2003年、石原裕次郎17回忌&テレビ朝日開局45周年&石原プロモーション設立40周年の記念番組として制作されるも、それに続く連ドラ版撮影中の交通事故により、放映が見送られた曰く付きの2時間スペシャルです。
実際に放映されたのは翌'04年の10月ですが、その時に観た印象は「がっかり」「つまんない」そして「戸田菜穂さんの芝居が熱すぎる」というものでしたw
だけど、それから15年以上の月日が経ってるし、アクションドラマがすっかり絶滅しちゃった今ならこの作品の価値が見いだせるかも知れないと思い、あらためて観直しました。
で、その感想を率直に述べますと、「がっかり」「つまんない」「戸田菜穂さんの芝居が熱すぎる」というものでしたw
まず何が「がっかり」かって、これを言ってもしょうがないのは分かってるんだけど、やっぱりビデオ撮影による映像の安っぽさに尽きます。
ビデオ撮影そのものを否定してるワケじゃないんです。私が言いたいのは、究極のファンタジーとも言える『西部警察』の世界観に、ビデオの生々しい映像は全くそぐわないという事なんです。
パトカーが次から次とクラッシュしたり、建物が爆破され凄まじい炎に包まれたりしても、ビデオ撮影の映像だと「引田天功の脱出マジックショー」みたいに軽く感じて(天功さん、すみませんw)緊迫感が削がれちゃうんですよね。
あと、レイバンのサングラスがすっかり似合わなくなっちゃった大門くぅ~ん(渡 哲也)にもガッカリでした。ていうか、なんでアンタ生きとんねん!?って話ですから。
壮絶かつヒロイックな最期を3時間もかけて描き、木暮課長=石原裕次郎さんに素の涙を流させておきながら、「どっきりカメラ」の看板を持って「うっそぴょ~ん!」って、物陰から出て来てヘラヘラ笑ってるようなもんでしょう?
裕次郎さん亡き今、木暮課長のポジションを引き継げるのは渡さんしかいないって事なんでしょうけど、ファンの気持ちをないがしろにしてまで、それを引き継ぐ必要が果たしてあったんでしょうか?
渡さんはそもそも、刑事アクションを演じること自体に早くからウンザリされてたそうだし、交通事故の件と併せて、元凶は企業存続の使命に取り憑かれた小林専務にあるんだろうと思われます。
そういった「がっかり」な要素は、旧シリーズを楽しんで観てたファンならではのもんだけど、そんな感情を差し引いて客観的に観ても、この復活スペシャルは「つまんない」と言わざるを得ません。オールドファンだから我慢して観てられるようなもんで、初見の時も今回も、観ながら何度も眠りに落ちてしまった程に、ドラマとしては退屈な内容です。
要は国際テロ組織による爆破テロを西部署「鳩村軍団」が阻止する話なんだけど、時代を反映してか中途半端にリアリズムを持ち込んでるのが、かえって嘘臭さに拍車をかけてます。
リアリティを気にし出したら『西部警察』の世界観自体が成立しなくなっちゃうワケで、逆にマンガ(虚構)に徹するべきなんです。だから、これはフィルムで撮らなきゃダメなんです。
そして「戸田菜穂さんの芝居が熱すぎる」件ですが、そのこと自体は素晴らしいんです。この作品で唯一の見所と言っても過言じゃありません。
菜穂さんは警視庁爆弾処理班から何故か所轄の西部署に出向してる設定で、警察幹部であるお父さん(大杉 漣)がテロリスト達の人質にされてるもんだから、終始MAXのテンションなのは無理もないワケです。
で、赤外線ビームのトラップで守られた爆弾を解体する為に、いきなり服を脱いでビームをすり抜けちゃう思い切りの良さがあるんだけど、なぜか隊員服の下にレオタードを着ていた!という用意周到ぶりw
そんな『西部~』らしからぬお色気サービスまで請け負っての大熱演ですから、菜穂さんばかりが印象に残っちゃう。それこそが最大の問題なんじゃないでしょうか?
