私がずっと応援して来た若手刑事=ボン(宮内 淳)のラストイヤーがやって来ました。普段にも増して視聴に熱が入った、とても思い出深いシーズンです。
#310 再会
ゴリさん(竜 雷太)が、第200回記念作で別離したかつての婚約者・道代(武原英子)と、七夕の夜に放送されたこの回で2年ぶりに再会します。
道代は既に結婚しており、ゴリさんは事件捜査の為に、彼女が夫と暮らす団地を張り込まなければならない……という辛いシチュエーション。
新米刑事ロッキー(木之元 亮)も登場から2年目に入って落ち着いて来た事もあり、『太陽にほえろ!』はベテラン刑事達の哀愁を描く事に、より力を注ぐようになって来ました。
そうなるとアクティブな描写は少なくなるしトーンも暗くなっちゃうしで、当時まだまだガキンチョの中学生だった私にとっては、あまり喜ばしい傾向とは言えませんでした。
#312 凶器
そんな若いファンのフラストレーションを感知されてたのか、ボス=石原裕次郎さんが「いっちょ派手なアクション物でもやろうや」と自ら提案されて製作されたのが、このエピソード。
空手で人殺しをするリーサル・ウェポン(人間凶器)な凶悪犯と、丸腰のボスが10分以上にも及ぶガチンコの死闘を繰り広げます。
当時から既に健康状態が芳しくなかった裕次郎さんですが、サポーターやマット等の防具を一切使わず、ハードな格闘アクションを全部ご自身でこなされたそうです。
ボスと対決する人間凶器を演じたのは、世界的アクションスターである千葉真一さん!……ではなく、その弟=矢吹二朗さん。
#322 誤射
銀行に立てこもる強盗犯と銃撃戦になり、長さん(下川辰平)の撃った弾丸が人質に命中し、重傷を負わせちゃう。なぜか長さんにはそういう、刑事を辞めたくなるような試練にぶち当たる、辛いエピソードが多いのでした。
この回をもって、七曲署捜査一係室のマスコットガール=アッコ(木村理恵)が番組を卒業する事になりました。ボンとほぼ同時期の加入でしたから、約3年もの間むさ苦しい刑事部屋に可憐な花を添えてくれたワケですね。
#323 愛は何処へ #324 愛よさらば
日テレ開局25周年の記念作品で、北海道ロケ編です。ゲストは当時歌手として人気だった清水健太郎さん。後のスニーカー刑事=山下真司さんもテスト出演で少し顔を出してます。
ボンのガールフレンド(純アリス)が健太郎に拉致されたと思いきや実は幼なじみで、ボンは決して悪い奴じゃない健太郎を射殺しなくちゃいけないシチュエーションにぶち当たります。
歴代の新人刑事はそこで射殺を経験し、傷つきながらも成長するんだけど、根っから優しいボンは撃てなかった。代わりにボスが、上空のヘリコプターからリボルバー拳銃で数百メートル先にいる健太郎の心臓を1発で撃ち抜くというw、石原裕次郎にしか許されない神技を披露します。
本来、この辺りでボンは殉職する予定だったそうです。登場から丸3年、ボンもロッキーの先輩になってすっかり頼もしく成長し、俳優・宮内淳の人気も絶頂期にありましたから、『太陽』を卒業して独り立ちする条件は全て揃ってました。
だけど、テキサスの時と同じように助命嘆願の投書が殺到したのと、番組をより大人向けにシフトしようという時期だったせいもあるのでしょう。殉職は回避され、ボンはもう1年残留する事になったのでした。
もちろん、ボンのファンとしては願ってもない事で、嬉しかったです。とても嬉しいんだけど、私が欲してた刺激とか新鮮味は、これでまた遠のいちゃいました。
『太陽』の長い歴史の中で、2年間もメンバーチェンジが無かったのは、唯一このボン&ロッキー時代だけです。せめてオープニングのタイトルバックだけでも一新して欲しかったけど、これも2年間不動でしたからね。
自信があったんでしょうか? 別に目先を変えなくたって、今の『太陽』人気が揺らぐ事は無いだろうって。この自信と安定志向、守りの姿勢が、果たして吉と出るか凶と出るか? しっぺ返しはもうちょい先、ボンの殉職後にやって来る事になります。
