『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第1章  二つの引き金  51

2007-05-26 08:07:48 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 今朝も心地よい陸風が吹いていた。やがて凪ぎのときが訪れる。
 パリスは、船の舷に腰をおろして考えていた。
 <ヘレンが、メネラオスとスパルタを裏切るのか。または、俺を裏切るのか。はたまた、俺が、ヘレンにメネラオスとスパルタを裏切らせるのか。スパルタという国は、妻女に華やかな楽しい女の夢を抱かせてくれる国ではない。だが、俺なら、ヘレンに、それをしてやれる。>複雑な思いが交錯した。
 パリスのやろうとしていることは、大変なことなのだ。スパルタとトロイの両国の関係が、どのようなことになるかも判らないのにもかかわらずにやる。二人の思慮分別は、そこには至らなかった。恋慕は、二人を、全くものの見えない、盲目にしていたのである。
 しかし、パリスの心の片隅の冷静は、<決行>と<決行中止>を天秤にかけていた。答えは、<決行>が重かったのである。