ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『小さな巨人』2017

2019-11-26 00:00:07 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2017年の春シーズン、TBS系列の日曜夜9時「日曜劇場」枠で全10話が放映された警察ドラマ。

上層部の汚職に気づいてしまい、警視庁捜査一課のエースから所轄・芝警察署の刑事課課長代理へ降格させられた主人公=香坂警部に、長谷川博己。

汚職を暴こうとする香坂の前に立ちはだかる本庁の若きエリート=山田警部補に岡田将生、香坂を尊敬する本庁人事課職員=三島巡査部長に芳根京子、芝警察署のやさぐれ刑事=渡部巡査部長に安田 顕、署長の三笠警視正に春風亭昇太、そして最大の敵となる警視庁捜査一課長=小野田警視正に、香川照之。

ほか、市川実日子、三田佳子、佐々木希、吉田 羊、中村アン、池田鉄洋、児島一哉、駿河太郎、神尾 佑、手塚とおる、高橋光臣、ユースケ・サンタマリア、桂 文枝、梅沢富美男、高橋英樹、和田アキ子etc…という、実に多彩な豪華キャスト陣。

日曜劇場は今、私が最も信用してない放映枠なんだけど、長谷川博己さん主演の刑事物を、これだけの大作感で毎週見せてくれるなら、とりあえずは「素晴らしい」と言うほかありません。

しかも、次期「警視庁・捜査一課長」確実と云われたエリート刑事が、ふと正義感にかられて取った「余計な行動」が仇となって所轄署に左遷され、現場のやさぐれ刑事(安田 顕)らと共に巨悪に立ち向かうといった筋書きは、数年前にハマった杉本哲太さんの『隠蔽捜査』を彷彿させます。

本庁と所轄の対立構図にしても、会議室のエリート=みんな悪者というワンパターンに陥らず、むしろ所轄の刑事たちの方がお役所体質で欠点が目立ったり等、けっこう目新しさもあって見直しました。

ただし! 主人公の前に立ちはだかる巨大な壁=現・警視庁捜査一課長として香川照之さんが登場した時には「またかよ!」って、正直ズッコケましたw 日曜劇場の『半沢直樹』路線において、このポジションはもはや香川さんの指定席になってますよねw

しかも長谷川さんがエリート役で、映画『シン・ゴジラ』で演じた主人公(政治家)とイメージが重なるもんだから、香川さんがゴジラみたいに見えて来ちゃうw 演技もケレン味がエスカレートして怪獣っぽくなってるしw

この日曜劇場においては香川さんが主役(ゴジラ)で、戦う相手が毎回交代してるだけというw ゴジラでさえデザインがそのつど変わるんだから、たまには他の役者さんで見せてくれよ!って、正直思います。

話の内容にしても、とにかく裏切り、どんでん返し、裏切り、どんでん返し、また裏切りと、同じパターンの果てしない繰り返し。もはや事件の内容はどーでもよくて、誰がどのタイミングでどんな顔をして裏切るかを楽しむドラマになっちゃってる。

最初から裏切りを着地点にしてストーリーを組んでるから、捜査でどんな新事実や証拠が出て来ようが、視聴者は「どうせまた裏切るんでしょ」って思うだけで誰も信用しない。

だから役者さんたちは、香川照之さんを中心に「どんな顔をして裏切るか」「裏切られてどんな顔をするか」だけに全神経を集中し、ひたすら顔を歪めながら大声を張り上げる「顔芸合戦」に終始。ほんと皆さん、おかしな顔をされてますw

そうなるとやっぱり、長谷川博己さんや岡田将生くんは顔のベースが整ってますから、整ってない香川さんに太刀打ち出来ませんw 皆さん相当ヘンな顔されてるんだけど、香川さんの顔がヘン過ぎて霞んじゃうワケですw

まぁ、顔は生まれついてのもんだから仕方ないとして、皆さん共通して優れた俳優さん=頭の良い人達ですから、台本を読んで「これは普通に演じたら視聴者にすぐ飽きられる」ってことを本能的に悟られたんだろうと思います。だから「みんなでヘンな顔しようぜ」ってw

マジメな話、この『小さな巨人』を観てつくづく、『半沢直樹』の大ヒットは原作と主演俳優の組み合わせによる化学反応あってこそ、だったことを痛感しました。言わば「まぐれ当たり」です。

それに当時はまだ、大銀行の内幕をリアルに描いたドラマはほとんど無かったし、主役=堺雅人さんの狂気的な芝居も一般的にはあまり知られておらず、新鮮な驚きに満ちてたんですよね。

ところが今回はあまりに手垢がつき過ぎた警察物で、しかもすっかりお馴染みのオールスターキャストですから、みんなで顔の面白さを競うぐらいしか打つ手が無かった。

実際、このドラマをずっと観て来た視聴者の脳裏には、香川さんたちのヘンな顔しか残ってない筈ですw それはそれで狙い通りなワケで、成功だったと言えましょう。

だけどTBS日曜劇場はもう、ただ既製ヒット作の定型パターンに人気俳優をはめ込むだけのドラマ作りは、ホントいい加減やめるべきです。何のメッセージも無ければチャレンジも無い、ただ「当てに行った」だけのドラマじゃ人の心は打てません。

警察幹部とか政治家が悪役になるのも、もういくら何でも飽き飽きですよ。素晴らしいアクションで魅せてくれた『CRISIS/公安機動捜査隊特捜班』も含めて全部そのパターンですからね。さすがにウンザリして来ました。

ネタの枯渇と過剰な自主規制により、どの番組を観ても同じことしかやってない現状を、制作現場にいる人達は一体どう考えておられるんでしょう?

もしかしたらその閉塞感と、いくら足掻いても現状を変えられないジレンマ、創り手たちの悲鳴が、そのままドラマ内の警察や閣僚のゴタゴタ描写に反映されてるのかも知れません。破滅です。
 

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