『山田太郎ものがたり』は2007年の7月から9月に全10話が放映された、TBS系列・金曜夜10時枠の連続ドラマです。(原作は森永あいさんの少女マンガ)
当時は「嵐」の二宮和也くんと櫻井 翔くん初の共演ドラマとして話題になった事と思いますが、私にとっては多部未華子さん初の連ドラ出演作として特記しておきたい作品です。
私が多部ちゃんにハマったのは2011年の『デカワンコ』から……ですから、それ以前の出演作はDVD等による後追いの鑑賞となりました。
多部ちゃん=演技派のイメージが強かったですから、ジャニーズ主演によるバリバリのアイドル番組でヒロインを務めておられたこと自体、私にとってはサプライズでした。(実はジャニーズ番組との縁がやたら深いことは、その後で知る事になります)
それはともかく、この『山田太郎ものがたり』に関しては、一概に「素晴らしい」とも「素晴らしくない」とも言い切れない、複雑な想いが私の中にはあります。
素晴らしくないと思う理由は後で書かせて頂くとして、素晴らしいと思うのは何と言っても、キラ星のように輝く若手キャスト達です。
私はこのドラマを観て二宮和也くんの演技力に驚愕しましたし、櫻井 翔くんの妖しい魅力やw、ほか(敬称略)吹石一恵、大塚ちひろ、忍成修吾、吉沢 悠etc…といった人達が豊かな個性を存分に発揮し、皆さん現在に至るまで活躍されてます。
その中でも、やっぱり多部未華子という逸材をいち早く起用し、その才能を遺憾なく発揮させた挙げ句、我らがタベリストマスター・yamarineさんを重度の「多部患い」たらしめた功績はあまりにも大きく、掛け値なく素晴らしいと言えましょう。
そんな素晴らしいドラマ『山田太郎ものがたり』の中で、私が一番印象に残ってるのが、この第6話です。その理由もまた、後ほど……
☆第6話『兄ちゃん一目ボレ』
(2007.8.10.OA/脚本=マギー/演出=山室大輔)
本作の主人公=山田太郎(二宮和也)は容姿端麗で学力チョー優秀、運動神経も抜群(だから女子にもモテモテ)という、全くけしからん高校生なんだけど、実は母子家庭で6人の弟妹を抱える貧乏ファミリーの長男なのですね。
一方、御村託也(櫻井 翔)は華道の家元=大金持ちのボンなんだけど、なぜか太郎と親しくて何かと助け舟を出してあげるナイスガイ。今回もお中元の山をお裾分けし、無邪気に喜ぶ太郎を見てニコニコ笑ってる。
この、櫻井くんのニコニコ笑顔が何とも意味不明で、不気味なんですよね毎回w 自分とは全く違う環境に育ち、全く違った思考をする太郎を「面白がってる」って事らしいんだけど、それだけじゃない「含み」を感じてしまうワケです。
それがどうも、当時(今も?)流行りの「ボーイズラブ」的な要素らしく、私がこのドラマを一概に「素晴らしい」と言い切れない、まず第1の理由になってますw 男どうしの恋愛だけは、それが例えどんな名作であろうとも、私はあまり見たくないのでありますw
「明日から夏期講習かぁ……夏休みぐらいがっつりバイトしたいんだけどなぁ……」
「ふっ……家で退屈な休みを過ごすよりはさ……」
こういった対照的なバックボーンを持つ男2人の友情って、男性作家が描くと大抵ライバル関係だったりするんですよね。例えば『巨人の星』の星飛雄馬と花形満とか。(古っ!)
それが女性作家(原作)の手にかかると、かくもイチャイチャした2人になっちゃう。女性から見ると心地良いんでしょうけど、男から見るとすこぶる気持ちが悪い。(女性どうしなら大歓迎なのですが)
さて、御村家の長い廊下で太郎は、1人の女性とすれ違い、ハッと息を呑みます。
「どうした?」
「えっ? いや、別に……」
そんな太郎をじっと見て、託也はまたもやニコニコ笑顔。気持ち悪いですw
「いい匂いだったなぁ……」
あばら屋みたいな自宅に戻っても、太郎はあの女性を思い出してボ~っとします。そんな太郎を、母=綾子(菊池桃子)と6人の幼い弟妹たちが冷やかすのですが……
私がこのドラマを「素晴らしい」と言い切れない第2の理由は、この山田ファミリーの描かれ方です。みんな揃ってつつましく、心が美しい良い子ちゃんばっかりなんですよね!
