前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

それ故、私はULTRAVOXを神の如く愛するのである~『RAGE IN EDEN』~

2011-05-13 00:25:19 | ULTRAVOX
クラシック音楽のCDの中で自分にとっての究極の一枚は、以前にも書きましたが
ホルヘ・ボレットが演奏する、フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」です。

では、クラシック音楽以外ではというと
ULTRAVOXの『RAGE IN EDEN』(邦題:エデンの嵐/1981年)というアルバムになります。
ボレットのフランク同様、究極の一枚です。

それには理由があります。


当時、私は「アール・デコ」という美術様式を知り、すぐにその魅力の虜になりました。
ですから『RAGE IN EDEN』を買ってそのアルバムジャケットを観た時、
これはアール・デコの影響を受けているなあ、と感じました。



これです。
『RETURN TO EDEN』のCD&DVDもタイトルを変えただけで同じデザインです。


収録されている曲は9曲ですが、あるテーマのもと驚くほどの統一感があります。
勿論、どんなミュージシャンもアルバムを制作する際には
多かれ少なかれ何らかのテーマ、コンセプトがあるとは思いますが、それとは次元が異なります。
全体が一つの物語を形作るような・・・。

それを示すかのように、全ての曲がフェードアウトで終わり次の曲へと続きます。

一箇所だけ"例外"があります。3曲目のタイトル曲「Rage in Eden」です。
ただ、これには"仕掛け"があります。
徐々に音がモノラルになり、ラジオのチューニングが合わないような雑音が混入してきて
「カチッ」とスイッチを切るように曲が終わります。

そして次の曲「I Remember(Death in the Afternoon)」は
「We turned the dial, We heard the news~」という歌詞で始まります。

この心憎いほどの演出。ちゃんと「物語」は続いています。


曲調と歌詞からは、1920~30年代のヨーロッパのイメージが想起されます。
そのイメージは、後に観たPVの登場人物の衣装やセットに
そしてフロントを務めるミッジ・ユーロの「オールバックの髪型に口髭」
というスタイルにも表われています。

いつしか『RAGE IN EDEN』というアルバムは、その全てにおいて
<音楽によってアール・デコの美学を表現したのではないか>
と感じるようになりました。


『RAGE IN EDEN』が発売された時
このジャケットデザインに関して「盗作疑惑」が持ち上がっている
との情報を友人から聞きました。
当時はその真偽のほどや、どんな絵に類似しているのかなど確かめる術もなく
またあまり詮索する気もありませんでした。

現在、『RETURN TO EDEN』のジャケットにも同じデザインが使われていますので
もし「盗作騒動」が本当だったとしても、良い方向で解決したのでしょう。


ただ、元になった絵はおそらくアール・デコの時代のポスターなどではないか
と思っていましたが、後になってその「元絵」と思しきものを見つけました。

アール・デコを代表するポスター画家、カッサンドルの「パリの祭典」という絵です。




この絵を観たときに、『RAGE IN EDEN』が
<音楽によってアール・デコの美学を表現したのではないか>
という仮定は自分の中で確信に変わりました。

実際、メンバーが何を表現しようとしたのかわかりませんし
このアルバムについて何か発言しているのかも知りません。
でもそれは、私にとってどうでもいいことです。
私の「確信」が、私にとっては「絶対」なのですから。

第2期1stアルバム『VIENNA』には、第1期(ジョン・フォックス時代)の影響が色濃く残っています。
それに比べて『RAGE IN EDEN』は、ULTRAVOX独特の幻想的な面や暗翳と
ミッジ・ユーロのいい意味でのポップさやファッショナブルさ、ダンディズムが
絶妙なバランスでブレンドされています。


アール・デコの美学を音楽で表現した唯一のアルバム・・・

完璧です。



<余談>
第2期でフロントを務めたミッジ・ユーロという人をご存じない方も多いと思いますが
有名ミュージシャン達によるチャリティーソングの先駆けとなった
バンド・エイド(Band Aid)の「Do They Know It's Christmas?」の作曲・プロデュースを行ったお人です。

ULTRAVOX時代は「オールバックの髪型に口髭」というスタイルからか
「クラーク・ゲーブルばりの・・・」といわれたダンディな方でした。


現在(『RETURN TO EDEN』)ではスキンヘッドになっていましたが、それでもカッコいい。
「ユル・ブリンナーばりの・・・」といったところでしょうか。

何故、私はULTRAVOXを神の如く愛するのか?~『RETURN TO EDEN』~

2011-05-10 21:19:34 | ULTRAVOX
ULTRAVOX『RETURN TO EDEN』ライブCD&DVDの続きです。

日本でのULTRAVOXの紹介のされ方は、
80年代初頭のエレクトロニック・ロック、テクノ・ポップ等の台頭や
洋楽ブームの中のから出てきた(若干マイナーな)一バンド、といったところだと思います。
(むしろ「そんなバンド全く知りません」という方の方が多いかな)

