ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『あさひが丘の大統領』#01―2

2018-11-01 11:11:04 | 探偵・青春・アクションドラマ









 
可愛い教え子の二宮(田中浩二)に、あわやレイプされそうになった涼子先生(片平なぎさ)ですが、駆けつけたハンソク先生(宮内 淳)の必殺もみあげパンチで、何とか事は収まりました。

現在ならば生徒のレイプ未遂よりも教師の暴力の方が問題視されそうだけど、この当時はまだ体罰1つでいちいち騒がれたりしない時代でした。

涼子先生はしかし、生徒たちが自分の色気に惹かれてラグビーをやっていた現実を目の当たりにし、打ちひしがれます。自分の理想とする教育が出来てると信じていたのに……

体育館で独り佇む涼子先生に、ハンソク先生が声を掛けます。

「あいつらが落ちこぼれたのは、それなりにそれぞれ理由があるんだ。他人がどうこう出来る事じゃないんだよ」

「……よく解るのね、あの子たちの気持ちが」

「ああ。俺も、あいつらと同じ落ちこぼれだったんだ。学校のお客さんだったんだよ。勉強が出来ないから落ちこぼれた……そんな簡単な問題じゃないんだ。先生にどうこう出来るって、そんな簡単な問題じゃないんだ」

「じゃ、先生は何だって言うの? ただ教壇の上に立って、知識を教えていればそれでいいって言うの? それだけが先生だとしたら、私は先生になんかなりたくなかった……」

多くの教師は、そんな理想を抱いて教職に附き、それとは程遠い現実の壁にぶち当たり、日々闘っておられる事でしょう。

この当時(’70年代末)は、校内暴力や学級崩壊の問題が表面化して来る少し前で、偏差値教育について行けない「落ちこぼれ」をどう扱うべきかが大きな問題になってる時代……だったように記憶します。

「青春シリーズ」って、娯楽フィクションの形を取りながら、そういった問題に対する提言を真面目に続けて来た番組だと思うんだけど、鼻で笑うような反応を示す視聴者も多かった気がします。

「私、陰口言われてるの知ってます。テレビの見過ぎだとか何とか……でも先生って、人を相手にするものでしょ? 人と人とが触れ合っていくものでしょ?」

涼子先生のこの台詞は、そんな世間に対する創り手からの反論なんだろうと私は思います。

「あんなものはテレビの中だけの出来事だって言うの? 私はそんなのイヤ。現実がどうであろうと現実に合わせて生きて行けなんて、そんなのイヤ! 私は、私の考える先生でいたいの。そうなりたいのよ!」

一見、ガキ大将がそのまま大人になっちゃったハンソク先生よりも、涼子先生の方がオトナに見えるんだけど、理想に凝り固まって壁にぶつかると脆くも崩れちゃう彼女の方が、実は未成熟なのかも知れません。

「私が触れ合えそうだったのは、この学校じゃあの子たちだけだったの。それが間違いだって言われたら、私……明日からどうやって生きて行けばいいの? どうやって生きて行ったらいいのよ!?」

返す言葉が見つからないハンソク先生は、彼女を立ち直らせてやれるのは生徒たちしかいないと考えたのか、川べりでふてくされてる水野(井上純一)らラグビー部員たちに声を掛けます。

「よお、もう一度ラグビーやってやれよ。あんなに生徒のことで一生懸命な先生、俺たちの頃にはいなかったぞ?」

しかし、二宮のレイプ未遂で自分たちのダメさ加減をあらためて思い知らされたせいか、水野らはイジケて殻に閉じこもるという醜態を晒します。

「いい仲になったのかい、涼子先生と」

「なに?」

「二宮を殴って、それで仲良くなったってワケかよ! 生徒のことで一生懸命だ? 要するにあの先公だって、俺たちと一緒にラグビーやって、それで欲求不満晴らしてただけの事だろうが!」

今度は水野のイケメン面に、必殺もみあげパンチが炸裂します。元・応援団長としては、最も許せない若造の言い草だった事でしょう。

「自分の心が汚いからって、人の心まで汚いと思うな! だからお前たち落ちこぼれるんだよ! そうやってな、いつもツルんでなきゃ1人で生きて行けないんだよ! 一生そうだお前らっ!!」

