『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  559

2015-07-02 10:19:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『頭領、昼食の準備できました。もう場についていただいてもよろしいです』
 『おう、そうか』
 『さあ~、ご両人、どうぞ!』
 四人は、昼食の場を囲んだ。オキテスは、ドックスをガリダに紹介した。
 『ガリダ頭領、ドックスは、このたびの新艇建造の全てを取り仕切っている船棟梁です。よろしく』
 『ほう、そうか。すると船に関しては詳しいというわけだな』
 『そうです。昨日、海上で目にした三角帆は、パリヌルスと彼の発案です。現在のところ試している最中です』
 『常識に対する抵抗といったところか』
 『そんなところです』
 『いい結果が出そうか?』
 『それは不明です』
 『そういうものだろう。改革とはそういうものだ』
 四人は、羊の焼き肉昼食に舌つづみを打った。
 『おう、オキテス殿、実行に関する二、三の項目について打ち合わせておこう』
 『判りました』
 『期間の事、派遣する者たちは技術者だが職人気質だ。彼らが使う道具はどのように考えているのかな?』
 『ドックス、ガリダ頭領に当方の意向を申し上げてくれ』
 『判りました。派遣の開始時期ですが、第二便の用材納入時よりと考えていましたが、早いほうがいいのではなかろうかと考えています。製材道具については、ガリダ頭領の方に任せます。対価については当方で負担いたします。派遣期間については、2カ月ぐらいが、当方の希望です。ガリダ頭領の意向を聞かせていただければと思います』
 『判った。俺の意向は、第二便の用材納入は10日後くらいとしていたのだが、これを早めて繰り上げる。四日後に行う。当方からの技術者派遣は、5人、その時に行う。期間は一応二か月と決めておく。製材道具選定はは当方に任せていただく。対価は請求する。以上だ。承諾願いたい』
 『判りました。ガリダ頭領。それにて承知!宜しく願います』
 『判った。決定だ。オキテス、お前たち時間の方はいいのか?』
 オキテスは空を仰いで頃合いを計った。
 『言われてみれば、もう、その頃合いのようです』
 『おう、オキテス、今日、技術者を一人連れて帰ってくれ。明日の船便でキドニアまで帰してくれればそれでいい。製材道具の調達に関わる用務だ。その者に、何をどうするかを言ってくれれば、その者が最適の道具を調達して準備する。これからいうのは仕事の話ではない、俺の希望だが、今度用材を届けた折に、お前たちが試作した新艇とやらに乗せてくれ。俺はそれに乗ってみたい』
 『判りました。そのように計らいます』
 『タブタ、製材のところへ行って、ノコギスを呼んできてくれ』
 程なくノコギスが姿を見せた。

 *お詫びいたします。誤字をやりました。
 投稿 築砦 558  最後から4行目
 話そうとはしない   離そうとはしない   と訂正します。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  558

2015-07-02 04:49:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一行四人は程なく製材の場に着く、そこでは20人余りの男たちが作業に取り組んでいた。彼らは慣れた手つきで作業を進めている。
 オキテスとドックスが想像した情景とは、全くといっていいくらいに違っていた。
 『お~お、ガリダ頭領、彼ら懸命に励んでいますな。これならいい仕事ができる。いやいや、恐れ入りました』
 二人は、仕あがってくる部材を手に取ってみた。いい仕上がりだ、申し分がない、感心した。二人は、裁断された木肌を手で触れて丹念にみた。用材の手配をガリダの率いる一族に手配したことが間違いではなかったことを確認した。あれこれと見て廻った。
 『ご両人、充分に見ていただけたかな』
 『充分に見ました。私らがガリダ頭領に新艇建造の用材を手配したことがよかったと喜んでいます』
 『オキテス殿、館の方へ戻りましょうや』
 一行は館に戻り、ガリダは二人を会談の間へと誘った。オキテスは、まず、帆柱に使うレバノン杉の件から話し始めた。本題の件についての話のきっかけを探り、どこでどう切り出すかを思案しながら話を進めた。
 オキテスは、『ところで』ときりだし本題に入った。ドックスは、オキテスの話の進め方のうまさに感心した。
 じい~っと聞き入るガリダ、ガリダの目を見つめて話すオキテス。ガリダは話の要点を理解した。『ーーーーー。ということだが、私らの要望を受けてもらいたい』とオキテスは話を結んだ。
 しばし、二人に沈黙の時が流れる。ガリダが口を開いた。オキテスは返答かなと思った。違っていた。 彼は、傍らのタブタに話しかけた。
 『タブタ、昼食の準備を頼む。お前の分も入れて四人分だ』
 『判りました』
 ガリダが指示を終えて、オキテスの心中を探るように目を見つめて口を開いた。
 『オキテス殿、その件承諾!安心されい』
 彼は力を込めて言い放った。オキテスは感極まった。オキテスが立ちあがる、右手をガリダに向けて差し出す、ガリダも立ちあがる、オキテスの手をしっかりと握った。二人は手を握り合って話そうとはしない、時が過ぎる。
 『オキテス殿、その進め方については昼めしを食べながら打ち合わせるとしよう』
 『判った。ガリダ頭領、ありがとう』
 二人は、話し終えて、握っていた手を解いた。