#325 波止場
ボンが死なない替わりにってワケじゃないでしょうが、この回から4代目にして最後のマスコットガール「ナーコ」こと松原直子(友 直子)が登場します。
なんと今回は一般公募によるオーディションで、選ばれた友直子さんは当時現役の高校生。まさか合格するとは夢にも思わず、学校に出演許可をもらうのに四苦八苦されたそうですw
なお、他の番組ではとっくに使用されてた覆面パトカー用の着脱式パトライトが、ようやく七曲署でもこの辺りから使われるようになりました。
#335 ある結末
殿下(小野寺 昭)の身代わりで重傷を負い、半身不随になった婚約者・三好恵子(香野百合子)が手術&治療の為にアメリカへと旅立ちます。
当初は2人を結婚させるプランもあったそうですが、女性ファン達から「私の殿下を結婚させないで!」との嘆願書(というより脅迫状)が殺到したお陰もあって、やっぱり七曲署の刑事は幸せになれないのでした。
全5作に及ぶ殿下の悲恋ストーリーを執筆されたのは、畑嶺明さん。後に殿下=小野寺昭主演の人気ドラマ『毎度おさわがせします』を手掛けられ、無名のアイドルだった中山美穂をブレイクさせる事になります。
☆1979年
この年は『太陽』スタッフによる探偵物で沖雅也主演の『俺たちは天使だ!』(日テレ)を筆頭に、水谷豊の『熱中時代/刑事編』(日テレ)、国広富之&松崎しげるの『噂の刑事トミーとマツ』(TBS)、石原プロの『西部警察』(テレ朝)、そして松田優作の『探偵物語』(日テレ) といったアクションドラマが創られ、人気を博しました。
それらほとんどの作品が軽妙酒脱なコメディータッチで、TVドラマの作風が大きく変わっていく’80年代の到来を予感させるものでした。ところが『太陽』は時代の流れに逆行するかのように、内容がどんどんシリアスになって行きます。
#339 暴発
そんな中でボン&ロッキーのコンビが活躍する回だけは明るく軽妙で、宮内淳さんは「ほんと俺達の回だけ中身が無いんだよな」とボヤかれてましたがw、私にとってはオアシスでした。
ゲストは当時デビューして間もなかった森下愛子さん。内容的には突出した回じゃないんだけど、最高にキュートな森下さんの魅力により、強く記憶に残るエピソードとなりました。
森下さんは後にセントラルアーツ製作のドラマ『探偵同盟』(フジ) のヒロインとして、宮内さんと再共演される事になります。
なお、横浜ロケ編でもある本エピソードを執筆されたのは、数多くのアクションドラマを手掛けておられる柏原寛司さん。この方が脚本を書くと、必ず横浜が舞台になるというジンクスがありますw
#325 ボン・絶体絶命
和製チャールズ・ブロンソンこと佐藤 允さん扮する警備員が、スーパーに押し入った強盗犯を殺しちゃう。正当防衛かと思いきや、実はマッドな殺人マシーンだったブロンソンが、ボンに襲いかかります。
いよいよボンの殉職が正式にアナウンスされ、この回に続いて#356『制服を狙え』#360『ボンは泣かない』と、月1本のペースでボン最後の活躍が描かれました。
#355 ボス
『青春』シリーズや『俺たち』シリーズのメインライターである鎌田敏夫さんは『ジーパン刑事登場!』から『太陽』に参加され、特に裕次郎さんの大ファンという事でボス編を数多く手掛けておられます。
そんな中でも、そのものズバリなタイトルである『ボス』は最高傑作と言われており、後に多くの刑事ドラマで模倣されたりもしました。
既に死刑が決まってる囚人が、実は共犯者として刑務所に入ってる男は無実だから釈放してやってくれ、とボスに訴える。もう何年も前に他の署で解決した事件であり、もし囚人の言う通りだとすれば冤罪を暴く事になってしまう。
そんな事をすれば警察組織はおろか検察や裁判所まで敵に回し、ボスの出世は絶望的になっちゃう。それでも、無実の人間が刑に服してるのを見過ごせないボスは、休暇を取って1人で捜査する。
そんなボスの刑事魂にも心打たれるし、こっそり捜査に協力する一係メンバー達との絆にも泣かされます。
