地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

カミーノにあしあと 11

2010年09月17日 | Weblog
【11日目】7/6(火) Azofra → Grañon
今朝は手持ちのビスケットやらフルーツやらを食べてからアルベルゲを出発したので、遅めの7:50スタート。
すでにほとんどの巡礼者は出発済み。

曇りで風が強く、朝は肌寒い。

木陰の無い道をただひたすら、ひたすら歩く。




途中、道路にバルのサインが現れた。
カミーノをちょっと外れるみたいだけど、「バルまで200m」と書いてある。
今日は暑くはないけど、AzofraからCirueñaまでの9kmは何も出てこないので、ちょっと脱線しようかとそのバルのサインをたどってみる。

が、しかし、絶対200mって嘘だ
ゆうに1km以上歩いてるんじゃないか、これ?
住宅街を行けども行けども辿りつかない。
他の巡礼者は賢いのか、誰も寄り道せずそのままカミーノを続けていて、スィナと私だけがこのバルの罠にはまっているようだ

もうバルなんて見つからないんじゃないかと思い始めた時、ようやく小さな村のバルに到着。
ここ、オプショナルルート上にあるSan Millánじゃないか。
ずいぶん道を外れてしまったもんだ。
そして無駄に歩数を稼いでしまった

ほとんど人気のない村で、教会も閉まっている。
日本の田舎もそうだけど、スペインの田舎もほとんど人を見かけない。
あと、通常私たちがその日宿泊する町や村に到着するのは午後で、ちょうどシエスタの時間帯とも重なるため、到着時は人っ子一人いないゴーストタウンのようになっていることが多い。


恒例となっているボカディーヨとオレンジジュース、コーヒーの3点セット休憩。
バルには近所の人が子連れでやってきたけど、それ以外人気なし。
もちろん私たちの他に巡礼者の姿は皆無。

回り道をさせた分、バルのオーナーはとても親切で、ここからカミーノへ戻る道も丁寧に教えてくれた。


通常とは違うルートで、元のカミーノと合流すべく進む。
麦畑に咲く赤い花が印象的。









しばらくして、Santo Domingo de Calzadaに到着。
手持ちのガイドブックによると、「この町は、巡礼のための石畳の道(カルサーダ)、橋、救護施設などの建設に生涯を捧げた聖ドミンゴによって開かれた町である。その功績を称えられて、この町は『リオハのコンポステーラ』と呼ばれている」らしい。
確かに石畳の中世風の街並みが美しい。
多くの巡礼者はここで1泊するが、私たちは先へと進む予定。




町に入ると何人かの巡礼者がいて立ち話をしていると、例のスィナが「変な顔」と言って嫌っているフランス人のおじさんがやってきた。
なんと、手には空になったワインのボトルを持ち、足もともおぼつかず、明らかな酔っ払い
ろれつの回らない口調で、「こっちのアルベルゲは…ヒック、なかなか奇麗で…ヒック、あっちにももう1つアルベルゲがあって…ヒック、、、」と、典型的な酔っ払いぶりでめちゃめちゃおもしろかった。
あれ、後々の語り草やわ。


この町には有名な伝説がある。
その昔、巡礼者夫婦と息子が宿泊した際、息子が窃盗の濡れ衣を着せられ絞首刑を宣告される。
両親が役人に息子は無実なので救ってほしいと訴えると、その役人が「お前たちの息子が無実だというのは、私が今食べているこの鶏が生き返るようなものだ」とかなんとか言った。
その途端、お皿の上の鶏が生き返ったため、息子も釈放された。

というような話である。
この伝説があったことから、ここの教会では鶏が飼われている


カテドラルの内部が博物館になっていたので、見学。
入館料は巡礼者割引で2.5ユーロだった。
クレデンシャルにスタンプももらう。







鶏が飼われている鶏舎は有名なのですぐに分かるだろうと思っていたけど、どうやら見落としてしまったらしい。(実は写真にはそれらしきものが写っている。)
ま、いっか。
巡礼してるとだんだん観光はどうでもよくなる。

カテドラル見学を終え、そろそろランチでもしたいからと散策してみるけど、どうもこれと言ったバルが見つからない。
「じゃあカテドラル前のパラドール(高級国営ホテル)でお茶だけでもする?」と、汚い巡礼者の身なりでパラドールに入ってみた。
(注:カミーノ上のパラドールは巡礼者も入れる。)

フロントで用件を伝えると、「そちらのカフェへどうぞ」と言われたのでカフェエリアに座ったのだけれど、待てど暮らせど誰も出てこない。
う~ん、もう出ていく?

誰にもサーブしてもらえなさそうなので、パラドールを出て町の出口方面に進む。
バルぐらいあるだろうと思っていたら、全然ない~!
地元のおじいちゃんを捕まえて「ここにバルはありますか?」(←一体巡礼中に何度このセリフを口にしたことだろう)と聞いてみたけど、ないと言われてしまった…

あと、どうもカミーノが分かりづらいのでそれも聞いてみると、「そこの道を進んでいって橋を渡るといいよ」と教えてくれた。

また町の中心部まで戻るのはしんどいので、近くにあった教会前のベンチに座り、手持ちのドライフルーツなどでしのぐ。
座っているとどんどん巡礼者が通るのだけど、みんなカミーノが見つけられないらしく、ウロウロしているので、「カミーノはあっちの方らしいよ」と教えてあげる。
困るんだよね、カミーノの標識がちゃんとしてない場所は。


しばらく休憩後、ようやく私たちも立ちあがり、次の町を目指す。

Santo Domingo de Calzadaから7km、16:00にGrañonに到着。
ここはまた小さな小さな村で、アルベルゲはParroquia(教会系)のが1軒。

アルベルゲのサインがなかったので、気付かずにどんどんカミーノを歩いて行ったら、あっという間に町の外れまで出てしまった
元来た道を戻り、バルで休んでいた他の巡礼者に聞くと、「アルベルゲはそこを曲がったとこだよ」と教えてくれた。

意外にも銀行があったので、スィナがATMを使う。
私も使おうとしたけど、カードが受け付けられなかった。
以前、グナーも同様の経験をしてたけど、スィナのカードもATMによって成功したりしなかったり。
スペインの銀行システムが(というか、インフラが)良くわからん


Grañonの教会はとても古く、教会裏手にある小さな入口から入り、石の階段を上ったところがアルベルゲらしい。
が、上った先には受付らしきものがなく、だだっ広い部屋の床にマットレスが置かれていた。
さらに上に続く階段があったので、下から呼びかけるも返事なし。
でも人がいる気配はする。

そこから先は靴を脱がないといけなかったので、面倒だけどトレッキングブーツを抜いて上がり込んでみる。
するとだだっ広い部屋の隅に1人若い女の子がいたので、「受付は上ですか?」と聞いてみるとそうだという返事。

「あれ?日本人ですか?」
「はい」

おおっ、久しぶりに日本の女子に会ったよ!
ノリコさんと言う名前の人だった。
巡礼者らしからぬ、森ガール系の服装をしている。

ノリコさんは英語もスペイン語もほとんど分からないらしい。
でも常にニコニコ(スィナ曰くgiggling)しているので、言葉が分からなくても色んな人が助けてくれるらしい。


上にあがるとアットホームな感じのキッチンとダイニングがあり、宿泊料は寄付ベースだった。
どうやらアジア系はノリコさんと私と、もう一人おとなしそうな韓国人の男の子の3人。
韓国人が多く泊まるらしく、ハングルで書かれた紙が掲示板に貼ってあった。

昨日Azofraで一緒だったスペイン人のエマや、道々何度も会っているイタリア人のキアラ、後で仲良くなるアメリカ人のキムなどもここに宿泊。

寝る場所は下の階の広い部屋、または中二階みたいになってる板の間のどちらか。
どちらもベッドはなく、床にマットレスが敷いてある。
私はどっちでもいいんだけど、スィナが暑がりで少しでも涼しそうな場所に寝たがるので、下の階に決定。

シャワーは1個しかないので、先にシャワーを浴びさせてもらう。
その間、スィナは大幅に遅れている日記を書くとのこと。


シャワーの順番を待っている時にオスピタレロに「アンケートに答えて。5分ぐらいでできるから」と言われて渡された紙は、とても5分で終わるような代物じゃあなかった。
しかも内容はどう見ても心理テスト

さらには提出後、一人ひとり最後のページに載っている心理ゲーム的なものまで受けさせられる模様。
ちょ、ちょっとうんざりです。

シャワーを浴びて階下に戻ると、スィナが「みてよ、たったの3行しか書けてない」と自分のノートを見せる。
「でも彼のことは全部聞きだしたわ」と。

どうやら向かいのマットレスにいたデンマーク人の男性から根掘り葉掘りプライベートなことまで聞き出していたらしい。
出たよ、おばちゃんの悪い癖

その男性の名前は外国人が発音するには難しすぎるため、愛称の「エミリオ」でいいらしい。
教会の建築関係の仕事とか。
巡礼者の中にそういう職業の人多いみたい。

スィナが「あなたかマリアにエミリオはぴったりだと思うわ」とか言う。
(しかし、後には「エミリオは結婚向きじゃないわね。コミットするタイプじゃないし」と勝手に結論づけていた
誰かこのゴシップおばさんを止めて下さい


ダイニングを通りがかると、マリアがオスピタレロに捕まって心理ゲームを受けさせられていた。
私も「今、いい?」と聞かれたけど、「あ、ちょっと洗濯してきますんで、後から…」と言って逃げた
その後もオスピタレロに捕まらないよう、こそっと通り抜けたので、結局心理ゲームはやらずに済んだ。


さて、このアルベルゲは本当に教会の中にあり、アルベルゲの中から礼拝堂内が見下ろせる。




そして何より、洗濯をする場所と干す場所が独特!
薄暗くて狭い石の階段を上っていくと屋根裏的なスペースに。
(ネズミとかいそう…




そこの干場は一杯だったので、さらに狭い階段をらせん状に上って行ったところにも洗濯ロープがあったので、そこに干す。




ここは教会の塔の中なので、もうちょっと上に行くと、なんと鐘に行きつく。




なかなか他にはない環境で面白かった



夕方からミサがあるけど、まだ少し時間があるので、私とマリアは村を散策。
スィナは遅れている日記を書くからと言ってアルベルゲに残る。

たまにスィナから離れて同世代の子とおしゃべりするのは楽しい。
マリアはスウェーデン人だけど、なぜか昔からノルウェーに興味があり、常にノルウェーのフィヨルドの画が頭に浮かんでいたという。
そこで大人になってからノルウェーで仕事を見つけて移り住んだとか。

彼女は英語もネイティブ並みにペラペラだし、スペイン語も過去にスペインに語学留学したらしいので流暢だし、母国語のスウェーデン語に加え、ノルウェー語もちょっとはできるらしいので本当に尊敬。
マリアのみならず、ヨーロッパの人は母国語プラス近隣国の言語プラス英語もできてうらやましい。

マリアに何故スィナと一緒に歩いているのか聞かれたので、「ま、成り行きで」と答えた。
私はカミーノを歩くにあたり、特に「絶対こうしたい!」というイメージを持たずにやってきた。
来るものは拒まず、去るものは追わず。
良いことも悪いことも全てそのまま経験として受け入れるつもりでいる。
スィナと出会ったことは、神様が私にきちんと毎日食事を摂るように仕向けてくれたからだと思う。
自分1人だと疲れているから夕食は適当に済ませたりしがちだけど、スィナといると毎晩必ずきっちりディナーを摂る。
もちろんそれだけの理由じゃなくて、神様はスィナとの出会いを通していろんなことを教えようとしてくれているけれど。


夕方、下の教会でミサに出席。
一緒に出席したキムと、カトリックのミサについて語り合う。
キムはカトリックじゃないので、カトリックのミサで参列者が神父の言葉に呼応してオートマチックな感じでセリフを発する形式に違和感があるという。
私もそう思う。
巡礼前にちょっとだけキリスト教について勉強したけど、カトリックは教会の装飾もゴテゴテで、儀式が多く、聖職者の階級も細かく分かれている。
簡素化されたプロテスタントの方が自分の考え方に合うかも、と思った。
でも私たぶんモルモン教会のミサにしか参列したことないと思うけど。
あっちはもっとシンプルだった。


さて、ミサが終わるとアルベルゲで夕食。
オスピタレロ達が作ってくれたアットホームな食事をみんなで頂く。




ここの名物?は、ワインの回し飲み。
これが結構難しくて、盛り上がる。









いや~、ほんとに盛り上がったなあ





そして宴もたけなわの頃、始まったよ、お歌タイムが…。
幸いスィナは別のテーブルにいたんだけど、マリアが「ねえ、あの歌うたってよ」と。
もうほんと、勘弁してほしいわ

今日はもう一人日本人がいることを思い出し、別のテーブルにいたノリコさんを呼び、一緒に歌ってもらう。
ノリコさん、「もしもしカメよってどんな歌詞でしたっけ?」と。
あれ?ひょっとして世代間の差が出てる?
彼女の世代ではあんまりこの歌は歌わなかったのか。
どうしても道連れにしたいので、わざわざノートに書いてあげ、2人で歌った。



食後、教会系のアルベルゲの常で、ちょっとした集いに参加。
教会の礼拝堂の上に当たる部分で、一人一人がキャンドルを持ち、讃美歌を歌ったり、それぞれの思いを語ったり。
お祈りの言葉が回ってきたので、今回も「日本語でいいですか?」と許可をもらい、「今日も怪我もなく無事にカミーノを歩けてありがとうございます」と言っておいた。
こういう時、カトリック信者でもクリスチャンでもないので困る。
ノリコさんは言葉が分からないので参加しなかった。


集いも終わって歯も磨き終わった頃、エマに「向かいのバルにみんなで飲みに行きましょうよ」と誘われた。
「あれ?門限は?」と聞くと、「このアルベルゲは門限がないから大丈夫」とのこと。

ふと見ると、エマがイチオシだったスペイン人の男の子がいた。
う~ん、写真と同じやね

スィナがイチオシのエミリオもいたけど、結局彼らとは話す機会がなかった。
バルに入った時は大人数だったけど、いつしか小グループに分かれ、私は気付けばスィナと一緒におじさんテーブルにいた。
しまった…

カミーノをすでに14回も歩いているというフィンランド人のおじさんは、作家をしているらしく、カミーノに関する本を出版予定だというので、スィナが熱心に名前などを聞いていた。(英語やオランダ語に翻訳されるのか?)
デンマーク人のピーターというおじさんは、あまり言葉の分からないノリコさんと結構一緒にいた人だ。

バルのテレビではワールドカップをやっていて、オランダがウルグアイに勝ったのでスィナが大喜びでワインをおかわり


そしてふと時計を見たスィナが「いけない!もう22:00!アルベルゲ閉まっちゃうわ!」と慌ててバルを出ようとするので、後ろから「違うよ~!ここのアルベルゲには門限ないから大丈夫だよ~!」と叫んでいるのに、全く聞く耳を持たず、すごい勢いでバルの階段を降りはじめた。

バルの外に出るとテラスにまだ大勢の巡礼者たちがたむろっているのを見て、「なぁ~んだ、まだ大丈夫なんだ。よかった」と安心していたけど、あたし何度も言ったよね

実はこれ以前にもスィナが「22:00までにアルベルゲに戻らなきゃ」と言うので、私が「門限ないから大丈夫なんだって」と教えてあげていた。
少なくとも3回は同じ会話したよね!
人の話を聞け!

このように、スィナは時々全く人の話を聞かない時があり、大いに苦労させられるのであった。

そろそろ四六時中あんたと一緒にいるのがしんどくなってきたよ…






本日の歩行距離:約22km
本日の歩数:40,757歩