ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『恋せぬふたり』最終回

2022-04-04 14:44:09 | TVドラマ全般

全部ちゃんと観たワケじゃなくレビューする気は無かったんだけど、最終回を観て「これは是非このブログで記事にしなきゃ!」と思い直しました。

2022年冬シーズン、NHK総合の月曜深夜「よるドラ」枠で全8話が放映された、吉田恵里香さん脚本による30分ドラマ。他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない「アロマンティック・アセクシュアル (略してアロマアセク)」をテーマにした作品です。



ヒロインの咲子(岸井ゆきの)は天真爛漫な性格で異性からも同性からも好かれるタイプなんだけど、アロマアセクであるがゆえに何かと疎外感を味わう日々。

で、ルームシェアを約束した親友=千鶴(小島藤子)に「元カレと寄りが戻ったから」とドタキャンされ、困ってる時に同じアロマアセクの男性=羽(高橋一生)と出逢い、恋人や夫婦じゃなく「家族 (仮)」として同居する事になるのでした。



とても興味深い内容で、ナイス・キャスティングだし実際観れば面白いんだけど、当初レビューする気が無かったのは「どうせ最後はくっつくんでしょ?」って思っちゃったから。そこはもう、今までさんざん「恋愛至上主義」を我々に押しつけて来たテレビ屋さんたちの自業自得です。

ところが、この作品は違ってた! 恋愛にもセックスにも本当に興味ない人だっているし、恋愛や結婚の成就だけが幸せの形じゃないっていう主張を、みごと最後までブレずに貫いてくれました。素晴らしい! ほかの凡庸な恋愛ドラマ群と一緒にしてホントごめんなさい!



恋愛感情なしで同居する男女の在り方を、それぞれの家族や同僚、元交際相手など「世間」の連中はなかなか理解しようとしないんだけど、ふたりはメゲずに頑張り、理解を勝ち取っていく。

でも、それだけじゃ私はやっぱレビューしなかったと思います。恋愛感情抜きにせよ、誰かと絆を結び、共に人生を歩むことが最高の幸せだと言うなら、結局これまでのドラマと何も変わらないから。

ところが本作のヒロイン=咲子は、最高にウマが合う相手との、最高に居心地良い同居生活すら、最終回で(前向きな理由により)手放し、独りきりの生活を選ぶんですよね! これには驚いた!

同居人の羽には「野菜王国をつくりたい」っていう幼い頃からの夢があり、ひょんな事からそれが実現しそうになるんだけど、咲子との心地よい生活を続けたい彼は諦めるんです。

でもそれは「ベターかも知れないけどベストじゃない」と感じた咲子は、羽に行かせちゃう。「離れて暮らしても、家族は家族だから」って。

そんな彼女の選択にも「世間」は驚き、相変わらず理解に苦しむワケだけど、咲子は意に介しません。

「私の人生に何か言っていいのは私だけ。私の人生を決めるのも、私だけ」

まったくもって、その通り! 私は拍手喝采です。



まぁしかし、離れてはいても2人の絆は強いし、現代ですからスマホでいつだって対話出来ちゃいますから、私がこのブログで再三推奨してる「サイコーの孤独」にはまだ程遠い。

独りぼっちをハッピーエンドとして描くドラマと出逢えるまで、果たして私が生きていられるかどうか、甚だ疑問であることに変わりはありません。

でも、少しずつ近づいてはいますよね。恋をしない人生のチョイスを100%ハッピーエンドとして描いたドラマは、これまで無かったんじゃないですか?



今や同性愛もごく自然に描かれるようになりました。咲子の親友だった千鶴がルームシェアをドタキャンした本当の理由は、彼女が咲子に対して恋愛感情を抱いてしまったから。恋をしない咲子と一緒に暮らすことに、耐える自信が無かったからなんですね。

レズビアンとアロマアセクっていう、少数派どうしの組み合わせならではの悲劇。世間すなわち多数派の皆さんはもうちょい……いや、もっともっと少数派を理解する努力をし、優しく見守るべきです。このドラマにはそういうメッセージも込められてました。

今やもう、どの民放局よりもNHKさんが進んでますよね。アロマアセクの苦しみなんてスポンサー(一般企業の偉い連中)すなわち頭の硬い老人たちに理解出来やしませんから、民放じゃこんなドラマは創りたくても創れません。いつまで経っても恋愛至上主義、みんなで仲良くだけがハッピーエンド♪ってな世の中で、破滅です。



岸井ゆきのさん、小島藤子さんのほか、結婚して子育てしながら夫の浮気に悩まされる、典型的なマジョリティー人生を送る咲子の妹に、北香那さん。過去に羽と色々あったらしい女性(そのエピソードは見逃しました)に、菊池亜希子さん。

そして咲子の母親に西田尚美さん、父親に小市慢太郎さん、咲子の元カレに濱正悟くんが扮してます。

その元カレと咲子が付き合うようになったキッカケが、地下アイドル「サニーサイドアップ」の推し活動。同じ「よるドラ」枠で2019年に放映され、このブログでも大絶賛した『だから私は推しました』の楽屋オチですよねw

岸井ゆきのさん&高橋一生さんはこの春、それぞれ刑事ドラマの新作に出演されますから、このブログにもすぐ再登場される事でしょう。楽しみ!


 


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (over-the-magic)
2022-04-04 15:31:33
恐喝的な受信料徴収など悪名高くもありますが、だからこそなのか、NHKの作品群は質が高いのも事実なんですよね~。
八日目の蝉や64という作品も傑作ですよ。このドラマも面白そうですね。見てみたいと思います。
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Unknown (harrison2018)
2022-04-04 19:16:05
おっしゃる通りNHKドラマはクオリティーが高いし、民放ドラマよりよっぽど「攻めてる」と思います。攻めすぎて意味不明な作品も時々あるけれどw

バーチャルアイドルのLIVE(CG)を生中継してるNHK番組を観て、腰を抜かしそうになったのも2〜3年前w 民放はまだそこまで行ってませんものね。
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Unknown (キアヌ)
2022-04-04 20:26:13
毎回楽しみに見ていました!!
素晴らしいドラマでした!!

高橋さんが仙人キャラっぽいですが
ブログをやってちゃんと世間
に発信しているところが
今風だなと思いました

ラストの二人の決断はホントすごいですね!!
新しいと思いました

ただ、
他人さんのあらゆる特性をすべて受け入れ、
発言も細心の注意を払って
となると、、、

私は多分、デリカシーのないやつに
カテゴライズされてしまうんだろうな
と思いました

様々な思いや特性がある、
それを成立させる世の中

まずはひとりひとりの思いやりですね
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Unknown (harrison2018)
2022-04-04 21:41:45
いやあ~、たしかに。我々の若い頃に比べれば何十倍も発言に気をつけないといけなくなりましたね。自分のブログも、10年前とは書き方がかなり変わってると思います。ましてやテレビ業界なんて大変でしょう。

良い事なんでしょうけど、正直しんどい面もありますよね。一体この先、どうなって行くんでしょう!?
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