1986年、シルベスター・スタローンが『ロッキー』『ランボー』に続くアクションヒーローのシリーズ立ち上げを目論んで創ったに違いないのが、ポーラ・ゴズリングの小説『逃げるアヒル』を映画化した刑事物『コブラ』でした。脚本はスタローン、監督は『ランボー/怒りの脱出』のジョージ・P・コスマトス。
同じ年にアーノルド・シュワルツェネッガー主演の刑事物『ゴリラ』も公開され、2大筋肉アクションスターのライバル関係がいよいよ顕著になると同時に、翌'87年にはメル・ギブソン&ダニー・グローバー主演『リーサル・ウェポン』、'88年にはブルース・ウィリス主演『ダイ・ハード』などの傑作が次々と公開され、ポリスアクション映画の一大ブームが巻き起こる事にもなりました。
BIGスターがアウトローな暴力刑事を演じるポリスアクション物のはしりは'68年にスティーヴ・マックィーンが主演した『ブリット』だけど、'80年代のブームに最も大きな影響を与えたのは何と言っても、'71年に公開されたクリント・イーストウッド主演『ダーティハリー』に尽きるかと思います。
同じ年に公開されてアカデミー賞にも輝いたジーン・ハックマン主演『フレンチ・コネクション』の存在も大きいけれど、大口径の拳銃で犯人を容赦なく処刑した直後、小粋な決め台詞を吐くようなアウトロー刑事の元祖は間違いなくハリー・キャラハン。
特にスタローン氏とシュワルツェネッガー氏のかぶれ方は顕著で、本作『コブラ』の場合は主人公=マリオン・コブレッティ刑事のアウトローなキャラ設定のみならず、キャスティングでも相棒刑事役に『ダーティハリー』1作目でハリーの相棒を演じたレニ・サントーニ、さらに嫌味な上司役に同作で無差別殺人鬼「スコルピオン」を演じたアンドリュー・ロビンソンを起用する等、まるで「シュワルツェネッガーなんかより俺の方がずっとクリントを尊敬してるんだぜ」と見せつけんばかりのオマージュぶり。面白いですw(近年は仲良くしてるけど当時は本当に犬猿の仲だった)
だけど意外なことに、その『コブラ』の原型はなんと、先にエディ・マーフィー主演で公開された『ビバリーヒルズ・コップ』('84) なんだそうです。製作陣は当初『ビバリーヒルズ~』をスタローン主演で準備を進めてたんだけど、脚本をスタローン先生があまりにスタローン色に染めて全く別物にしちゃうもんだから、丁重にお引き取り願ったんだそうです。
だけど当時は『ロッキー』『ランボー』の二大シリーズが軒並み大ヒットで先生は無敵状態。とにかく創れば当たるんだから何でも創っちゃえ!ってことで、ボツにされた脚本が『コブラ』として復活したワケです。
まぁしかし、ストーリーはあって無いようなもんでw、スタローン先生がこだわったのはマリオン・コブレッティ刑事のキャラクター造形に尽きるかと思います。
レイバンのサングラス、革手袋、無精髭、くわえマッチ棒、象牙のグリップにコブラを刻んだCOLTナショナルマッチ、組み立て式サブマシンガンのヤティマティック、そして愛車の50年型マーキュリーと、形だけ凝りに凝りまくったけど中身はいつものスタローンというw、『刑事貴族』の舘ひろしさんみたいなもんですw
だから観て喜んだのはスタローン・ファンとガンマニアだけで、批評家筋からは酷評の嵐。この辺りから先生はラズベリー賞(最低映画賞)の常連になって行かれますw
私はスタローン・ファンでガンマニアですから当時は素直に楽しめたけど、今あらためて観るとラズベリー賞は極めて妥当だったと納得しちゃいますw
まず、カルト教団の殺人現場を目撃して命を狙われ、コブレッティ刑事にガードしてもらう内に恋に落ちるヒロインが、身体はデカイし気はめちゃくちゃ強そうだしでちっとも守護本能をくすぐられない。
演じるのは当時スタローン先生と結婚したばかりのブリジット・ニールセン。シュワちゃんの元カノだから対抗意識だけで結婚したのかも?
で、登場した時はめちゃくちゃクールだったコブレッティが、彼女と打ち解けるにつれ小粋なアメリカンジョークを連発するようになるんだけど(そこに『ビバリーヒルズ・コップ』の名残がある?)、それがデーブ・スペクター並みに笑えないw なのにブリジットがいちいち爆笑するもんだから余計に痛々しいw
思い返せばスタローン先生のジョークは『ロッキー』1作目の頃から笑えないんだけどw、朴訥キャラのロッキーなら許せたんです。だけど徹頭徹尾カッコつけてる今回のキャラでデーブさん並みは非常にマズイ。いや、今となっては逆にスベリ芸として楽しめるかも知れないけど……
で、あとはひたすらバキュン!バキューン!バリバリバリバリ!ドッカーン!!ですから批評家筋が褒める理由がありませんw
まあ、そんな映画ですw スタローン先生が映画の中で、どんなに残虐非道な殺戮行為を繰り返しても愛され続ける理由が、この『コブラ』には詰まってる……と、言えなくもありません。
当時ウエスタンアームズがヤティマチックを作っていました。電池とガスを使う変わったメカだった気がします。
冒頭のおかしな宗教団体の儀式、ロングコートの男がスーパーマーケットにバイクで乗り付け、ショットガンを出して暴れ、コブラ刑事登場。
ひと仕事終えたコブラが自宅に帰って来ると、いつも停める場所に違うクルマが…愛車のマーキュリー(?)でゴンと押しやり「文句あるか?」。
冷蔵庫に入っていたピザパイをハサミで切って食べるアメリカ〜ンな姿、マリオンと言う女っぽい名前が嫌で「コブラと呼べ」でした。
断片的にしか覚えていませんが、不思議と印象に残っているのが土産物の露店?のおばあさんに「(ひやかしで)悪いけど…」(日本語字幕)と言うシーンです。
マーキュリーでのカーチェイスでは確か「ニトロ」と言うスイッチを入れて、パワーアップさせていたような…。
オートバイのホンダとヤマハが張り合っていたようにシュワちゃんとやり合っていましたね。
懐かしい記事をありがとうございました。
その露店のシーンで、ブリジットにマリオンと呼ばれて「よしてくれ」とか言って「じゃあどんな名前なら良かった?」と問われて「アリス」と答えるスタローン渾身のギャグが本当に寒いんだけどw、ブリジットと露店のおばさんはバカウケなんですよね!w ホントのどかな時代でしたw
声がすごく優しいんですよね。ランボーはまさにはまり役で第1作は名作だと思います。そのランボーも回を追うごとにつまらなくなっていきました。アメリカ映画はやたら続編を作りますが、いいのはパート2ぐらいまでかなと思います。