今朝も心地よい陸風が吹いていた。やがて凪ぎのときが訪れる。
パリスは、船の舷に腰をおろして考えていた。
<ヘレンが、メネラオスとスパルタを裏切るのか。または、俺を裏切るのか。はたまた、俺が、ヘレンにメネラオスとスパルタを裏切らせるのか。スパルタという国は、妻女に華やかな楽しい女の夢を抱かせてくれる国ではない。だが、俺なら、ヘレンに、それをしてやれる。>複雑な思いが交錯した。
パリスのやろうとしていることは、大変なことなのだ。スパルタとトロイの両国の関係が、どのようなことになるかも判らないのにもかかわらずにやる。二人の思慮分別は、そこには至らなかった。恋慕は、二人を、全くものの見えない、盲目にしていたのである。
しかし、パリスの心の片隅の冷静は、<決行>と<決行中止>を天秤にかけていた。答えは、<決行>が重かったのである。
パリスは、船の舷に腰をおろして考えていた。
<ヘレンが、メネラオスとスパルタを裏切るのか。または、俺を裏切るのか。はたまた、俺が、ヘレンにメネラオスとスパルタを裏切らせるのか。スパルタという国は、妻女に華やかな楽しい女の夢を抱かせてくれる国ではない。だが、俺なら、ヘレンに、それをしてやれる。>複雑な思いが交錯した。
パリスのやろうとしていることは、大変なことなのだ。スパルタとトロイの両国の関係が、どのようなことになるかも判らないのにもかかわらずにやる。二人の思慮分別は、そこには至らなかった。恋慕は、二人を、全くものの見えない、盲目にしていたのである。
しかし、パリスの心の片隅の冷静は、<決行>と<決行中止>を天秤にかけていた。答えは、<決行>が重かったのである。