このハンソク先生の台詞には共感しました。どんなに格好つけてようが、しょせん不良や極道の本質なんてそんなもんでしょう。

痛いところを突かれた水野らは、ハンソク先生をフルボッコにしようとしますが、七曲署で4年間も鍛えられて来たボンの敵ではなく、全員1人残らずもみあげパンチを食らう羽目になります。

そしてハンソク先生は、あらかじめ野口先生(秋野太作)が用意してくれた辞表に、さっそく署名する羽目にw 町中で生徒たちと乱闘騒ぎを起こせば、まぁ当然の結末と言えましょう。

「あんた、辞めんのか? 俺たちのせいか?」

顔に青あざを作った水野が、同じく顔を腫らしたハンソク先生に声を掛けます。

「いや。俺はやっぱり、先生になれるような人間じゃない。そいつが分かったんだ」

「先生なんて、誰だってなれるさ」

「水野。お前、自分が先生になれると思うか?」

「まさか」

「そうだろう。俺もお前と同じ人間なんだよ。お前、1回落第してるんだってな。おんなじじゃねえか、俺と」

そう言って笑うハンソク先生に、水野は何やらシンパシーを感じた様子です。

そして迎えるクライマックス……って、めちゃくちゃ展開が速いですけどw、別にレビューするのが面倒になって省略したワケじゃありません。ほぼリアルタイムで進んでます。

東京へ帰ろうとするハンソク先生を、水野らラグビー部員たちが駅で待ち構えてました。

「よお、最後に1度ぐらい、先生の気分味わいてえだろ? 俺たちが味わわせてやろうか?」

青春シリーズ自体は好きなんだけど、生徒が先生に対してタメ口を聞くのだけは、当時も今もあまり感心出来ません。現実をドラマが反映してるのか、ドラマの影響で現実もそうなったのか判りませんが、私の世代でも先生にタメ口を聞く同級生が少なからずいました。

私はイヤでしたね。先生は先生であって、家族でも友達でもない。そういうケジメ…って言うと堅苦しいけど、区別はしなくちゃイカンやろって、昔も今も変わらず思ってます。

それはともかくホームに入った水野らは、線路を隔てた向かい側のホームにハンソク先生を立たせて、1人ずつ声を掛けていきます。

「先生!」「帰って来てくれよ先生!」「みんなが先生を待ってるんだ!」

これは中村雅俊さんのデビュー作『われら青春!』で、同じ鎌田敏夫さん脚本による第1話(あるいは最終回だったかも?)で描かれたクライマックスと全く同じです。

リメイクというよりも、あのドラマを観て育った水野らが、同じシチュエーションをハンソク先生にプレゼントしてあげてる……みたいな裏設定があったんじゃないでしょうか?

レイプ未遂をやらかし、記念すべき第1発目のもみあげパンチを食らった二宮くんも、懸命に声を掛けます。

「先生! 好きなんだろ? 先生って職業が好きなんだろ?」

「好きなことは、そう簡単に諦めんじゃねえよ! もう一度、一緒にやってくれよ先生!」

感動したハンソク先生はホームから駆け出し、水野らとラグビーボールを投げ合うと、あっという間に海辺まで移動しw、砂浜をあのボン走りで全力疾走しながら、叫びます。

「俺はやっぱり先生がやりたい! お前たちと一緒にやりたいんだ!」

そんなに言うほど、先生と生徒たちとの絆がまだ描かれてないもんだから、イマイチ感動出来ないんだけどw、これぞ青春シリーズ!っていう場面を、初回できっちり見せてくれたのは良かったと思います。

しかし、いくらハンソク先生が教師を続けたいと思っても、起こした問題が問題だし、辞表も既に受理されてます。そこで助けに現れるのが、最愛のお母ちゃん=里枝(藤間 紫)です。

