ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『警視庁・捜査一課長2020』最終回

2020-09-10 22:22:07 | 刑事ドラマ2000年~










 
お洒落で新しくてスリリングだった『MIU404』とは対極に位置するような刑事ドラマw、常に安定の『警視庁・捜査一課長』シーズン4が第16話をもって終了しました。

話数が異例に多いのは新型ウイルスによる自粛期間にも過去作の再編集版を放映してたから。1話完結型で常に安定の内容だからこそ出来たことです。

ほんと見事に毎回同じパターンで、捜査の流れから事件の構造、事件関係者の相関図や性格づけに至るまでほとんど変わんない。にも関わらず楽しめちゃうという事実こそが奇抜で面白いw

その面白さはたぶん「吉本新喜劇」等と一緒で、安定の中に細かい捻りをどう入れていくか、その隠し味に我々はどこまで気づけるかっていう、送り手と受け手が一緒になって楽しんでる感覚。

その最たる例が笹川刑事部長(本田博太郎)の登場場面で、東京の警察官全員を指揮する大岩捜査一課長(内藤剛志)ですら最敬礼するメチャクチャ偉い人なのに、今回はなぜか本庁じゃなくて所轄署の、駐車場の壁に描かれた落書きを1人でせっせと消してるというw、もはや100%あり得ないシチュエーションで登場し、大岩課長もさすがに気づかず通り過ぎようとして二度見しちゃうというw そういうことをいつも大真面目にやってくれるんですよね。

もちろん無意味に登場するワケじゃなくて、そこで笹川刑事部長が必ず格言めいたことを言い、それがいつも事件解決の糸口になるという、これも鉄壁のワンパターン。

笹川さんだけじゃなく、大岩家の飼い猫=ビビのふとした行動や、それに対して発せられる妻=小春(床嶋佳子)のさりげない一言も必ず(笹川さんの格言より大きなw)ヒントになったり等、本当に全てのシーンが毎回(たぶんタイムテーブルも)まったく同じパターンの繰り返し。

でも、吉本新喜劇を「ワンパターンだから」と言って怒る人はいません。むしろワンパターンだからこそ笑えるってことを、皆が無意識に理解してるから。『警視庁・捜査一課長』の面白さも多分それと同じなんですね。マンネリも徹底的にやり抜けば、何やら新しいものになっちゃうという不思議w

だからとてもリラックスして観られるし、毎週観なくたって全然平気w 実際、私は録画を貯めておいて気が向いた時に観てますから、今シーズンも5本くらい飛ばして最終回を先に観ました。

我々凡人に『MIU404』みたいな脚本は逆立ちしたって書けやしないけど、『警視庁・捜査一課長』の脚本なら書けるかも知れないってw、錯覚させちゃうシンプルな作りも魅力の1つ。実際はもちろん、全て決められた枠組みに沿ってストーリーを創るのは、もしかすると斬新なのを創るよりずっと大変な作業かも知れません。

これだけしつこく『警視庁・捜査一課長』シリーズの魅力を熱く語っても、共感してくれる人がすこぶる少ないのが残念でなりませんw ワンパターン(お笑い用語で言えば天ぷら?)の面白さって、1回観ただけじゃ分かんないから伝わりにくいんですよね。

『MIU404』は本当に近年稀に見る面白さだったけど、この『警視庁・捜査一課長』にはそれとは全く違う面白さがあり、なのに誰も声を上げて語らない、語るのがちょっと恥ずかしいような垢抜けなさがある。だからこそ私は好きなんだろうと思いますw

ところで最終回のメインゲストは「ぱるる」こと島崎遥香さん(握手会における塩対応でポンコツと呼ばれたAKBのアイドルも、雰囲気のある良い女優さんになられました)なんだけど、第1発見者の役で出演された小宮有紗さんのお尻グラビアが素晴らしいので、今回のセクシーショットは小宮さんのお尻で決定です。

小宮有紗さんは2012年のスーパー戦隊シリーズ『特命戦隊ゴーバスターズ』におけるイエローバスター=宇佐見ヨーコ役で注目され、数多くの作品に出演され声優としても活躍されてる方ですが、とにかくお尻が素晴らしいです。
 

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『MIU404』最終回

2020-09-08 00:00:16 | 刑事ドラマ2000年~










 
存分に楽しませて頂きました。本当に見事な、そして2020年現在ならではのエンタメ刑事ドラマでした。文句なし!

