2019年秋に公開された、チャド・スタエルスキ監督によるアメリカ映画。人気アクションシリーズ『ジョン・ウィック』の第3弾です。
最強の殺し屋だったジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)が引退し、結婚して新しい人生を歩み出すも、その妻が殺され……たんじゃなくて、病死しちゃった妻がジョンにプレゼントした仔犬をマフィアのドラ息子に殺され、その復讐に立ち上がったのをきっかけに彼は修羅の道へと戻っていく。それが「チャプター1」のストーリー。
そして「チャプター2」では殺し屋稼業に戻らざるを得なくなったジョンが、その元締め組織の掟を破ってしまい、そのせいで世界中の殺し屋から生命を狙われる羽目になっちゃう。
今回の「チャプター3」はその続きで、どこへ行っても無数の殺し屋たちに襲撃されるジョンが、ドツボな状況を切り抜けていく過程を軸にして、とにかく2時間強、ひたすら殺し合いだけが描かれてますw ホントいったい何人死んでることやら、もはや天文学的な数値になってますw
だけど心に痛みはいっさい感じません。なぜなら、殺されるヤツらも全員殺し屋だから。善悪もへったくれもなく、キャラクター(色分け)はあっても人格や背景はいっさい無い、もはやゾンビ映画のゾンビたちと同じ扱いで、全編がシューティングゲームみたいなもの。
そう割りきって観れば、これほど爽快な映画はなかなかありません。人を殺さない殺し屋の話など愚の骨頂で一文の価値も無いってことを、日本映画『ザ・ファブル』の創り手たちは1から学び直して頂きたいです。
とは言え私自身、チャプター1の時はいまいちピンと来ませんでした。あまりに人がポンポン死んでいくしw、世界中の殺し屋をコントロールしちゃう組織にリアリティーが感じられないし、そこのルールに縛られてるダークヒーローってどうなの?って思ったし。
なのに不思議と続きが観たくなるんですよね。ふと気がつけば無邪気に楽しんでる自分がいる。最初イマイチと感じた筈の要素が、実は病みつきにさせる魅力になってたりする!
まず、人がポンポン死んでいく様がめちゃくちゃ気持ちいい!w これは『ザ・ファブル』を観た後だから余計にそう感じるのかも知れません。
そして世界中の殺し屋をコントロールするヘンテコな組織の、そのヘンテコさ加減こそが面白いw 究極に居心地悪そうな世界観が妙に心地良くなっちゃうことって、『ブレードランナー』や『マッドマックス』等を筆頭に意外とあるんですよね。
で、その組織の掟にがんじがらめに縛られてるからこそ、我々はジョン・ウィックに自己投影できちゃうワケです。あんなスーパーマンでも自由はなかなか得られない、まるで企業の歯車にされてる俺たちと一緒やん!って。
一旦この世界観を受け入れたら、あとは現時点で世界最高クオリティーと思われるアクションを存分に楽しめばいいワケですから、アクション好きの私にとっては至福の時間です。
チャプター1では何と言っても、ジョンが大人数を相手に格闘しつつ至近距離から撃ちまくる「ガン・フー」アクションが見所でしたが、チャプター2以降はアクションのバリエーションをどんどん増やし、今回はバイクや馬で高速チェイスしながらのガン・フーなど今まで見たこと無いアクションがてんこ盛り。
ナイフによるバトルも様々なパターンが試され、美術館に展示されてる無数のナイフを片っ端から、お互い至近距離で投げ合うシーンはあまりに怖すぎて爆笑しましたw
そう、私がこのシリーズにハマりつつあるのは、アクションがあまりに凄すぎてギャグの領域スレスレまで行っちゃってるから。ここで重要なのはスレスレ状態が保たれてる事で、ギャグの領域まで完全に行っちゃうとダメなんですね。
今回最大のハイライトと言えそうな、ハル・ベリー扮する元殺し屋=ソフィアとジョンの共闘シーンにしてもそう。相当な凄腕らしいのに引退してるソフィアがまるで「女ジョン・ウィック」みたいだなあって思ってたら、愛犬を殺された途端にブチ切れて大量殺戮を開始するというw、完全にジョンと同じ道を辿る姿がまたギャグの領域スレスレ。
同じガン・フーの達人ながら、やっぱり女性だからパワー面でハンディがあるんだけど、そこを愛犬たちにカバーさせる「ドッグ・フー」アクションがまた、絶妙にギャグ一歩手前で笑えますw
かように、やってることは冷静に見ればメチャクチャなんだけどw、それを成立させてしまう世界観の構築が秀逸なんだと思います。
もちろん、純朴そうなイケメンなのに時おり狂気を匂わせる、キアヌ・リーブスの魅力あればこその『ジョン・ウィック』であることも間違いありません。
私はてっきり今回で完結するものと思い込んでたんだけど、なんとまだまだ続きそうな感じです。『マトリックス』シリーズにも復活の噂があるし、まだまだキアヌの勢いは衰えそうにありません。
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