2018年に公開された、デヴィッド・リーチ監督によるマーベル・コミック原作のスーパーヒーロー映画、そのシリーズ第2弾です。
同じマーベル映画でも『アベンジャーズ』シリーズのMCUとは別ユニバースで、『X-MEN』シリーズと世界観を共有する作品。これもアメコミに興味ない方は意味不明だしどーでもいい話ですよね。
しかしMCU(アイアンマン、キャプテン・アメリカ、スパイダーマン等)やDCEU(スーパーマン、バットマン、ワンダーウーマン等)をあまり面白いと思わない方でも……いや、そういう方こそ、この『デッドプール』シリーズは楽しめるかも知れません。
なぜなら、従来のアメコミ映画をちょっと斜めから見た視点というか、パロディーまでは行かないけど正統派とは明らかに違う、日本の刑事ドラマで例えると『太陽にほえろ!』の延長線上に『デカワンコ』が存在する、あの感じ。あるいは松田優作さんの『探偵物語』(テレビの方) とか、ヒーロー物で言えば『ヤッターマン』のスピリットがこれに近いかも?
うまい例えが見つからないけど、とにかく昨今の正統派ヒーローが(コンプライアンスを気にして)出来なくなってることもデッドプールは平気でやっちゃう。殺せばPTAから苦情が来そうな相手でもバンバン殺しちゃうw
要するに善悪のモラルに囚われない、良い子のお手本になる気はさらさら無い自由なヒーローなんですね。そういう意味じゃ一番トガってた頃の『大都会』シリーズや『大激闘/マッドポリス'80』に近いのかも知れません。
つまり「悪党は片っ端からぶっ殺せ!」をモットーとする私向きの作品なんだけど、なぜか'16年公開の第1作目にはそれほどハマりませんでした。楽しめはしたけど、自分のハートに突き刺さってくるものが無かった。だから第2弾を心待ちにすることも無く、公開から3年近く経ってようやく観た次第です。
ところが! 今回は良かった! ハマりました。ちゃんとハートに刺さりました。
今回のどこが良かったかを考えることで、前作に足りなかったもの(あくまで自分にとってだけど)も見えて来ました。
前作では、自堕落な日々を送ってた主人公=ウェイド(ライアン・レイノルズ)が生涯の恋人=ヴァネッサ(モリーナ・バッカリン)と出逢い、彼女のため真っ当に生きようと誓うんだけど、その矢先に末期ガンの宣告を受けてしまう。
そんな時にミュータント遺伝子を注入する人体実験の誘いを受け、生きてヴァネッサと結ばれたい一心でそれに応じたウェイドは、不死身の肉体を得た替わりに副作用で全身の皮膚がただれちゃう。
こんな醜い姿じゃヴァネッサに嫌われちゃう!ってことで、ウェイドは全身タイツのコスチュームで身を隠し、「デッドプール」を名乗って元の姿に戻るための戦いを繰り広げるのでした。
つまり、基本は惚れた異性と結ばれることがゴールのラブストーリーで、だから恋愛体質じゃない私のハートには響かなかったんでしょう。
それが今回、前作のラストで醜いウェイドを受け入れてくれたヴァネッサが、開巻早々ウェイドを殺しに来た刺客の凶弾に倒れ、いきなり帰らぬ人になっちゃう。
それで自暴自棄になったウェイドは自殺するんだけど、ミュータント遺伝子のお陰で死にたくても死ねない。いや、いったん死にかけて天国の入口で「あなたの心が正しい場所にない(から戻って)」とヴァネッサに諭され、どうすればいいか考えるんですよね。
で、自分と同じように自暴自棄になって怪物化したミュータント少年の暴走を食い止め、彼の心を救済することで自分の心も正しい場所に戻そうとする。
やっぱり、ヒーローはこれだと思うんですよね! 孤独で、どこかステバチで、あくまで自分じゃない誰かのために戦う。恋愛が原動力になるのはいいけど、それ自体が目的になっちゃダメなんです。
私がこれまで偏愛して来たヒーローたち……『リーサル・ウェポン』のリッグス刑事も『96時間』のブライアンも『キック・アス』のヒットガールも、みんな家族を失ってステバチになってる孤独な変人でした。本郷猛や兜甲児、マカロニ刑事やスコッチ刑事も皆そうです。
そう言えばスコッチ刑事は、かつてのトラウマから他人をいっさい信じない一匹狼だったのに、かつての恋人が自分の眼の前で撃たれ、犯人(の良心)を「信じてあげて」っていう彼女の最期の言葉を守り、命がけの説得に成功したことでトラウマを克服、かつての優しさを取り戻しました。
今回のウェイドそのまんまじゃないですか!w つまり成長ストーリーであり復活のドラマでもある。そりゃあ面白いしハートにも響いて来るワケです。R15指定でちょっとドギツイ描写も多いけど、『キック・アス』を通過できた方なら大丈夫w これはオススメです!
私が今回ハマった理由はストーリーの良さだけじゃなく、ウェイド=デッドプール以外のキャラクターたちも実に魅力的に描かれてる点が大きかったです。
中でも、何の超能力も持たず、ただ「べらぼうに運がいい」ってだけでどんな危機も脱しちゃうw、新キャラのドミノ(ザジー・ビーツ)に私は強く惹かれました。考えてみれば確かに、運を味方につけた人ほど強い人はいませんよねw
そんな冗談みたいな設定がまかり通っちゃうのも『デッドプール』という作品の面白さ。女性ヒーローが堂々と腋毛を見せちゃってるのも本作ならでは?(これも私が眼を引かれた理由w)
今回、ウェイドが共に戦う仲間を募集し、それに応募して来た中にドミノがいたワケだけど、その選考基準がまたイカしてるんですよね。応募理由を「面白そうだから」って言ってのけたヤツが合格で、「勇気なら誰にも負けません」みたいな綺麗事を言ったヤツは即落選w それが『デッドプール』なんですw(せっかく選ばれたメンバーたちもドミノ以外すぐ死んじゃうしw)
そんな自由な作風だからビッグスターが実にしょーもない役でカメオ出演してたりします。ブラッド・ピットはすぐに判ったけど、マット・デイモンやジェームズ・マカヴォイは全然気づきませんでした。
そして注目ポイントがもう1つ。X-MENの女性メンバー=ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド(ブリアナ・ヒルデブランド)の「恋人」として登場した日系人ミュータントのユキオ、演じておられるのは忽那汐里さん! 元より日系オーストラリア人だったんですね。
今回はちょっとしか活躍しなかったけど、『デッドプール3』あるいは『X-MEN』シリーズの新作では派手に暴れてくれるかも知れません。期待してます!
当時ヒーロー能力のないピーターのTシャツまで
作りましたよww
よくできている!アベンジャーズが
優等生タッチなのでこちらの感じがとても
好きですww
『デッドプール』にはMCUに足りない「毒」がタップリあって、それが笑いにも繋がるし、笑えた分だけ泣けたりもする。ホントによく出来てると思います。