きみの町で 価格:¥ 1,365(税込) 発売日:2013-05-31 |
快挙 価格:¥ 1,365(税込) 発売日:2013-04-26 |
涼を求めて入った本屋さんで読みたかった本に出会えました。
重松清 『きみの町で』 (朝日出版社)
これはもともと『こども哲学』という絵本シリーズの付録として書かれた文章を、単行本にまとめたものです。
フランスの哲学の授業で(子どもの頃からこんな授業があるんですね!)交わされた会話を絵本にした、考える絵本『こども哲学』シリーズ。
今回、東日本大震災についての「きみの町で」を追加して出版されました。
電車でお年寄りに席をゆずる、その時の小学生の心の葛藤。
いつもイジメられている同級生。
人間って、自分って、心って何だろう?
哲学ってちょっと難しいイメージがありますが、あつかっているのは誰でも一度は考えたことのあることばかり。
その中でも「きみの町で」は、震災に見舞われた町を舞台に、子どもたちに焦点をあてて、震災前と震災後の子どもたちを描いています。
心をギュッとつかまれました。
涙がこみ上げてきたけれど、それは悲しみの涙なのか、嬉しさの涙なのか、感動の涙なのか、私にはわかりませんでした。世界はわからないことばかりです。
もともとが絵本のシリーズなので(この本は文章が主です)、児童書のコーナーに置いてあるかも知れません。
ちょっと手に取って欲しい本です。
もう一冊は、白石一文さんの小説『快挙』(新潮社)
白石さんは官能的な描写もあって、こちらは大人向け。
売れない小説家の男と、小料理屋を営む年上の女。
現在50代の作者が、自分の両親の出会いをモデルにしたということで(白石一文さんの父親は小説家の白石一郎です)、高度成長、バブル崩壊、阪神淡路大震災と、時代は移り変わっていきます。
そんな時代を生きる一組の男女の物語。
まあ、現代の人からみたら勝手な男と尽くす女という構図なんですが、夫婦って他人にはわからない歴史があるんですよね。同じ時間を生きてきて、ケンカしたり、愛し合ったり、親戚や親兄弟のことでやきもきしたり、仕事やお金や子供のことで悩んだり苦しんだり。
男がグダグダ悩んでいる間にも、さっさと働き口をみつけてきて生活費を捻出する女。
「たくましい~」なんて思っちゃいけないんしょうね(苦笑)
だってどうやって食べていくのよ? と怒られそう。
白石一文さんの作品は、これまでちょっと読みにくくて敬遠していたのですが、これは読みやすかった。
個人的には「快挙」という題名と、ラストのオチの付け方(主に男の仕事に対して)には疑問を抱きましたが、これは主人公と同じ小説家である作者の思いなんでしょうね。
酸いも甘いも噛み分けてきた男女ならでは物語。
本当に共感できるまでには、もう少し人生経験が必要かな?(笑)
ともかく、面白い本でした。