事実、私が知ったのもそんな感じです。
サントリーウィスキーのCMに使われた曲(New Europeans)を聴いたのがきっかけです。
(三宅一生がヘリコプターに乗ったカッコいいCMでした)
ただ、自分にとっては、そのような"括り"には留まりませんでした。


ULTRAVOXの歴史は大きく3期に分けられます。

第1期:ジョン・フォックス(John Foxx)がフロントを務めた期間
第2期:ミッジ・ユーロ(Midge Ure)がフロントを務めた期間
第3期:一部メンバーが脱退した以降

私にとっては第2期、その中でも3枚のアルバム

『VIENNA』(1980年)
『RAGE IN EDEN』(1981年)
『QUARTET』(1982年)

を出した約2年間が全てです。
その期間こそが私にとってのULTRAVOXです。


『VIENNA』は全英チャート2位となるヒットとなりました。
シンセサイザーを多用した作品でありながら"抒情的"と評されたのは
アルバムタイトル曲「Vienna」の美しい旋律と幻想的なPV
キーボード奏者ビリー・カーリー(Billy Currie)が奏でるヴァイオリン!
そして『VIENNA』というタイトルからくるイメージが大きいと思います。


今回の再結成によるライブツアー名『RETURN TO EDEN』は
第2期の2ndアルバム『RAGE IN EDEN』(邦題:エデンの嵐/1981年)
の曲を中心に構成されたからだと思われますが
一般的な知名度の高い『VIENNA』からの曲もかなり演奏されています。
どの曲も原曲に近い(というか殆どそのまま)アレンジです。

ライブのオープニングは、その『VIENNA』に収録されている「Astradyne」という
7分近くあるインストゥルメンタルです。

金属的なパルス音が続く中、ピアノの音を模した即興的な旋律が重なり
バスドラムの鼓動をきっかけにシンセサイザーの旋律が溢れ出てきます。
そしてビリーがエレクトリック・ヴァイオリンを手にした時の大歓声。
黒のスーツでスモークとバックライトの中、ヴァイオリンを弾く姿のなんというカッコよさ!




若かりし頃好きだったバンドが時を経て再結成することはよくありますが
どなたも皆「今聴いてもカッコいい!」と思うでしょう。
(自分が好きなものが一番カッコいいのは当然のことです)

でも、それとは全く違うのです。このライブ映像を観て感じました。
「今でも」ではなく「今こそ、最高なのだ!!」


ULTRAVOXとはおよそ30年前に出会い、そしてそれは
自分にとって「カッコいいこと」「美しいこと」の基準になりました。
その後、音楽に限らず美術や映画、舞台など様々なものと出会い
その幾つかは新たに自分の「カッコいいリスト」「美しいリスト」に加わりました。
でもその道は、ULTRAVOXから連綿と続いていたのです。

まだ中学生だったあの頃、私は30年後のこの「カッコよさ」を観ていたのだ。
遥か30年先の姿を幻視し憧れていたのだ。
私はようやく、真にULTRAVOXを感じることができる年齢になったのだ。


"今の時代でも十分通用する"だとか
"時代が追いついた"などという陳腐な言い方はしたくはありません。

演奏者の年齢も、聴き手の年齢も、今が最も相応しい。
正に「大人の音楽」。そう思えてなりません。


The feeling has gone only you and I.
It means nothing to me.
This means nothing to me.
Oh Vienna.


でも、30年前からULTRAVOXが私にとって"神"である理由は別にあります。
果たして言葉にできるかどうか・・・。

ULTRAVOX『RETURN TO EDEN』

2011-04-24 21:02:24 | ULTRAVOX
ULTRAVOX(ウルトラヴォックス)というバンドをご存知でしょうか?


このブログでも、好きなバンド、カッコいいと思うバンドのことを度々書いています。
でも、ULTRAVOXは自分にとっての意味合いが全く違うのです。

唯一無二、絶対的、もう"神"と呼んでもいいのかもしれません。


2008年再結成!
2009年に行ったツアー『RETURN TO EDEN』のライブCD&DVDを買いました。

DVDのオープニング曲。あまりのカッコよさに唖然!


書きたいことが山ほどあるのですが、多すぎてかえって何も言えず・・・。