『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  567

2015-07-14 08:36:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 この時代、船の帆を三角形にする、船の帆は四角形であり、ヨコ帆の時代であった。常識では三角帆は考えられない帆型である。試行の段階では、三角帆は非の打ちどころのない帆型であった。
 『このまま、様子眺めということにしよう』と心に決めてパリヌルスは寝に就いた。
 アヱネアスは、イデー山行より帰って、何かと多忙に追われた。彼は今を処理して明日を考えなければと焦燥にかられる己を感じていた。頭の中でも心の中でも建国への道筋をはっきりさせて歩を進めねばならない。未来への門扉を探り当て開けなければならないのである。果たしてクレタは我々民族の建国の地なのか、そうではないのかを見極めなければならない。何をもって決断するかを思案した。『よしっ!明日からそれにかかる』と心に決めて寝に就いた。
 イリオネスは、『これでいいのか?』と頭に想起する事柄にチエックを入れた。彼は想い浮かぶ課題を冷静に見つめた。その中に浮かぶ大きな課題は、三か月後に出来あがる新艇5艇のトレードをどのようにするか、これが最大の課題であると認識した。彼も取り組むべき課題を心にとめて寝に就いた。
 オキテスは新艇建造の手配の一段落をチエックした。作業進捗の一歩先を確実に処理することに持てる力を傾注してきたことを振り返って寝に就いた。
 オロンテスは、パン事業の成り行きを、アレテスは、明日の漁を、ドックスは、段取り、手配の落ち度の有無をチエックした。ギアスは、船の未来を想像する。各々が己の担当する領域について考え、各々の場で寝に就いた。彼らが生きている空間の中で警備を担うごく一部の者たちを除いて寝に就いていた。
 夜は更けていく、そして、黎明の時が訪れる。昇る太陽の第一射がとどく、目覚める浜、今朝もオロンテスの第一声で朝の賑わいが始まった。集散所への荷の積み込みが始まる。
 入れ替わり、立ち代わりの朝行事でざわつく海辺、交わされる朝のあいさつで浜はにぎわった。
 イリオネスとパリヌルスが顔を合わせる。
 『おはようございます』
 『おう、おはよう。パリヌルス。お前、今日は多忙か?』
 『いえ、今日は、忙中の閑です』
 『おう、そうか。オキテスを誘って宿舎の方へ来てくれ。話し合っておきたいことがある』
 『判りました』