『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  565

2015-07-11 09:12:27 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス殿、これはこれは、カッコイイ船ですな。何といえばいいのか、言葉が続かない』
 渚からガリダたちの身柄をハシケでヘルメスに運んだ。オキテスはガリダにギアスを紹介する。 
 『ガリダ頭領、こちらがこのヘルメスを操艇するギアス艇長です』
 『そうですか。ギアス艇長、私がガリダです』
 二人は手を握りあった。アヱネアスがガリダに声をかける。
 『お~お、ガリダ頭領、ヘルメス艇に、ようこそ!』と歓迎の言葉がけをした。
 ギアスが出航を控えて風を読んでいる、オキテスから声がとどく。
 『ギアス!スタートだ!』
 ギアスが声を上げる。
 『漕ぎかた一同!いいな!』
 漕ぎかた一同を見まわす。
 『漕ぎかた、始め!』
 ヘルメスが波を割りはじめる。やや強い西からの風である。風に飛ぶ櫂操作の飛沫が艇上の者たちの顔にあたる、ヘルメスは小島の西岸に沿って北上した。
 ほどなく方向転換点にさしかかる。ギアスの指示が飛ぶ。
 『操舵、右方向!北岸に沿って西へだ』『了解!』
 『中央帆柱、帆を上げ!』『了解!』
 展帆担当が三角帆型の台形の帆を簡単操作で展帆する、帆が風をはらむ、帆走するヘルメス、舳先きが飛沫を上げて波を割る。
 『漕ぎかた停止、櫂をあげろ!』
 ヘルメスは、風をはらむ帆にひかれるように海上を走った。
 ガリダが声をあげる。言葉が口をついて出る。
 『お~お、これはすごい!』
 風をはらむ帆、走るヘルメス、速さと走行安定状態にガリダは驚嘆した。
 ギアスの指示が飛んだ。
 『舳先き、艇尾、帆をあげろ!』
 舳先き、艇尾の帆も間髪を入れず、風をはらんだ。ヘルメスは加速して波を割った。瞬く間に小島の北を走り抜けた。
 『ギアス、もういいだろう。小島の東岸に沿って浜へ向かってくれ』
 ギアスは方向転換と漕ぎの指示を出した。ヘルメスは小島の東岸に沿って南下していく、オキテスはガリダに話しかけた。
 『ガリダ頭領、小島を見てください。あそこが我々の漁の基地です』
 『ほっほう、そうですか、盛大にやっていますな』
 ヘルメスが浜に帰り着いた。アヱネアスが声をかける。
 『ガリダ頭領、いかがでしたかな?』
 ガリダの口をついて出た言葉は、
 『いやいや、恐れ入りました。感動ものですな。あの走り、あの速さに驚きました。そして、全く新しい走りの船ですな。ありがとうございました』
 ガリダは、オキテスにも同様の感動を述べた。
 浜には、アレテスから塩漬け魚と干し魚が梱包されて届いていた。オキテスは、その梱包をガリダに手渡した。
 『これは何だ?俺に呉れるのか』
 『そうです。塩漬け魚と干し魚です。賞味してください』