CSの「日本映画専門ch」で『大空港』の放映が始まりました。1978年7月から'80年3月まで、フジテレビ系列の月曜夜9時枠で全78話が放映された、新東京(成田)国際空港を舞台にした刑事ドラマです。
警察庁刑事局国際刑事課の分室「空港特捜部」を率いるチーフ=加賀警視に鶴田浩二、メンバーの鯉沼刑事に中村雅俊、神坂刑事に片平なぎさ、立野刑事に岡本富士太、海原刑事に高岡健二、そして現場を仕切るベテランの梶警部に緒形拳!というレギュラーメンバーで番組はスタート。
この第1話はさらにセミレギュラーの沢井空港長として池部良、ゲストの警察庁幹部として天知茂、空港警察幹部として稲葉義男、空港職員として氏家修、そして海外逃亡を謀る指名手配犯として中尾彬まで加わるという豪華絢爛ぶり!
この顔ぶれを眺めてるだけで楽しくなるし、いぶし銀の演技を見てるだけで感銘を受けずにいられません。いや~渋い! 実に渋い! ザッツ・昭和!
特に、かつて日本軍の特攻隊で「同期の桜」だったという、加賀チーフと沢井空港長の会話が昭和そのもの!
例えば、犯人逮捕を優先したい特捜部と、乗客の安全こそが最優先の空港側が対立した時、それぞれのリーダーである二人がこんな会話を交わすワケです。
「俺とお前はむかし最前線で一緒に戦った仲だ。この空港も犯罪にとっちゃ最前線なんだぞ?」
「空港は戦場じゃないよ、平和と文明の交差点だ!」
「それを護るために戦いが必要だってことが貴様には分からんのか!」
そして捜査が行き詰まったり、犠牲者を出してしまった時なんかに、行き交う飛行機を眺めながらこんな会話を交わすんです。
「進んだもんだなあ。俺たちが青春を賭けた飛行機……あの頃は国と国とが戦う道具だったのが、今じゃ国と国とを結ぶ橋だ」
「…………」
「俺はな、つらい時、苦しい時、考えが詰まった時……いつも飛行機を見るんだ。すると全てを忘れる」
「……昔は、人間が操縦した。今じゃ全てボタンで安全に操縦できる」
「少しは俺たちも、この文明の進歩に役立って来たんじゃないかな? 俺はいつもそう思いながら、此処からあのでっかいヤツを見ているんだ」
鶴田浩二さんが実際に「特攻崩れ」だったのは有名な話だし、池部良さんも陸軍の生き残りという、両者のプロフィールが活かされてるワケです。
今やこんなセリフを実感こめて言える役者さんはいないし、言ったところで共感できる視聴者もほとんどいない。ザッツ・昭和! 良くも悪くも……
第1話では、強盗殺人を犯して国外逃亡を謀る中尾彬を阻止すべく、特捜部が空港内を全力でパトロール。困った彬は沢井空港長の愛娘を誘拐し、その生命と引き換えに海外便への搭乗を見逃すよう要求して来ます。
これが平成や令和のドラマなら、空港側は彬の要求を呑む以外に道が無い、呑まなきゃ我々視聴者が許さないワケだけど、昭和は違いますw
「私は空港長だ。国から与えられた任務だ。どんな事態が起ころうと職権を利用することは出来ん!」
つまり空港長は、我が娘の生命よりも職務を優先しちゃう!
「あなた、それでも親ですかっ!?」と妻に責められても空港長は意志を曲げず、加賀チーフにこう言うのでした。
「娘はどうなってもいい、ヤツを捕まえてくれ!」
悪役でもなければ今回かぎりのゲストでもない、セミレギュラーの重要人物がこんなセリフを吐いたら、現在なら間違いなく「大炎上」ですよねw だけど昭和は……いや、1970年代までは、これが働く男の美徳だったんです。
で、加賀チーフは彬の要求を呑みつつ、便が飛び立つ前に人質を救出すべく特捜部を指揮します。
そして彬の愛人が人質を監禁してる場所を突き止める為、システムトラブルを装って空港を緊急閉鎖! 彬がその真偽を確かめようとして、TVニュースを観てる愛人に公衆電話で連絡する、その手元を港内の監視カメラでズームアップし、電話番号を読み取るというイチかバチかの賭けに出るのでした。さすが元カミカゼ!
もちろん、フライト時刻ぎりぎりで人質救出を成功させたチーフは、いよいよ便に乗り込もうとする彬の手首に無情の手錠を叩き込みます。まだ携帯電話が存在しない、昭和という時代ならではのサスペンスでこれは見応えありました。
しかしそれにしても、準主役の空港長が「娘はどうなってもいい!」ですよw これが現在なら娘も妻も「あなたを一生許さない!」って言いそうだけど、'70年代は違います。救出された娘は涙を流しながら「お父様、お母様……怖かったけど、もう大丈夫よ。安心して」と笑顔を見せ、空港長はひとこと「良かった」ってw 先に土下座して謝りなはれ!w
良くも悪くもザッツ・昭和! 『太陽にほえろ!』でも'70年代は山さん(露口 茂)や長さん(下川辰平)が家族より職務を優先し、家族もそれを受け入れ、じっと我慢するのが美徳として描かれてました。
ところが'80年代になってから『太陽~』に登場したトシさん(地井武男)の場合、小学生の息子をオトリ捜査に利用したせいで「私はあなたを許しません!」と奥さんにキレられ、関係を修復出来ないまま離婚しちゃうという、対照的な描き方をされてました。世の中の価値観が変わった……というより、女性が本音を言える時代になったって事でしょう。
そんなワケで、色んな意味で昭和という時代を、他の番組よりも強く色濃く感じさせる『大空港』第1話でした。
セクシーショットは、いつになくボインぼよよんなファッションで登場された、神坂刑事役の片平なぎささん。『ゆうひが丘の総理大臣』の中村雅俊さんとここで共演し、後に『あさひが丘の大統領』でタックル先生を演じられるワケです。
懐かしい!
鶴田浩二さん メチャ若い!
いつも面白く懐かしい記事UPに
感謝です😊
懐かしい…と言いたいところですが覚えていません。多分、ばあちゃんが観ていたと思います。
自分が同じ立場なら…「悪党を捕まえるためなら仕方ない、娘よ許せ」と思うのは昭和生まれだからでしょうか。
豪華キャスト!!ほんとにこんな
時代があったんだ!
そしてそして、しびれるセリフの
数々👏👏👏スーパークール!
かじりつきながら読みました✊✨
鶴田浩二さん、名前と歌しか存じませんが
俳優さんでもあったんですね!
鶴田浩二さんは俳優が本業ですw 高倉健さんや菅原文太さんと同じでヤクザ映画でスターになった人ですね。今の私は『大空港』当時の鶴田さんより歳上だと思うんだけど、あんな貫禄は微塵もありませんw