前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

マーラーを「観る」

2010-09-23 15:43:04 | クラシック音楽
クラシック音楽に限らずどんな音楽でも
CDで聴くより生演奏の方がいいに決まっています。

加えて生演奏の場合、聴くだけでなく「観る楽しみ」もあります。
それが最も大きいのがマーラーの交響曲ではないでしょうか。

もしかしたら、観る(観せる)楽しみを初めて意識したのが
マーラーではなかったか、とも思います。


例えば・・・

●交響曲第1番ニ長調「巨人」
皆さん御存知かもしれませんが、第4楽章のコーダで
ホルン奏者に立ち上がって吹くように指示されています。
こんなこと指示した作曲家、いますか?

ただ、何度か生演奏を聴いていますが、実際に立ち上がって
演奏しているのはまだ観たことがありません。
(TVで一回だけ観ました)
ちゃんと指示通りやってもらいたいものです。

もしかしたら・・・

 『とあるリハーサル風景』
 指揮者「さてと、ホルン諸君、例のところどうします?立ちますか?」
 ホルン「いやいや、勘弁して下さい。恥かしいっすよ」
 指揮者「でも、楽譜に指示されてるしねえ・・・」
 ホルン「そんなことしたら、緊張して、音外しますよ!」
 指揮者「じゃあ、いつも通り座ったままで」

なんて会話がされているのかもしれません。


●交響曲第2番ハ短調「復活」
見所?は、第5楽章で合唱団が立ち上がるところです。
まさにここしかない!というタイミングで起立します。
ですから合唱団の皆さんは「如何にカッコよく立つか」
という練習をしてほしいと思います。
端から順番に波がたつように、とか・・・。


●交響曲第3番ニ短調
まだ生演奏を観た(聴いた)ことがないので省略。


●交響曲第4番ト長調
小編成なので見所は少ないのですが、第1楽章展開部、
4本のフルートがユニゾンで吹く場面はめったに観られない姿です。
ですからフルート奏者は楽器の色を統一させるなどに
気を配ってほしいです。一人だけ金色のフルートとかならないように。
あとは楽器配置でもフルートが目立つよう配慮してほしいです。


●交響曲第5番嬰ハ短調
これは冒頭のトランペットソロを、指揮者、演奏者同様、
観客も緊張しながら固唾を呑んで見守りましょう。


●交響曲第6番イ短調「悲劇的」
なんといっても第4楽章のハンマーですね。
打楽器奏者がゆっくりと立ち上がり、ハンマーを手に取る辺りから、
ワクワク、ドキドキの緊張感が漂います。
そしてハンマーを振り上げて叩きつける姿!
およそクラシック音楽の演奏会とは思えない光景です。


●交響曲第7番ホ短調「夜の歌」
この曲にはあまりこだわりが・・・。変な曲ですけどね。
オーケストラにとっては異質なギターとマンドリンが含まれてますが、
他の楽器に比べて音量が小さいのが難点なので、
観せる工夫の前に、音を聴かせる工夫が必要ですね。
PAとか使わずに。


●交響曲第8番変ホ長調「千人の交響曲」
これはもう、演奏者の人数が全てでしょう。
初演時のように千人が舞台に上がることはさすがにないですが、
それでも300人位が舞台上に並ぶ姿はそれだけで壮観です。
少年合唱団の子供達が途中で寝てしまわないか
「親目線」で見る楽しみもあります。


●交響曲第9番ニ長調
さすがにこの曲だけは「ただ聴くのみ」ですね。


あ~マーラーが観たくなってきました。

ショルティ&シカゴ響の美学

2010-09-21 18:33:42 | クラシック音楽
ようやく秋めいてきましたが、
猛暑続きで肉体的にも精神的にも夏バテ気味だったので、
元気が出そうな?マーラーをよく聴きました。

主に、交響曲第5番嬰ハ短調の第5楽章と
交響曲第6番イ短調「悲劇的」の第1楽章を。
盛り上がりますからね。


演奏は、
ゲオルグ・ショルティ指揮、シカゴ交響楽団です。

高校時代、マーラーに夢中になり始めた頃
買ったのがショルティ&シカゴ響の全集でした。
以降、同コンビの演奏には"特別"の愛着があります。

人それぞれ、テンポや節回し?など
グッとくる"ツボ"があると思いますが、
ショルティ独特の「溜め」と「開放」が私の"ツボ"です。
あの、ギリギリまで緊張感を高めて爆発させる感じ・・・


