☆第164話『バラの好きな君へ』
(1975.9.5.OA/脚本=鴨井達比古/監督=竹林 進)
銀行強盗グループの主犯=安田(横光克彦)が逃走の果てにスナックに籠城、その店でピアノを弾く純子(水沢有美)を人質にとります。
純子は、最近モテモテなテキサス(勝野 洋)の、一番新しいガールフレンド。なぜか今回の事件に発端から関わってる彼女に、テキサス以外の刑事たちは疑惑を抱きます。そう、実は純子は安田の恋人だった!
恒例の「好きになった彼女が犯罪者だった」シリーズの一編で、ちょっと強引な展開や陳腐な描写も目立つ、決して良く出来てるとは言い難いエピソードです。
けれど、本作が描こうとしてるのは事件でも謎解きでもなく、登場からちょうど丸1年経った新人刑事=テキサスの成長ぶりなんですね。もうホント、事件なんかどーでもいいんですw
ボス(石原裕次郎)はあえて、純子が強盗の共犯者であるか否かの判断を、よりによってテキサスに委ねちゃう。本来なら、その判断力が最も鈍る立場にいるテキサスに!
いよいよ純子を盾にし、逃走を謀る安田。その前に立ちはだかったテキサスは、銃口を安田にではなく、純子に向けます。
「撃て。そしたら俺はその女を撃つ。お前は素人、俺は刑事だ。お前、1発で俺を殺すことは出来んだろう。だが俺の弾は、必ず女に命中する。それで良ければ撃て」
土壇場まで純子の無実を信じてたテキサスが、いくつかの状況証拠から冷静に推理を組み立て、彼女が安田と愛し合ってる=共犯者だと確信したワケです。
私情を抑え、あくまで刑事として行動し、みごと事件を解決させたテキサスを、仲間の刑事たちが称えます。
みんな何も言わず、一人一人テキサスの肩を叩いて、アイコンタクトだけで想いを伝えて去っていく。そんな描写にいちいち時間を割くのが『太陽にほえろ!』なんですよねw
で、視聴者は胸騒ぎを覚えるワケです。マカロニ(萩原健一)もジーパン(松田優作)もちょうど丸1年、すっかり成長したところで殉職しました。これはいわゆる「死亡フラグ」みたいなもんです。新人刑事は「死」に向かって成長していくワケで、思えば恐ろしく残酷な番組ですよねw
尚、この時期から、当時の七曲署の制式拳銃だった「MGCハイパト」にバリエーションが加わります。ゴリさん(竜 雷太)専用のM15マスターピース風カスタムと、殿下(小野寺 昭)専用のM19コンバットマグナム風カスタム。いずれも銃身を2.5インチ位に切り詰めたオリジナルモデルで、後に『大追跡』等のドラマにも流用される事になります。
ゲストの水沢有美さんは当時24歳。日テレ青春シリーズの常連女優さんで、特に『俺たちの旅』における「いろは食堂」の看板娘=奈美役は人気を博しました。青春シリーズの兄弟番組とも言える『太陽にほえろ!』にも、PART2に至るまで計9回ゲスト出演されており、本エピソードがその第1弾。
歌手としても精力的に活動、ふるや杏さんとのユニット「乙女座」として、また西郷輝彦さんや谷村新司さん、そして小野寺昭さん(!)とのデュエット曲などもリリースされてます。
犯人役の横光克彦さん(当時のクレジットは横光勝彦)は後に更正され、ライバル番組『特捜最前線』の紅林刑事役、そして国会議員にまで出世なさいました。
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