☆第1話『マフィアからの挑戦』
(1980.4.8.OA/脚本=永原秀一/監督=関本郁夫)
1980年代、日本の暴力団は幾多の内部抗争と政治との黒い癒着の末、全国統一を成し遂げ、更に海外のマフィアと手を結び、日本全土を制覇する巨大な犯罪組織を形成した。ジャパンマフィアの誕生である。
警察庁はこの巨大組織の壊滅を目的とし、選りすぐりの精鋭部隊を編成し、ジャパンマフィアに戦いを挑んだ。この部隊の唯一の目的は、ジャパンマフィアの壊滅である。
恐れを知らぬ彼らの行動を、組織は「MP」すなわち「マッドポリス」、命知らずの警官と呼んで恐れおののいた!
↑ 毎回オープニングで語られるナレーションですが、これが本作の全てですw 描かれるのはマッドポリスvsジャパンマフィアの果てなき殺し合いのみ。謎解きはおろか捜査シーンも無く、ひたすら暴力!射殺!暴力!破壊!暴力!乳首!暴力!足の裏!の繰り返し。
マッドポリスは警察手帳も手錠も持ってません。必要無いからですw 逮捕などせず射殺するだけなもんで、銃さえあれば万事オッケー。
そして彼らには、銃よりも恐ろしい「顔」という究極の武器がありますから、警察手帳なんか無くても簡単に情報を聞き出せちゃう。
「おい、質問にだけ答えい。答えへんかったらワレ、殺すぞ」
いちおう肩書きは刑事だけど、台詞は普段やられてる凶悪犯の役とちっとも変わらないw
そんなマッドポリスのメンバーは、当時「狂犬俳優」と呼ばれた渡瀬恒彦(氷室キャップ)、「不良番長」こと梅宮辰夫(松村刑事)、「ピラニア軍団」の志賀 勝(芹沢刑事)と片桐竜次(新田刑事)、「ミスタースリムカンパニー」の中西良太(原田刑事)、4代目「クラリオンガール」の堀川まゆみ(緑川刑事)。
そしてジャパンマフィアの首領に島田正吾、幹部に仲谷 昇。第1話ゲストに土屋嘉男、中尾 彬、原 良子、辻 萬長と、とにかく怖い顔しか画面に映りませんw 意図的に悪役俳優だけを揃えたワケです。
放映枠の日本テレビ系列・火曜夜9時は当時、石原プロの『大都会』シリーズを筆頭に東宝の『大追跡』、セントラルアーツの『探偵物語』と続くアクションドラマの固定枠で、もう刑事アクションに関しては「やり尽くした」感があり、創り手たちはとにかく新しいこと、既成の枠から外れたことをやりたかった。
そこでメインライターの永原秀一さんが持ち出したのがドン・ペンドルトンのシリーズ小説『マフィアへの挑戦』で、第1話のサブタイトルにそれが反映されてます。
家族をマフィアに殺されたベトナム帰還兵が、たった1人で全米各地のマフィアを壊滅させて行くというハードな小説の世界観と、今回製作にあたった東映東京撮影所の不良性感度を融合させ、さらに当時大ヒットしたオーストラリア映画『マッドマックス』の「近未来」というモチーフを取り入れたスタイリッシュなハードアクションTV映画が『大激闘/マッドポリス'80』という企画。
ところが、この第1話の仕上がりを観たら、マッドポリスがその辺のドブ川とか採石場とか廃車処理場でドンパチやってたり、ジャパンマフィアが商工会議所みたいな部屋で集会やってたりして、あまりに泥臭くて近未来感ゼロなもんでw、永原さんは激怒されたそうです。
要するに監督の関本郁夫さんにそういったセンスが無く、企画の意図する世界観がほとんど表現出来てなかった。まぁ、ちゃんと表現出来てても結果は同じだったかも知れないけどw、とにかく視聴者は戸惑い、現場のスタッフ&キャストたちも混乱しちゃったそうです。
私は当時観てなくて、ちゃんと観たのは近年になってからだけど、確かにこれじゃ単に『西部警察』のバッタもんにしか見えず、創り手の目指す「新しさ」には程遠いと感じました。
で、視聴率も低迷し、このままじゃマズイってことで、長谷部安春さんや村川 透さんら東映外部の監督さん達が参入し、軌道修正が図られていく事になります。
それで徐々に面白くなり、熱烈なファンもつくようになるんだけど、その反面、ひたすら暴力しか描かれない内容に対する批判やクレームも増えて行ったそうです。
それでも創り手たちは「この番組には銃撃戦と人殺ししかテーマが無いって? その通りだ!」「単なる暴力番組? 何が悪い!?」ってw、意に介さず我が道を突き進んだ。そこが素晴らしいですよね。現場のスタッフ&キャストはみんな燃えてたそうです。
ところが! 2クールの折り返し地点を過ぎた第16話で、唐突にナレーターが「ジャパンマフィアは壊滅した」と宣言、翌週からタイトルが『特命刑事』に変更され、桜木健一&山岡 健という顔がちっとも怖くないレギュラーキャストが加わっちゃう。
つまりソフト路線への変更&テコ入れが敢行されたワケだけど、その回の台本が届くまでプロデューサーすらそれを知らされてなかったというw
つまりテレビ局の上層部やスポンサーたち=会議室の連中が、現場の意向をいっさい無視して路線変更を強行したワケで、それはそれでメチャクチャ面白い話ですよねw
その件も含めて『大激闘』『特命刑事』という番組、その魅力と変遷の歴史を今、あらためて見直すべきかも知れません。
セクシーショットは、マッドポリスの紅一点・緑川悠子に扮した堀川まゆみさん、当時21歳。
スペイン系フィリピン人の母と日本人の父との間に生まれたハーフで、沖縄出身。4代目クラリオンガールに選ばれモデルとしてデビュー後、松任谷正隆プロデュースにより歌手デビュー。
女優としては本作がデビュー作で、内容が内容だけに当然ヌード&濡れ場が期待されたものの、せいぜいチャイナドレス姿で拉致監禁、そして緊縛によるオッパイ強調が関の山。パンチラすら見せない不真面目さで視聴者を裏切ってくれました。いったい何をしに出てきたのか?
'82年には武智鉄二監督の本番映画『華魁』に主演することが発表されながら、クランクイン直前に「本番の意味を取り違えていた」との理由で突如降板。タイアップ企画のヌード写真集のみリリースされるも、所属事務所との関係がこじれて女優業は休止。
'85年以降はMAYUMI名義で音楽活動を再開し、作曲家として稲垣潤一、今井美樹、斉藤由貴といったアーティストらに楽曲を提供されてます。
美人ではあるけど強い個性も演技力も無く、それで脱ぎもしないという覚悟の無さでは、女優としての居場所が無くなるのは仕方なかったと言わざるを得ません。初回から意味なく脱ぎまくる『警視庁殺人課』の一色彩子さんを見習うべきでした。
だけど作曲家としては成功されてるので、人生のちょっとした寄り道に『大激闘』があったという感じでしょうか。当時のアクションドラマには、そういう女優さんも多かったように思います。
試しにコンセントを抜いてみたらアッサリ直ったから良かったものの、自分はつくづくテレビっ子なんだと思い知らされました。
正月休み明けるまでどうすること(修理に出すこと)もできない。正に(暇人なりの)苦痛の年末年始です…ってのは置いておいて
6人の中で渡瀬さんと梅宮さん以外は「西部警察」出てるんですよね。
志賀さん片桐さん中西さんはまあ犯罪者orチンピラ常連として、堀川さんもPART2に一回だけ、日系外人の亡命者役で出てました。
当初は「もっと近未来感のある感じに」というのが考えられていたのですね。でも結果はご覧の通り…強いて言うなら、RX-7(キャップの愛車のスポーツカー)だけがそれっぽい雰囲気を漂わせていたといえるかもしれませんね。周りの車が(たとえ当時の最新型だろうが)古くさく見えてしまう。RX-7のスタイルはそんな感じですね。
乱文失礼いたしました。