『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  566

2015-07-13 09:35:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうか、ありがとう。喜んでいただくぞ!』
 ガリダは満面に笑みをたたえて表情をほころばせた。
 『オキテス殿、製材担当の5人宜しく頼む!お前に預けたぞ。今日も大変に世話になったな。ありがとうよ、俺は帰る』
 ガリダの念押しであった。荷卸し、引継ぎ等用件を終えてガリダは帰途に就いた。彼の乗った船を押す西風は思いのほか強く吹いていた。
 オキテスがパリヌルスに呟いた。
 『この分ならキドニアに早く着く。今日が終わったな』
 ドックスは忙しそうに立ち回っている。陽がその体を海に沈めていく、多忙のおさまり時が訪れる。ドックスはガリダ方の製材担当5人、ドックス配下の班長役5人を集めて、明日からの段取りを打ち合わせた。
 作業の場の区割りと構成を作業の流れに対応させて構築することを木板に図面を描いて打ち合わせた。
 『ーーーーー。ということだ。判ったな』
 ドックスがガリダ方の製材担当者たちに声をかける。
 『君たち、判ったか?ノコギス、どうだ?』
 『充分に理解しました』
 ドックス配下の5人にも声をかける。
 『お前たちも判ったのか?』
 『理解しました』
 『一同、力を合わせてやってくれ。明日より数えて三日後より部材の製材作業を開始する。以上だ。今日の業務はこれにて終了する!』
 宵のとばりが一同を包み始めていた。製材担当の5人は係りの者に連れられて宿舎に引きあげていく。パリヌルス、オキテス、ドックスの三人が集まって今日を振り返った。パリヌルスが声をかける。
 『ドックス、聴いておきたい。明日からの実行体制だが、万全といえるな。俺たち、オキテスと俺の事だが、手伝うことは?』
 『現在のところ、これといってありません。発生都度の対応でいけると考えています。建造の本格始動は三日後からです』
 『おっ!そうか。了解した』
 打ち合わせを終えた三人は場を解いた。パリヌルスとオキテスは、ドックスと別れて一緒に歩き始めた。
 『なあ~、オキテス、いよいよ始まるな。実はだな、帆の事を、まだ、このようにすると決めていないのだ。帆の構造、カタチ、風のハラミ具合、そういったところを検討している。向こう一カ月くらいの時間をかけて答えを出そうと考えている。力を貸せ』
 『判った。それについては、思考を重ねてベストなものにしよう。叡智をカタチにだ』
 『ありがとう』
 二人は別れた。
 パリヌルスの頭の中では、帆の事に関する考えが右往左往している。迷いはない、常識的か、革新的かでウロウロしていた。