ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#494

2023-09-04 17:00:02 | 刑事ドラマ'80年代

1982年初頭、スコッチ(沖 雅也)という貴重にも程がある戦力を失った七曲署捜査一係の穴を埋めるべく、同じ「クールな一匹狼」キャラとして……どころか、スコッチをも凌ぐハードな戦士という鳴り物入りで登場したのが、幾多の所轄署を渡り歩くジプシー刑事こと、原 昌之(三田村邦彦)でした。

’76年にスコッチが初登場したときの、あの強烈なインパクトの再来をずっと待ちわびてた私は、新刑事ジプシーにメチャクチャ期待したし、今回レビューする登場篇はその期待に充分応えてくれたと思ってます。

そう、この登場篇「だけ」はw




☆第494話『ジプシー刑事登場!』(1982.2.5.OA/脚本=小川 英&古内一成/監督=竹林 進)

まず、拳銃を構える姿がサマになるか否かは(私にとって)真っ先にチェックしたい重要ポイント。その時点で後のマイコン刑事(石原良純)なんか即アウトですw

私は時代劇をほとんど観ないもんで、当時すでに『必殺仕事人』シリーズで人気を博してた三田村邦彦さんの演技はおろか、お顔も写真でしか知りませんでした。

そんな私に対し「これでどうだ?」と言わんばかりに、冒頭からいきなり七曲署地下の射撃レーンで、新しい拳銃を試射して見せる原刑事。



射撃スタイルは普通なれど、殺気をむき出しにした眼光はとても素晴らしい。合格です!

ちなみにこの原刑事、七曲署に着くなり射撃レーンへ直行しており、出勤時間は過ぎてるのに着任の挨拶すらしてません。合格です!w



で、事件発生。拳銃を持ったチンピラが喫茶店で暴れ、女性店員を人質にして立て籠もったらしい。

それを知った原は、店の表で作戦を練ってる先輩刑事たちを差し置き、勝手に覆面車を走らせて……



なんと、ブレーキとアクセルを踏み間違えたのか、そのまま猛スピードで喫茶店へと突っ込んだ!



イッツ・クレイジー!! もちろん合格です!



すぐさま車を降りた原は、チンピラの利き腕を1発で撃ち抜きます。

ついさっき試射してた拳銃(COLTローマン)と、いま撃った拳銃(COLTパイソン)の機種が違ってるのはご愛嬌。ローマンがイマイチだったもんでパイソンに持ち換えた、と解釈しておきましょう。

しかし、これから同僚となる刑事が5人も現場に来てるのに、それを完全無視した上でのスタンドプレー。

ここでようやく辞令書を見せて身分を明かすも、4〜5年前ならゴリさん(竜 雷太)の鉄拳を食らった事でしょう。



「なぜ、こんなムチャをした? 失敗したら人質も無事じゃ済まなかったぞ」

「自信がありました」

「自信? どんなに自信があってもミスはある。100%の確信が無ければ、オレは引金を引かん」

「オレは、60%でも撃ちます。」

「!?」



ボス(石原裕次郎)に対しても臆することなく、始末書を書いとけと言われて「はい」とだけ返事し、さっさと退勤しちゃう原刑事。合格です!

「転任の挨拶なし! 自己紹介なし! 愛嬌なし! 可愛げがまったく無いじゃないかっ!!💢」



いやもっと、比べものにならんほど尖ってたヤツ(かつてのスコッチ)を知るベテラン勢と違って、免疫がないドック(神田正輝)はすっかりお冠でロッキー(木之元 亮)に八つ当たり。

シャワー室でも悪口を言いまくってたら、帰ったはずの原がすぐ横でシャワーを浴びてたから驚いた!

そして更に、彼の左胸(ちょうど心臓の下)に大きな手術痕を見つけてもっと驚いた!



「お前、この縫い方は……弾丸を摘出したのか?」

「そうです」

「そうですってお前……よく死ななかったな。普通なら即死だぞ?」



「この位のことじゃ、死にませんよ」

その手術痕にこそ、原刑事をこれほどニヒルたらしめた理由があるワケだけど、それにしても乳首がこんなにハッキリ写ってて、この記事は消さなくていいんスかgooブログ事務局の皆さん? 男なら問題なしってこと? それこそ性差別ってもんじゃないですか?

三田村さんの乳首はともかく、再び七曲署管内で立て籠もり事件が発生し、原刑事を加えた新・藤堂チームが出動!

今度は宝石店に押し入った強盗犯で、やはり拳銃を所持しており、どうやら支店長と鑑定士、2人の女性店員と2人の客を人質に取ってるらしい。けど、入口も窓も完全にバリケードされ、中の様子はまったく判らない。



いかなる時もロンリーで行動する原刑事、合格です。

面倒だから詳細は省くけど、この事件にいくつか不自然な点があることに気づいた原は、再び勝手に現場を離れて独自の捜査を進めるのでした。

で、しばらく膠着状態が続くんだけど、女性店員の寺田(上原ゆかり)がセクシーな太腿をチラ見せしながら店を脱出し、ようやく事態が動き出します。



寺田の証言により店内の様子が分かってくるんだけど、原はどうやら彼女を信じてない。



そしてもう1人、人質にされてた客の森岡(加藤大樹)が、犯人の要求を伝えるため解放されます。



原は即座に森岡の身辺も洗いだし、とある情報を掴んだ上で、またもや勝手に1人で宝石店へと突入!



ところが店内にいたのは拘束された人質たちだけ。

そう、原は独自の捜査により、脱出した女性店員の寺田と、客の森岡がチョメチョメな関係であることを突き止めた。つまり、その2人こそが犯人だった!

原がムチャな突入を決行したお陰で、寺田の身柄はギリギリ押さえたものの、主犯と思われる森岡はまんまと逃走。



初めて原と覆面車で2人きりになったドックが、もっともな疑問を彼にぶつけます。

「なんでもっと早く言わなかったんだ?」

「確信が無かったんです」

「60%の確率でも突っ込むんじゃなかったのか?」

「60%でもオレはやります。けど100%になるまで、他人には言いません」

「…………」

この「確率」にこだわったセリフのやり取り(予告編でも使ってた)がカッコいいかどうか私には判んないけどw、なんとなく合格です!



で、結婚詐欺まがいの手口で自分も騙されてたことを知った寺田が口を割り、森岡の居場所もすんなり判明。

後に三田村邦彦+渡辺徹+神田正輝の頭文字で「ミワカントリオ」なんて女性誌で呼ばれる男前3人が、ここで初めてスリーショットを披露!



逃げたところでどうにもならんのに、とにかく「走るドラマ」の慣例に倣って森岡も逃走!



ここでも原は単独で別ルートを廻り、みごと森岡を挟み打ちにします。が、しぶとい森岡はちっとも諦めない!



「動くな! こいつを撃ち殺すぞ!」



「撃つなら、撃て」

原は表情ひとつ変えず、まるで「早く殺してくれ」と言わんばかりに森岡の銃口に向かい、まっすぐ歩いていく!

「くっ、来るなあーっ!!」



素早くしゃがみながらの抜き撃ちをスローモーションで捉えたこのショットも、カッコいいのかどうかイマイチ微妙なんだけどw、優等生ばかり揃った(つまり面白味が薄い)今の七曲署捜査一係には、こういうクレイジーな刑事がいないとダメなんです。大合格!



「お前! そりゃ射撃についちゃかなりの腕だってことは認める! しかしお前、やることがムチャだっ!」



「手錠、お願いします」



このクールさ、クレイジーさ、そしてロンリーウルフぶりを、私は最後まで貫いて欲しかった!

こんな調子ゆえに幾多の所轄署で厄介払いされ、転勤を繰り返して来たから「ジプシー(ヨーロッパの放浪民族)」とドックに命名される原刑事は、過去の記事でさんざん書いて来たとおり、あっという間に藤堂チームに馴染むばかりか、あの殿下(小野寺 昭)も顔負けの「ダンディーで優しい」刑事に変貌しちゃいます。不合格!

