ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『CRISIS/公安機動捜査隊特捜班』2017

2019-11-25 00:00:17 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2017年の春シーズン、フジテレビ系列の火曜夜9時枠で全10話が放映された、カンテレの制作によるアクションドラマ。

そう! これは「アクションドラマ」なんです。そう呼べる作品はもはや、1年に1本あるか無いかという破滅な世の中になってしまいました。

日本の刑事ドラマからアクションシーンが無くなっちゃったワケじゃありません。けれど大抵は添え物でしかなく、見せ場は謎解きやどんでん返しっていう作品が大半を占めてる。

そんな中で毎回アクションシーン、それも相当ハードな格闘アクションを必ず見せてくれたこの『CRISIS』は、間違いなく「10年に1本」の傑作でありターニングポイントになるべき作品だったと思います。

勿論ただアクションすりゃいいってもんじゃなく、それを不自然に感じさせない世界観や緊張感の構築が必要不可欠で、そういった点に関しても本作はほぼパーフェクト。個人的には最終回の締め方にやや不満を感じたけど、それはまぁ好みの問題に過ぎません。

このドラマが具体的にどう凄かったのか、初めて観た時に味わった興奮をそのまま再現するのが一番伝わり易いと思うので、放映当時に書いたブログ記事を以下にコピペします。


☆#01

『SP/警視庁警備部警護課第四係』『BORDER/警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係』の金城一紀さんが原案・脚本を担当、5年前から構想を練って来たアクション・エンターテイメントと聞けば、そりゃ期待せずにはいられません。

現実にテロの脅威が日本にも迫る中、規格外の犯罪には規格外の男たちを!ってことで集められた、格闘、射撃、爆弾処理、ハッキング等のスペシャリスト達。

メンバーは小栗 旬、西島秀俊、新木優子、野間口 徹、田中哲司の5人。刑事ドラマというよりスパイ活劇、それもチームプレーを重視した『ミッション・インポッシブル』に近い内容です。

とにかく見所は小栗旬&西島秀俊のハードアクションで、その素地が既にあったお二人が、本作の為に1年前から訓練を積んで来られたそうで、そりゃもう気合いと迫力が違います。

新幹線車内の格闘バトルは香港映画顔負けだし、マンションの5階から飛び降りる決死のスタントは、どう見ても小栗くんが自ら演じておられます。

感動しました。それだけでもう、充分ですw いやホントに、これはリアリティー云々を語っても仕方がない。アクションの醍醐味を存分に味わわなきゃ損です。

アクションが凄いのは初回だけで、第2話以降はただ突っ立って延々謎解きするだけという、詐欺みたいな番組もさんざん観て来ましたけど、本作はたぶん大丈夫。期待は裏切らないと思います。

ただし、小栗くんの過去にどうやら暗い傷があるのを、また思わせぶりに仄めかしてるけど、そういうのはもう、ホント要りません。なんか、そういう謎解き要素が無いと視聴者がついて来ないっていう、強迫観念みたいなものがあるんですかね、TVドラマ業界には?

実際はもう、みんな飽き飽きしてるんじゃないですか? 少なくとも私はウンザリです。そんな小賢しいマネしないで、各エピソード毎の面白さで勝負してみろや!って、いつも思いながら20年ぐらい経ってますw

不満は、今のところそれだけ。キャストのアンサンブルも、シリアスとユーモアのサジ加減も良い感じだし、後は新木優子さんが脱いでくれたら言うことありません。

私は特に、小栗くんのちょっとイカレた感じが『リーサル・ウェポン』を彷彿させて大好きです。生真面目な西島くんとのコントラストも面白くなりそうで、これからまた楽しみです。


☆#02~#03

毎回、眼を見張るようなアクションを見せてくれて、本当に素晴らしいドラマです。

疾走、格闘、銃撃といったアクションを盛り込んだ作品は最近でもいくつかあったと思いますが、これほどの高揚感を味わえたのは久しぶりです。

特に、初回レビューにも書いたように、小栗旬&西島秀俊の格闘アクションは、何回もリプレイして観たくなる迫力があります。

擬闘に見えないんですよね。リアルに闘ってるとしか思えないレベルの仕上がり。さすが1年間特訓を積んだだけの事あります。闘う相手役の俳優さんも、アクション指導の方も素晴らしい!