第8話では、伊吹(綾野 剛)の恩師であり良きアドバイザーでもある元敏腕刑事=蒲郡さん(小日向文世)が、なぜ警察を辞めたのか、その衝撃の理由が明らかになり、それがまた最終章に向けての重要な伏線となりました。

そして第9話から最終回(第11話)までの三部作で、ずっと正体不明だった最凶の敵=久住(菅田将暉)と我らが「4機捜」との決戦が劇場版並みのスケールで描かれ、本当に心底からハラハラドキドキさせてくれました。

私がこよなく愛する昭和の刑事ドラマだと、ハッピーエンドにしろバッドエンドにしろ観る前から結末がほぼ判ってた(なにせサブタイトルに『マカロニ死す』とか書いてあるw)のに対して、この『MIU404』はどっちにも転ぶ可能性を感じさせるからホントに油断出来ない。

いや、結局、この結末は本当に現実なのか!?っていう含みまで持たせてるんですよね! 途中、久住が手下たちに造らせた新種ドラッグによって、伊吹と志摩(星野 源)がそれぞれにとって最悪のバッドエンドの夢(あるいは幻覚)を見るんだけど、もしかしたらその内のどっちかが現実で、我々が最終的に観たハッピーエンドこそが夢なのかも知れない。

私個人としてはスカッとシンプルなハッピーエンドの方が好みだけど、多様性の時代にはこういう「観客に選ばせる」結末の方が合ってる気もするし、志摩の「人は信じたいものだけを信じる」とか「そこでスイッチを押すか押さないか」等の台詞に呼応してる気もして、いかにも『MIU404』らしい締めくくりで良かったと思います。

そして、それより何より、題材や展開はすこぶる現代的でありながら、随所に昭和の刑事ドラマへのオマージュを匂わせる演出が見られて、私はそのたびに痺れました。

最終回で言えば、屋形船に乗って逃げる久住を追って、伊吹が堤防を全力疾走する場面! 言うまでもなく『太陽にほえろ!』へのオマージュです。創り手はそれらの作品を観て育った世代じゃないかも知れないけど、敬意を示しておられるのは間違いないと思います。

やっぱりフィクション世界の刑事は、走って殴って撃ってナンボなんです。それが許されるのは彼らだけなんだから! 謎解きなんか家政婦とか三毛猫とか執事とかに任せときゃいいんだから!

MIU404=伊吹&志摩は、言わば令和時代のジーパン(松田優作)とスコッチ(沖 雅也)です。昭和時代のお二人とは貫禄も迫力もえらく違うけどw(約45年で日本人の容姿は随分と変わりました。さらに45年後にはどうなってるんでしょう? それまで人類は生き延びられるのか?)

さらに『MIU404』ならではの発明だと思うのが、『私の家政夫ナギサさん』の最終回にもチラッと登場した覆面パトカー「まるごとメロンパン」号!

『西部警察』シリーズの「マシンX」的なポジションでありながらキュートな持ち味もあり、まるで『スター・ウォーズ』シリーズにおける「ミレミアム・ファルコン」号みたいな1つのキャラクター、5人目の4機捜メンバーとも言える存在でした。

そうして根っこに熱い昭和魂を忍ばせながら、見せ方はすこぶる現代的。最凶の敵である久住と、彼を殺す気満々の伊吹が初めて対峙するシーンがお互い満面の笑顔っていうのもw、実に新しくて刺激的でした。まぎれもない大傑作です。素晴らしい!