1年後の降板時までじっくりと、その過程が描かれたなら誰も文句は言わないけど、登場篇でこれほどクレイジーさを強調しといて、ほんの2〜3週で優等生に成り下がっちゃうもんだから、リアルタイムで観てた当時(まだ高校生)の私は「なに、それ?」「なんで?」の繰り返しでした。

けど、すっかりトシを食い、社会のしがらみや芸能界のからくりを知っちゃった今の私には、なんとなく理解できる。注目度の高い番組だからこそ色々言われるけど、連ドラでこの程度の「キャラ変」は珍しくもなく、ビジネスである以上は仕方ない事なんだと。



今回のラストシーンで、なぜ原刑事があんなクレイジーな人になっちゃったか、その理由を山さん(露口 茂)がセクシーに解説してくれます。

数年前に左胸を撃たれて生死をさまよう重傷を負った原は、だけど心臓はおろか全ての内臓が左右あべこべという特異体質だったお陰で、九死に一生を得た。

しかし左の肺は機能を失い、「片肺」という大きなハンデを背負った彼は、残りの人生を「おまけ」だと考えてる。だからニヒルでクレイジーなんだと、まあ当時も「解ったような解らんような」空気だったけどw、とにかく凝りに凝った設定なんですね。

恐らくそこに、制作現場よりも上のポジションにいる人たち(つまり放映局のお偉方やスポンサー、あるいは三田村さんの所属事務所あたり)からクレームがついたんでしょう。「荒唐無稽すぎる!」「イメージが鬱すぎる!」「そんなの女性ファンは求めてないよ!」って。

沖雅也さんの降板決定→三田村さんの起用はかなりハイスピードで、悪く言えばバタバタの状況下で進んだらしいから、もしかすると登場篇の仕上がり(試写)を観るまで、その偉い人たちは上記の設定を知らなかったかも知れない。

それで「なんだこれは!?」って話になり、すぐさまジプシー刑事は「キャラ変」を余儀なくされ、「片肺」設定も無かったことにされちゃった。かろうじて「右胸心」設定が1回だけ生かされた以外、ジプシーはふつうに元気いっぱいで走り回ってますからw

過去にも殿下や山さん、前任者のスコッチだって緩やかに「キャラ変」して来たけど、ジプシーほど急激に(それも登場してすぐ=視聴者からの反応を待たずに)変わっちゃった例はなく、裏でそういうドタバタがあったとしか思えません。

結果的に「ミワカントリオ」が視聴率アップに貢献しますから、番組としては大成功だったワケだし、そもそもネアカな三田村さんに初期スコッチのハードさを求めること自体、ちょっと無理があったんでしょう。最初から殿下キャラにしときゃ良かった!

だからこれは、最初で最後の「スコッチを凌ぐハードな刑事ジプシー」が観られる、とても貴重なエピソードと言えます。合格!



ゲストの上原ゆかりさんは、4歳時から子役として活躍されて来た若きベテラン女優。明治製菓「マーブルチョコレート」のイメージキャラクターとしてCMにも出てられたから、昭和世代なら誰もがそのお顔を見てるはず。

刑事ドラマは『太陽にほえろ!』に合計3回のほか、『特捜最前線』と『刑事物語’85』にそれぞれ1回ずつゲスト出演されてます。


 


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2 コメント

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Unknown (ムーミン)
2023-09-04 21:24:28
私は必殺仕事人を見ていたので、太陽に三田村さんが登場した際はすごく期待しましたし、登場編はすごくカッコ良かったですが、あっという間に殿下ばりの優しい刑事になってしまいましたね。ファンの間では「雨の降る街」は名作だそうですが、最初を知っているのですごく違和感がありました。必殺を断れなくて、1年という短い時間では人物の掘り下げも難しく、中途半端なキャラになってしまいました。残念です。
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Unknown (harrison2018)
2023-09-04 23:23:13
『雨の降る街』は我々から観れば殿下の『鶴が飛んだ日』の二番煎じに過ぎないけど、ミワカン世代の女性ファンから観れば理想的なジプシー篇なのかも知れません。

我々オトコにはまったく響かない、ドックとのボーイズラブ的な感じもありますからね。
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