格闘を楽しむかのように、多くの手数を繰り出す小栗くんと対照的に、無駄がなく一瞬で勝負を決めちゃう西島くん。それぞれの性格がアクションに反映されてるんですよね。

それは走り方にも表れてて、西島くんの走るフォームは無駄が無さすぎて、静止画にすると全然迫力がないw 顔も無表情すぎて、ニヤけてるようにさえ見えるw でもそれがまた格好良い。

第3話ではついに拳銃が登場しましたが、撃つのはテロリスト達だけで、特捜班は最後まで1発も撃たずじまい。これもまたリアルです。

ストーリーは重く、カタルシスは期待出来ないんだけど、本作に限っては厭な感じがしません。それは多分、ジメジメしてないから。良い意味で乾いてるんですね。ハードボイルドなんです。

何より、刑事アクションに無くてはならない「緊張感」がある。特捜班メンバーの誰かが途中で殺されることもあり得そうな、リアルな緊張感があるからこそ、より一層アクションシーンが活きて来る。

これはもう、断然ハマりました。早くも今期ナンバーワン決定です。


☆#04~#08

毎回、見応えあるエピソード、迫力満点のアクションが続きますが、特に第8話は凄かった。本当に凄かった!

田丸(西島秀俊)からの依頼により、テロを企む宗教団体に潜入してた情報屋の正体がバレてしまい、彼を救出すべく特捜班がたった5人で、100人以上もの出家信者が潜むビルに突入していくクライマックス。

100人対5人の、約8分に及ぶ大立ち回りを、なんと1カットの長回しで見せてしまう! こんな凄まじいアクションがTVドラマで観られるなんて!

勿論、本当にカット割り無しであんな激しい格闘を8分間も続けたら、確実に怪我人どころか死人が出ちゃいますからw、実際はカメラをパンした瞬間にカットを切り替える等の裏技を使ったでしょうけど、それにしたって相当な手間が掛かるし、時間も予算も掛かった筈。あんなアクションシーンは映画でもなかなか観られません。

日本ではもう、本格的なアクションドラマは無理なんだと思ってたのに、おいっ! やれば出来るんやないけ!ってのが、今の私の率直な感想です。やれるのに、尻込みして誰もやらへんかっただけやんけ!って。

前述の通り、アクションシーンの撮影には手間と時間とお金が掛かるし、役者さんが怪我する可能性もあるし、女性視聴者が喜ばない=視聴率に繋がらない等、数々のリスクが伴うもんでプロデューサーやスポンサーはやりたがらない。そもそも、売れ筋の原作が無いオリジナル企画はハナから受け付けない連中です。

そんな数字でしか動かない会議室の奴らを説き伏せ、スター俳優たちをその気にさせるだけの熱意が、この『CRISIS』の創り手にはあったワケです。

それは本当に素晴らしい事だけど、じゃあ他の創り手たちは今まで一体何をやってたの?って、逆に怒りも沸いて来ちゃう。やりたくても状況が許さないんだなって、私はてっきり思い込んでましたから。

主演の小栗 旬くんが「テレビ業界に風穴を開けたと思う」って語られてたけど、確かにこれはTVドラマ史に残る作品になったと思うし、ならなきゃ破滅だとも思います。

あれだけのアクションシーンを、テレビの地上波、つまりタダで観られることが、一体どれほど凄いことなのか、これはアクション物のドラマや映画を創った経験のある人間にしか解らないかも知れません。

TVドラマ自体がどんどんリアル志向になって来たのと同じで、アクションの描かれ方も時代と共に進化して、もはや昭和ドラマのそれとは比較にならないほどリアルになってます。

一方ではCGに頼った安直なアクション物もあるんだけど、この『CRISIS』で描かれるアクションは限りなく「ガチ」に近いもので、顔面はともかくボディは本気で殴ってると思われます。顔はヤバイよ、ボディをやんなボディを!

実際、今回の大立ち回りを演じた翌朝、小栗くんは全身打撲痛で身動きが出来ず、必死に這いつくばって布団から出たそうです。

第1話におけるマンション6階からのダイビングも、ワイヤーで安全確保はしてたけど、やはり小栗くんと西島くんご本人が演じたそうです。

第1話と言えば、冒頭の新幹線車内における格闘シーン。JRさんがよく許可してくれたなぁと思ってたら、あれは車輌2つ分のセットをわざわざ造って撮影したんだそうです。たった数分のシーンの為に!

本当に良い作品、本当に迫力あるアクションドラマを創る為なら、当たり前の努力なのかも知れないけど、他の創り手たちはずっと避けて来たワケです。もう、そんなことが出来る時代じゃないからって。

ところがどっこい、本気になってやれば出来んだって事を、この『CRISIS』の創り手たちが証明しちゃった。もう言い訳は出来ません。

これだけのものを見せられたら、やっぱり今期ナンバーワンは『CRISIS』と言わざるを得ないですね。アクションだけが凄いんじゃなくて、ストーリーも緻密に練られてるし、キャラクターも多面的、重層的に描かれてて、本当に面白いです。

第8話で言えば、潜入した情報屋の妻(石田ゆり子)と、田丸とのあまりに複雑な恋愛感情。甘酸っぱくて切なくて、とても残酷な別れ。そういった背景があるからこそ、壮絶なアクションがまた活きてくる。

毎日のように悲惨なテロ事件のニュースが流れるこのご時世、実にタイムリーであると同時に、とっても危うい企画でもある。そういう面でも『CRISIS』は「攻めてる」ワケです。