バディー物の刑事ドラマっていう、もはや古典中の古典と言えるジャンルでも、こうしてアイデアを練りに練れば全く新しい作品が生み出せる。それを『MIU404』が証明しちゃいましたから、後続の刑事ドラマはホント大変ですw

同じ放映枠の後番組がまたもやバディー物の刑事ドラマだけど、予告編を観ただけで本作の足下にも及ばないのが見え見えで、ちょっと気の毒ですらあります。もちろん、そんな予想を覆してギャフンと言わせてくれることを期待しますが、まあ並大抵のことじゃない。

やっぱり今回は野木亜紀子さんというスペシャルな才能があればこその偉業で、以前にも書いた通り、刑事物を手掛けて下さった野木さんに感謝あるのみです。

そして、自分だって本気を出せば野木亜紀子なんかに負けやしないよ!って、刑事ドラマの創り手さんたちが奮起して下さることを切に願います。

このジャンルはまだ死んでません。ボクは死にまっしえーん!!
 

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『私の家政夫ナギサさん』最終回

2020-09-07 00:00:11 | 多部未華子









 
結論から書くと、やはりこれは良く出来たドラマで面白かったです。最終回ではしっかり泣かされました。

ただ、中盤、私は迷ってました。率直に言えば「つまんないかも?」ってw、正直ちょっと諦めかけてました。多部未華子さんが出てなければ確実に視聴を中止してたと思います。

そのキッカケとなったのは、第4話の序盤。こんな人いたっけ?と誰もが思ったであろう、ヒロイン=メイ(多部ちゃん)の同僚でチョー地味な「おじさん」=馬場さんが若い女性と結婚することになり、そのなれそめを同僚たちが根掘り歯掘り聞き出そうとするシーンでした。

心底どーでも良かったしw、そんな心底どーでもいいキャラの心底どーでもいいエピソードに、なんでそんなに長い時間を割くの!?って、ただでさえ恋話には興味がない私にとって地獄のような数分間でしたw

ところが! 最終回まで観ると、その地獄みたいなシーンにもちゃんと意味があったことに気づかされるんですよね。これには参りましたm(__)m

(以下、結末に触れないと話が進まないのでネタバレになります。もし、私みたいに途中で興味を失いかけて録画を貯めておられる方がいたら、是非とも最後まで完走して頂きたいのでこの先は読まないことをオススメします)



私の迷いが吹っ切れたのは、ずっと「ヒロインの相手役」ポジションにいた田所くん(瀬戸康史)の部屋が、家政夫ナギサさん(大森南朋)を雇う前のメイに負けない位とっ散らかってることが判明した瞬間でした。

その理由は2つあって、まず1つは、田所くんがそれをずっと隠して来た理由を「人に弱味を見せたくなかったから」と説明したこと。

私はずっと、メイがナギサさんの存在を隠したり父親だと嘘をついたりして、家政夫を雇ってる事実をひた隠しにする気持ちがよく解らなかったもんで、視聴者を無理やり笑わせようとするこの脚本は稚拙なんじゃないか?と思ってたんです。

思い返せばメイ自身も同じような台詞を何度か言ってたんだけど、ここで田所くんが重ねて言うことによって「なるほど、競争社会に生きてる人達はそういうもんなのかも」って、なんとなく理解出来たんですよね。

そしてもう1つの理由は、田所くんの内面があまりにもメイと似すぎてる=結婚はあり得ないって気づいたこと。そこで私はようやく、このドラマが実は「メイとナギサさんのラブストーリー」だったことを悟るワケです。

そうなると、まったく無意味だと思ってた馬場さん、つまり「おじさん」と若い女性の結婚話も重要な伏線として意味を帯びて来る。稚拙どころかメチャクチャ緻密やん!って、一時は諦めかけたからこそ私は感動しちゃった次第です。

初回からもう一度観直していけば、たぶん同様の伏線があちこちに張り巡らされてるんだろうと思います。とは言え、強引な展開が多いドラマである事実には変わりないんだけどw

何であれ、多部ちゃんがおじさんと結婚する話となれば、我々おじさんの見方は大きく違って来ちゃいますw そりゃそうですよ!

その相手としてナギサさんは申し分ないし、好感度もバツグンで心から祝福したくなります。しかしこの結末は容易に予想出来そうで、意外と選択肢から外してしまう。それだけ創り手のミスリードが巧かったんだろうと思います。

このドラマ、初回から2ケタの視聴率をキープして最終回は20%間近のスマッシュヒット。多部ちゃんがメインを張った連ドラじゃ現在のところベスト1となる成績を上げました。これも私は全く予想出来ませんでした。てへっ!

視聴率はともかくとして、トリッキーな設定が多かった過去の多部ちゃん主演作の数々と比較すると、この『私の家政夫ナギサさん』はあまりにノーマルなラブコメディーで、そんなドラマで看板を張る多部ちゃんはもう、綾瀬はるかさんや新垣結衣さん等と肩を並べる大女優なんだなとつくづく思いました。

もはや押しも押されもしない、たとえ『ドS刑事』みたいにコケたとしてもw、もう主演のオファーは来ないかも?なんて心配する必要が無くなったワケです。それって、長年のファンとしては嬉しい反面、ちょっと寂しいような感情も湧いて来そうです。

来たる2021年は『デカワンコ』放映から丸10年、私やgonbeさんがタベリストになって10周年を迎えることになります。なんだか感無量です。
 

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「さよならボン、そしてハンソク」

2020-09-06 17:17:20 | 日記










 
もう、絶句するしかありません。『西部警察』をレビューしたら渡哲也さんが、そして『あさひが丘の大統領』をレビューしたら、今度は宮内淳さんが……!

8月17日に、直腸癌で亡くなられたんだそうです。享年70。ご冥福をお祈りいたします。

私は『太陽にほえろ!』マニアであり、中でも一番好きだったキャラクターがボンボン刑事なので、宮内淳さんに関してはこのブログで語り尽くした感があります。前述のとおりつい最近も、今さら誰も語らないハンソク先生 in『あさひが丘の大統領』をさんざん語ったばかりです。

そういう意味でも何も言えない、絶句するしかありません。ショーケンさんが亡くなられた時だったか、これから我々世代のヒーローがどんどん逝かれることを覚悟しなくちゃいけないって書いた記憶があるけど、ここまで矢継ぎ早だとホントに言葉を失いますね。

ただ、宮内さんの話題で1つだけ今まで書かなかったことがあって、それは1年ちょっと前に出版された宮内さんの著書「『あの世』が教えてくれた人生の歩き方」についてのこと。

当然ながら『太陽にほえろ!』の裏話や、芸能界から身を引かれたいきさつ、『警視―K』へのレギュラー出演を打診されながら主役の勝新太郎さんとウマが合わなくて流れちゃった話など、ミーハー的に興味深い話が満載でよっぽどレビューしようかと思いました。

けど、メインはタイトル通りかなりスピリチュアルなお話で、例えばお母さんが亡くなってから身の回りで不思議な出来事が頻発し、それが「あの世」にいるお母さんからのメッセージだと気づいたら全て腑に落ちたという、映画『インターステラ―』(あれは死後の世界じゃなく異次元からのメッセージだけど)を彷彿させるエピソード。

さらに「あの世」と「この世」は「へその緒」でつながってるとか、ご先祖に「良質な愛のエネルギー」を送れば我々の人生を応援してくれる、といったような話が続き、例えば石原裕次郎さんや勝新太郎さんを語る際にも「根っから明るい彼らは、へその緒を通してあの世から応援を受けていた」みたいな話になって、私自身はスピリチュアルに対して抵抗が無いから平気だけど、きっと胡散臭く感じる人も沢山いるだろうと思い、レビューするのを思いとどまった次第です。

