前略、ハイドン先生

没後200年を迎えたハイドン先生にお便りしています。
皆様からのお便り、コメントもお待ちしています。
(一服ざる)

NHKスペシャル 『ヒューマン なぜ人間になれたのか』 第2集

2012-01-30 20:54:02 | テレビ番組
NHKスペシャル『ヒューマン なぜ人間になれたのか』第2集が放送されました。

今回は「道具」です。

50万年前に枝分かれしたネアンデルタール人とホモ・サピエンス。
屈強な肉体を誇るネアンデルタール人との生存競争に勝った要因は
飛び道具(投擲具)の発明だったとのことです。

投擲具は大きな獲物がいない地域で小さな獲物を獲るのに優位でした。

そして投擲具は、狩りの道具から仲間の結束を高めるたもの道具、
規律を破った者に対する制裁の道具へと、その意味を発展させました。

規則、規律を作り徹底させること。
これが集団で生き抜くためには必要不可欠なことでした。


番組では、ある実験が紹介されていました。

会社のコーヒーサーバーでコーヒーを飲む際に一定料金を箱に入れる決まりがある場合、
実際に料金を入れる人は1割程度でした。
しかし、料金を入れるよう書いた張り紙に"人の目"の写真を載せたら、
その割合は7倍になりました。

集団で結束して生きていくために、
我々はなによりも「仲間の目」を気にして生きる仕組みが備わったということです。


現代では果たしてどうでしょう。
電車の中でもお店でも、「人の目」を気にしない人々が余りにも多いと感じます。
その人たちにとって他の人々は、「仲間ではない」ということなのでしょうか。


そしてもう一つ。
人は、他人が痛みを感じている映像を見ても、それが「罰」だと認識した場合、
同じような不快感を感じない(同情しない)で、逆に「快楽」と感じる仕組みがあるそうです。
それは集団で生きてきたが故の結果でした。

同じ集団にいる仲間に「罰」を与えることへの躊躇を乗り越え、
きちんと「罰」を与え協力し合う社会を守るため・・・。


投擲具と規律、そして「罰」とそれを与えることを「快楽」と感じるその仕組みが、
「諸刃の刃」であったことは言うまでもありません。

個々人によって形成される「集団」が、その個々人に与える影響の
なんと大きなことでしょう。

『ジュリエット・レターズ』(ELVIS COSTELLO and THE BRODSKY QUARTET)

2012-01-29 13:25:38 | クラシック音楽
バラネスク・カルテットの『POSSESSED』を聴いて現代音楽(同時代音楽)にも興味を持ち、
その流れの中で出会ったのが、エルヴィス・コステロとブロドスキー・カルテットの競作、
『ジュリエット・レターズ』でした。

エルヴィス・コステロという方は、名前を聞いたことがあるだけで
ロック歌手としてどのような活動をしているのか全く知りませんでした。
(今もよく知りませんが・・・)


『ジュリエット・レターズ』は「ロミオとジュリエット」の舞台であるヴェローナの大学教授が
ジュリエット宛の手紙に返事を書いていた、という新聞記事にインスパイアされて作られました。


ポピュラー音楽では、アレンジのひとつとして弦楽合奏や弦楽四重奏の伴奏で
歌われる場合もよくあります。
(フジテレビ「僕らの音楽」とかよくやりますね)

ただ『ジュリエット・レターズ』は、単に弦楽四重奏の伴奏で歌を歌う、
という意図で作られたわけではありません。
ヴォーカリストと弦楽四重奏団の競作、
メンバーの言葉を借りれば「ヴォーカル五重奏曲」と言うべき作品です。


コステロは、ブロドスキー・カルテットの「ショスタコーヴィチ・チクルス」の
コンサートを聴いて競作を思いついたようです。

コステロの特徴的な声、決して"美声"とは言えないような歌声(ダミ声?)が、
逆に弦楽器の音色とうまくマッチしていると感じます。


『ジュリエット・レターズ』はCDのほか、
スタジオセットでの演奏と一部ライブ映像、出演者のインタビューを収めたDVDもあります。

コステロ曰く、
「これ自体が一つの作品。"弦楽四重奏と歌のための曲"・・・
ロックオペラでも四重奏のロックでもない、新しいもの・・・」

「歌は五重奏の五番目の楽器なんだ。
四重奏と歌のための作品はとても数が少ない。可能性があるのに見過ごされてきた。
この音楽の表現力は可能性を秘めている・・・」


新しいジャンルへの試みとして、大変貴重かつ評価されるべき作品だと思います。



NHKスペシャル 『ヒューマン なぜ人間になれたのか』

2012-01-22 22:03:58 | テレビ番組
Everybody smile!


脳卒中で脳の視覚野を損傷したある患者は、
目の機能が正常でも脳で画像を処理することができず、ものを「視る」ことができません。

しかし人間の表情だけは認識することができました。
脳にある「扁桃体」にも視覚情報が伝達し、判別していたからです。


2003年のイラク。和平交渉のために訪れたアメリカ軍を、
住民は宗教指導者を捉えに来たと思い込み取り囲みました。
言葉も通じない一触即発の状況です。

Everybody smile!

その時、アメリカ軍の司令官が兵士達に指示した言葉です。
笑顔を見せることで住民はアメリカ軍に敵意がないことをすぐに理解したそうです。




みんな笑顔で!

『POSSESSED』 THE BALANESCU QUARTET

2012-01-20 23:22:54 | クラシック音楽
まだ大学生だった頃のことです。
大手CDショップでクラシックのCDを物色していた時、
別のコーナーから弦楽四重奏らしき曲が聴こえてきました。

ベートーヴェンとかモーツァルトといった「古典」ではありませんが、
どこか聴き覚えのあるような旋律です。
「なんだろう、この曲?」と多少心に引っかかるものを感じつつ、
CDを物色し続けていました。

「確かに知っている曲だ・・・」と必死に記憶を辿っているうちに
「あ!」と思い出しました。「クラフトワークだ!」

それがバラネスク・カルテットが演奏する『POSSESSED』でした。
(その中の「COMPUTER LOVE」)


 1. ROBOTS
 2. MODEL
 3. AUTOBAHN
 4. COMPUTER LOVE
 5. POCKET CALCULATOR
 6. POSSESSED
 7. WANT ME
 8. NO TIME BEFORE TIME
 9. HANGING UPSIDE DOWN

1~5はクラフトワークの曲、9はデヴィッド・ボウイ、
6~8はリーダーであるアレキサンダー・バラネスクのオリジナル曲です。
(カバー曲もアレンジされています)

アレキサンダー・バラネスクは現代音楽を中心に活動している
アルディッティ弦楽四重奏団の元メンバーです。


このCDをきっかけに現代音楽(同時代音楽)に興味を持つようになり、
やがてスティーブ・ライヒなどのミニマルミュージックやアルヴォ・ペルトなどを
聴くようになりました。

ロックなどを弦楽四重奏で演奏する例としては、クロノス・カルテットが有名ですが、
演奏技術はバラネスク・カルテットの方が上だと思います。


いい曲は、別の楽器、編成で演奏しても良い曲だなあと感じます。
(別の楽器、編成で演奏しても良いと感じるのが名曲だ、と言った方が正確かも)

アレキサンダー・バラネスクのオリジナル曲も聴きやすい曲です。
現代音楽入門にはいいのではないでしょうか。



題名のない音楽会 『ジョン・ウィリアムズ生誕80年~人気映画音楽ベスト10』

2012-01-08 20:16:01 | クラシック音楽
今日放送された題名のない音楽会は、
『ジョン・ウィリアムズ生誕80年~渡辺俊幸が選ぶ人気映画音楽ベスト10』
でした。

言わずと知れたハリウッドを代表する作曲家です。

 ジョーズ
 未知との遭遇
 スター・ウォーズ
 スーパーマン
 インディ・ジョーンズ
 E.T.
 ジュラシック・パーク
 ハリー・ポッター
 etc

どのテーマ曲も皆、記憶に残る名曲です。


これらをクラシック音楽のカテゴリーに入れることには異議を唱える人も多いと思いますが、
(実際「クラシック」ではないですが、「現代音楽」と捉えたとしても同様だと思います)
私は、偉大な、現代を代表する大作曲家だと思ってます。

私が生きている間に、上記作品のうちのいくつかは、
オーケストラのコンサートレパートリーになるのではと思っていますし、
なって欲しいと思っています。


NHK大河ドラマなどの音楽を担当した作曲家・渡辺俊幸さんが
ジョン・ウィリアムズの音楽の特徴として「ドソド戦法」というものを紹介していました。
メインテーマなどの特徴的な旋律に、ドとソの音がよく使われているとのことです。

そしてその理由の一つとして、キューブリックの『2001年宇宙の旅』が
影響しているのではないか、とおっしゃっていました。

『2001年宇宙の旅』の中で、観る者に強烈な印象を与える、
リヒャルト・シュトラウス『ツァラトゥストラはかく語りき』の冒頭。
トランペットの旋律が「ド・ソ・ド」の三音です。

そこから、SF・宇宙などの映画音楽といえば「ド・ソ・ド」
というのが潜在意識にインプットされたのではないか、との推論です。

なるほど~なかなか面白いですね。


ところで少々話は変わりますが、映画などで
「このシーンを見ると100%泣ける」という場面、ありませんか?
自分では今まで意識していなかったのですが、今日のこの放送を見ていて気がつきました。

それは『E.T.』で、ETを乗せたエリオット少年の自転車が空に舞うシーンです。
映画史に残る名シーンの一つだと思いますが、
これもジョン・ウィリアムズの「あの曲」との相乗効果に違いありません。
(セリフがないシーンですから)


今、その場面を見返しましたが、やっぱり泣ける!


追記
『E.T.』のテーマ曲は、あまりにも素晴らしかったので、
監督のスピルバーグがこの曲に合わせた映像を付け加えたとのことです。
先に書いた「空飛ぶ自転車」の名シーンのことかもしれません。
泣けるわけです。