例えば、第6番の第1楽章。

コーダに入り、
オーケストラが音量を増していくと同時に
ラストスパートへ向かってエネルギーを溜めるかのように
徐々にテンポを落としていきます。

そして、爆発してクライマックスへと突き進まんとする
まさにその瞬間!
ほんの一瞬(一音?)、全ての楽器の音が消えます。
唯一つ、トライアングルだけを除いて。

そのトライアングルの音がまるで導火線の火の如く
オーケストラの大爆発を導き、
ブラスが咆哮をあげクライマックスへと突っ走ります。

他の人の演奏からは決して感じられない、
これぞ「ショルティ&シカゴ響」の真骨頂の表現です。
あらゆるクラシック音楽の演奏の中で
最高にカタルシスを感じる一瞬の「美学」です。


正直、ショルティ&シカゴ響の演奏を
好まない(嫌い)という人も結構いるでしょう。
曰く、テンポが速すぎる、音が硬く暖かみがない、
演奏が表層的過ぎる、金管が派手・・・

たとえそれら全てが"事実"であったとしても
それがどうしたというのだ!!

他のどの指揮者、オーケストラのコンビが
この「一瞬」を演出できるというのか?


録音は1970年。
ショルティがシカゴ交響楽団の音楽監督に就任した翌年です。
マーラーの交響曲第5番に続いて録音された
同コンビの最初期の演奏であり、今なお色褪せぬ名演です。

"情念"や"ロマンティシズム"を廃したような
一見(一聴)"無機質"にも聴こえる響きは、
しかしそれこそマーラーが求めた"理想の音"だった、
と私は確信しています。


この時、それから長きに渡って続く黄金コンビの
「美学」はすでに完成していたのです。

ハチャトゥリアン ヴァイオリン協奏曲ニ短調

2010-09-15 18:26:49 | クラシック音楽
久しぶりに高円寺の喫茶店「ルネッサンス」に行きました。
珍しく(失礼)お客さんが結構いました。
といっても5~6人ですが。

でもリクエストボードを見ると
相変わらずあまり書かれていないので、
早速、ハイドン先生のチェロ協奏曲第1番をと・・・。

ブラックコーヒー、煙草、ハイドン先生。
前二つの組み合わせは、健康的にはどうかと思いますが
私にとってこの三つは、精神衛生的にすこぶるよい組み合わせ。


他にリクエストがなければ、そのまま続けて
ハイドン先生の交響曲第39番を聴くところですが、
一人のお客さんがなにやら書いている様子。

曲が始まると、「お!」っとなりました。
「これはハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲では・・・」
と、思ったら???。

フルート用に編曲された「フルート協奏曲」でした。
初めて聴きましたが、これはこれでいいですね。


この曲(原曲)の私の愛聴盤は、

 ダヴィッド・オイストラフ
 ハチャトゥリアン指揮モスクワ放送交響楽団

です。

録音は1965年です。
作曲者自身が指揮しているから、というわけではないですが
正直この演奏に勝るものはないでしょう。

ハチャトゥリアン、オイストラフと、二人とも
なんか、精力絶倫(変な意味じゃなくて)というか
ヴァイタリティ溢れる、て感じですね。
演奏もまさに生命力、躍動感に満ち満ちたものです。


オケの短い序奏の後の、ヴァイオリン旋律の出だしは
結構、ヴァイオリニスト泣かせなのでは、と感じます。
一番低いG線で奏でられるので、
力のない演奏者ですと音がこもってよく聴こえません。

でも、さすがはオイストラフ。
力強く艶やかな音で、出だしから聴くものを虜にします。
多少の音の掠れ?などものともせず、
最後までエネルギッシュに突っ走ります。


何度聴いても興奮する、これぞ「魂、根こそぎ演奏」
(間近で聴いたら魂を根こそぎ持っていかれる演奏)
ですね。


やっぱりヴァイオリンの方がいいな。