だけど宮内さんは別に、教祖にでもなって金儲けしようなんて考えられたワケじゃなく、純粋にそれを信じて多くの人々に「明るく生きてご先祖を喜ばせよう」っていうメッセージを伝えたかっただけだと思うので、私は決して否定しません。

ただ、否定はしないけど、ネットを通じて私がそれを発信するのはお門違いじゃないかと、その時はそこまで考えなかったけど、漠然と感じたから書くのをやめたんだと思います。

もしかするとこの著書の存在を知らなかったファンの方もおられるでしょうから、スピリチュアルに対する抵抗がよっぽど強くなければ是非ご一読をと、この機会にオススメしておきます。

宮内さんは私生活をいっさい語られて来なかったので、結婚されたかどうかも謎のままだったけど、これを読んで奥さんがおられることだけは判明しましたw

……とまあ、言葉を失うと書いておきながらけっこう語っちゃいました。凹んでても仕方がない、明るく生きてご先祖に愛のエネルギーを送らなきゃ!って、茶化しちゃいけないけど、宮内さんのメッセージはそういうことだろう(だから『静かに送って欲しい』『悲しまないで欲しい』と言い遺された)と思うので、暗い話はやめときました。










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『あさひが丘の大統領』#10

2020-09-03 12:14:05 | 探偵・青春・アクションドラマ









これは『あさひが丘~』屈指の名作じゃないかと思います。さすが鎌田敏夫脚本!

それをしっかり映像化すべく、演出や撮影、そして俳優陣の演技にも普段より気合いが入ってるように見えます。

また、芳しくなかったであろう世間の評判を受けてなのか、ハンソク先生(宮内 淳)のキャラを徐々に修正しようとする意図も感じられ、この回だけ観るとハンソクをうっかり好きになっちゃいそうですw

それは『太陽にほえろ!』の脚本家の1人としてボンボン刑事=宮内さんの成長を見守って来られた、鎌田さんならではの愛情が反映されてるのかも知れません。


☆第10話『オレと一緒に駈落ちしよう!』

(1979.12.19.OA/脚本=鎌田敏夫/監督=佐藤重直)

ラグビー部の山下(長谷川 諭)の両親が、息子の様子を見にあさひが丘学園を訪ねて来ることになり、高岩校長(宍戸 錠)が慌てます。

かつてグレていた山下を問題なく卒業させることを条件に、両親から多額の寄付金を受け取った手前、学園としては彼を大人しくさせておく必要があり、校長は教務主任の野口先生(秋野太作)に監視役を命じるのでした。

ところが、その日を境に山下の様子がおかしくなります。部活をサボり、授業にも出なくなって煙草を吸ったり等、明らかに非行の兆候が出て来ちゃう。

それで監視役の野口先生は気が気じゃないんだけど、山下の担任であるハンソク先生は涼しい顔で言います。

「グレたい奴はグレさせとけばいいじゃないか」

「そうはいくか、俺たちは教師だぞ」

「教師が何を言ったって、グレたい奴はどうすることも出来やしないんだよ」

自分も高校時代にグレてたハンソクは、教師に何を言われても聞く耳なんか持たなかったと自慢げに語るのでした。

「グレたきゃグレる、帰って来たけりゃ帰って来る。自分の人生なんだから好きなようにしろってんだ」

そうしたハンソクの考え方には、荒くれ者だったらしい亡き父親の影響があるようです。なにか悪いことをした時に「友達に誘われたから」なんて言い訳しようもんなら親父にブン殴られ、「お前には足は無いのか? 自分の人生ぐらい自分の足で歩け!」と説教されたもんだと、ハンソクは懐かしそうに語ります。

