☆第3話『蝶は舞った』(1980.1.24.OA/脚本=白井更生/監督=手銭弘喜)
加納主任(杉良太郎)と沢木刑事(神田正輝)は殺人犯の成瀬を追跡し、給水塔の上まで追い詰めるんだけど、なんと成瀬は逃走を助けてくれた連れの女を、加納らの目の前で突き落として殺しちゃいます。
そんな事しても袋のネズミで逃げられやしないのに、なぜ成瀬はより罪を重くするような酷い殺人を犯したのか?
調べてみると突き落とされた女はコールガールで、どうやらベトナム系中国人「サイ」が牛耳る人身売買組織が絡んでるらしい。その一員である成瀬は、警察より怖い組織の秘密を守るために彼女の口を封じたワケです。
当然、そうして捕まった成瀬が口を割るはずもなく、加納主任は都築刑事(本阿弥周子)と2人で死んだコールガールのアパートを訪ね、同居していた姉の昌子(中島 葵)に捜査への協力を依頼するんだけど、なぜか彼女は拒否します。
仕方なく加納は、外事二課の協力により売春斡旋業者の連絡先を入手し、客を装ってコールガールを発注。どんな女性が来るかワクワクしながら指定場所で待ってたら、やって来たのが昌子だったから驚いた! もちろん、彼女は加納が刑事であることを知ってますからチョメチョメ出来ません。残念!
なので潜入捜査は諦めるしかないんだけど、昌子もコールガールの1人だったという、言わば弱味を握った加納は、あらためて彼女に協力を求めるのですが……
「私は何も知りません、ほっといて下さい!」
どうやら昌子も、前回の辺見と同じで強烈な警察嫌い。その理由は10年前、彼女と妹がまだ10代だった時に父親が轢き逃げで殺された事件が未解決のままで、そこから姉妹の人生が狂ってしまったから。
「助けるならそのとき助けて欲しかったわ……仇を討つならそのとき討って欲しかった。もう遅いんです、ほっといて下さい!」
ところが激昂した昌子がそのまま気を失ってしまい、ほっとくワケにいかなくなった加納は彼女を病院へ運び、意識が戻るまで付き添う羽目になります。
医師の見立てによると昌子は麻薬中毒で「治せるかどうかは本人の意志次第」とのこと。もちろん、彼女に麻薬を与えたのは人身売買組織に違いありません。
意識を取り戻した昌子は加納の眼を盗んで病院を脱走するんだけど、行き先は1つしかありません。そう、彼女は麻薬を打つためアパートに戻ったのでした。
「自分の命を縮めているのが分からんのか? クスリを捨てない限り、コールガール組織から抜けることは出来ない。ヤツらはそれを知っているからクスリを与えるんだ!」
昌子が注射器片手にラリッてる現場をもろに見ながら、加納はなぜか手を出しません。
「このまま連行してもいい。だがその前に、病院に戻って自分の力で立ち直るんだ」
遅れて駆けつけた都築刑事も驚きます。
「病院に連れ戻さないんですか?」
「本人が治す気持ちになるしかない。その代わりどこへ逃げようと、オレは彼女を逃がさない」
やっぱカッコいいですなあ、加納主任! ていうか杉サマ! いつもアンタばっかり!w
そんな加納の優しさが響いたのか、昌子は自分の意志で病院に向かうんだけど、途中で組織の車に連れ去られちゃいます。カッコつけずに主任が連れて行っときゃ良かったのに!w
慌てた加納主任は、めったに使わない情報屋を使って組織のアジトを突き止め、沢木刑事と2人で乗り込みます。待ってました! 今回こそ神田さんの華麗なガンプレイが見られるぜ!……と、思いきやw
「沢木、車に戻ってくれ」
「えっ? オレも行きますよ」
「いいから車に戻れ」
「分かりました」
というワケで神田さん、あえなくご退場w まぁしかし、ここで銃撃戦を始めるワケじゃなくて、こっそりアジト内に忍び込んでこっそり昌子を連れ出すって戦法なので、2人で行くと見つかる危険性が高いと主任は判断したんでしょう。
つまり、ここはまだクライマックスじゃない。沢木刑事のCOLTガバメントが火を吹きまくるチャンスはいくらでも残ってます。楽しみは後に取っておきましょう!
で、みごとにカッコ良く昌子の奪還に成功した加納主任は、サイの組織と密接な繋がりを持つ外資系企業が、東南アジアの取引先を接待するという情報をカッコ良くキャッチします。
「サイは動くな……動くしかないだろう」
もちろん加納の読みは的中し、大人数のコールガールを引き連れて取引現場に現れたサイたちを、加納と外事二課が率いる警官隊が一網打尽にします。
なるほど、ここで満を持して沢木のガバメントが火を吹きまくるのか!……と、思いきやw なぜか直前のシーンまでいた筈の沢木や、都築までもが忽然と姿を消しw、やっぱりいつも通りに加納主任が1人でCOLTパイソン6インチを撃ちまくり、歯向かう敵を片っ端から1人で地獄へと送り込むのでした。警官隊はいてもいなくても関係ありませんw
しかし政界とも繋がりを持つ外資系企業の重役(神田隆)は、加納が迫って来ても余裕の笑みを浮かべます。
「取引の相手を女を使って歓待するくらい、どこの会社だってやっている。商売上の常識だよ」
悪いのは人身売買組織だけじゃない。むしろ、それを利用するセレブたちにこそ悪の根元がある。社会に対する創り手の……ていうかたぶん杉サマの怒りと怨念が、この『大捜査線』には毎回こめられてるんですよね。
「キミたち親方日の丸には解らんだろうがね、我々はそうやって今の経済大国ニッポンを築き上げて来たんだよ。政治の中枢にいる人物なら、そんなことは誰でも知ってるよ」
「…………」
「余計な手出しをするのはやめたまえ。キミ自身の首を絞めることになるよ?」
そう言って重役は笑うんだけど、ますます威圧感を増して来た杉サマの眼つきを見て、笑顔が凍りつきます。
「そのために2人の女が殺されている。1人の女が麻薬中毒にかかり苦しんでいる。それでもアンタ笑えるのか? それでも商売上の常識だ、日本はオレたちが背負っていると、大きな顔をするのかっ!?」
「…………」
やばい、殺される!って、重役は思ったに違いないけど、さすがに杉サマも丸腰の相手は殺しません。
「首を絞めるなら絞めてみろ、徹底的に戦ってやる。ニッポンの警察を甘く見るなよ?」
いやあ、カッコいい! 今回も杉サマ1人だけがカッコいい!w それが許されちゃうのがスーパースターなんですね。
ラストシーンは、病院で麻薬中毒を克服した昌子が笑顔で駆け寄り、加納主任も珍しく満面の笑顔を見せるという爽やかなもの。
今回最大の見せ場はクライマックスの銃撃戦よりもむしろ、加納が抵抗する昌子を抱えて組織のアジトからこっそり脱出する、中盤のシーンだったように思います。それこそがまさに「君は人のために死ねるか?」っていうテーマに沿った場面であり、だからラストの笑顔にグッと来るんですよね。
いずれにせよ杉サマの独壇場ですw 神田さんのガバメントは一体いつ火を吹くんでしょうか?
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