『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  128

2011-07-22 07:00:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは、一斉に積載に取り掛かった。アンテウスは、細心の注意を払って積載を点検していった。
 『お前らの造った台車は、この最終便が6回目の荷役だ。中には数台、例外もあるが、この荒れた道を重い用材を積んで5回もの荷役に耐えたのだ。今日が最終の荷役だ。お前ら、急がずともいい、舟艇建造の浜までの道を無事に運搬することだけを考えて行け。この業務はそれで終える、いいな。安全と無事故が第一だ』
 彼は、息を止めて大きく息を吸った。
 『では、出発する。者どもっ、出発っ!』 大声で号令を掛けた。一同から、
 『おうっ!』『おうっ!』 
 返事が号令にこだまする、台車のクルマが地を噛む音が響いた。
 アンテウスは、進み行く隊列を見送って、心なしに森を振り返った。
 用材を伐りだした木々の伐り株が真新しい。彼は知らず知らずのうちに頭(こうべ)を垂れていた。こみあげるえもいわれぬ感謝の念を覚えずにはいられなかった。
 『木々たちよ、我々の、俺たちの役に立ってくれて、ありがとう。必ず、カタチを変えて役立てるからな』
 彼は、木の伐り株がうなづいてくれるのを肌に感じた。