超マザコンの甘ったれで、単なる「大人になりそびれたガキ大将」にしか見えなかった番組初期のハンソクに、そんな厳しい父親の面影は微塵も感じられませんでしたw

今回久々に登場したハンソクのお母さん(藤間 紫)も、息子を溺愛してひたすら甘やかすだけの人だった筈が、いつの間にやら荒くれ男を手のひらで転がす気っ風のいい女に豹変してましたw

そうして視聴者の反応によって登場人物の性格が微妙に変わったり、場合によっては唐突に死んじゃったりする臨機応変さも、テレビの連続物ならではの面白さと言えましょう。

さて、様子がおかしい山下のことを心配する人がもう1人いました。女子テニス部の森下マリ(上田美恵)、第2話で山下に裸を見られちゃった女の子です。

夜の海岸でひとり物思いに耽る山下を見つけたマリは、思いの丈をぶちまけます。

「私、山下くんがグレて学校辞めなきゃいけなくなったりしたらイヤなんだ。好きなんだもん、山下くんのこと」

おっぱいは見せてくれるわ自分から告白してくれるわ、なんていい子なんでしょうw 羨ましいぞ山下!

そんなマリに、山下はこれまで誰にも言わなかった本音を打ち明けます。彼はやはり、両親が自分の様子を見に来ることがイヤなのでした。

「いいじゃない、山下くん真面目にやってるんだから」

「オレは親父やお袋のために真面目にやってるんじゃないよ。オレが大人しくしてんの見て、あいつらが喜ぶなんてオレはやだよ!」

あさひが丘へ厄介払いみたいに送り出された山下は、どうやら両親が自分を見捨てたと思ってる。今回様子を見に来るのも、あまりに放ったらかしにして後ろめたくなったからだと山下は断言します。

「あいつらが本気で心配してんのは、出来のいい兄貴たちの事なんだよ。オレの事なんかどうでもいいんだ」

「そうなのかな……」

「グレてやる、もう一度……親父やお袋を喜ばせてたまるか!」

そして山下は、マリの眼をまっすぐに見つめて言うのでした。

「オレも好きだったんだよ、ずっと前からマリのこと」

「えっ……」

第2話じゃマリのおっぱいを見てしまった罪悪感でノイローゼになるほど純情だったクセに、山下も随分とキャラが変わりました。彼に関しては視聴者の反応を受けてというより、たぶん鎌田さんがそこまで整合性を気にされてなかったんでしょう。

「なあ、一緒に来てくれ」

「どこへ?」

「どこでもいい、駆け落ちしよう! 来てくれよ一緒に!」

そして二人がキスしたところでこの場面は終わりますが、そのあと朝までチョメチョメしまくったに違いありません。許さんぞ山下!

マリはいったん寮に戻って旅の準備をしますが、好きな異性と結ばれて駈け落ちするにしては表情が暗い。罪悪感とは違う、なにかモヤモヤしたものが胸の内にありそうです。

かくして駈け落ちは決行され、それを知ったハンソク先生は「さすがにオレもそこまではやらなかったなあ」と感心しつつ、涼子先生(片平なぎさ)や野口先生と一緒に二人の行方を追います。

しかし好きな相手と駈け落ち真っ最中だと言うのに、山下とマリの表情はなぜか暗いまま。

「後悔してない?」

「するもんか。親父とお袋が来たらどんな顔するか、早く見たいよ」

「……山下くん、私のこと好き?」

「え?」

「本当に好き?」

「好きだよ」

「…………」

マリの胸の内にあるモヤモヤが何なのか、もうお分かりですよね。彼女のおっぱいを見てノイローゼになるくらい好きだったクセに、山下よお前はいったい何様なんだ?