つまり、本来の主役である石原軍団のホープ達(徳重 聡、木村 昇、池田 努、金児憲史)が、ゲストである菜穂さんに完全に食われちゃってるワケです。
彼らは彼らなりに一生懸命やってるのは分かるんだけど、実力のみならず迫力の面でも菜穂さんの足元にも及んでない! だから彼らの印象が全く残らないんです。
「21世紀の石原裕次郎を探せ!」なる大々的なオーディションで選ばれ、何年かの修行を経て遂にデビューした金の卵たちが、別にアクション女優ってワケでもない戸田菜穂さんの陰に隠れて、まったく輝いてないというシャレにならない事態。
新団長である鳩村=舘ひろしさんも、課長に昇進した大門くぅ~んの幽霊も、彼らに花を持たせる為に今回は一歩も二歩も引いておられるもんだから、ほとんど戸田菜穂さんの一人舞台。お色気レオタードの圧勝ですw
もちろん、菜穂さんはゲスト女優としての責務を懸命に果たされただけで、彼女には何の罪もありません。問題は4人がかりでも彼女に勝てなかった軍団のホープ達にあります。
石原裕次郎&渡哲也が並び立つ前でも対等に輝いて見せた、寺尾 聰、舘ひろし、峰 竜太、苅谷俊介らに比べて、21世紀の裕次郎たちはあまりに凡庸過ぎた。この復活スペシャルがつまんない最大の原因は、間違いなくそこでしょう。
だから別に、あの運命の事故が彼らの未来を奪ったワケでも何でもない。もし連ドラ版が予定通り1クール放映されたとしても、彼らがスターになる事は無かっただろうと私は思います。
やっぱり、時代が変わっちゃった……としか言いようが無い。つくづく現在の若手男優たちは、アクションを演じるよりも繊細な心情を表現する方が輝くんだって事を、昨今の連ドラを観てると実感させられます。
アクション物を今やるなら、主役は若手女優か、かつてアクションを演じたオヤジ達でなければ成立しない。ハリウッド映画界も同じ状況になってますよね。
ちなみに連ドラ版『西部警察/WESTERN POLICE 2003』に戸田菜穂さんは登場せず、代わりに中山 忍さんが鳩村軍団の一員に加わる予定だったそうです。
『西部警察SPECIAL』のキャストは他に、鳩村軍団の「おやっさん」枠に田山涼成、テロリストに神田正輝&西岡徳馬、そして木暮課長との思い出を語るバーのママに高橋惠子。
高橋さんは『太陽にほえろ!2001』でも舘さん(新ボス)と絡んで、裕次郎さん(旧ボス)との思い出を語っておられました。西部署と七曲署はやっぱり、切っても切れない義兄弟って感じがしますね。
PS. 上の記事を書いてから更に月日が経ち、今こうして刑事ドラマの歴史を辿りながら『西部警察SPECIAL』について考えると、あの冬の時代にこんなアクション満載の番組を世に出そうとした石原プロの心意気は、やっぱり凄いです。
私もアクションジャンルの復活を本気で望むなら、しのごの文句ばかり言わず、もっと素直に応援すべきだったのかも?って、今更ながら反省しました。
でも、いずれにせよあの事故は起こってしまうワケで、私が応援しようがしまいが結果は同じ。そして上にも書いた通り、仮に事故が起こらず連ドラ版が無事放映されたとしても、やっぱりヒットはしなかっただろうと思います。
時代がすっかり変わっちゃったんですよね。取り調べでいっさい暴力を振るわない(振るえない)鳩村軍団を見て、今の日本に彼らの居場所はもう無いんだなって、つくづく思いました。
パート1の続編だけどオールドファンでもわからないかな
あの壮絶な殉職をみせられてはなんだかな〜と思います。
舘さんの銃器もH&Kでテロリスト御用達の銃器でどうせならレミントンのショットガンにして欲しかった。
マシンも高級車じゃなくて特殊マシンが西部警察とおもいます。
七曲署〜フィルム映像だっただけに残念です。
石原軍団が悪くなく製作陣が悪いです。派手なら何でも良いわけではありません。
西部警察や大都会の良いところは犯人は徹底的に極悪でそれを刑事が徹底的に容赦なく潰していく。勧善懲悪が西部警察の見どころです。ですから射殺もありなんです。太陽〜とは間逆な作品が西部警察です。
それじゃいくら撃ちまくろうが爆破しようがカタルシスが得られない。このスペシャルがつまらなかった要因の1つですね。