『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第1章  二つの引き金  39

2007-05-12 13:52:38 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 もう8月もなかばを過ぎた。今日もぬけるような澄明の青空から、ふりそそぐ夏の陽射しが暑い。北よりの風、エアシテイの吹く季節も、あと一ヶ月で終わろうという時期である。春の風、シロッコに押されて旅立った、夫メネラオスの帰りがまだである。妻のヘレンも、娘のヘルミオネも、今日か、明日かと、父であり、夫であるメネラオスの帰りを待っている。今日の機織も終えた午後のことである。
 一人の青年が3人の従者をつれて、門口に立っていた。夫の留守に訪ねてくる者は、誰だろうといぶかしんだ。小者は、ヘレンに、来訪者のことを告げた。
 『トロイのプリアモスの第二王子、パリスと名のっていますが、どのようにはからいましょうか。』
 遠方からの来訪者である。小者はヘレンの返事を待った。
 『そうね。どうしようかしら。用件は、私が伺いましょう。応接の部屋へお通し、して下さい。』