誰ですか? アクションドラマは絶滅したとかテレビ業界は破滅だとか言ってるヤツはw まだまだやれますよ! それを証明してくれた、これはホントに画期的な作品だと思います。


☆最終回

『リーサル・ウェポン』第1作目のメル・ギブソンは、自分自身のダークサイドを具現化したような敵=ゲイリー・ビジーとの一騎討ちに勝利することで、過去のトラウマを克服しました。要するに最強の敵をぶっ殺してハッピーエンドという、実にアメリカ的で野蛮なやり方だけど、私は大好きですw

さすがに今の日本でそれをやるのはリアルじゃないってことで、我らが小栗 旬くんは最強の敵=金子ノブアキくんと死闘の末、同じ心の傷を持つ者どうしの共感をもって「泣き落とし」するという、私としては実に面白くない展開だけど、まぁバッドエンドで終わるよりはマシか……と思ってたら!

その直後に金子くんは(恐らくSATに)射殺され、特捜班は彼を抹殺する為のお膳立てとして、クライアントに利用されただけだったことが判明。しかも陰で糸を引いたのは、現役の内閣総理大臣(竜 雷太)だった! 何やってんだゴリさん!?

で、正義の為でもなければ国民の為でもない、ただ汚い政治家たちの立場を守る為だけに命を懸けることに、心底嫌気が差した小栗くんら特捜班のメンバー全員が、どうやらテロリストに転身しちゃったという、究極にバッドテイストな結末になりました。

これって、同じ小栗旬 主演&金城一紀 脚本コンビによる傑作ドラマ『BORDER』とよく似てます。ダークサイドからの誘惑に耐えに耐えて、けれども現状じゃ何も変えられないことを悟って、ついにアッチの世界に足を踏み入れちゃうという。

ただし『BORDER』の場合、絶対に生かしておいちゃいけない極悪人を抹殺するという、ヒーローの王道を実践した側面もありますから、後味は悪くても納得出来るものがありました。

だけど『CRISIS』の場合、テロなんか起こしたところで一体何が変わるの?っていう根本的な疑問があるから、全く共感出来ないんですよね。

なるほど、テロリストって奴はこうして生まれるワケか、っていう勉強にはなるんだけど、せっかく応援して来た主人公たちに「あんたら一体何やってんだ?」って思わなきゃいけない結末ってのは、ちょっと残念ですよね。

闇の処刑人になるならまだしも、警視庁なんか爆破して、善良な警察官や下手すりゃ一般市民まで犠牲にして、そんなの本末転倒やん!って。ただのアホやん!って、思います。

そんなモンスターを生み出しちゃう組織の罪、政治の愚かさを描きたい意図はよく解るんだけど、仮面ライダーが自分でNEWショッカーを結成しちゃうような結末は頂けません。それじゃ不快感しか残らない。

あくまでそれが暗示されただけですから、実は踏み止まって「裏刑事」になってる続編とか劇場版を用意してるのかも知れないけど、それはそれで「なんじゃ、そりゃ」ですよねw

こんな「衝撃的な結末」、私は蛇足だと思います。『007』や『ミッション・インポッシブル』を例に挙げるまでもなく、正義一直線でも充分に面白い作品になった筈。第8話なんかホント最高でした。

これが金城さんの人間観、社会観なんでしょうけど、視聴者をスカッとさせる形でそれを描くことも出来た筈です。正攻法じゃハリウッドに勝てないと思われたんでしょうか?

そんなワケで、私としてはちょっと残念な結末でしたが、日本のテレビ業界に風穴を開ける、画期的なアクションドラマだという思いに変わりはありません。

素晴らしい本物のアクションを毎回見せてくれたスタッフ&キャストの皆さんには、ホント感謝の気持ちでいっぱいです。このクオリティーで、今度は是非とも正攻法のアクション刑事ドラマを! どうか何卒お願い致します!


☆追記

かなり砕けたコメディーながら2016年には『THE LAST COP/ラストコップ』という日テレのアクションドラマがあり、『CRISIS』が放映された'17年春シーズンにはNHK土曜ドラマで『4号警備』、そして秋シーズンには日テレで金城一紀さんの原案・脚本により元スパイの主婦(綾瀬はるか)が活躍する『奥様は、取り扱い注意』というアクションドラマも制作され、テレ朝の謎解き刑事ドラマ『刑事7人』シリーズも一時期アクション描写に力を入れる等、アクションドラマ復権の予兆が確かにありました。が、残念ながら一時のささやかなブームで終わっちゃいました。

『CRISIS』にも続編や映画化の計画があった筈なのに2019年現在のところ実現には至っておらず、やはりこのジャンルに対する世間の風当たり……というより無関心は相変わらずみたいで、破滅です。いやホントに、若い世代がアクション物を好まなくなってる傾向と、この国がどんどん弱ってる事実とが全く無関係とは、私には思えません。
 
 

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