特にラスト、自分が出世しないままじゃ部下も出世出来ないと嘆くボスに、「出世したけりゃ、ボスなんかとっくに追い越してますよ」なんて言っちゃう山さん(露口 茂)との、何年もつき合ってる仲間どうしならではの会話が最高でした。
#358 愛の暴走
看護婦を人質に取ってタンクローリーを暴走させる若者(中西良太)を追うロッキー。白衣姿がやけにエロチックな看護婦を演じたのは、当時19歳の石田えりさん。
翌週のゴリさん編『ジョギング・コース』には、やはり当時19歳だった岸本加世子さんがゲスト出演されました。
#362 デイト・ヨコハマ
この直後に松田優作主演ドラマ『探偵物語』のレギュラーに抜擢される、ナンシー・チェニーをゲストに迎えた横浜ロケ編。脚本はもちろん柏原寛司さんw(小川英さんとの共作)
本作でロッキーと早瀬令子(長谷直美)の偽装デートが描かれており、後に結婚へと繋がる伏線とも取れますが、当時はまだ2人をくっつけるプランは無かったみたいです。
この回は殉職直前のエピソードって事で、助演のボンも大活躍しました。そして、ジーパン殉職の時と同じように、ボンの真っ白なジャケットが真っ赤な血の色に染まる、次週予告の映像。それを観て私は、胸が締めつけられる想いでした。
#363 13日金曜日・ボン最期の日
そして、ついに… 私は万感の想いでその日を迎えました。7月13日、マカロニと同じ日にボンが殉職。「決して美人じゃない女性をかばって死にたい」という宮内さんのリクエストにより、根岸季衣さんがキャスティングされましたw
撃たれて致命傷を負ったボンが、同じく傷ついた根岸さんの為に助けを呼ぶべく、数百メートル離れた電話ボックスまで這っていく姿に、今観ても涙が止まりません。スマホで済んじゃう現在では成立しない作劇です。
4年間も親しまれたボンの殉職は、テキサス(勝野 洋)以来3年ぶりの殉職劇という事もあって、かなりスペシャルに扱われました。後任のスニーカー刑事はボンの仇討ちが目的で登場するし、その後もゴリさんやロッキーがボンの死を引きずる姿が描かれたりします。
そのお陰で、ボンがいなくなっても私は『太陽』地獄から逃れられないのでしたw そうやってファンを引き留める意図も製作側にはあったのでしょう。
ところがこの後『太陽にほえろ!』は、視聴率が急降下する事になっちゃいます。ボンの抜けた穴は確かに大きいんだけど、かねてから私が感じてたマンネリ感やフラストレーションを、多くの視聴者もまた胸に溜めてたのかも知れません。
そうして番組のパワーが知らず知らず衰えてたこの時期に、絶妙のと言うか最悪のタイミングでTBSが、暮れなずむ町の光と影の中、例のお化け番組を『太陽』の裏にぶつけて来たのでした。
なお、宮内淳さんはこの後『あさひが丘の大統領』『探偵同盟』といったドラマで主役を務められますが、あっさり役者稼業から足を洗ってテレビに出なくなっちゃいます。
どうしてあんなにボンが好きだったのか、宮内淳さんの一体どこがそんなに良かったのか、自分でも未だによく解りませんw
ジーパンやスコッチはもっとカッコいいし、大人になるとボスや山さんの渋さにシビれたりします。だけど一番好きな刑事は?と聞かれれば、やっぱ私は今でもボンなのでした。
(つづく)
2 コメント
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- Unknown (相模警察本部)
- 2019-02-08 20:41:08
- 今この時間、チバテレでボン殉職の回を放映中で観ています。泣けます・・・
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- Unknown (harrison2018)
- 2019-02-08 22:04:04
- なにか言うんだ、ボン!
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