゃいます。
「鉄也くん! 至急、管制室まで来てくれたまえ! 鉄也くん、聞いてるのかっ!?」
「…………」
敵は更に戦闘獣グレート・マンモスを光子力研究所へと送り込み、マジンガーZにドッキングしようとするジェットパイルダーを今回も執拗に攻撃させます。
一方、科学要塞研究所にいる鉄也は管制室まで足を運んだものの、まるで魂が抜けたかのように無表情です。
「鉄也お兄ちゃん! 甲児お兄ちゃんの兄貴は、鉄也お兄ちゃんじゃないか! 僕たちみんな兄弟みたいなもんじゃないかっ!! ねえ、何をそんなに怒ってんだよぅ!?」
「…………」
シロー必死の叫びにも、鉄也は反応しません。眼が完全にイッちゃってますw
「鉄也くん、つまらん事にこだわらんでくれ。シローの言う通り、私たちは親でも子でもない。お互いに心の通じ合った兄弟として、この日本を悪の手から救わなければならんのだ!」
「…………」
つまり、血の繋がりなんか関係ない。甲児も鉄也も、所員みんな含めて分け隔てなく兄弟なんだ!って兜博士は言ってるワケだけど、言い方が難解で鉄也に伝わらなかったかも知れませんw
「鉄也のバカ!」
見かねたジュンが、ビューナスAを出撃させ、光子力研究所に向かいます。
そして『マジンガーZ』からのファンが待ちに待った、我らがヒロイン=弓さやかもようやく帰国し、赤いスポーツカーで颯爽と登場します。(声優さんのギャラとかスケジュールの問題で登場が遅れたんでしょうか?)
ビューナスAとボスボロットの参戦により、ようやく甲児はマジンガーZの起動に成功しますが、今回の戦闘獣はグレート・マンモスと名乗るだけあって強敵です。
そこでいよいよ、我らが剣鉄也が動き始めます。どのタイミングで我に返ったのか描かれてないんだけど(カットされた?)、主人公がいつまでもノイローゼじゃ話が進みませんからw
「所長、俺はどうかしていたんだ。甲児くんより兄貴のクセに、変にひがんだりして……甲児くん、いま助けに行く! 待っていてくれっ!」
しかし、出撃の遅れは敵にとって大チャンス。グレートマジンガーの出撃を待ち構えてた、今回3機目の戦闘獣=バルカニアの奇襲攻撃により、あっけなくグレートは墜落しちゃいます。
「残念だ。我々の戦力は完全に分散させられてしまった!」
兜博士の言う通り、ミケーネ軍の術中にまんまとハマった科学要塞研究所は、またもや戦闘要塞デモニカの猛攻撃を受ける羽目になります。残る戦力は、さやかが搭乗するダイアナンAのみ。
「お父様! 私に出撃させて!」
「ま、待て! グレートマジンガーでさえ手に負えないのだ。お前の手に負える相手ではない!」
娘のムチャを諫める弓教授に、兜博士がある覚悟を胸に秘め、進言します。
「弓博士、お願いがあります。下の避難室に移って頂きたい!」
「兜博士……」
「私は、鉄也くんを見殺しには出来ん。残された手段がある限り、彼を助けます!」
「お父さん……」
「シロー、行くんだ」
「兜博士、私があなたを1人置いて避難する事が出来るでしょうか? あなたが甲児くんと同じように鉄也くんやジュンくんを想う気持ちはよく解ります。いや、私だって鉄也くんやジュンくんの父親と同じなんです!」
「弓博士……」
一方、何とか闘志を取り戻した鉄也は、満身創痍になりながらも捨て身の攻撃で戦闘獣を撃破! ところがその爆風をモロに受けたグレートマジンガーが断崖の下へと転落し、鉄也は気を失ってしまいます。
1年前、絶体絶命のマジンガーZを圧倒的な強さで救った、あの神々しいまでのグレートマジンガーの勇姿が、まるで幻みたいに思えてしまう体たらく。
どんなに強い戦士であっても、心の弱点だけは克服出来なかった。完全無欠な戦闘員として登場した剣鉄也だからこそ、この脆さ、人間臭さは痛烈に我々の心を揺さぶります。
さて、いよいよ地獄大元帥はグレートにトドメを刺すべく、要塞デモニカを方向転換させます。
「兜博士、要塞が方向を変えている! グレートマジンガーを攻撃するつもりらしい……」
「…………」
超合金ニューZで装甲されたグレートとは言え、巨大要塞の体当たりをマトモに食らったらどうなるか分かりません。少なくとも、生身の人間である鉄也の生命は……
頼みの綱であるマジンガーZもビューナスAも、まだ戦闘獣グレート・マンモスと交戦中で鉄也を助けることは出来ません。
グレートマジンガーは、一体どうなってしまうのか? そして剣鉄也の運命や如何に!?
(つづく)
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