そのこと自体が悪いとは言わないけど、6人の子供たちが全員、いつも同じこと考えてて、いつも同じ言動をしてるのが、まるで誰かにマインドコントロールされてる狂信者、あるいはロボットみたいに見えて、すこぶる気持ちが悪い。
どうやら私は、大人数の人間が全員同じ言動をする光景を見るのが、人一倍ニガテみたいです。まして、まだ幼い=本来ならワガママ盛りの子供たちですよ? あり得ないからイヤなんじゃなくて、気持ち悪いからイヤなんです。
そんなワケで、本レビューにおいては山田ファミリーの場面を極力カットさせて頂きますm(_ _)m 第6話を選んだのは、この不気味なファミリーがストーリーにほとんど絡まないって事も理由になってます。
さて、託也は再び太郎を御村家に招待し、例の「いい匂い」がする女性と会わせようとします。その真の目的はどうやら、太郎に想いを寄せながら自分の気持ちに素直になれない、クラスメートの池上隆子(多部未華子)を焦らせる事のようです。
私はこのドラマを観始めた当初、なんで多部ちゃんにこんなベタなラブコメのヒロインを演らせんの?って思ってました。こんな役、その辺のグラビアアイドルで充分と違うの?って。
でも、この第6話を観る頃には考え方が変わってました。この役はなかなか……いや、めちゃくちゃ難しいぞと。これは確かに、多部ちゃんクラスの実力派女優でなきゃ務まらんぞと。
池上隆子は貧乏とまでは言わないけど、ごくごく庶民的な家庭に育ったがゆえの強い「玉の輿」願望があるんですね。で、てっきり太郎をお金持ちのボンと思い込んで好きになるんだけど、実は超ビンボーである事を知ってしまう。
それで想いを吹っ切ろうとするんだけど、太郎の人柄にはますます惹かれて行っちゃう。そんな葛藤する乙女心を的確に、しかも暗くならないよう演じて見せなきゃならないワケです。
そもそも「貧乏な男はイヤ!」「何より大事なのはお金!」って言ってるようなヒロインですから、下手すりゃ視聴者の反感を買いかねない難しさもある。
更に言えば、ジャニーズの王子様である二宮くんと櫻井くんの相手役を務めるワケですから、女性視聴者に嫌われるタイプ(ブリッコとか)であってもいけない。なおかつヒロインとして成立する「華」も求められるワケですからね。
そんな難役を見事にこなした多部ちゃんだからこそ、この後もジャニーズの相手役オファーが続いて行く事になったんだろうと思います。
「べ、別に……私には関係ないから」
「あっそ」
「ちょっと待って」
↑ これは隆子=多部ちゃんと託也=櫻井くんとの掛け合いなんだけど、ラブコメには超ありがちな台詞の応酬で、普通ならつまんない場面になってた筈です。(太郎が恋をしてるらしいと託也から聞かされて、焦りを隠せない隆子、という超ありがちな場面)
なのに、何回観ても飽きない笑える場面に仕上がってるんですよね! 櫻井くんも巧いんだけど、多部ちゃんの間の取り方(空け方と詰め方)がホント絶妙なんです。文字じゃ説明しようが無いのが歯痒いんだけど、多部ちゃんの「間」によって凡庸な台詞が笑える台詞に昇華されてるワケです。
当時18歳で、しかも連ドラ初出演。その上、ご本人には人を笑わせる気などサラサラ無いそうですから、こりゃもう先天的なコメディエンヌとしか言いようありません。だから、多部ちゃんにはもっともっとコメディに出て欲しい! 活かさなきゃあまりに勿体ない才能です。
「あの……相手は、どんな人なの?」
「関係ないんじゃないの?」
「関係ないよ」
「でも気になってんの」
「気になってないよ」
「じゃ何でそんなこと聞くの」
「……聞いただけ」
文字で読んでもちっとも笑えないでしょう? それが、仕上がりを観ると断然面白くなってる。本当に凄い才能です。素晴らしい! 愛してますw
さて、ここで本エピソードのゲストキャラ=小谷カンヌ(水川あさみ)が登場します。カンヌと言えばあの珍ドラマを思い出しますがw、こっちのカンヌは女優じゃなくて映画監督志望の女子大生です。
つまり自主製作映画の監督さんなワケだけど、ファッションモデル並みに垢抜けたセクシー美女で、私は思わず「そんな自主映画監督おるかいっ!」って叫んじゃいましたw(経験者なもんで)
どうして水川さんは、わざわざ本来の映画マニア像とは真逆の役作りをされたのか? 後々の場面で、その理由が分かる仕掛けになってるんですよね。
ところでカンヌ監督は、太郎や隆子がいる名門校のOBで、新作映画のキャストをスカウトする為にやって来たのでした。勿論、主役には太郎が選ばれる事になります。
「あの子、いい匂いがする」
カンヌ監督はどうも、嗅覚で物事を判断する人らしく、なぜか多部ちゃんはそんな設定に縁がありますよねw
主役が決まったところで、嵐が唄う主題歌『Happiness』が流れ、オープニングタイトルとなります。番組は、まだ始まったばかりですw
(つづく)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます