前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

フランク 『ヴァイオリン/ピアノによる作品集』

2022-12-28 15:00:46 | セザール君の作品
セザール・フランクの『ヴァイオリン/ピアノによる作品集』というCDを聴きました。



ヴァイオリン:ニコラ・ドートリクール
ピアノ:上野 真

今年も終わりを迎えようとしておりますが
2022年は私の大好きな作曲家セザール・フランクの生誕200周年でもありました。

このCDにはピアノ・ソロ曲とヴァイオリンとピアノのために書かれた曲
およびそれらのために編曲された曲が集められています。

1. 交響曲 ニ短調(1887-88)~エルネスト・アルデルによるヴァイオリンとピアノのための編曲版
2. 協奏二重奏曲 変ロ長調(1844)~ダレーラク作『グリスタン』のモチーフによる
3. ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調(1886)
4. 前奏曲、コラールとフーガ ロ短調(1884)
5. 前奏曲、アリアと終曲 ホ長調(1886-7)
6. 交響的変奏曲 嬰ヘ短調(1885)~グスタヴ・サマズイユによるピアノ・ソロのための編曲版
7. 前奏曲、フーガと変奏曲 ロ短調(1859-62)~ハロルド・バウアーによるピアノ・ソロのための編曲版
8. アンダンティーノ・クイエトーゾ(1843)
9. メランコリー~自作のソルフェージュ教本からの編曲版


あまり演奏されない若い頃の作品もありますが、目玉?は「交響的変奏曲」のピアノ・ソロ版です。
編曲を行ったグスタヴ・サマズイユは、フランクの弟子であったショーソンやダンディに師事した
フランスの作曲家だそうです。

「交響的変奏曲」(原曲はピアノとオーケストラのための曲)は
フランク晩年の傑作の中では少々影の薄い曲で私もあまり聴くことはないのですが
シンプルなピアノ・ソロ曲にすることで、改めて曲の美しさが分かった気がします。


交響曲は、フランスの作曲家の交響曲として重要な位置を占める傑作ですが
フランクの魅力は、室内楽やピアノ・ソロ、オルガン・ソロなどシンプルな編成の方が際立つ気がします。
控えめで真面目だった(らしい)フランクの人となりがより表れるからでしょうか。
(そして密かな、でも揺るぎない自信も)

このCDには、その交響曲のヴァイオリンとピアノのための編曲版も収められています。
こちらは、もう一つの「ヴァイオリン・ソナタ」とでもいうような仕上がりで
(未知の)新たな傑作に触れたような楽しさです。


決して目立たない、いや目立つ必要もない、でも素晴らしい作曲家
少数ながら唯一無二の美しい作品を残した作曲家です。
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フランク 『ヴァイオリン・ソナタ (管弦楽伴奏版)』

2021-01-29 23:26:02 | セザール君の作品
セザール・フランク『ヴァイオリン・ソナタ (管弦楽伴奏版)』を聴きました。

ヴァイオリン:レオニード・コーガン
指揮:パーヴェル・コーガン
ソ連国立交響楽団(1980年1月9日ライブ)



前から「コーガンが演奏していた」という情報は知っていたのですが
CDは手に入らず、ずっと聴けず終い。と思ったら動画サイトにアップされていました。


好きなクラシック作品の編曲版を聴くのが好きです。
編曲の仕方にもいろいろありますが、大きく分けると三種類?ですかね。


①「平行移行版」(勝手に名付けています)
ヴァイオリン曲をピアノに置き換えたり、チェロで演奏したものです。
バッハのシャコンヌ(無伴奏ヴァイオリン曲)のピアノ編曲が有名ですかね。

②「ダウンサイジング版」(勝手に名付けています)
オーケストラ曲(交響曲等)をピアノ(ソロまたは連弾)や弦楽四重奏で演奏したもの。
ベートーヴェンの交響曲は九曲全部、リストがピアノ用に編曲してます。

③「アップサイジング版」(勝手に名付けています)
ピアノ曲や室内楽曲をオーケストラで演奏するケースです。
ブラームスの「ハンガリー舞曲集」は最初ピアノ連弾用として書かれて
後に管弦楽用に編曲されています。


②も③も作曲者自身が編曲している場合がありますね。
オーケストレーション前の草稿として、先にピアノ譜として書かれたり
オーケストラ曲を「普及版」(家庭で楽しむ用)として出版したり
ということもあったのだと思います。


今回聴いた曲は③「アップサイジング版」の1曲です。

フランクのヴァイオリン・ソナタには、既にいろいろな編曲版があります。

有名なのは、ヴァイオリンをチェロに置き換えた「チェロ版」です。
結構多くの演奏(CD)が世に出ていますね。

弦楽器同士ですから、まあ普通といえば普通なのですが
第一楽章の初めの方に、ちょっと"気持ちの悪い"オクターブの読み替えがあって
そこがどうにも好きになれず、あまり聴きたいとは思わない編曲です。

そのほか、ヴァイオリンパートを管楽器で演奏したものを
いくつか聴いたことがありますが、まあそれなりに、というところでしょうか。
(これらは前記の分類でいうと「平行移行版」になりますね)


バリトン・サックス版


変わり種は以前にもご紹介した「ピアノ独奏版」(コルトー編曲)です。
ヴァイオリンとピアノの曲を、わざわざ「ピアノ単独」で演奏するという力業!
(2人⇒1人というこれ以上ないダウンサイジング)


ピアノ:永井幸枝


前置きが長くなりました。
ヴァイオリン・ソナタとしては珍しい、管弦楽への「アップサイジング版」ですが
結論からいうとかなり「残念」な仕上がりに。
※編曲の出来不出来とは別にコーガンの演奏自体に魅力がないのも残念な理由ですが。


それほど激しい曲ではないので「協奏曲風」になるわけでもなく
オーケストラ演奏の部分(本来のピアノパート)は、ちょっと安っぽい映画音楽のよう。
(編曲者は誰でしょう?)


この「アップサイジング」という編曲
原曲作曲者以外が手を出すのは、結構"危ない"代物だと思います。
往年の名指揮者ストコフスキーが編曲した
バッハ大先生のオルガン曲「トッカータとフーガ」の管弦楽版も"ゲテモノ感"が否めない・・・
(結構、コンサートでも演奏されますが)

私の最も好きなフランクのピアノ曲「前奏曲、コラールとフーガ」にも
実はフランクの弟子、ガブリエル・ピエルネが編曲した管弦楽版があるのですが
正直いうと「何のために・・・誰得なの・・・」です。

そもそもオリジナルが、オケで"映える曲"なのかどうかの見極めも大事ですね。


今回の「管弦楽伴奏版」。ようやく聴けたという喜びはあるのですが
あまり(というかほとんど)認知されていないのも当然かなと。


そう考えると「アップサイジング版」の大傑作
ムソルグスキーのピアノ曲「展覧会の絵」を管弦楽曲に編曲したラベルの凄さが際立ちますね。
(もはやこっちが"オリジナル"のようです)

「これは"映える"!」と直観したのでしょうか。

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フランク 『ハーモニウムのための44の小品』

2019-12-25 00:00:50 | セザール君の作品
聖心女子大学聖堂でのミサが終わった後に、
短いオルガン曲が1曲演奏されました。

それがなんと、
セザール・フランクの『ハーモニウムのための44の小品』の1曲
「Sortie ニ長調」でした。

フランクはハイドン先生と並びもっとも好きな作曲家です。
あまりメジャーな作曲家とはいえないので、
昔は珍しいCDがあったらなるべく買っていたのですが、
(そうしないと二度と聴けない可能性があるので)
まさかその中の1曲を生演奏で(しかも聖堂で)聴けるとは!


私が持っているのはこのCDです。
4枚組でオルガンまたはハーモニウムのための曲が、112曲も入っています。
我ながら「よく買ってたなあ」とちょっと自己満足。


フランクは生前、純粋な器楽作品(交響曲など)はあまり評価されませんでした。
むしろ教育者、そして教会のオルガン奏者として有名だったようです。

パリ音楽院のオルガン科教授でしたが、作曲も教えていました。
学生らは師を「父フランク」と慕い、弟子たちは「フランク派」と呼ばれました。


César Franck(1822.12.10-1890.11.8)


長年、パリの聖クロチルド教会のオルガン奏者を務めましたが、
数々のパイプオルガンの作品はもちろん、沢山のハーモニウム曲も、
きっとその聖堂内で、彼自身の手で演奏されたのでしょう。

そんなフランクのオルガン曲。ミサ後の聖堂内での嬉しい出会いでした。




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フランク 『ピアノ三重奏曲嬰へ短調(作品1-1)』

2013-06-23 16:56:39 | セザール君の作品
セザール・フランクの室内楽作品全集を買いました。


演奏はマリブラン四重奏団、デイヴィッド・ライヴリー(P)、他

フランクはハイドン先生と並んで最も好きな作曲家です。

全集といってもCD4枚組で、ほとんどは既に持っている曲なのですが、
私がフランクを聴き始めた学生時代(20年以上前)はヴァイオリン・ソナタ以外では
ピアノ五重奏曲、弦楽四重奏曲が1、2種類あるかどうか・・・といった程度だったので、
全集発売には感慨深いものがあります。

そんなフランク初心者時代に見つけて"衝撃"を受けたのが「ピアノ三重奏曲嬰へ短調」です。
フランクが20歳くらいの時の作品で「作品番号1」と付けられています。
(3曲セットで「3つの協奏的ピアノ三重奏曲」(作品1-1~1-3)などと呼ばれます)


作品自体の出来はとても"名曲"と呼べるようなものではありませんし、
ベートーヴェンやロマン派の作曲家(ブラームス、ドヴォルザーク他)の有名曲と
同様のものを期待して聴くとガッカリするでしょう。

ピアノの単調な音型で始まり、続くチェロ、ヴァイオリンの旋律にも魅力はありません。
その後、ピアノやヴァイオリンの音型が変化したり楽器が移ったりしていきますが、
それも変奏曲と呼べるほどではありません。
私自身フランクが好きでなかったら、第1楽章冒頭で聴くのをやめたかもしれません。


