『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  572

2015-07-21 09:18:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
ニューキドニアの浜は、今日も快晴の朝を迎えた。
 朝行事でパリヌルス、オキテス、オロンテスの三人は顔を合わせた。三人は、今日の事前協議の事について打ち合わせた。彼らが業務の明日を見つめる目には笑みがなかった。
 間をおいて、イリオネスが姿を見せる、朝のあいさつを交わす。オロンテスが声をかけた。
 『軍団長、昨日ですが、スダヌスが近近中にこちらへ来ると言っていました』
 『ほう、そうか。彼の来る日が解れば、また、連絡してくれ。統領も会いたいらしい。そんなところだ』
 『判りました』
 『オロンテス、今日は集散所へは誰が行くのか?』
 『はい、今日はセレストスです。今日は、パリヌルス、オキテスと新艇トレードの事前協議です』
 『ほう、そうか』
 彼らと言葉を交わしおえて、イリオネスは朝行事にと海辺に向かって歩を運んだ。
 パリヌルスとオキテスは始業の場へと向かう。オロンテスは、パン工房へと向かった。
 各自が多忙に時を追い、時に追われて業務を遂行していく、過ぎていく時は遅速ではなかった。たちまち、昼時となった。
 昼を終えたオロンテスは、気にかけていたパンを焼いた。口当たりをよくするために蜂蜜と羊乳を練りこんだパンである。今日の事前協議時に三人で試食しようと目論んで焼き上げたのである。
 オロンテスは焼きあがったパンの一片をつまんで口に運んだ。『おう、これはいける。想った通りの仕あがりだ』ほくそ笑んだ。
 彼は、そのパンを小袋に入れて持ち浜へと向かった。
 オロンテスは揚陸されているヘルメス艇に目を止めて、艇の傍らに立った。
 間近に目にするヘルメスを見て、『おう、こうして見ると、なかなかの容姿ではないか。いけているカタチだ』
 そうしているところにオキテスが姿を見せる、言葉を交わす、パリヌルスがやってくた。
 『おう、ご両人ご苦労。オキテス、どこでやる?』
 『そうだな、落ち着けるところがいい。広場の木陰でどうだ』
 『よしっ!』
 彼らは、広場の一画を決めて腰を下ろした。風が木々の間を吹き抜けていく。
 『おう、ここなら落ち着いて話ができる』
 三人は顔を見合わせた。パリヌルスが二人に声をかけた。
 『一昨日の事だ。オキテスと俺が軍団長に呼ばれた。今日、これから話す案件について指示された。考えてみれば判ることなのだ。ちょっと恥ずかしかったな。新艇を建造することばかりに懸命になっていて、新艇をトレードすることを考えていなかった。指示されて、オキテスと俺はそのことに気付いたということだ』