ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『逃亡者』

2018-10-01 12:00:17 | ハリソン・フォード










 
ここらでハリソン・フォードの代表作を1本ご紹介しておきたいのですが、素晴らしい作品が沢山あり過ぎて1つに絞るのは至難の業です。

『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(’80)がシリーズ中の最高傑作と云われるのは、間違いなくハン・ソロ=ハリソンの功績だし、ルーカス&スピルバーグ両巨匠と組んだ冒険活劇『インディアナ・ジョーンズ』シリーズ(’81~’08)はどれも甲乙つけ難い傑作揃いです (とはいえ4作目は微妙かな?w 是非とも第5作で有終の美を!)。

『ブレードランナー』(’82)は巨匠リドリー・スコット監督の代表作にしてカルトSFの金字塔だし、ピーター・ウィアー監督と組んだ『刑事ジョン・ブック/目撃者』(’85)は演技派としての実力を遺憾なく発揮した名作です(アカデミー主演男優賞ノミネート)。

名匠マイク・ニコルズ監督と組んだ『ワーキング・ガール』(’88)は助演だけど是非ともオススメしたい痛快作だし、CIAアナリスト=ジャック・ライアンに扮した『パトリオット・ゲーム』(’92)『今そこにある危機』(’94)も確実に楽しめるポリティカル・アクション映画です。

さらに米国大統領に扮してテロリスト軍団と飛行機内で闘ったダイ・ハード型アクション『エアフォース・ワン』(’97)も捨てがたい! 私の飛行機から出ていけ!

ヒットした作品もそうでない作品も、駄作と言えるものは1本もありません。出演作の選択眼もさる事ながら、自らの演技によって作品のクォリティーを確実に底上げしちゃう、マイク・ニコルズ監督曰わく「俳優界のフェラーリ(名車)」なんです。

そんな中で、ハリソン主演作をこれまであまり観て来なかった方に、まず1本だけオススメするとしたら、私は『逃亡者』(’93)を選びたいと思います。人気面においてハリソンの絶頂期に創られた、数ある大ヒット作の1つです。

TVシリーズの映画化としても恐らく、内容的にも興行的にも史上最も成功した作品で、トミー・リー・ジョーンズにアカデミー助演男優賞をもたらし、一躍トップスターに押し上げた作品でもあります。

監督はスティーヴン・セガールの出世作『沈黙の戦艦』(’93)を手掛けたアンドリュー・デイビスで、出番は少ないけど女医役でジュリアン・ムーア(画像)も出演してます。

外科医リチャード・キンブル(ハリソン)が妻殺しの濡れ衣を着せられ、死刑判決を受けて護送される迄のいきさつが、冒頭ほんの10分ほどで実に手際良く描かれ、ハリソンの好演もあって我々はすんなりと物語に入って行く事が出来ます。

さらに、護送車が事故を起こして列車と衝突する大スペクタクルがあり(CGではなく本当にぶつけてます)、逃げ出したキンブルが地方の病院で寝たきりの老人から食事と衣服をふんだくりw、救急車を奪って逃走するも連邦保安官ジェラード(トミー)のヘリに追い詰められ、ダムから決死のジャンプ&ダイブで命からがら逃れるまで、一気に畳みかける見せ場の連続が素晴らしい!

こうして書くと、リチャード・キンブルって奴は医者のクセにアクティブ過ぎる気もするけど、逃げなきゃ確実に死刑なワケだし、愛する妻を殺した真犯人も探さなきゃいけないしで、そりゃもう必死です。

それと、やや現実離れしたキャラクターに実在感をもたらせる手腕こそが、ハリソン・フォードの真骨頂なんですよね。『エアフォース・ワン』の闘う政治家(大統領)なんかも、ハリソンでなければ成立しなかった事でしょう。

知性と攻撃性、ナイーブさとタフさ、温かさと非情さといった相反する要素を、同時にバランス良く表現出来る才能はハリウッドでも随一だと私は思います。

序盤から緊迫した場面が続いた分、中盤以降はややペースが落ちるんだけど、観てる我々はもうすっかりキンブルに感情移入してますから、退屈に感じる事はありません。優れた脚本、手際良い演出、そしてハリソンのお陰です。

で、その中盤から俄然、存在感を増して来るのが、ジェラード連邦保安官ことトミー・リー・ジョーンズです。

カミソリみたいに鋭い洞察力と非情さで、容赦なくキンブルを追い詰めて行くジェラードはどう見たって悪役なんだけど(あの顔だしw)、逆にキンブルが無実である事に気づいてくれそうなのは、この人しかいないんですよね。

キンブルは逃走しながら必死に真犯人探しをする中、怪我人や病人を見掛けると医者の本能で助けずにはいられない。だけどそれは、追跡者たちに自ら居場所を教えてしまうに等しい自殺行為なんですね。

他の捜査員たちがキンブルを捕まえる事しか頭に無い中でジェラードだけは、危険を冒してまで人助けせずにいられないキンブルの人間性をしっかり見てる。

キンブルがついに真犯人を突き止めるクライマックスになると、警察はもはやキンブルを射殺する構えで、まさに四面楚歌。そんな絶望的な状況下において、宿敵ジェラードの存在がなんと心強く頼もしい事か!

トミーもまたハリソンに劣らず、非情さと温かさを同時に表現する名演で、アカデミー助演男優賞も納得の素晴らしさ。この人の乾いたユーモアが、重くなりがちな物語において、絶妙な緩和剤にもなってくれました。

ついに真犯人を逮捕し、ジェラードがパトカー内でキンブルの手錠を外してあげるラストシーン。照れ隠しにぶっきらぼうな態度をとるトミーがまた可愛くて(あの顔だからこそw)、言葉にせずともキンブルに対する敬愛が伝わって来る、本当に素晴らしい演技でした。

だから世間では「トミーがハリソンを食っちゃった」って、よく言われるんですよね。演技賞もトミーだけが受賞しましたから、そう言われてもまぁ仕方がない。

だけど、敵役のジェラードがあれだけ頼もしく魅力的な人物に感じられたのは、観てる我々がすっかりキンブルに感情移入してたからである事を忘れちゃいけません。ハリソンの名演があればこそなんです。

その証拠に、ハリソン抜きで創られたジェラード主役の続編『追跡者』(’98)におけるトミーは、見違えるほど凡庸なキャラクターになっちゃってました。堅実な主役がいればこそ敵役が引き立つ事実を、図らずも証明してたように思います。

こういう時、主役はいつも損するんですよね。『ブレードランナー』でも敵役のルトガー・ハウアーにハリソンが食われたってよく言われるけど、ハウアー単体で観てご覧なさい。あんなクッサい芝居は無いですからホントにw

主役がしっかり堅実に作品を支えてるからこそ、助演者はあれだけ自由に大胆な芝居が出来る=観客の目を惹けるワケです。トミーにせよルトガーにせよ、主演より助演のポジションでこそ光る俳優だと私は思います。

だから、この『逃亡者』はまさに適材適所で、ハリソンとトミーにそれぞれの才能と持ち味を遺憾なく発揮させたからこそ、ごくシンプルな内容にも関わらず大傑作になり得たワケですね。

しかし、この映画も今となっては25年前、もはやクラシックの域に入っちゃうんですねぇ…… 似たような映画は各国で五万と創られて来ましたけど、これほどのレベルに達した作品は少ないだろうと思います。

未見の方には絶対観ておく事をオススメしたいし、過去に観た方も今一度、ハリソンとトミーの最も脂がのった時期の、類い希なる名演技を堪能して頂ければと思います。
 


コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ワーキング・ガール』 | トップ | 『エアフォース・ワン』 »

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (キアヌ)
2018-10-01 22:58:48
私のハリソンさん映画ナンバー1です

主人公は医者だからアクション的にはほぼ反撃なしで逃げるだけであそこまでハラハラさせれるってすごいです!!!!
ダムのシーンが最高です!!!

あとBGMが好きすぎてサントラも持ってます!!たまに聞きます!!!

本当に最高の映画!!!
25年前ですか汗
返信する
>キアヌさん (ハリソン君)
2018-10-02 00:09:05
サントラも良かったですよね。アクションテーマはメチャクチャ格好良いし、バラードも素晴らしくて音楽だけでも堪能できます。良い映画には必ず良い音楽がついてますよね。
返信する
 (biti)
2020-03-01 18:40:03
数ある物から1つを選ぶならば、自分もこれが1番好きな作品です!
返信する

コメントを投稿