地球にあしあと

地球の色々なところに足跡をつけてきました。

カミーノにあしあと 16

2010年09月29日 | Weblog
【16日目】7/11(日) Hontanas → Itero de la Vega
予想した通り、スィナの起きるのが遅く、また、起きてから出発までの準備も遅く、アルベルゲを出発できたのは6:30。
ポールは予定通り6:00に出発してしまったようだ。

昨日歩きすぎたのでさすがに今日は足が痛い


今日も相変わらず日陰の無いメセタが続くが、Hontanasを出てすぐは小高い丘があり、そこは緑があって美しい。
丘を通る道に入ろうとしたところで、とあるおじいさんから声をかけられる。

出た!またドイツ人。
スィナとドイツ語で話が始まる。

どうやらこのじいさんは、「そっちの丘よりこっちのアスファルトの道の方がいいよ」ということをしきりに言ってるようだ。
でも別に険しい山でもなく、国道と地道は並行して走っているので行先は同じ。
私たちはどうせならアスファルトの道ではなく、土の道を歩きたい。

たったそれだけの会話のはずなのに、話が長い!
いつ終わるとも知れず延々とドイツ語で話しているので、思わず2人を無視して土の道の方へ入ると、スィナがどうにか話を切り上げてついてきた。


ドイツ人のじいちゃんの名前はギュンター。
今年77歳だそうだ。
さすがにカミーノは足に堪えるので、なるべく足に負担の少なそうな平らな道を歩いたり、部分的にバスを使ったりしているらしい。


土の道はやっぱり快適。
いつもより早い時間に出発したこともあり、しばらく歩いていると少しずつ太陽が上がって来て、日の出に金色に照らされた草木が美しい。

ほどなくして国道に合流。
自動的にギュンターじいちゃんとも合流
またスィナとのドイツ語による延々と続くおしゃべりが始まった。

昨日に引き続きあまり体調の良くない私は、後ろからゆっくり目についていく。
San Antónという修道院跡を通り、Castrojerizへ向かう。







ギュンターと合流してからCastrojerizまでの5kmの道のり、絶え間なくしゃべっている2人。
私は体調悪いので今日はゆっくり歩くから気にしないで行ってくれと伝えてあるのに、ご丁寧に2人はしばらく進んだら立ち止って私を待ってくれる。
待ってもらって追いついたところで、2人は延々とドイツ語で話をしてるので参加できるわけでもなく、正直言って迷惑なんですけど…
どんどん機嫌が悪くなる私。
一向に話が止まない2人。

一体ドイツ人ってどんだけ話すことあるんだろうか?
後でスィナに聞いたところによると、ギュンターじいちゃんは自分の一生のストーリーをスィナに話して聞かせたらしい



Castrojerizは遺跡などが残る、中世の面影を残した村。
丘の上にはお城も建っている。


最初に出てきたバルに到着してみると、テラスでグナーが朝ごはんを食べていた。
ポールもつい5分ほど前までここにいたけど、出発したばかりだということで、ほんのちょっとの差で会えなかった。

私たちもここで朝食。
ギュンターじいちゃん共々、グナーのテーブルにジョインする。
ここでドイツ人2人。

さらに隣のテーブルにもドイツ人の父子。
当然ドイツ人同士でドイツ語で話が始まる。
もう、一体何人ドイツ人おるねん

ちなみにギュンターじいちゃんはほとんど英語が話せない。
でもどうにかこうにか、カミーノで日本人の女の子に会って、自分のノートに日本語を書いてもらったと言って私に見せてくれる。

隣のテーブルのドイツ人もお父さんの方は英語ができないらしい。
そしてこの親子はベジタリアンだった。
肉料理全開のスペインにてベジタリアンで通すのはさぞかし大変だろうと思う。
彼らがバルで注文するサンドイッチの中身はキュウリとトマトだけ、とか。
よくそんな食事でカミーノを歩けるものだ。
(たぶんスペイン人からは「こいつら頭おかしい」と思われているに違いない。)


休憩を終え、さて今日ももうひとがんばりしましょうと思って靴ひもを結んでいると、隣のドイツ人父が「その結び方、違う違う!」と割り込んできた。
そして正しい靴ひもの結び方のレクチャーが始まった。
「ここまでは普通に紐を通す。でもここからは逆向きに!こうして、こうして、こう!」と、もちろんオールドイツ語で説明しながら、私の両方の靴ひもを結んでくれた。

すると確かにこの結び方だと靴がしっかりと足に固定されてぐらつかない
足が痛いからと言って途中でスポーツサンダルに履き換えて歩いて、足首が思いっきりむくんでいたスィナも、このおじさんに教えてもらった紐の結び方でむくみが改善して喜んでいた。
後に私たちはこの結び方を「ドイツ方式」と呼んで、他の巡礼者にも教えてあげることとなる。


ところで最初はオールドイツ語環境に置かれてイライラしていたけど、後にはこのドイツ人たちが愛おしい存在になってしまうから不思議だ。
長く接していると結構情が沸いてきてしまう。



Castrojerizを出ると、ひたすらに、ひたすらに乾いた大地。







Itero de la Vegaに入る少し手前でようやく水飲み場が現れ、冷たい水で喉をうるおし、衣服を濡らす。
あまり長く休憩する巡礼者はおらず、来ては去り、来ては去り。
気がつけば残されたのはスィナと私のみ。

ようやく私たちも腰を上げた頃に、若い女性が1人到着し、休憩をはじめた。
彼女に “Buen Camino.”と声をかけ、歩きだしてすぐ、1台の車が休憩エリアに到着し、男性2名が降りてきた。