こんな野郎はサッサとハンソク先生にシメてもらわないといけません。もちろん、元ボンボン刑事が2時間サスペンスの女王と一緒に捜索すれば、2人が発見されるのは時間の問題でした。

「どうしてこんな事したの、山下くん! ねえ、なぜ?」

涼子先生に問い詰められて、山下はほざきます。

「なぜって、マリが好きだからですよ!」

「お前たちはまだ高校生なんだぞ!」

野口先生にそう言われても、山下は空しい反論を続けます。

「高校生だって、人を好きになる権利はある! ほっといて下さいよ!」

「嘘だわ!」

そんな山下の本心を的確に見抜いたのは誰あろう、駈け落ち相手のマリでした。

「嘘よ、山下くん! 山下くんが私のこと好きだなんて嘘よ!」

「マリ……なに言ってんだ?」

「山下くん、お父さんとお母さんを困らせたいから、だから私とこんな事したのよ!」

そこでハンソクがぴくりと反応し、いよいよフルボッコの準備に入ります。

「私じゃなくたって、誰でも良かったのよ! 私のこと好きなんて言ったけど、嘘……嘘よ!」

「本当なのか、山下? お前、親父やお袋を困らそうとしてこんな事したのか? 親父やお袋を困らせるためにグレていたのか?」

「そうだったらどうしたって言うんだよ? グレたくてグレたんじゃないよ、オレだって」

「…………」

「親父やお袋が、もうちょっと本気でオレのこと心配してくれてたら、オレはグレたりしなかった!」

「バカヤローッ!!」

ハンソクの必殺もみあげパンチがついに炸裂、華奢な山下は約25メートルほど吹っ飛びます。ざまぁ見ろ! おっぱい見やがって! チョメチョメしやがって!

「お前! そんな事でグレていたのか!? そんな理由でしかグレられんのか!? グレるんなら、もっと真面目にグレろっ!!」

↑ハンソク先生にしか言えない名言ですw

「グレたくもないのにグレたりするな! オレはそういう人間が一番嫌いなんだよ! 人の面当てでグレたりする奴が一番嫌いなんだ!」

なおもハンソクは自分の生徒を殴り続け、半殺しにしかねない勢いなんだけど、誰も止めようとしませんw

「それでも一人前の男か!? 自分の足が無いのかお前には!? 親父やお袋に支えてもらわなきゃ、自分の人生も歩けんのかっ!?」

無意識なんでしょうけど、ハンソクは自分が父親に言われたことをそのまま山下に言ってます。それは確実に山下の心にも響いた様子です。

ところが! 普通ならこれで一件落着なんだけど、それで終わらないのが鎌田脚本の凄いところ。駈け落ち騒動が落ち着いて日常に戻ったかと思いきや、今度はマリが行方不明になっちゃう。周りから興味本意で色々聞かれ、いたたまれなくなったみたいです。

「またかよ! 出ていくのが好きな連中だなあ」

呆れながら行方を探すハンソクに、涼子先生が言います。

「高校生の頃っていうのは、一番気持ちが不安定な時期なんです。自分で自分の心と体を持て余す時期なんです。自分の体を自分でもどうしていいか分からない時期なんです! 大西先生だってそうだった筈でしょ?」

確かに、私もあの頃はそうだったと思います。今でも大して変わらないかも知れませんw

で、マリは、山下とチョメチョメしたあの海岸でウロウロしてたらチンピラたちに襲われ、またチョメチョメされそうになるんだけど、そこに山下がさっそうと登場! マリがいなくなったと聞いて野口先生の監視を振り切り、夢中で駆けつけたのでした。

それでチンピラたちは諦めて退散しかけるんだけど、なおも山下が怒りに任せて突進しようとするもんだから、野口先生は慌てて制止します。

「やらせてくれよ、先生! 人の為じゃない! オレの為にやりたいんだ! オレの為に喧嘩したいんだ、やらせてくれよ!」

「…………」

次期教頭の座を狙う野口先生としては、ここで山下に問題を起こされたら大いに困るワケだけど、なぜか手を放しちゃうんですよね。

「止めて! 野口先生、止めて!」

マリが泣きながら叫んでも、野口先生は動きません。山下が殻を破って大人に一歩近づく為の、これはチャンスなんだと直感したんでしょう。野口先生も今回はやけにカッコいいです。