フランクはいわゆる"大器晩成型"の作曲家とされ、
オルガン曲以外の主要曲はだいたい60歳前後から書かれていますが、
それらを"傑作"たらしめている特徴が「循環形式」です。

「循環形式」とは、
  多楽章曲中の2つ以上の楽章で、共通の主題、旋律、或いはその他の主題的要素を
  登場させることにより楽曲全体の統一を図る手法(物識り"ウィキ"さんより)
というものです。

そして、作品番号1と付されたこの「ピアノ三重奏曲嬰へ短調」にも
まさにこの「循環形式」が採用されています。
晩年の特徴だとばかり思っていたので、これにはビックリしました。


のちの読んだ、吉田秀和の「主題と変奏」という評論集に、
「セザール・フランクの勝利」と題された章がありました。

フランクについて書かれた評論があったのがとても意外でしたが、
その中で氏はこの「ピアノ三重奏曲嬰へ短調」について次のように書いています。

  ・・・彼の処女作である作品一の三曲のピアノとヴァイオリンとチェロのためのトリオ、
  ことにその第一番嬰へ短調トリオは立派な作品である。
  といっても、それは、作曲家たるべき以上、誰もが習得していなければならぬ基本的なものを、
  この十九歳の音楽院の学生が、すでに立派に身につけていた、という意味で立派なのである。
  (中略)
  フランクのこの作品は、全然ありふれた語彙しかもっていない点で、まず僕らを驚かす。
  (中略)
  ただ曲の構成には非常な特徴があって、三楽章からなるこの曲の、
  最初の楽章に使用された材料が後の二楽章を通じて重要な働きをするようにできている。
  これは循環形式と呼ばれ、前例もなくはないが、
  フランクの後年の傑作を一貫する独創の最大のメルクマールになっている。


ベートーヴェンやショスタコーヴィチが、
「作品1において、すでにベートーヴェン(ショスタコーヴィチ)だった」
と言われるのと同様に(もしくはそれ以上に?)
フランクも「作品1において、すでにフランクだった」のです。

このことを知ったとき(初めて嬰へ短調トリオを聴いたとき)の驚きと興奮は、
作品の出来不出来などを吹き飛ばすものでした。


当時聴いたCDはミュンヘン・ピアノトリオの演奏です。



循環形式に限らず、前楽章で出てきた素材(旋律)が別の楽章で再現される場合、
(楽譜の指定もあるでしょうが)"オリジナル"と同じテンポで再現されるのが好きです。
妙にテンポを遅くしてみたりニュアンスを変えたりすると、"再現"の意味が失われます。

ミュンヘン・ピアノトリオはその点、奇を衒わず素直な(且つしっかりとした)演奏です。
でもそれは、フランクの作品の魅力を引き出すための基本だと思います。

この演奏で聴いたからこそ、この曲の魅力を理解できたのかもしれません。
今なお愛聴盤です。
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フランク 『ヴァイオリン・ソナタ (ピアノ独奏版)』

2012-08-05 11:04:12 | セザール君の作品
名ピアニスト、アルフレッド・コルトーがピアノ独奏用に編曲した
フランクのヴァイオリン・ソナタを聴きました。

併録は同じくフランクの

  前奏曲、アリアと終曲
  前奏曲、フーガと変奏曲(原曲はオルガン曲です) 

ピアノ独奏は永井幸枝さんです。

存在自体は知っていて名編曲だとの噂でしたが、ようやくCDを入手することができました。


フランクのヴァイオリン・ソナタは「ヴァイオリニストに愛されている名曲」ですが、
と同時にピアノも同等に活躍する、ピアニストにとっても名曲です。

コルトーが「ピアノだけで弾きたい」と考えたのもそういう理由からでしょうか。


第一楽章はピアノの短い序奏のあと、
いつもならヴァイオリンで奏でられる漂うような旋律が、
(当たり前ですが)同じピアノで出てくるので、
分かっていても、最初はちょっとびっくりというか軽い違和感を覚えます。
(ただ二回目に聴いたときはもう普通に耳に馴染んでますが)

第二、第三楽章は元々ピアノが活躍する楽章ですので、全く不自然さを感じない、
というか最初からこういう曲だったと錯覚する程です。

終楽章はカノンですので、さすがにこれは違う楽器(音色)で
「追っかけっこ」した方が聴きやすい部分はありますが、
でも全体を通して、原曲の良さを損なわない素晴らしい編曲です。


「古今のヴァイオリン・ソナタの最高峰」と評される名曲ですが、
ピアノ独奏に編曲して、これだけ聴きごたえのあるヴァイオリン・ソナタは
他にないでしょう。

編曲物としては、ヴァイオリンをチェロやフルートに置き換えた版もありますが、
このピアノ独奏版も、もっと演奏されてよいと感じます。


ところでフランクがこのヴァイオリン・ソナタを作曲したとき(1886年)、
コルトーもすでに生まれてるんですよね(1877年生まれ、コルトー9才!)。
この事実にもちょっと驚きです。


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