スィナは立ち止って振り返り、じ~っと見ている。
「もう行くよ!早く!」と声をかけるとようやく歩きだした。

スィナは時々、向こうからやってくる巡礼者などを無遠慮にじーっと見る時がある。
「何か用ですか?」と聞きたくなるぐらい、立ち止ってじーーーーっと見つめる。
相手が巡礼者の場合、「あれは自分が知ってる人かな?」とか思って見てるんだと思うけど、あまりに露骨に見つめるのでこっちが気を使う時がある。
思わず、「あんたはインド人か!」とツッコミたくなるぐらいの無遠慮な見つめ方だ。


1kmちょっと歩いてItero de la Vegaの入口にさしかかると、オスピタレロが巡礼者の足を洗ってくれることで有名なアルベルゲが出てくる。
ちょうどお昼の時間帯でアルベルゲが閉まっていたのと、村の中心部から外れていて周りに商店などが見当たらなかったため、そこは素通りすることとした。

そのアルベルゲを過ぎてからスィナが後ろを気にしながらぽつんと言う。
「さっきの休憩場所の女の子、大丈夫かしら?あとから怪しげな車が到着してたけど」

おい!いまさらかよ
気になるなら出発を遅らせてしばらく一緒にいてあげるとかできたじゃん。
ほんとに心配してるのかしてないのか、どっち

一応カミーノ上は安全とされていて、若い女性でも一人で巡礼しているし、真昼間で他の巡礼者も通るだろうから大丈夫だとは思うけど。
もちろん100%安全とは言い切れないけど…。


今更どうしようもないので、スィナの言葉を無視して先へ進む。
暑くて疲れているので、とりあえず次に出てきたアルベルゲを確保。
バルのオーナーである老夫婦が経営しているアルベルゲで、6ユーロ。
今日は出発時間が早かったので、歩行終了時間も14:20と、いつもより早め。

バルにて巡礼者メニューを食べている韓国人の夫婦に出会う。
案の定、奥さんから韓国語で「韓国人ですか?」と声をかけられ、申し訳なさそうに英語で「日本人です」と答えた。
カミーノを歩いている東洋人はほとんどが韓国人なので、地元の人から韓国人と思われることは多々ある。
でも私の場合、どこの国に行っても韓国人から「あなたコリアンでしょう?」と声をかけられることがしょっちゅうなのである。
そして違うと答えるとちょっと残念そうな顔をされてしまう。

このご夫婦、以前日本に住んでいたことがあり、今後もまた仕事で来日する予定があるらしく、少し日本語ができる。


シャワーを済ませ、洗濯物を干していると、ようやくギュンターじいちゃんが到着した。
暑さでかなり参っている様子。
続いてCastrojerizで会ったドイツ人父子も到着。

バルの中にある食料品コーナーで明日のためにフルーツやミューズリーバーを買っていると、さきほどの休憩場所にいた女性も到着した。
それを見たスィナが「ああ、よかった。心底心配したわ~」とつぶやいた。
だ・か・ら~、ほんとに心配なら一緒にいてあげればよかったじゃん!


いつもの通り、村を散策し教会を訪問した後、夕食まではバルのテラスで飲み物を飲みながら過ごす。
周りに何もないのでとにかく暇。
たまたまバルにパソコンがあったので、ちょっとメールチェックをしたけど、後は何もやることがない。

スィナは昨日の32kmがたたって、体を動かすのがすごくつらそう。
ぎこちない動きに、他の巡礼者の注目を集めていた。
もちろん他の巡礼者たちも足にマメができていたりするので、それなりにボロボロなのだけど。


夕食も同じバルにて。
バルを切り盛りしているおじいちゃんが、ディナーの際にはウェイター役までしてくれる。
結構大変だろうなあ、バルとアルベルゲの運営って。


Primero Platoには、野菜不足なのでミックスサラダをチョイス

Segundo Platoは、スペインに来てここで初めてチョリソーを。




しかし、体調万全じゃなかったので、このチョリソーのために後でえらい目に遭う



ディナーの後はバルにてワールドカップを観戦
そう、今日は決勝戦の日。
しかも決勝はスペイン対オランダ。
スィナもかなり熱が入っている。

テレビ画面を食い入るように見つめる面々。




手前からスィナ、ドイツ人父、ドイツ人息子。




バルにはフランス人のポールもいて、えらい熱く観戦しており、時折フランス語で野次を飛ばしていた


結局決勝ではオランダが破れてしまったけど、スィナの場合は長男のお嫁さんがスペイン人なので、どっちに転んでもOK。
勝っても負けても、周りの人にドリンクをおごると豪語し、試合終了後みんなに「おごるわ!」と言って回ったのだけど、意外にもみなさん遠慮して「いや、いいよ」と断っていた。

私にも「あなたもワインか何か飲みなさいよ」と言ってきたのだけど、もうほんとに何も飲みたくなかったので断ったのに、「いいじゃないの。何か飲みなさいよ!」と、こういう時のスィナはしつこい。
別に遠慮してるんじゃなくて、本当に飲みたくないのに…。

でもあまりにもスィナがしつこいので、オレンジジュースを1杯奢ってもらった。


バルのカウンターでは地元の女性がガラガラ声で”¡España! ¡España! Ole ole ole~~~♪”と騒ぎたて、スィナの神経を逆なでしていた。
関係ないけど、多くのスペイン女性の声がガラガラなのはタバコ焼けか、酒焼けか?



この夜、体調不良にもかかわらず食べてしまった脂っこいチョリソーに、いらないのに無理やり飲まされたオレンジジュースがたたり、軽い胃痙攣で眠れなかった。。。





本日の歩行距離:約21km
本日の歩数:30,535歩