そもそも伝説の問題児だった「ハンソク」が朝日丘学園に教師として赴任出来たのは、居酒屋のママさんゆえに情報通な里枝が、教師たちの弱み(リベートやセクハラ等)を握っていたから。

「あなた! 私を脅迫するんですか!?」

「はい。あの子を私の手元に置くためなら、脅迫でも何でも致します!」

最大の難敵である竹内教頭(高城淳一)も脅しに屈し、高岩校長(宍戸 錠)に至っては里枝に惚れてる節もありw、ハンソク先生は難なく復帰出来る運びとなりました。いいのかそれで!?w

オレンジのラガーシャツ(『われら青春!』のと同じ?)に鉢巻き姿のハンソク先生は、水野たちに何度も「先生」と呼ばせて悦に入ると、勝手に彼らをランニングに連れ出します。

それに気づいた涼子先生はカンカンになり、ガードマン(名古屋 章)の自転車を借りてその後を追います。涼子先生、いつの間に立ち直ったんでしょうか?w

で、ブレーキが壊れた自転車で坂道を下った涼子先生は、ハンソク先生に突っ込んで抱き合う形になっちゃうというラブコメ展開。そういうの好きですw

ちなみに片平さんは自転車が実は初体験で、この場面の撮影で数針縫う大怪我を負い、番組スタッフは所属事務所から大目玉を食らったそうです。

エンディングは主題歌『新しい空』のスローバージョンに乗せて、オープニングの未使用カットも交えた青春風景。

生徒たちを連れて浜辺をランニングしながら、ハンソク先生とタックル先生が無邪気に小競り合いする姿を見て、私は何だかじ~んと来ちゃいましたw こういう演出が観られるのも『あさひが丘の大統領』が最後だったんですよねぇ……

♪追いかけようぜ~若さの蜃気楼~AHA~生きてる~生きてるんだ~俺たち~

一気に3話分ぐらい消化したような盛り沢山ぶりで、正味45分に詰め込み過ぎた感もありますが、昨今の連ドラみたいに初回から2時間もダラダラやられるより遥かに良いです。

色んな問題が提起されて、何一つ解決しないままなんだけどw、ここから全てが始まるワケだし、前回も書いた通り安易に結論を出さないのが『あさひが丘』の特徴なんですよね。

この番組の方向性を語りきった見事な第1話で、何回観ても飽きない作品です。ただ1つ問題なのは、すっかり下がったハンソク先生の好感度ですよねw

本来の優しさと熱さを発揮した後半で、やや盛り返したものの、展開があまりに駆け足だったお陰で、前半のマザコンぶりや身勝手ぶりの印象ばかり残っちゃった感じです。

しかも第2話の予告編ではパンツ1丁の姿を女子生徒たちに晒したり、ドリフのコントよろしく白粉まみれになったりと、ちょっと子供じみたドタバタ喜劇の側面ばかり強調されてて、観る気が失せた視聴者も多かったかも知れません。

宮内 淳さんの魅力って、もっと他の部分にあった気がするもんで、この『あさひが丘』の次に出演された『探偵同盟』にせよ、もうちょっと何とかならんかったかなあって、当時から思わずにいられなかったです。

とは言え、非常に数少ない宮内さんの出演作にして、青春シリーズ最後の作品としても貴重な番組です。

ヌード場面も含めて、何とか既成の殻を破って新しいものを創り出そうっていう、スタッフ&キャストの野心、そして情熱が溢れたこの第1話は、特に忘れがたい作品です。
 

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2 コメント

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Unknown (ムーミン)
2018-11-01 12:43:35
ハンソク先生結構好きでしたよ。最初のころは見ていましたが、二番煎じな感じになってだんだん視聴しなくなりました。片平なぎささんも当時は好きでなぎささん目当てもあったかもしれません。長身でダイナマイトボディはちょっと萌えました。
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>ムーミンさん (ハリソン君)
2018-11-01 13:57:26
そうですね、回が進むとハンソク先生もマイルド化して普通の学園ドラマになっちゃいましたよね。数字を稼ぐためには好感度を上げるしかなかったんでしょう。初期が一番面白かったですね。
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