年の瀬に七曲署管内で、盗まれたダイナマイトによる爆破事件が発生! 幸い死傷者は出なかったものの、直後、生命保険会社に「1億円を払わなければ次は数百人が集まる場所を狙う」との脅迫電話がかかって来た!
しかし直接関わりの無い保険会社に支払いの意志はなく、警視庁も所轄の七曲署に「対応は一任する」と通告、というより丸投げして来ます。
捜査一係の指揮を任されて半年が過ぎ、最近やつれて来たように見える山さん(露口 茂)にまたもや重圧がのしかかるのでした。
仕方なく、ドック(神田正輝)が保険員を装い、1億円の替わりに新聞紙を詰めたバッグを持って取引に赴くも、それがバレて犯人を怒らせてしまう結果に。
開き直った犯人は要求額を3億円に引き上げ、ますますやつれた山さんが保険会社に頭を下げ続け、なんとか現金を用意してもらうんだけど……
そこで本庁から、捜査一課の赤沢警部(宍戸 錠)がほっぺたを膨らませながら、西部署の鑑識員と瓜二つの坂田警部補(武藤章生)を伴い、七曲署に乗り込んで来ます。
「なぜ今になって本庁が?」
「これ以上、七曲署に任せておくワケにいかないからだ」
対応を丸投げしておきながら、警察のメンツが危うくなった途端にほっぺを膨らませ、いきなり主導権を取り上げる本庁のやり方に、七曲署チームはストレスを溜めていきます。ただでさえ大黒柱が不在で、強力な戦力であるスコッチ(沖 雅也)も療養中なのです。
そこで奮起したのが新人刑事のラガー(渡辺 徹)。地道な聞き込みにより、現金の受け渡し場所を下見してた……ように見える、桑田佳祐そっくりな中年男がいたことを突き止めます。
それはあまりに細い手掛かりで、赤沢警部は一笑に付すんだけど、長さん(下川辰平)がラガーの捜査に付き合い、その桑田佳祐そっくりな男=浜西(長門裕之)をマークし、彼が娘と一緒に営む喫茶店を張り込むのでした。
一方、ほっぺたを膨らませながら捜査の指揮を執る赤沢警部は、本庁チームだけで犯人との取引に臨むも、捕まえた容疑者はオトリの「受け子」だった!
焦った赤沢警部は、まだ状況証拠しか揃ってないのに「俺が締め上げて吐かせる!」とほっぺたを膨らませ、ラガーたちに浜西を強制連行させます。
ところが、したたかな浜西はまったく動じず、厳しい取調べものらりくらりとかわし、警部のほっぺをますます膨らませます。
しかも、容疑者が連行されたことを報道で知った犯人から「そいつに金を持たせて釈放しろ」「さもなくば今度こそ街中でダイナマイトを爆発させる」と電話がかかって来た!
浜西は無実なのか、あるいは共犯者がいたのか?
もし、その要求に応じた場合、浜西がクロなら逃げられるし、シロなら真犯人に殺されるかも知れない。だからって無視すれば、爆弾がどこかで爆発する。一体どうすりゃいいんじゃいっ!?
「検討する時間が無い。山村くん、この件はキミに一任する」
急に態度を豹変させた赤沢警部に、いよいよラガーの怒りが爆発します。
「また逃げるんですかっ!?」
「逃げるとは何だっ!?」
「いや、俺も同じ意見です!」
ドックやロッキー(木之元 亮)も弟分に加勢します。
「誰だってこんな八方塞がりの仕事はしたくない! 逃げ出したいのはあんただけじゃないんだっ!!」
さすがに赤沢警部のほっぺも力なく萎んで来た、その時!
「お前ら、それでもデカか!」
捜査一係のドアを開けて入って来たのは、我らがボス(石原裕次郎)だった!
これが初対面となるラガーを除いて、一係のメンバー全員がしばし呆然とし、我に返って「おかえりなさい、ボス!」と駆け寄ります。
「何がおかえりなさいだ。たとえ無理な命令でもそれを守って事件を解決するのがデカだ。それが出来ないなら、デカなんて辞めちまえ!」
「ボス……」
この人は半年もの間、一体どこで何をしていたのか、そして何故このタイミングで出勤して来たのか、説明は一切ありませんw
説明不要なんですよね! 大動脈瘤破裂で生死をさまよい、大手術と長期入院を経て奇跡の復活を遂げた事実を、日本国民の誰もが知ってましたから。
いくら半年振りとはいえ、上司が職場復帰したぐらいで部下全員が呆然とし、涙目になって駆け寄るなんて演出は普通あり得ないんだけど、舞台裏の出来事がそれを成立させちゃった稀有な瞬間です。
もちろん、その人が国民的スーパースターで、みんなに愛されるキャラクターであることも必須条件。つまり他の番組だとこれはあり得ない。
「あとは我々がやります。ただし一任した以上、今後いっさい口は出さないで頂きたい」
ボスに凄まれると、さすがの赤沢警部もほっぺを萎ませて退散するしかありません。
宍戸錠という大スターがこんなショボい役を引き受けたのも、日活時代からの盟友である裕次郎さんとの絆があればこそ。もちろん長門裕之さんも然りです。
「山さん。長い間、苦労かけました」
「いえ、ボス……おかえりなさい」
「ありがとう」
「…………」
いつもながら、これまで10年かけて信頼関係が描かれてきた、ボスと山さんのやり取りにはグッと来ます。しかも本来は自由なキャラだった山さんが、いきなりボスの代役を任されて実際に疲弊していく姿を、我々視聴者も見て来ましたから。
そしてこれまた半年ぶりとなる、通称「Aポジ」から見た捜査会議のフォーメーション。
ボスから見立てを尋ねられた山さんは、地道な捜査でラガーがマークした浜西がやはりクロで、必ず共犯者と接触するだろうと推理します。
「よし、山さんの読みに賭けよう。手分けしてかかってくれ」
「はいっ!!」
勿論こういう場合、山さんの読みが外れることは100%ありません。浜西が隠した3億円を取りに現れた共犯者は即逮捕され……
そいつの自供により、浜西にも今度こそ手錠が嵌められます。詐欺まがいの目に遭い、喫茶店の経営が苦しくなっての犯行でした。
根っからの悪人でもない浜西は今度こそ観念し、全てを正直に自供したあと、わざわざ捜査一係室を訪ね、ボスに挨拶するのでした。
「俺の仲間も上手くやったが……あんたの部下、最高だね。いやぁ、最高だよ」
「俺もそう思ってる」
このシーン、私は長門裕之さんの希望(ワガママ)で追加されたんだろうと思ってたけど、最初から脚本に書かれてたみたいです。
宍戸さんにせよ長門さんにせよ、与えられた役柄をあくまでも忠実に、誠実に演じきる。スターのプライドなんか微塵も見せない。そこにこそ愛を感じますよね。
ラストシーンには退職したスニーカー(山下真司)も駆けつけ、後任者=ラガーとの新旧ツーショットも見せてくれました。
放映日は1981年の12月25日。クリスマスプレゼントをねだるラガーに、先輩たちは「もう、やっただろ?」と言いつつ、ボスを指差すのでした。
「ええ?……変なプレゼント」
「なんか言ったか、新入り?」
☆第489話『帰ってきたボスークリスマスプレゼントー』(1981.12.25.OA/脚本=小川 英&古内一成/監督=竹林 進)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます