地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

カミーノにあしあと 14

2010年09月26日 | Weblog
【14日目】7/9(金) Agés → Burgos
早朝、雷雨だったので、今日は雨具を装着して歩かないといけないかなと憂鬱な気分になっていたけど、朝食を済ませて7:10頃に出発する時には雨はすっかりあがっていた。
6:00には出発しないと気が済まない巡礼者たちはあの大雨の中出て行ったけど、Late Starterな私たちはラッキーだった。

昨日St. Juan de OrtegaからAgésまでの道のりも花が咲き、蝶々が舞っていて奇麗だったけど、Agésを出発後も美しいカミーノが続く。
気持ちよくスタートを切れた。


80万年前の人類の化石が見つかったというAtapuercaを通過。
イタリア人の陽気な青年が調子の外れた歌を大声で熱唱しながら通り過ぎていく。

今日はなかなか休憩場所が見つからない。
でも調子がいいのでガンガン歩いていたら、スィナに止められる。
人と一緒に歩いていると、こうやって自分のペースで歩けないことがネックだ。
だけどこれもまたカミーノと割り切る。


Atapuercaを過ぎると広大な軍用地のそばに十字架が立っている。




眼下にはCastillaの平野が広がる。




フランス人のマークが先を追い越していく。
今日のスィナは調子が悪そうで、歩みが遅い。


本日の目的地は大都市Burgos。
Burgosの手前約10km地点のバルで休憩。
多くの巡礼者でにぎわっている。

テーブルをシェアした中に、出身国は忘れたけどおばさん2名がいて、内1人はスィナと私の中でちょっと要注意人物。
実は昨日Agésの一歩手前のSt. Juan de Ortegaのバルでこの女性を見かけている。
彼女がコーヒーを注文し、バルの店員が値段を告げる。
そして彼女が出したお金に対してお釣りが出てくると、お釣りをごまかされたと錯覚したのか、彼女がクレームをつける。
「今渡したの○○ユーロよね?」
バルの店員が「そうだよ。だからお釣りはこれだけでしょ」と答えても、なぜか彼女は理解できない様子。
店員がわざわざキャッシャーからお金を取り出し、「今あなたに渡されたのがこれ、コーヒー代がこんだけ、で、お釣りはこれだけ」と説明するのだけど、それでも理解できない様子で険しい顔をしている。

ユーロ圏の人じゃないにしても、様子がおかしすぎる。
暑さと疲れで頭が参ってるだけなのか、それともハンガリーのアンドレアと似たような人種なのか?
見かねた私とスィナが「お釣り、それであってるよ」と店員の援護をしてあげ、ようやく渋々引き下がった彼女。

今日も不機嫌そうな顔でタバコをふかしている。
ボカディーヨを勧めてみてもいらないと断った。

一方、連れの女性はいたって普通な感じだった。
私がトレッキング用ソックスを脱いで五本指ソックス姿になっていると、それが珍しいらしく写真を撮り始めた。
周りの人たちの話では、ヨーロッパでも数年前にポップな柄の五本指ソックスが流行った時期があるけど、ブームが去るともう見かけなくなったとのこと。


どこのバルでも見受けられるように、テーブルの下では犬がウロウロして巡礼者に食べ物をおねだりしている。
私もトルティーヤの欠けらをあげて遊んでいた。

と、そこにバルの中から女性が一人ものすごい剣幕で出てきて、その犬のお尻をバシッと叩き、大声で追い払った。
一同唖然

その女性曰く、「あの犬は近所の犬で、いつもここへ来て巡礼者に食べ物をねだるのよ!私の犬はきちんと室内に入れてるのに、あの犬はいつも野放しで、飼い主に何度抗議しても知らん顔!全く腹が立つわ!」と。
そ、そんな事情があったとは知らずにエサあげてすいませんでした…。

さらに彼女は続ける。
「私は肌は黒いけどバカじゃないのよ!ちゃんとうちの犬は管理してるのよ!」とまくし立てる。

彼女はドレッドヘアのアフリカ系。
そのセリフからアフリカ系市民がヨーロッパで受けているであろう差別や偏見が垣間見えてちょっと複雑な気持ちになった。

周りの白人巡礼者たちは彼女が去った後、「いや~、彼女女優になれるよね。すごい演技力だよね」と、犬を追い払った時の彼女のオーバーリアクションについて笑いながら語り合ってたけど、私一人「気になるのはそこじゃなくて…」と思っていた。


続いて到着したデンマーク人のポールと一緒にバルを後にする。
とはいえ、相変わらずスィナが絶え間なくポールとおしゃべりしてるので、私はあまりしゃべらず後ろからついていく。


Burgosの手前7~8kmは、道が二手に分かれる。
左に行けば若干遠回りだが快適な遊歩道、右に行けば歩くにはふさわしくない商業地帯。
多くの巡礼者はこの分かれ道からバスに乗り、退屈な商業地帯をすっ飛ばす

正しい巡礼者を自負するスィナと私は当然左に折れて徒歩でBurgosに入りたい。
が、左に行くルートにはなぜかフェンスが張られており入れず、否応なしに国道沿いの商業地帯を歩く羽目となる。

スィナはおしゃべりに夢中だったので、右ルートに来てしまったことにすら気づいていなかったが、だいぶ経ってから「あら?私たち商業地帯に入ってる?」と。
もうすっかり行程管理は私の役目みたいになってしまってるので、「そうだよ、分かれ道のところで左ルートは通行できなくなってたから、私たちは商業地帯を歩いてるんだよ」と説明。

交通量の多いアスファルトの道を歩くのは疲れるので、途中のバルでひとまず休憩することにした。
スィナは極度の暑がりなので、少しでも涼しいバルを好む。
スペインのバルは窓が開けっぱなしで冷房など効いていない。

1軒目のバルが気に入らなかったスィナは、暑くて疲れているのに、国道を挟んだ向こう側の別のバルを見に行く。
そういう元気は残ってるんだな…

昔ながらのバルっぽいところじゃなく、おしゃれなカフェっぽいお店にて、ポールがコーラをおごってくれた。


ポールはかなり足のマメに苦しんでいて、絆創膏を貼りなおしている。
スィナの足もテーピングだらけ。
私が靴下を脱いで傷一つないピカピカの足の裏を見せると、ポールにものすごいうらやましそうな目で見られた。

「皮膚保護クリーム使ってる?」と聞くと、「一応こういうの買って使ってみてる」と割と高級なブランドのクリームを取り出した。
そうか、それ塗っててもやっぱりマメはできるのか。
「私のはスポーツ選手とかが使うやつで、マラソンの時に腋が擦れるのを防止したりするクリームだよ」と教えてあげると、ポールが「実は、人には言ってないんだけど、股も擦れて痛いんだよね…」と。
カミーノでは毎日相当な距離を歩くので、太ってない人でも股ズレするようだ。
お気の毒に


大都市なので、Burgos市内に入ってからカテドラルやアルベルゲのある町の中心部までが非常に遠い。
もうヘロヘロなので、2度目のコーラ休憩。
3人でBurgos到着を祝う。

さらに3kmちょっと歩いて、いよいよカテドラルに近づいてきたというところで、もう一度アイスクリーム休憩。
はぁ~、なかなかたどり着かんわ、私ら。


Burgosは美しい町。








15:15、やっとBurgosの公営アルベルゲに到着。




到着時、見慣れた顔に遭遇。
あれ?
もしかして、ポルトガル人のヌノ?

誠に残念ながら、Agésで一緒にディナーした時はあんなにもかっこ良くてときめいたのに、今日会ったヌノは首の伸びたヨレヨレのTシャツ姿で、到底同じ人物と思えないほどの冴えないぶりだった。
かっこ良さの微塵も見受けられず、軽くハートブレイクである
(服装については他人のこと言えないけどね、私も!)



さて、Burgosのアルベルゲは、公営なのでたったの4ユーロなのに、近代的で設備が整った大型アルベルゲ!




何階建てか忘れたけど、エレベーターがついており、各階にこのような部屋がいくつもある。
ガラスの壁の向こうは洗面所。





洗面所の電気は人を感知して自動点灯するのだけど、これだけ人の出入り激しいと自動点灯にしない方がいいと思う。
何度もパチパチ点いたり消えたりするのが、ガラスの壁際のベッドの人にはさぞかし迷惑だろう。
あと、点灯してる時間が短すぎて、ちょっと歯磨きしたり顔を洗ったりしている間に勝手に消えてしまうので、いちいち体を動かして点灯しないといけない

キッチン&ダイニングスペースもすっきり奇麗。




洗濯物を干すスペースもたくさんある。






ここで久しぶりにベネズエラのホセ&ベティ夫妻に会って喜んだのもつかの間、彼らはもっと涼しい部屋を求めて別の階に移動してしまった。
その際に自分らがキープしていた下の段のベッドを譲ってくれたので、新たに巡礼者が到着する前に急いで下へ移動。
だって、ここの2段ベッドも梯子がないので、上の段は少々不便。


エレナやマリアとディナーの約束があるので、マリアに電話してみるが通じず、なぜかSMSも届かない。
結局そのまま彼女らには会えなかった。
スィナもその後2度ほどマリアにSMSを送ってみて成功したが、返信はなかった。
帰国後、マリアのPCメールアドレスにも出してみたが、やはり返信はない。


ポールが「カミーノを終えるまでヒゲは剃らないつもりだけど、口髭が伸びてきたので整えたい。誰かハサミ持ってない?」と言うので、私の眉バサミを貸してあげた。
ちゃんと返してね~。
じゃないと私、カミーノが終わるころにはバッサバサの眉毛になってるから。


洗濯後、スィナが遅れている日記をずっと書いているので、私は一人でBurgos市内を散策に出かけようとするが、スィナが日記を書く手を止めてついてくる。
結局私はなかなか1人にはなれないのである…

隣の教会で19:00からミサがあるらしい。
それまでうろつくことにする。

教会の前まで来るとたくさんの人だかり。
結婚式だ!




しばらく待っていると新婦がお父さんとともに到着。




招待客もぞろぞろと教会へ入っていく。

そこでスィナが「私たちも入りましょうよ!」と。
ええ?!
他人じゃん。招待されてないじゃん。

「スペインの結婚式は誰でも入れるのよ。私の息子の時も教会の近所の人とかいっぱい入ってきたから大丈夫よ」とスィナは言うのだが、でも服装が服装だし…。
スィナは自分だけ黒いワンピースを着ている。
これは教会やディナーに行く時のスィナのおしゃれ着。
しかも口紅までつけている

ちなみに50歳以上の女性らの多くは巡礼だと言うのにメイク用品を持ってきていた。
スィナはマスカラまで持参しているので、ディナーやミサに行く時はばっちりおめかしして行く。
ま、さすがに足元はスポーツサンダルだけど
スウェーデンのマリアやアメリカのキム、スペインのエマ、後に仲良くなるアイルランドのルーなど、私を含む20~30代の女子はもちろんカミーノでお化粧なんかしない!
だって思いっきりアウトドアやん。


私はTシャツとトレッキングパンツという思いっきりカジュアルな服装なのに、無理やりスィナに教会内に連れ込まれる。
そして結婚式のミサが始まってしまう。




ここで超自由なスペインの結婚式を目の当たりにする。
教会の前の方に座っている人たちはともかく、後ろの方の席の人は結婚式が行われている間も出たり入ったりしている。
そう、ドアが閉められていないので結婚式の最中でも出入り自由なのである

「暑いわね~」とか言いながら外へ出てはタバコをふかしている。
さらには途中で近所のバルに行って1杯引っかける人までいる。
どうやらこれがスペインでの標準的な結婚式スタイルのようである。(たぶん)
ヨーロッパの他の国から来た人たちは一様に驚いていた。


出入り自由な結婚式なのに、スィナと私は出入り口と反対側の奥の方に陣取ってしまっていたので出るに出られず、とうとう結婚式が終わるまで居座ってしまった。


ミサは相変わらずスペイン語なので全くと言っていいほど意味が分からないけど、やはりそれなりに神聖な気持ちになり、新郎新婦の門出を祝う気持ちになっていたのに、そこでスィナが皮肉っぽく一言。
「この2人、いつまで続くかしらねえ」

余計なことを言うな


結婚式が終わり教会から新郎新婦が出てくると、クラッカーが鳴らされさらににぎやかに。




スィナの野次に負けず、お幸せにね



結婚式が終わってからカテドラル内をのぞいてみたけど、関係者だけのミサが行われているのみで、巡礼者も出席できるミサがあるのかどうか良く分からず。
スィナと「ま、今日はいいか」ということになり、町を散策することに。

橋のところでポールと会ったので夕食を一緒にしようということになる。
ポールは今、町の散策から戻ってきたばかりだと言うので、20:00に同じ場所で待ち合わせにして別れる。

私は兼ねてからの懸案だった、両替をしたい!
これまでATMでの現金引き出しに失敗してるので、ATMは諦めて日本円をユーロに両替したい。
カミーノでは銀行がない小さな村を通過することが多いし、たとえ銀行のある町に来たとしても営業時間内に通過するとは限らない。
Burgosは大きな町で観光客も来るので、きっと両替所があるはず。

と思い、町の中心部をウロウロしてみるが、どうにも見当たらない。
もう銀行は閉まっているので両替所が頼みの綱。

普段ユーロで何の不自由もなくヨーロッパを行き来しているスィナは両替所の存在すら良く知らないらしく、「ねえ、両替所ってどんなとこにあるの?どんな感じ?」と。
ちょっとイラつきながら「普通、観光都市にはCAMBIOって書いた窓口があるのよ!」と答える。

スィナがあからさまに退屈そうな顔をしているので、「私は両替所探しに行くから、あなたはアルベルゲにでも戻るかどこか別のところに行っててくれていいよ。20:00に橋に戻ってくるから」と言ってるのに、つまらなそうにしつつもなぜか離れようとしない。
…。
正直うっとおしいという気持ちと、そんなことでイライラしていてはいけないという気持ちがせめぎ合う


薬局の店員さんに聞いてみたら、なんと「両替所はない。銀行のみ」との返事。
え?Burgosほどの大都市なのに?
スペインに軽く失望
もしかしたら日本のガイドブックを見れば載ってるのかもしれないけど、今回重いので何も持ってきていない。
仕方がないので今日は諦めて、後日銀行での両替にトライすることにした。

薬局に寄ったついでにシャンプーを購入。
実は最初は荷物を軽くするために石鹸1個のみを持ってきていて、それで髪も体も洗っていた。
が、だんだん髪に石鹸成分が残りギシギシというかベタベタしてきたので、Azofraあたりで髪も洗える全身シャンプーを買った。
一度使ってしまうと違いはてきめん。
髪の毛がさらさらに仕上がる!と感動。
それ以来、髪にはちゃんとシャンプーを使うようになった。

そろそろそのシャンプーも底を尽きかけているので、新しいものが欲しい。
でも持ち運ぶのが重いのでなるべく小さいのが欲しい。
ラッキーなことに、2階のレジの前に試供品サイズのシャンプーが売られていた。

喜んで数種類ピックアップしていると、店員さんが何やら「このシャンプーはだめ。あなたはこっち」と言う。
なんで??
良く事情が飲み込めないまま勧められた種類を買った。
後でスィナに聞くと「どうやらさっき手にしてたのはブロンド用って言ってたみたいよ」とのこと。
そんな種類別があったのか!

でも我ら巡礼者はただ洗えればいいというスタンスなので、ブロンド用でも茶髪用でも黒髪用でもなんでもいいんだよ!
好きな匂いのシャンプー買わせてくれよ

全くの余談だけど、スィナはシャンプーも歯磨き粉も異常なほど減りが早い。
そんな少ない髪の毛なのになぜ?と思っていたら、どうやらシャンプーは体を洗うようにも使っているらしいので、そっちに関してはOK。

だけど分からないのは歯磨き粉の異常な減り具合。
巡礼中少なくとも2回は購入してた。
どんだけ歯磨き粉大量に無駄につけてるんだ?
私なんてトラベル用サイズで50日間余裕で持つんですけど。


さて、なんとなくまだ両替を諦めきれずに目を光らせながら町を歩いていると、大きな郵便局に到着。
そこに郵便と並んで預金がどうこうと書いてあるので、スィナに促されだめもとで窓口のおじさんにここで両替はできるのかと聞いてみた。
が、案の定あっさりと「両替は銀行のみです」と断られる。
ああ、つくづく日本の郵便局って便利なんだなあと思う。



橋に戻ってポールと落ち合い、夕食場所を探す。
ウロウロしてみたけど、よさそうなバルはすでに人でいっぱい。
仕方なく空席が目立つバルに落ち着く。

ポールは足のマメに苦しんでいるので、今日は新しいトレッキング用ソックスとマメ用の絆創膏を買ったようだ。
日本でも売っている、衝撃吸収ジェルパッド入りの絆創膏は1つ6ユーロとかして、結構高額。
う~ん、私は足の故障がなくて本当に良かったよ。


昨日のバルでポールとイタリア人が話していた、「罪人にはカミーノを」発言へと話が及ぶ。
私とスィナはその後それぞれの持論を展開し、「冬に歩かせよう!」とか「罪の重さに比例する重さの荷物を背負わせよう!」とか、「かわいそうだから夏場は帽子ぐらいは被らせてあげようよ」などと話していたことをポールに伝える。
ま、カミーノを歩いている間にいくらでも逃亡可能だけどね。


ポールと楽しく食事をし、ワインも進み、Burgosの美しいカテドラルの姿を愛でながらアルベルゲへ戻り、就寝。
Burgos市内をビーチサンダルで歩きまわりすぎて足が痛い
巡礼によるマメや靴ずれより、ビーチサンダルの鼻緒による親指と人差し指の間の擦れが痛いよ…。





本日の歩行距離: 約21km
本日の歩数:42,143歩