ハリソン・フォードのポリス・ムービー第3弾は、1999年に公開されたアメリカ映画『ランダム・ハーツ』、名匠シドニー・ポラック監督による作品です。
ハリソンが演じたのはワシントン市警・内務捜査班の刑事=ダッチ・ヴァンデンブロック。
その日、出張でマイアミに旅立つ妻を見送ったダッチが、捜査に追われて忙しく動き回ってたら、あちこちのテレビで飛行機の墜落事故を報じてて、よく見りゃ落ちたのはマイアミ行きの便だったから驚いた!
急いで航空会社に問い合わせたら、その機の乗客名簿に妻の名前は無かったんだけど、それはそれでおかしいから妻の勤め先に行って聞いてみたら、マイアミへの出張仕事なんか誰も知らないって言うからまた驚いた!
残念ながら、やっぱり妻は墜落機に乗ってたのでした。しかも他人の姓を名乗って…… そう、妻は愛人と夫婦を装ってお忍び旅行に出かけ、バチが当たって事故に遭っちゃったのでした。
最初は他人事と思ってた飛行機事故から、次々とショッキングな事実がダッチに降りかかる、この序盤の展開が一番ゾワゾワして面白かったですw
だけど、本筋はここからなんです。妻の死はもちろんショックだけど、仲良くやってた筈なのに浮気されてたこと、そして人の嘘を見抜くプロである刑事の自分が、それに全く気づいてなかったことが何よりショック!
なぜ、いつから、どんな気持ちで妻は不倫をしていたのか? どうしてもそれが知りたくなったダッチは、仕事の合間を縫って妻とその愛人との関係を「捜査」し始めます。そして、妻の愛人の妻=ケイ(クリスティン・スコット・トーマス)に会いにいく。
政治家のケイは選挙を間近に控えており、また思春期の娘がいることもあって、浮気した夫のことなど一刻も早く忘れたいのに、ダッチはしつこく食い下がります。この辺りが、切り替えの早い女性とそうじゃない男性との違い、なのかも知れません。
で、妻と愛人が泊まる予定だったマイアミのホテルを突き止めたダッチは、そこにケイを誘う。んなアホな、来るワケないやんって思ってたら、来ちゃうんですよねw まさかこの二人、パートナーに裏切られた者どうしで恋に落ちるんちゃうやろな?って思ってたら、あっという間にそうなっちゃうから驚きましたw
「あなたに誘われて断る女がいるの?」なんて言われて、ニヒルに笑うだけのハリソンが二枚目すぎますw
さて、こんな二人に我々は共感できるでしょうか? いや、たとえパートナーの不倫相手の身内であっても好きになっちゃったら、そりゃ仕方がない。お互いパートナーを亡くしてる以上、これは不倫じゃないワケだし。
だからケイの方は良いとして、問題はダッチです。いくら刑事のサガとはいえ、もう終わってしまった妻の不倫を今さら、根掘り葉掘り調べたがる心理が私にはよく解らないし、ケイとチョメチョメしておきながら妻が忘れられずメソメソし、結局はケイも傷つけちゃうダッチには到底共感できません。
でも、共感は出来ないけど、それこそが男の本質なのかも?とは思います。「女々しい」という漢字は間違ってる、あれは男性にこそ当てはまる形容詞だって、有名人の誰か(美輪明宏さん?)が仰ったらしいけど、多分その通りです。
にしても、ハリソンが演じるキャラクターにはいつも無条件で感情移入しちゃう私なのに、今回のダッチ刑事だけは例外でした。
『デビル』の次に主演した『エアフォース・ワン』で理想的ヒーローの究極形とも言える米国大統領を演じたハリソンは、続く『6デイズ/7ナイツ』では遊び人を、そしてこの『ランダム・ハーツ』を挟んで『ホワットライズビニーズ』では初めて殺人犯を、その次の『K-19』ではソ連の冷徹な軍人を演じる等、明らかに固定されたイメージからの脱却を図っておられました。今回のダッチ刑事役もまた、共感しづらいからこそあえて選んだのかも知れません。
そのせいか『インディ・ジョーンズ』と『スター・ウォーズ』の新作を除いてはヒットに恵まれなくなるんだけど、替わりに役柄の幅がぐっと広がり、俳優としてはより充実した日々を過ごされてるようにお見受けします。
だから長年のファンとしては、脱アメリカンヒーローを模索するハリソンを応援すべきだし、それまでとは違うハリソンを受け入れ、楽しむべきです。そういう意味じゃ必見作の1つかと思います。
そしてご覧になった方には是非、ダッチとケイがとった行動についてご意見をお聞きしたいところです。
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