で、山下はまたもやフルボッコにされちゃうんだけど、その姿はむしろ晴れやかに見えます。

「大丈夫だよ。自分の足があるんだ。自分で歩けるよ!」

チンピラたちが去ったあと、介助しようとするマリを振り切って、1人で歩き出した山下は、駆けつけたハンソク先生に言うのでした。

「ハンソク、歩いて来たよ……自分の足で歩いて来たよ!」

「山下……」

「これでいいんだろ? これでいいんだろ、ハンソク! これでいいんだろ、先生!」

ハンソクの眼にも涙。番組スタート以来、ハンソク先生が泣いたのは今回が初めてだったと思います。

「泣いたりすんなよ……ただの先公みたいな事すんじゃねえよ」

「ただの先公だよ、オレは。ただの先公になりたいんだよ。だけど、なかなかなれないんだよ!」

この台詞にもグッと来ました。なんだか、人気者になる筈だったのに全然なれない、当時のハンソクのリアルな境遇が反映されてるみたいで……w


いや~、良かったです。その良さが、この稚拙なレビューでどれほど伝わってるか心配だけど、こんな長文をここまで読んで頂けた事実こそが、ストーリーの良さを裏付けてるんじゃないかと思います。

何が良かったって、一番良かったのはハンソク先生がちゃんとした大人に見えたことですよねw 教師が生徒たちと同じレベルでドタバタやってるのは、やっぱり見てて気持ち良くない。そんな学校に通いたいと私は思わない。

教師は教師であって、生徒は生徒。友達じゃないんです。そんな当たり前の分別をあえて撤廃した、そこがこの番組の新しさだったワケだけど、視聴者の共感は得られなかった。

これは『太陽にほえろ!』の後番組『ジャングル』が、主役の刑事たちをヒーローとして描かないことを新機軸にして失敗したのと、今にして思えばよく似てるかも知れません。

古い価値観を否定すれば新しいものが生まれるかと言えば、多分そんな事はないんですよね。そこが作品創りの難しさで、狙いすぎるとだいたい失敗しちゃう。

でも、だからと言って何も冒険しないのはつまんない。今回のストーリーは良かったんだけど、新しさや『あさひが丘~』らしさには欠けてるかも知れません。ハンソクの台詞にしても「グレるならもっと真面目にグレろ!」だけ除けばw、同じことを『ゆうひが丘~』のソーリや『3年B組~』の金八先生が言っても違和感なかったかも?

この辺りからハンソク先生が徐々にマトモな教師像に近づいていき、当初感じたストレスが軽減されて観易くはなるんだけど、そのぶん彼の影が薄くなってしまい、タイトルにある『大統領』って文字が空しく感じるようになるのも事実。それじゃ意味が無いような気もします。

『あさひが丘~』にせよ『ジャングル』にせよ、あまりウケなかったのは前作の二番煎じだからじゃなくて、むしろ新しいことにチャレンジしたからなんですよね。失敗作かも知れないけど、断じて駄作じゃないし凡作でもない。これだけは声を大にして言いたいです。

森下マリを演じた上田美恵さんは当時若冠15歳。この『あさひが丘の大統領』がデビュー作で、翌'80年には1,900人近い応募者の中から連ドラ版『生徒諸君!』のヒロイン役に抜擢され、堂々の主演を張っておられます。

刑事ドラマは『特捜最前線』の#460と#461にゲスト出演、'80年代半ばまで女優一筋で活躍されましたが、結婚を機に引退されてます。余談ですが『あさひが丘~』女子テニス部4人娘の中だと、タヌキ顔の上田さんが一番好みのタイプです。
 

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