『超星艦隊セイザーX』は2005年10月から翌年6月まで、テレビ東京系列で全38話が放映された特撮ヒーロードラマ。東宝&ゼネラル・エンタテイメントの制作による「超星神シリーズ」第3弾、そして最終作でもあります。
つまり、私がよく知るイケメン脚本家が参加した最後のテレビ番組でもあり、それも含めて我らがミューズ=多部未華子さんと間接的な繋がりもあったりする作品です。
まず、シリーズ構成&メインライターを務められた、林民夫さん。多部ちゃんの主演映画『ルート225』('06年公開) の脚本は、林さんが恐らく『セイザーX』に参加される直前もしくは最中に書かれたものと思われます。更に'09年公開の映画『フィッシュストーリー』も林さんの脚本作。もっと親しくなっていれば撮影を見学出来たかも!?って、イケメン脚本家は悔しがってました。
そしてセイザーXチームの1人であるビートルセイザーことケイン・ルカーノを演じたのが、後に蜷川幸雄さんの舞台『わたしを離さないで』('14) で多部ちゃんと木村文乃さんと3人で主役を務めることになる、三浦涼介くん。三浦浩一&純アリスご夫妻の次男で、特撮ヒーロー物では他に『仮面ライダーオーズ/OOO』('10) にもレギュラー出演されてます。
さらに、主人公=ライオセイザーこと安藤拓人に扮した高橋良輔くんは『山田太郎ものがたり』('07) にレギュラー出演されてるし、まあ調べていけば他にも色々繋がりはありそうだけど、タベリストにとって『ルート225』を書いた人がメインライターを務める特撮ヒーロー物っていうのは、ちょっと興味を引かれるものがあるんじゃないかと思います。
デビュー作はアニメ『サザエさん』で、卓越したコメディーセンスにペーソスを交えた作劇テクニックがまさに熟練の技。この『セイザーX』がシリーズ中最も笑える作品でありつつ、同時に最も泣ける作品になったのも林民夫さんの力量があればこそ。『ルート225』『フィッシュストーリー』をご覧になった方なら、その完成度は容易に想像がつくことと思います。
例のイケメン脚本家は、ユーモアに関してだけは他のライターさんたちに負けないっていう、自負を生意気にも持ってたらしいんだけど、林民夫さんと番組をご一緒したことですっかり自信を無くしたんだそうです。
笑わせるだけなら、ギリギリ同じ土俵で勝負出来てたかも知れない。けど、あんな風に同時に泣かせることは、逆立ちしたって自分には出来そうにない。その敗北感もまた、彼が映像業界から足を洗う要因の1つになったみたいです。キャリアの違いを考えれば、比べること自体が無謀なんだけど。
とにかく、林民夫さんの脚本は素晴らしかった。全てのキャラクターが魅力的で、悪役である筈の宇宙海賊三将軍が人気を集め、ソフビ人形まで発売されたこともそれを象徴してます。
その林さんに次ぐ二番手として、例の脚本家は9本のエピソードを担当。その第1弾がこの第5話『探検!シャーク4を探せ』でした。監督は前作『幻星神ジャスティライザー』でオリオン座博士の回を担当された、米田興弘さん。
超星神シリーズは作品として一定の評価を得ながら、玩具の売れ行きがイマイチ芳しくなく、この『セイザーX』ではRPG的アイテムを前面に押し出すようスポンサーから強く要望があったらしいです。
それで宇宙の命運を握る12個の「コスモカプセル」を巡って、宇宙海賊とセイザーXが争奪戦を繰り広げていくストーリーが縦軸になってて、サブタイトルにある「シャーク4」は4つ目のコスモカプセルってワケです。
『セイザーX』は『グランセイザー』『ジャスティライザー』と比べて話数が少なく(打ち切りじゃなく当初からの予定)、そのぶん林民夫さんがかなり緻密にシリーズ構成され、各エピソードにあらかじめ粗筋も用意されており、他のライター陣にとってある意味ラクな反面、自分のカラーを出しづらい窮屈な仕事でもあったようです。
そんな中で、この第5話だけはスキがあったというか、行方不明中のシャーク隊長(松永博史)とコスモカプセルとの因縁と、隊長を父親のように慕うヒロイン=レミー・フリーデ(松山まみ)の心情さえちゃんと押さえれば、あとは割りと自由に書かせてもらえたんだとか。しかもこの回は怪獣を出さなくていい!(これが出て来るとバトルにかなり時間を割かれちゃう)
そこで例の脚本家は、好きで好きでたまらないハリソン・フォードの代表作『インディ・ジョーンズ』シリーズへのオマージュを、ここで思いっきり込めまくりましたw
そもそも彼は、自らインディ・ジョーンズの扮装で主演し、いにしえの水曜スペシャル『川口浩探検隊シリーズ』をもパロッた自主製作映画を監督し、それが認められてプロになった人なんです。まさに本領発揮!
古文書に記された伝説をヒントにコスモカプセルの隠し場所を探しだす内容で、『インディ』シリーズでも特に印象的だった光の屈折を利用する立体地図のトリックや、洞窟探検、デス・トラップの数々など、自主映画では成し得なかった大掛かりなアトラクションをここで実現させ、彼はこの辺りで燃え尽き始めたのかも知れません。
そういった内容だからユーモア要素も入れ易く、怪獣も登場しないとあって徹頭徹尾「レイダース」に終始した本作は、シリーズ屈指のジェットコースター・エピソードとなりました。
また、ちょっとマニアックだった『グランセイザー』、昭和ノリだった『ジャスティライザー』の反省を踏まえてか、幼児層へのアピールが強化されてるのも『セイザーX』の特徴で、この回では古文書の謎を解くヒントが日本の諺に隠されており、チェイスを楽しみながら諺も勉強できるという、アカデミックな要素も加味されてます。
前述の拓人、レミー、ケインと、イーグルセイザーことアド(進藤 学)、そして宇宙海賊三将軍しかレギュラーメンバーが登場しない点でもこの回は異色。『セイザーX』で自分のカラーを遺憾なく出せた唯一のエピソードとして、例の脚本家にとって忘れられない作品となりました。
大丈夫なんでしょうか…
刑事物マニアでユーモアに対しては人一倍の自負
このイケメン脚本家には『デカワンコ』みたいな作品で腕をふるってみて欲しかったですね。